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加工貿易(委託加工)ワンポイント・ガイド

中国ビジネスレポート 投資環境
水野 真澄

水野 真澄

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2006年9月26日

A.基礎編

1.委託加工とは
定義1:三来一補(来料加工、来様加工、来件装配、補償貿易という、一般的に付加価値が低いと言われている加工形態の総称。)
定義2:来料加工、及び進料加工(加工貿易の2形態 ※保税の輸出加工を中国企業が行う形態)
定義3:来料加工

委託加工の明確な定義はないが、定義2、若しくは、定義3の意味で使われる事が多い。
⇒ 委託加工=加工貿易という理解が一般的。

2.来料加工と進料加工
(1)来料加工(契約書サンプル参照)
●部材提供と製品引取りが無償で行われる。外国企業(加工委託者)から中国企業(加工企業)には加工賃のみが支払われる。
●部材輸入に際しては、関税・増値税・消費税の保税措置が適用される。
●製品は原則として100%輸出が義務付けられる。
●部材も輸入部材の使用が原則。

(2)進料加工(契約書サンプル参照)
●売買形式の加工貿易
●中国の生産型企業が原材料輸入契約・製品輸出契約を締結。大部分が輸出される場合に、保税措置の適用が可能で、これを進料加工と呼ぶ。具体的な輸出比率を示す規定はない。
⇒ 「加工貿易輸入設備関連問題に関する通知(外経貿政発[1998]第383号)」に、進料加工企業が無償提供設備の輸入を行う場合、その輸出比率が70%以上でなければならない事が明記されていたが、後年、この部分は削除されている(WTO加盟に際して、輸出奨励策と受け取られる記載を排除した)。但し、運用上は、70%が現在でも目安となっている。

(3)珠江デルタ式の来料加工
珠江デルタでは、内資企業の名義を借りて、外国企業が実質的に来料加工工場を運営している形態が主流。
●来料加工のデメリット(設備・原材料を第三者に貸与する必要がある。品質管理が難しい)が解消できる点がポイント。但し、あくまでも変則的な形態。
●特徴として、加工賃の送金の内、20-30%が諸費用として地方政府に徴収される。工場長等が中国側から派遣される(名義のみ)。加工賃が、工員単価により設定されるケースが多い。
●珠江デルタでは、外資企業の来料加工許可取得が難しい。

(4)来料加工形態の進料加工
珠江デルタに見られる特殊な形態で、現地側の記帳は通常の進料加工であるが、売・買掛金を相殺して、差額を加工賃の様な形で送金している。
●外資企業の来料加工認可がとりにくい為、この様な変則的な運用が行われる様になった。
●昨年より、進料加工企業の売・買掛金の相殺は、外貨管理局の事前手続が不要となった
(輸出外貨収入核銷手続の簡素化問題に関する通知:匯発[2005]73号)。
⇒ 輸出企業が、「進料加工」、「進料深加工」、「三資企業進料加工」方式で輸出を行い、輸入材料の相殺核銷を行うにあたり、事前の外貨管理局での登録・審査手続を不要とする。
輸出企業は、商務主管部門が認可した加工貿易契約(初回の相殺核銷を行う場合に提出)、輸出通関書、核銷単、差額部分の核銷専用書類、及び、対応する輸入通関書類などをもとに、核銷手続を行う。
●認可取得の際に、見なし単価を設定される(原材料・製品に対して)ケースが多い。
⇒ これを基に、企業所得税の見なし課税が行われる。
見なし単価の利益率が高めに設定されるため、売・買掛金の差額を実際に送金すると、工場側の資金がだぶついてしまう。
これにより、売・買掛金の相殺漏れが恒常的に残ってしまう例が多い(実際の資金需要のみを送金する為)。
●香港側では来料加工としての経理処理、現地側では進料加工の経理処理を行っている例が多く、実態把握が極めて面倒になる。

3.加工貿易認可の取得
(1)認可機関
商務主管部門(対外経済貿易部門)が認可を行う。
税関が登録の上、加工手帳を取得する。

(2)認可に際しての必要書類(一例)
●加工を請負う企業に関連する資料(認可証書、営業許可証、定款、合弁契約、検資報告等)
●来料・進料加工契約書
●加工貿易申請書
●輸入原材料リスト
●輸出製品リスト
●加工製造に関する歩留まり率表
●加工貿易企業の生産能力証明
●その他

4.無償提供設備
加工貿易を行うに際して、加工委託者が無償で提供する設備の事。
加工貿易輸入設備関連問題に関する通知(外経貿政発[1998]第383号)に規定されている。
ポイントは以下の通り。
(1)加工企業内での使用が前提
加工貿易認可を受けた工場内でのみ使用可能であり、貸与・売却は不可。
(2)税関監督機関
5年の税関監督機関が設定されている。それに満たない期間で国内処分する場合(税関の監督解除手続が必要)は、減価償却後の価額に対して、輸入段階の関税・増値税を納付する必要がある。
(3)保税輸入が可能(関税・増値税の留保措置が適用される)
監督機関満了後は、税関に監督解除申請を行う必要有り(若しくは海外に再輸出)。
(4)来料加工企業だけでなく、進料加工企業も無償提供設備の受け入れが可能だが、実際には、進料加工企業の場合は許可が下りないケースがある。

