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<連載>中国ビジネス入門ABC講座 第2回 高齢化し増え続ける巨大人口国家

中国ビジネスレポート 投資環境
筧 武雄

筧 武雄

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2008年2月14日

記事概要

 20年以上も続いている人口抑制「一人っ子政策」から来る急速な人口の高齢化である。中国統計局によれば、04年末の60歳以上の人口は1億4、300万人で、すでに日本の総人口を上回っており、同世代世界人口の5分の1を占めている。

 中国では以前から10年ごとに全国的な統一国勢調査を実施している。

前回は2000年に実施された第5次センサスが公式の最新結果にあたり、当時の結果を見ると、漢民族を含めて中国には公称56民族(実際にはもっと多いと言われる)がおり、2000年時点の総人口は12億6,583万人となっている。全体の94%を漢民族が占め、全国土の3分の1の地域に居住している。残り3分の1は新疆ウイグル自治区、残り3分の1はチベットに6%の人口が居住しており、この居住分布は明朝時代からあまり変化していない。すなわち、漢民族居住地域の人口密度、特に沿海都市部の人口密度が時代とともに非常に高くなっているのである。大陸本土以外では香港マカオに722万人、台湾に2,228万人の人口がおり、以上を合計すれば、2000年の公式統計では世界中に合計12億9,533万人の中国人がいることになる。

2000年統計を前回の1990年の同調査結果と比較すると、80年代から継続している「一人っ子政策」にもかかわらず、中国の人口は90年代に毎年平均1千万人が増加した計算になる。1980年代から中国政府は人口抑制のため「一人っ子」政策を実施しており、政府の眼を逃れて農村部には、戸籍も無く、このような統計にもカウントされない「黒孩子」と呼ばれる隠し子がかなりの数存在していると言われる。もちろん「黒孩子」に戸籍はなくても、子供はうまれる。その子孫たちも自動的に「黒孩子」である。

 2005年に入り、国家統計局は中間統計を発表し、中国の総人口が初めて13億人を突破し、13億756万人となったことを発表した。これに「黒孩子」を加算すれば、すでに15億人を突破したという説もある。

 政府の人口抑制にもかかわらず、このように中国の人口は増える一方で、もし経済成長が継続しなければ、失業は増え、国民経済は貧しくなる一方である。このような点からも中国政府が持続的高度経済成長目標を掲げざるを得ない舞台裏事情を窺い知ることができるだろう。

 05年の人口内訳は都市部に5億3,381万人、農村部に7億4,544万人と、公式統計上でも農村部から都市部へ大量の人口移動が進んでいることを示している。これに戸籍の無い流動人口、出稼ぎ農民を加味すれば、今や中国人の過半数は都市部に集中しているかもしれない。いずれにせよ、ここ数年における都市への人口集中が都市の治安を悪化させ、失業を生み出し、社会保険、財政を圧迫していることは間違いない。中国の戸籍制度が、農民戸籍の都市移転を原則として認めない舞台裏事情を窺い知ることができるだろう。

また、男女比を見ると男性6億7,375万人、女性6億3,381万人と男性が3千万人ほど過剰である。「一人っ子政策」のために、特に農村部では女子が生まれても出生届けを出さない傾向があることは以前から言われている。農村部に行けば、今でも「女子を愛育しよう」というスローガンをあちこちで見かけることができる。「一人っ子政策」が始まった1980年代半ばに生まれた子供たちが、そろそろ結婚適齢期を迎えている。しかし、男女ともに一人っ子であるために、親の期待がともに大きく、なかなか結婚が難しくなっているという話をよく聞く。さらに住宅事情の悪い都市部では、結婚の条件として新郎が新居を準備することが要求されるため、マンション不動産バブル高騰とともに、新郎側の経済的負担が巨額となり、これも結婚を遅らせる原因になっているという。晩婚政策が、さらなる晩婚を生み、ますます子供の数が減っているのではないだろうか。

過去の人口増加ペースに目を転じると、公式統計で総人口が11億人を突破したのが89年→12億人を突破したのが6年後の95年→そして13億人を突破したのがそれから10年後の05年と、人口増加のペースはわずかながら減少ペースにあり、中国人学者の中には、2025年前後に中国の総人口は15億人前後のピークを迎え、その後は減り始めるものと期待する声もあるようだ。しかし、万一そのまま増え続けることがあれば、今世紀半ばには軽く20億人を突破することになる。胡錦涛政権は2010年にGDPを2000年の4倍に増加させ、GDP総額で日本を追い越す政策目標を持っている。さらに今世紀半ばには米国経済規模に到達して世界の超大国となる政策目標を掲げている。もし、中国がそれだけの人口増加と経済成長を2050年に達成した場合の中国の資源・エネルギー問題、食糧問題、環境問題、温室効果ガスと地球温暖化への影響などを考えれば、これは他人事ではない。

さらにもうひとつ、容易に予測できる問題は、20年以上も続いている人口抑制「一人っ子政策」から来る急速な人口の高齢化である。中国統計局によれば、04年末の60歳以上の人口は1億4、300万人で、すでに日本の総人口を上回っており、同世代世界人口の5分の1を占めている。中国では70歳は文字通り「古希」(古来から稀な存在)で、中国人の平均寿命は60歳前後と言われている。現在のペースで高齢化が進めば、60歳以上の「高齢者」数は2014年に2億人、2026年に3億人、2037年には4億人を超える見込と言われる。いずれにせよ、「一人っ子政策」をとり続けるかぎり、高齢化社会の到来は確実にやってくる結果であり、高齢化に伴う社会的活力の減少、年金・社会保険の財源問題、アルツハイマー症や糖尿病など成人病の増加と医療問題、一人っ子のわがまま世代による社会道徳の後退、社会全体の年齢構成バランスの崩壊、そして減少する若者世代が高齢者層をどう経済的に支えていくのか、等々といった高齢化社会の到来が予想される。

ビジネス面から言えば、これからの中国では高齢者向けビジネスの機会、特に高齢者富裕層マーケット、一人っ子の贅沢品マーケットの拡大が考えられるだろう。(2008年2月記 2,341字)

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