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ログイン2008年5月16日
日本と中国、お互いにどちらも同じ漢字を使う同一の「漢字文化圏」という誤解が昔からある。しかし、その一方で笑い話にもなってしまうほどの「同音(字)異義語」の勘違い、行き違いのエピソードも数え切れない。
日本と中国、お互いにどちらも同じ漢字を使う同一の「漢字文化圏」という誤解が昔からある。しかし、その一方で笑い話にもなってしまうほどの「同音(字)異義語」の勘違い、行き違いのエピソードも数え切れない。
日本に働く中国人ビジネスマン、中国に働く日本人ビジネスマンに、それぞれ日中ビジネス文化の相違点を挙げてもらえば、そのトップによく指摘される相違点のひとつが日本語と中国語が、よく似ていて、実は全然違う言語である、という点である。「日本語は表現が不明瞭で難解、声調が低く、声量が小さい」。それに対して、「中国語は表現が直接的で明瞭、声調が高く、声量が大きい」という。文法を見ても、中国語は英語と同じく動詞の後に目的語が来る。発音面でも、中国語の「日本(riben)」の発音は、日本人にとっては「RICE=米」と「LICE=シラミ」の区別がつかない、いわゆる「そり舌」の「R音」で、中国人には「立本(hben)」としか聞こえない。他方で、漢字の読めない欧米人にとって、中国語の発音も文法も逆に何の障害も無く、一発でOKである。中国語の発音と文法は日本人よりもはるかに欧米人のほうが有利である。ちなみに北京語の方言では、この「R音」が頻繁に多用される。つまり、実は日本語と中国語は、表面の漢字は似ていても、その実際の文法と発音は似ても似つかない別の言語なのである。
実は、問題はそれだけではない。
○空港でお別れの間際に、お世話になった中国人に「帰国したら、たくさん手紙を送ってください」「…え!?」
中国語で「手紙」というのは「ちり紙」、「トイレットペーパー」のことである。「トイレットペーパーをたくさん送ってくれなんて、日本人っていったい?!」と中国人に変な顔をされても仕方がない。中国語で手紙のことは「信」という。
○「この値段は高すぎます。少し安くしてください」「申し出価格は「勉強」します」
このやりとりを聞けば、日本人は価格が下がったと喜びそうだが、中国語で「勉強」とは「無理、不可能を強いる」という意味。この商談はおそらく不成立なのである。
○「今は春節で切符が「緊張」しています」「え?…どういう意味!?駅で何か事件でも発
生しているの?」
中国語で「緊張する」とは「不足している、足りない、余裕が無い」という意味。仕事が忙しいことを「仕事が緊張している」ともよく言う。
○かつて囲中角栄首相が毛沢東主席に「先の戦争では中国国民の皆様に大変な「ご迷惑」をおかけしました」と話して、中国側に意味が通じず、あとで毛沢東主席から中国の古典を漢字の勉強用にとプレゼントされたというエピソードもある。
中国語で「迷惑」とは「相手を惑わせる」という意味である。
「日本が戦争時に中国国民を大変惑わせてしまい、すみませんでした」では、せっかく謝罪してもまったく意味が通じない。
○「この飛行機は10分後に北京空港に「墜落」致します」「え~??!!」…ひと昔は中国民航でこんなアナウンスもよくあった。日本人乗客はビックリしたものだ
中国語の「降落」とは「着陸」という意味。「降落」を間違えて「墜落」と言ってしまったもの。
日中宴会の席上で、中国側貴賓の女性が臨席の男性を紹介して、堂々と「この男性は私の「愛人」です」。日本人は内心で呆れて「まあ中国の女性たちは、なんて大胆なんだ」
…これも笑い話ですが、中国語の「愛人」とは配偶者のこと。しかも、比較的上品な言い方である。ちなみに自分の妻のことは「老婆」と呼ぶ。しかし、相手の奥様に対して、決して「あなたの老婆は…」などと言ってはいけない。「老婆」とは、あくまで親近感を込めた謙遜的表現なのである。
○「子供にこんなにたくさんの荷物を持たせると、転んで怪我しますよ!」「大丈夫、大丈夫」「だから、まだ子供だといってるじゃないですか!」…
中国語で「大丈夫」とは「大男」の意味。ちなみに「丈夫」という中国語は「夫」という意味。
○「まだ時間に余裕がありますから、駅までゆっくり走っていきましょう」「え?!どういう意味ですか」
…中国語で「走る」とは「歩く」という意味。ちなみに日本語の「走る」を中国語では「跑」という。
このような例は数えあげればキリがない。いわば、日本語と中国語の「同音(字)異義語」とも呼ぶべき言葉である。このほか、「火車」=汽車、「汽車」=自動車、「東洋(人)」=日本(人)、「人間」=人と人のあいだ、「検討」=政治的に総括批判する、「整頓」=粛清する、「麻子」=あざ、「浪子」=チンピラ等々がある。
会社の朝礼で、「皆さん、今日は皆さんの日ごろの仕事の進め方を再検討する、職場業務の整理整頓デーとします」などと日本人総経理が話そうものなら、中国人幹部は大騒ぎである。これは、あたかも文化大革命の再来を連想させる言葉である。
逆に、日本語でいう「銭湯」とは、中国語では「お金のスープ」という意味になる。同様に、「宅急便」とは「速達の宅配トイレ」、日本の駐車場によくある「月極空有」という看板は「月影極まりて空にあり」という漢詩の一節にまでなってしまう。
また余談として、日本人の名前によく使われる「畑」、「辻」、「榊」という漢字、あるいは「峠」、「凪」等といった漢字は中国語には存在しない。これらの漢字を中国人は知らず、読むこともできない。つまり日本人が作り出した漢字なのである。
また、当然ながら中国語はすべて表意文字であり、カタカナのような表音文宇が存在しない。したがって、日本語ではカタカナで書く外来語も、中国語では漢字で表記することになる。
では、「熱線(電話)」とは何のことかご存知だろうか?これは「ホットライン(電話)」のことである。「熱」=ホット、「線」=ラインという直訳の造語である。同様に、「白宮」と言えば、それはホワイトハウスのことである。ところが、外来語の漢字化はこの法則がすべてでもない。中国語の外来語には発音をそのまま漢字の当て字にしているパターンもあり、よく新聞の一面に出てくる「布什(BuShe)」という言葉は、米国のブッシュ大統領の当て字である。こうなってくると、日本人にとっては、ほとんどナゾナゾの世界になってしまう。
「日本と中国は同じ文化圏だから、多少言葉はできなくても、見ればわかる」とタカをくくるのは日本人だけでなく、中国人も同じである。笑い話のようであるが、お互い甘く見ていると最後には思わぬ落とし穴で失敗することになる。(2008年5月記・2,649字)
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