5.加工貿易の保証金
加工貿易企業の一部は、輸入税額(関税・増値税・消費税)に相当する保証金を税関に差し入れる必要がある。
加工貿易銀行保証金台帳制度の更なる整備に関する意見(国弁発[1999]第35号)。(1)差し入れを要する企業
C類企業、及び、制限製品を取り扱うB類企業。
●企業分類
A類:税関が職員を常駐させて監督する特定の大型・優良企業
B類:通常の加工貿易企業(殆どの企業がこれに該当する)
C類:違法歴のある企業
D類:密輸歴が有る、若しくは、3回以上の違法歴がある企業 ⇒ 加工貿易禁止となる。

●制限製品
内外価格差が大きい製品。
プラスティック原料、ポリエチレンテフタール、合成繊維原料、綿、綿糸、綿織物、鋼材、食料用糖、植物油、天然ゴム、羊毛等

(2)差し入れ額と差し入れ方法
●加工貿易銀行保証金台帳の実転に関する問題の補充通知(署税[2000]第188号)により、B類企業の場合は、半額(留保される輸入税額の50%)が適用される事になった。
●中国銀行の保証状による差し入れが認められている。
⇒ 加工貿易企業が多様な形式により保証金を納付する事に関する弁法(国経貿貿易[1999]1271号)。

6.来料加工における国内部材の使用
(1)国内原材料使用の可否
来料加工は輸入原材料(加工委託者が無償で提供する原材料)の使用が原則。
但し、以下の手続を経れば、国内原材料の使用可能。
⇒ 商務主管部門(対外経済貿易部門)に、申請書、補助資料(購入予定の材料リスト、来料加工契約書等)を提出し、認可を取得する。

(2)国内部材を使用する事の問題点
来料加工工場は、通常、小規模納税義務者であり、増値税の仕入れ控除が適用できない。来料加工は増値税の免税取引であり、これに基づいて支払った増値税は控除・還付の対象とはならない。
以上の理由により、仕入れ時に支払った増値税はコストとなる。

7.来料加工製品の国内販売
来料加工製品は、100%の輸出が必要。但し、商務主管部門の事前認可(契約の原審査認可機関の1級上の対外経済貿易主管部門の認可)を受ける事により、国内販売可能。
⇒ 国内販売品に紐付く原材料の輸入段階の関税・増値税を納付する必要有り。

この方法は、事前認可が前提となるため、手間・時間がかかる。よって、製品を一旦香港に輸出して、再輸入する方法が普及している。
⇒ 中国原産品を再輸入する為、変則的な取引であるとの見解を税関総局は示しているが、現段階で規制が行われる動きはない。
但し、この方法だと、「製品に対して輸入段階の関税・増値税がかかる」、「貿易取引(外貨取引)であり、人民元取引に対応できない」、「輸送コストがかかる」という難点がある。

8.転廠(深加工結転)
加工貿易企業間で、保税貨物を移送する制度。
根拠規定:「加工貿易保税貨物の税関区を跨いでの深加工結転に関する管理弁法(税関総署[2004]第109号)」。

広東省では、2002年より地方規定(加工貿易深加工結転管理弁法)を公布し、上記の国家規定(税関総署[2004]第109号)の規制緩和を先取りする形で実施していた。

旧転廠規定(1999年のもの)との主要な相違点は以下の通り。
●転廠に関しては対外経済貿易部門の認可不要(税関の許可のみ)。
●転入企業が先に転入税関で通関手続きを完了した上で、転出企業に通知・転出税関での手続を行う為、転出企業は転入税関に行く必要がなくなった。

以上により、転廠手続の間簡素化が、国家に比べて前倒しで実施されているが、国家規定にはない要求(転入価格と転出価格を一致させなければならない)も有る。つまり、転廠に際して付加価値が付けられない為、致し方なく(敢えて転廠せずに)香港に貨物を輸出してから戻している例も少なくない。

9.外注加工
加工貿易企業が、工程の一部分を他の工場に委託する事。
外注加工に際しては、以下の点が要求されている(加工貿易貨物に関する監督管理弁法:税関総署令[2004]第113号)。
●主要工程は自社で行う事(主要工程を外注する事は禁止されている)
●外注者、外注先共に税関監督下におかれる事(双方、加工貿易許可が要る)。

10.不良品・端材・副産物等
加工貿易に際して生じる不良品・端材、副産物等も保税品であり、自由に処分する事はできない。
「加工貿易の端材・余剰原材料・副産物・不良品・被災貨物に関する管理弁法(海関総署令[2004]第111号)」に基づく対応は以下の通り。

(1)用語の定義
●端材
生産加工の過程で発生する、合理的なクズ・切れ端等で、輸出製品の加工に使用する事が出来ない状況にあるもの。
●余剰原材料
加工に引き続き使用する事ができる原材料。
●不良品
欠陥等の状況により、契約に基づいて輸出をする事が出来ない完成品・仕掛品。
●副産物
生産加工の過程で発生した、主製品(輸出契約に基づく製品)以外の製品。
●被災貨物
不可抗力、若しくは税関が正当と認める理由によって、破損・消滅した、原材料・仕掛品・製品。

(2)処分の原則と手続
<原則>
加工貿易に於いて発生する、端材・余剰原材料・不良品・副産物・被災貨物は、税関監督貨物であり、これらを中国内で販売するには、税関・その他の許可を取得した上で、税関査定内容(品目・分類)に基づく輸入許可証の取得・提出が必要となる。

<処分する場合の手続>
端材等を国内販売するに当たっての手続、及び納税(関税・増値税・消費税)方法は以下の通り。
●端材
手続:税関の許可により国内販売可能(商務部主管部門の審査不要)。
納税:国内販売に当たり、税関の査定価額・税率分類に基づいた納税が必要。
但し、延滞金利の徴収は免除。
●余剰原材料
手続:転廠を行う場合は、転廠手続に基づく必要あり。
余剰原材料を国内販売する場合は、「当該余剰原材料が、加工貿易契約に基づいて輸入した原材料総額の3%以内、且つ総額が1万元以下の場合」は、商務主管部門の審査は不要(税関審査のみで対応可能)。これを超過する場合は、商務部主管部門・税関双方の審査・許可が必要。
納税:国内販売に当たっては、規定に基づく納税及び延滞金利の支払い双方が必要。
●不良品
国内販売を行う場合は、その対応する原材料の価格に基づいて課税が行なわれる。
販売に当たっての手続は、余剰原材料の扱いに準じる。
● 副産物
手続:国内販売を行う場合は、商務部主管部門及び税関の審査・許可が必要。
納税:国内販売に当たっては、副産物の評価額・分類に基づいて、税金(関税・増値税等)及び延滞金利が課税される。
●被災貨物
手続:保税貨物が災害にあった場合は、直ちに所管税簡に報告し、税関の調査を受ける必要がある。
納税:不可抗力により消滅したもの、若しくは使用価値を失ったものは、税関は免税で核鎖手続を行う。
但し、別の用途に再利用可能なものは、税関の査定価格、及びそれに対応する原材料の税率により課税した上で、延滞金利を徴収する。
不可抗力でない場合は、商務部主管部門の意見・その他の証明書類により、正当な理由である事を確認し、税金及び延滞利息を徴収した上で核鎖手続を行う。

11.珠江デルタ式来料加工廠に対する見なし課税
珠江デルタ式来料加工工場では、企業所得税が徴収されないケースが多かったが、2003年末より課税強化が図られ、見なし課税方式による課税が行われている。
⇒ 東莞・深センの地方税務局は、2003~2004年にかけて、地方通達を公布している。

課税所得の算定方式は、実質所得課税、若しくは推定利益課税方式となるが、実務上は殆どの場合において、以下の様な推定利益課税が適用される。

収入総額に対して見做し利益率を乗じる方式
収入総額(加工賃・その他の収入)×見做し利益率=課税所得

経費をベースにグロスアップする方式
経費総額÷(1-見做し利益率)=見做し収入総額
収入総額×見做し利益率=課税所得

見做し利益率は地域によって違うが、総じて5~10%の範囲で制定されている。
又、深セン・東莞等は沿海開放区、その他の開放区に指定されているが、来料加工工場は、登記上内資企業であるため、外資企業の優遇税率(15~27%)は適用されない。
⇒ 33%の企業所得税率が適用される。

B.応用編

1.転廠に関する外貨決済

(1)転廠に関する外貨管理規定。
●深加工結転(転廠)に関する外貨決済と核鎖に関する手続規定
匯発(1999)78号・国家外貨管理局1999年3月15日施行
●国家外貨管理局・税関総局による、深加工結転に関する外貨決済と核鎖管理を、より一層強化する問題に関する通知
匯発[2001]64号・国家外貨管理局2001年3月27日施行

(2)転廠の形態と送金手続
転廠の形態は、以下の4つに分類できる。
●来料加工企業から進料加工企業への転廠(来料転進料)
●進料加工企業から進料加工企業への転廠(進料転進料)
●進料加工企業から来料加工企業への転廠(進料転来料)
●来料加工企業から来料加工企業への転廠(来料転来料)

この内、来料転来料の場合は対外送金が伴わないが、進料が絡むその他の3形態は、転廠に際して外貨決済が必要となる。それに際しての、手続・必要書類は、次の通り規定されている。

1)来料加工企業から進料加工企業への転廠(来料転進料)
この形態の場合は、製品受入側の企業(進料加工企業)が、貨物代金を対外送金する事になる。
<必要書類>
●積荷地が「中華人民共和国」、貿易方式が「進料深加工」と記載され、税関の検査・認定を受けた輸入通関証明(進口報関単)の正本。
●目的地が「中華人民共和国」、貿易方式が「来料結転」と記載され、税関の検査・認定を受けた、転出企業(来料加工企業)の輸出通関証明(出口報関単)のコピー。
●転廠契約書(転廠合同)
●輸入代金対外支払照合書(進口付匯核鎖単)

2)進料加工企業から進料加工企業への転廠(進料転進料)
この形態の場合は、製品受入側の企業が、貨物代金を対外送金する、若しくは、国内の転出企業に代金を支払う。
国内で代金決済を行う場合(転入企業から転出企業に代金を支払う場合)、外貨・人民元の双方の支払が可能であるが、外貨の場合と人民元の場合では、決済を行うに当たって必要となる書類・手続が変わってくる。

<外貨による決済(対外決済・国内決済)>
外貨による決済を行う場合は、対外決済であれ、国内決済であれ、転入企業が、以下の書類を銀行に提示して、外貨送金手続を取る。
●積荷地が「中華人民共和国」、貿易方式が「進料深加工」と記載され、税関の検査・認定を受けた輸入通関証明(進口報関単)の正本。
●目的地が「中華人民共和国」、貿易方式が「進料深加工」と記載され、税関の検査・認定を受けた、転出企業(来料加工企業)の輸出通関証明(出口報関単)のコピー。
●転出企業が押印し、税関が確認した輸出代金回収照合書(出口収匯核鎖単)コピー。
●転廠契約書(転廠合同)
●輸入代金対外支払照合書(進口付匯核鎖単)

<人民元による決済(国内決済)>
人民元決済を行う場合は、先ず、転出企業が、以下の書類を所管の外貨管理管理局に提出して、外貨回収義務の解除手続を行う。
転出企業側で、外貨回収義務の解除が許可されると、オンラインデータ処理により、転入企業の外貨支払義務が取り消される。
●目的地が「中華人民共和国」、貿易方式が「進料深加工」と記載され、税関の検査・認定を受けた、転出企業(来料加工企業)の輸出通関証明(出口報関単)の正本。
●転出企業が押印し、税関が確認した輸出代金回収照合書(出口収匯核鎖単)の正本。
●輸入代金対外支払照合書(進口付匯核鎖単)のコピー
 
3)進料加工企業から来料加工企業への転廠(進料転来料)
この形態については、関連規定に手続明細が記載されていない。
これは、対外決済に関連する進料加工企業が、先ず、通常の輸入代金決済として対外送金を行い、転廠後、外貨を(国外から)回収する形態であるため、「転廠に伴う対外送金」という手続が生じず、通常の核鎖手続のみが適用される為。
関連規定には、転出企業(進料加工企業)は、通常の進料加工同様に、代金全額を回収する事が要請されている。

4)来料加工企業から来料加工企業への転廠(来料転来料)
来料加工は、代金決済が伴わない形態であるため、来料転来料の転廠に於いて、対外決済を行う事は禁止されている。


2.加工貿易形態に関する増値税課税と転廠に伴う増値税

(1)転廠に関する増値税課税の考え方
転廠は加工貿易企業間の保税形態の貨物移送制度。
規定上、関税の留保措置が取られる事は明確であるが、増値税については二つの考え方が存在する。
●転廠を国内取引と見なして増値税の課税対象取引とする考え方
●転廠は貿易取引に準じたものであり、増値税課税対象外という考え方基本的には、増値税は課税対象取引と考えるのが主流。但し、転廠事例が過去から多い珠江デルタでは、「不徴収・不還付」という考えかたが取られており、転廠に際して増値税は課税されない。
⇒ 但し、転廠に際して、増値税を支払う事があれば、その仕入れ税額は控除・還付が認められず、コストとして処理する必要がある。

(2)遠隔地の転廠の問題点
この様な課税方式の違いにより、不測の税コスト発生が生じる可能性があるので、省を跨いだ転廠は注意を要する。

(例)
●華東地域は一般に転廠は増値税の課税対象取引。
●珠江デルタは不徴収・不還付。
よって、華東から珠江デルタに転廠を行う場合、華東の企業(転出企業)は、珠江デルタの企業(転入企業)より、増値税を徴収する必要がある。一方、珠江デルタの企業では、不徴収・不還付の原則から、支払った税額の控除・還付が認められない。

3.保税区企業の加工貿易関与

(1)来料加工
保税区企業が、区外企業に来料加工を委託する事は、「保税区税関監督管理規定」に基づき禁止されている。
⇒ 規定上、保税区企業が区外企業に加工委託を行う場合は、以下の条件に合致する事が要求されているため。
●区内に於いて生産場所を有しており、既に生産加工業務を開始している事。
●区外企業に加工委託を行う取引は、加工の主要工程は区内で行われる事。
結果として、保税区企業が区外企業に委託できるのは、外注加工(一部の補助的工程のみを他企業に委託する形式)のみであり、来料加工の委託者にはなれない。

(2)進料加工
進料加工は、売買契約形態の取引(区外企業が行う部材輸入・製品輸出が一対となった契約に関して保税措置の適用を受ける形式)のため、理論上は、(加工委託ではなく売買取引なので)対応可能と判断する保税区が有る(保税区により対応が違う)。但し、増値税の二重課税が生じる為、取引実例は極めて少ない。

(3)加工貿易品の保税区搬入
国内販売のための経由地(香港の代替)として、保税区は活用できるか。
結論:進料加工品は二重課税に繋がる為避けるべき。
来料加工品も実例はあるが、不透明なケースが多い。加工貿易貨物を保税区に搬入するのは避けた方が無難(一番問題がないのは香港活用。次は物流園区)。因みに、輸出監管倉庫・保税物流中心は、搬入後、実際の輸出が求められる為、やはり使えない。

●来料加工品の搬入
来料加工取引は、増値税の免税取引であるため、保税区を経由した国内販売(再輸入)を行っても、理論上は、増値税課税上の問題は生じない。
⇒ 来料加工に関してこの様なオペレーションを行った場合、加工貿易貨物が保税区に搬入されるまでは、(来料加工が免税取引である為)増値税の課税は行われない。
その上で、貨物が再度、(国内販売の為に)中国の区外地域に搬出される段階で、輸入通関を行う国内バイヤーが、完成品に対して輸入関税・増値税等を納税する事となる。
    
尚、上述の通り、保税区企業は来料加工の加工委託者にはなれないので、来料加工品が保税区に搬入される場合、保税区で貨物を引き取るのは、来料加工の委託者である外国企業となる(保税区企業は来料加工の委託者とはなれない)。

●進料加工品の搬入
進料加工の場合は、「免税・控除・還付」方式に基づいて増値税を納税する事が義務付けられる。
「免税・控除・還付」方式とは、輸入段階の課税と輸出還付を、輸出時に纏めて行う方式だが、保税区に貨物を搬入する場合は、輸出還付の適用がないので、この課税・還付方式は採用できない(国内販売に準じた課税が行われる)。
⇒ 区内に貨物を搬入しても増値税輸出還付が実施されない点が、物流園区・輸出加工区との違い。この点、保税区は不利。

一方、(保税区で貨物を引き取る)保税区企業・外国企業は、増値税を加工貿易企業に支払った上で貨物を引き取る事になるが、貨物を国外に輸出しない為、輸出還付請求ができない(保税区から実際に貨物を輸出したときに輸出還付申請できる事となっている)。更に、(中国内)区外のバイヤー企業は、保税区から貨物を引き取る段階(輸入段階)で、関税・増値税等を支払う必要があるので、結果として、完全な二重課税が生じる。

<来料加工契約書サンプル>

協議書

甲方:
乙方:
商務代行者 :○○区経済発展公司
双方は中華人民共和国の法律と関連規定を遵守する事を前提に、平等互恵の原則に基づき、    の委託加工に関する協議を行い、以下の通り合意に到った。

一、 双方の責任
甲方の責任:
1. 甲方は    平方メートルの工場、    平方メートルの土地、及び労働者    名を提供し、協議の有効期限内乙方に代わり上記の製品を加工、生産する。加工された製品は乙方に引き渡された後、香港若しくはその他の国家に輸出される。
2. 甲方は現存の水道と電気の設備を支給し加工、生産に使用する。水道、電気施設を増設する場合は、その施設の取り付け費用は乙方が負担する。
3. 乙方に協力して委託加工業務に関わる輸出入の手続を行う。
4. 工場長、財務会計、倉庫管理人を派遣し、工場管理と財務管理の責任を負う。
乙方の責任:
1、上記の製品の生産に必要な設備を無償で提供し(詳細は明細書を参照)、甲方の工場に搬入する。設備提供額は約    ドルとする。設備の所有権は乙方が有し、協議期限終了後、乙方が加工を継続しない場合は、すべての機械設備を香港あるいは他国に持ち出すことができる。
2、上記の製品の加工、生産に必要な原料、副資材、包装材を無償で提供する。具体的な数量と規格は生産協議書に別途明記する。
3、工員の能力が不足し、教育の効果が現れない場合は、乙方は甲方に人員の交換を要請する事ができる。但し、労働者を解雇する事は出来ない。
4、乙方に無償で支給された機械設備、原材料、副資材、包装材などの監視、管理に必要な費用は乙方が負担するものとする。

二、 加工数量:
1年目の委託加工の数量は   セット、甲方に支払う加工代は約   ドルとする。2年目からは委託加工の数量は前年を上回る必要がある。具体的な数量、規格については生産協議書に明記するものとする。

三、 加工代の決定原則と加工賃:
1. 試生産の期限(育成訓練)は    とする。試生産期限内、労働者1人当りの賃金は暫定的に、    ドルとする。(1人当りの毎月の労働日は25.5日、毎日の労働時間は8時間とする。納期が迫っている場合、乙方は工員を残業させる事が出来るが、必ず甲方の承諾を得なければならない。労働者の残業代には通常の工賃以外に、別に残業手当を支給しなければならない。
2. 試 生産が終わった後、生産個数に応じて報酬を計算する方法を採用する。互恵の原則に基づいて、甲方、乙方共に加工品の品種、規格、デザイン、工程の何度に基 づき加工価格を決定し、その加工代をロットごとの協議に明記しなければならない。労働者の合理的な収入を確保するために、毎月1人当たりの加工賃は平均    ドル以下となってはならない。もし    ドル以下になる場合、乙方はこの数字に基づき甲方労働者の加工賃を計算しなければならない)。物価指数の上昇に従って、労働者の加工賃も2年に1回調整するものとする。
3. 甲方の工場で使用された上水代、電気代は、乙方が支払うものとする。
4. 甲方の提供した工房や、生産に使われた土地の利用代は毎月    ドルの固定料金で、中国銀行を通じて甲方に送金する。物価指数の上昇に従って、固定料金は2年に1回調整するものとする。
5. 乙方が支払うべき加工賃は、方法を問わず、直接労働者に人民元を支払うことは禁止する。商務部門の指定した銀行の口座を通じて(口座番号 )甲方に送金し、甲方は国家の関連規定に基づいてそれを取り扱う。

四、損耗率:
1. 工場の試生産期間内の製品の損耗については、精算するものとする。
2. 工場の試生産期間満了後の製品損耗率は、双方の協議により取り決め、又、生産協議書に具体的に明記する。

五、材料の支給と製品の納期:
乙方は協議で決められた加工量に基づいて、毎月不足の無い原材料、副資材、包装材を提供しなくてはならない。甲方の工場の正常な生産を保証するために、乙方はロット毎の生産が開始する   日前に、全ての原材料、副資材、包装材を甲方の工場に搬入する必要がある。不可抗力による場合を除き、乙方の原料提供の不足により、甲方の工場の稼働日数が1ヶ月  日に満たない場合、乙方は工場に在籍する労働者数に基づき、待機日数につき一人当たり  ドルの生活補助手当を甲方に支給しなくてはならない。
2. 甲 方の工場は、協議に定められた納期、品質、数量に基づいて乙方に納品する必要がある。不可抗力による場合を除き、協議に定められた納期、品質、数量の製品 を納入できないために、乙方が蒙った経済損失は、甲方が弁償責任を負うものとする。具体的な弁償金額は、契約書に定める。
3. 乙 方が提供する機械、換気、照明などの設備と原材料、副資材、包装材は、乙方が工場まで搬入し、甲方の工場において、甲方・乙方双方が検品し引き渡す。甲方 の工場で加工された製品は、甲方の工場で、乙方の検品後搬出する。搬出された製品に数量の不足、返品の必要がある場合でも、甲方はその責任を負わない。乙 方が返品・再加工を要求する場合、その費用は乙方が負担するものとする。

六、為替の決済方法:
甲方の工場に対する加工賃の支払いは、毎月、D/P、又は手形により期限通りに送金・決済するものとする。甲方の工場はから○○市××区外経発展総公司と商務代理部門を通じて指定された在香港銀行である     銀行(口座番号          )で処理を行う。乙方が期限後15日を超えて甲方に対する送金を行わない場合、超過日数によって、香港銀行の実勢金利を加算して甲方に支払いを行わなくてはならない。乙方が30日を超えても送金しない場合、甲方は製品の出荷停止、あるいはその他の措置を取る権限を有する。

七、 運送と保険
1. 乙方から支給された機械、設備、原材料、副資材、包装材及び甲方の工場で加工された既製品の運送などの費用は皆すべて乙方が負担する。
2. 原材料、副資材、包装材、既製品搬出及び乙方の工場に設置されている機械、設備、保存されている原料、副資材、包装材、工房、寮、労働者などに乙方は中国人民保険会社○○支店の保険を付保するものとする。

八、技術の交流
乙方は機械、設備を甲方の工場に搬入した後、速や かに人員を派遣して設置を行わなくてはならない。甲方は派遣された人員に協力するものとする。試生産開始後乙方は技術者を派遣して、甲方の工場の労働者が 生産技術を習得し、正常な生産が行われるようになるまで技術教育を行う必要がある。乙方から派遣された技術者の給料、その他のすべての費用は、乙方が負担 する。甲方は乙方に派遣された技術者の生活面での便宜を図る。

九、仲裁:
甲方と乙方の双方は協議を履行する間に、この協議 に対して問題が生じた場合、友好的に話し合い、協議の上解決しなければならない。協議により解決できない場合は、中国国際貿易促進委員会対外経済貿易仲裁 委員会○○分会の仲裁を受ける。そこで行われた仲裁裁決は最終決定であり、双方に対して同等の拘束力を持つ。仲裁費用は敗訴側が負担する。

十、合意の期限:
この協議は批准されおよび双方が署名した後に効力が発生する。有効期間は  年、即ち  年  月 日から  年  月  日迄である。協議期間満了前に、当該協議書を中止、若しくは延長する場合は、3ヶ 月前までに相手に通知する必要がある。この場合、双方の協議の上、中止若しくは延長を決定した上で、当該協議書の批准を行った関係部門の許可を取得した 後、これを行う事が出来る。中止を申し出た方は、相手側が蒙る損失に対して金銭上の賠償責任を負う。賠償方法は、協議中止前の半年の月平均加工賃を計算 ベースにして相手に2月分加工賃を支払う事とする。
協議期限満了後、不動産(工房、寮など)・乙側から有償で支給した機械設備は甲方の資産となり、乙方が無償で支給した資産(機械、車、換気設備など)は乙方の資産となるが、処分に当たっては税関の関連規定に従うものとする。
この協議が効力を有した後2ヶ月の間に、一方が協議や定款を履行しない場合、他方は協議の中止を申し出ることが出来る。原批准部門の許可を取得した後に、契約を破棄する事ができる。
この協議が効力を有した後、乙方が半年間連続して生産を行わない場合、甲方は契約の中止を申し出ることが出来る。原批准審議機関の許可を取得した後中止する事が出来るが、それによって生じた経済損害は、乙方が既に提供した機械設備、若しくは原材料で賠償する。
本協議書が一式8部で、甲側、乙側、商務代理部門がそれぞれ1部持ち、それは皆同等の効力を有する。
この協議に記載されていない事項がある場合、双方は協議の上で改定若しくは補充する事ができる。この補充契約は原批准審議機関の認可を得た上で有効となる。

甲側:
代表:
住所:
電話:
乙側:
代表:
住所:
電話:
商務代理部門:
代表:
住所:
電話:

無償提供設備明細書

経営部門:
設備の総金額:
加工貿易契約(協議)号:

貨幣:米ドル

桁番

商品番号

商品名称

規格タイプ

数量

単位

単価

総価格

原産国

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

12

13

14

15

16

17

18

19

20

21

22

23

24

25

26

<進料加工契約書サンプル>

材料輸入契約書

契約当事者:
甲方:          有限公司
住所:
E-mail:
FAX:
乙方:          有限公司
住所:
E-mail:
FAX:

双方は材料輸入業務の実施につき、友好的協議を経て、ここにこの契約を締結する。

第1条 目 的
甲は、乙に     (原材料)を引き渡し、乙は、甲へ原材料の代金支払いを行う。

第2条 材料詳細
商品コード:
商品名称及び規格:
数 量:
単 位:
単 価:
総 額:
損耗率:

第3条 支払方法
乙は、甲に信用状を開設し、     以内に代金を支払う。

第4条 運送および保険
甲が乙に引き渡す原材料の運賃および保険料は、乙が負担する。

第5条 不可抗力
戦争および重大な自然災害、ならびに双方が同意するその他の不可抗力により生じた事故により、一方が契約を履行できない場合には、当該一方はすみやか に自己を相手方に通知し、かつ相手方と契約履行期限延長に協議をしなければならない。これにより生じた損失に対して、相手方は賠償請求できない。

第6条 仲裁
この契約から、またはこの契約に関して生じたあらゆる紛争は、深セン市国際経済貿易仲裁委員会に申し立て、仲裁申立時の該会の現行の有効な仲裁規則に より仲裁を行い、仲裁判断は終局的なものとし、双方に対して拘束力をもつ。仲裁は、中華人民共和国の法律を適用する。

第7条 契約有効期間
この契約は調印の日から発効する。

第8条 契約本文と文字
この契約は製本一式  通とし、甲乙双方は各一通を所持し、副本  通を     などの機関に届ける。
この契約は、中国語と日本語の両国語で書かれ、両国語は同等の効力を有する。

第9条 契約条項の変更
この契約に取決めのない事項、または特殊な事情により内容の補充、変更する場合、双方は必ず協議一致しなければならない。

甲:          有限公司(押印)
代表:             (署名)
乙:          有限公司(押印)
代表:             (署名)

契約締結日:
契約締結地:

<進料加工契約書サンプル>

完成品輸出契約書

契約当事者:
甲方:          有限公司
住所:
E-mail:
FAX:
乙方:          有限公司
住所:
E-mail:
FAX:

双方は完成品輸出業務の実施につき、友好的協議を経て、ここにこの契約を締結する。

第1条 目 的
乙は、甲に完成品を引き渡し、甲は、乙へ完成品の代金支払いを行う。

第2条 完成品詳細
商品コード:
商品名称及び規格:
数 量:
単 位:
単 価:
総 額:
加工期限:
包装基準:

第3条 引 渡
乙は、本契約で規定された期日及び数量を     税関(   港湾経由)まで運搬し、引き渡す責任を負う。

第4条 支払方法
甲は、乙に決済後     以内に代金を支払う。

第5条 運送および保険
乙が甲に引き渡す完成品の運賃および保険料は、甲が負担する。

第6条 不可抗力
戦争および重大な自然災害、ならびに双方が同意するその他の不可抗力により生じた事故により、一方が契約を履行できない場合には、当該一方はすみやか に自己を相手方に通知し、かつ相手方と契約履行期限延長に協議をしなければならない。これにより生じた損失に対して、相手方は賠償請求できない。

第7条 仲裁
この契約から、またはこの契約に関して生じたあらゆる紛争は、中国国際経済貿易仲裁委員会に申し立て、仲裁申立時の該会の現行の有効な仲裁規則により 仲裁を行い、仲裁判断は終局的なものとし、双方に対して拘束力をもつ。仲裁は、中華人民共和国の法律を適用する。

第8条 契約有効期間
この契約は調印の日から発効する。

第9条 契約本文と文字
この契約は製本一式  通とし、甲乙双方は各一通を所持し、副本  通を     などの機関に届ける。
この契約は、中国語と日本語の両国語で書かれ、両国語は同等の効力を有する。

第10条 契約条項の変更
この契約に取決めのない事項、または特殊な事情により内容の補充、変更する場合、双方は必ず協議一致しなければならない。

甲:          有限公司(押印)
代表:              (署名)
乙:          有限公司(押印)
代表:              (署名)

契約締結日:               
契約締結地:               

転廠の手続
 
1.主管税関に対する転廠計画の申告(転出企業・転入企業の双方)
(1)提出書類
加工貿易保税貨物深加工結転申請表
(注意点)
一つの申請表は、1つの転出企業・1つの転入企業に対応する。
一つの申請表は、転出企業の1冊の「手帳」に対応。但し、転入企業側の複数の手帳に対応しても良い。
(転廠貨物発送リストの記載事項)
・「保税転廠貨物」という文字
・転出・転入企業の名称、商品名、規格、数量、発送日時、リスト番号
尚、毎回の荷送り時には、主管税関に届け出ている「企業結転専用印」を押印
 
(2)申請表の手続
● 転出企業
a. 申請表に必要事項を記載の上、所管税関に届け出
b.申請書の1枚目は税関が保管。残り3枚は、転出企業に返却され、転入企業に送付される。
● 転入企業
a.転入企業は「転出地の税関の届け出日時から20日以内」に、当該3枚の用紙に必要事項を記載した上で、転入地の税関に届け出る。
b.転入地の税関は、申請表の2枚目を保管。3枚目・4枚目を返却し、これによって、発送登記・通関手続が行われる。
 
2.貨物の輸送
(1) 申請表の内容に基づいて商品発送を行なう。発送記録を、「保税貨物の転廠状況登記表」に行い、企業の転廠専用印を押印する。
 
3.転廠通関手続
● 転入企業
転入企業は、「申請表」・「登記表」に基づいて、転入地税関で転廠輸入手続を行い、輸入通関の翌営業日に通関状況を転出企業に通知する。
● 転出企業
転出企業は、転入企業からの連絡後、10日以内に「申請表」・「登記表」に基づき、転出地の税関で転廠輸出通関手続を行なう。転廠通関期限は、商品発送後、90日以内となる。尚、転入・転出の申告価格は、実際の取引価格とする。
 
珠江デルタ式来料加工から現地法人への組織変更
 
1.転換の理由
● 国内販売(人民元取引)の開始
● 国内調達比率の引き上げ
● 労働許可の取得と個人所得税の徴税管理
● 来料加工に関わる課税面での強化
● 乱収費の回避と透明性の向上
● 香港の会社に対する日本のタックスヘイブン対策課税の動き
 
2.形態変更の手続のポイントと注意点
(1)来料加工契約の終了条件
来料加工契約に、撤退条件が取り決められているか。
来料加工契約終了時の、償提供設備(中国語:不作価設備)の返却義務や、中国企業が有償で取得した設備の所有権の帰属が明記されているか。
 
(2)関係機関との交渉・許可の取得
来料加工契約の終了と外商投資企業の新設に関しては、対外経済貿易部門・税関を始めとする、関係機関の認可が必要となる。
 
(3)来料加工工場と新設法人が並存する場合
工場の場所、管理部門人員の兼務に関しては注意の必要有り。
 
(4)無償提供設備の扱い
以下の選択肢がある。
● 国外に返却後、中国に再輸入し、新設の現地法人に対して現物出資・売却する。
● 中国で税関の許可を受けた上で、新設の現地法人に売却する。
当該設備が、税関の監督管理期間(5年)を経過していない場合は、税関の売却許可を取得した場合でも、関税・増値税を納税した上で売却する必要有り(但し、減価償却後の価格をベースとする)。
 
(5)中古設備輸入手続
来料加工の無償提供設備を、税関の許可を経て国内で継続使用する場合でも、若しくは、国外に返送して、中国に再輸出する場合でも、中古設備輸入の手続を行う必要がある。
 
(6)不動産の移管
通常の来料加工の場合は、取引内容が、中国企業に対する純粋な加工委託である為、来料加工契約の終了に際して、原則としては不動産(土地使用権・建物)の移管という問題は生じない。
但し、珠江デルタ式来料加工の場合は、来料加工工場が、実質的には外国企業の管理されるSPCである為、来料加工終了に際して、不動産の移管を始めとする資産の処分を検討する必要が生じる。
珠江デルタ式来料加工工場の不動産は、通常は賃貸借形式であるが、加工委託者(香港法人)が、不動産を保有し、無償貸与している場合も有る。
⇒ この様な場合は、対応が少々難しい。
 
<対応の選択肢>
(1)新設現地法人に、不動産を保有している外国企業が賃貸する
(対外送金手続)
賃貸契約書を国土資源局に登記⇒登記証と納税証明書(企業所得税10%・営業税5%の源泉徴収)を銀行に提示⇒送金
(注意点)
・制度的には送金可能ながら、金額が高額な場合や、地方の銀行・外貨管理局が制度に不案内な場合など、送金が認められない事がある。
・元々保有している土地が、国土資源局に登記されていない場合は、賃貸・譲渡代金の対外送金が認められない。
(2)新設現地法人に、不動産を現物出資する
(3)第三者、若しくは新設現地法人に不動産を売却する
 
現物出資、売却の場合の課税は以下の通り。
 
中国での課税
1)契税(購入者負担)
不動産の名義変更に伴う税金で、譲渡額の1.5~6%(地方により異なる)。
2)営業税(販売者負担)
譲渡額に対して、5%が課税される。
⇒ 但し、営業税に関する若干の政策問題の通知(財政部・国家税務総局:財税[2003]16号)により、現時点では、営業税の課税対象額は「販売収入-不動産取得原価」に減免されている。現物出資の場合は免除。
3)企業所得税(販売者負担)
不動産の購入額と譲渡額の差額に対して課税される。
非居住者の場合は、譲渡益に対して10%が源泉徴収される。
4)土地増値税(販売者負担)
不動産の購入額と譲渡益(値上がり益)に対して課税される。
値上がり益に対して、30-60%の超過累進課税。
 
(7)従業員の移管
(珠江デルタ式)来料加工工場の従業員を、外商投資企業に移管する場合は、一旦、来料加工工場との間の雇用契約を解除し、外商投資企業で再雇用する必要がある。
● 雇用者側の都合による解雇の場合、労働法に基づけば、30日以上前の事前通義務有り。
● その他、経済補償金の支払が義務
 
(8)備品等の移管
来料加工工場の、非保税物品(動産)は、中国内で販売可能。
物品の販売に際しては、増値税が課税されるが、自己使用した物品の販売に付いては、以下の通りの扱いになる。
● 自己使用した自動車・バイク・ヨットを販売した収入に対しては、6%の税率で増値税を徴収。
その他の自己使用設備に付いては、暫定的に増値税が免除される(財税字[1994]026号)。
● 増値税が免除される自己使用固定資産に付いては、以下の全ての条件を満たさなくてはならない(国税函[1995]288号)。
a. 企業の固定資産台帳に記帳されている事
b. 企業がその固定資産について管理を行い、確実に、使用した事が証明できる事。
c. 販売価格が、購入時の価格を超えない事。
以上の条件の何れかを満たさない場合は、6%の税率が適用。
(2006年9月掲載・1,6443字)

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