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<連載>中国ビジネス入門ABC講座 第6回:似ているようで違う日本と中国のライフスタイル

中国ビジネスレポート 投資環境
筧 武雄

筧 武雄

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2008年6月22日

記事概要

 外見はとてもよく似ている中国人と日本人。共通した漢字、生活習慣もたくさんある一方で、まったく異なる面も少なくない。大切なポイントは、お互いの相違点を客観的に認識し、互いに尊重しあうことにある。

外見はとてもよく似ている中国人と日本人。共通した漢字、生活習慣もたくさんある一方で、まったく異なる面も少なくない。大切なポイントは、お互いの相違点を客観的に認識し、互いに尊重しあうことにある。

 

1.食生活

 

 日中のライフスタイルで大きく異なるポイントのひとつとして、食生活が挙げられる。

 

 日本人は食生活について、非常にせっかちな民族ということができるだろう。現代日本人の日常食はインスタント食品に、麺類や井物など簡単な「ファーストフード類」が多く、短時間で簡単にすませがちである。中国人は対照的で、味の仕込みから数時間をかけて調理し、食事もエンジョイしながらゆっくり食べる。おせんべいやクッキー、ビスケットなどの「乾き物」は基本的に敬遠され、冷たい料理は前菜かデザートでしか出されない。中国では、やはり揚げ物、妙め物、蒸し物などのあたたかい料理をワイワイガヤガヤ話しながら皆で分けて食べる、というのが中国式食生活である。中国の食卓はとてもにぎやかで、会話もはずむ。中国人にとって、食事は省略することのできない非常に大切な人的交流の場なのである。

 

 それは街中のレストランの構造を見てもわかる。レストラン面積の半分以上は個室になっており、多くの客は個室でゆったりと時間をかけ、語らいながら食事をとる。かたや大広間では家族連れや友人が多く、周囲に気兼ねすることなく騒がしく食事をしている。したがって、彼らは高級フランス料理のように、マナーにうるさく、行儀良く静かに食事をとるような食事作法は苦手と言えるだろう。

 

2.食生活の革命

 

 日本人にとって刺身はご馳走であり、野菜サラダなど生物を好んで食べる。しかし、中国人は、もともと生野菜や刺身等の「生もの」を食べる習慣がまったく無い。彼らから見れば、「生もの」は無味な粗食であり、どちらかと言えば「ゲテモノ」の部類である。量も少なく、味もしない。それがここへきて、経済発展から飽食化しつつある中国人から、「日本食はヘルシー」と人気が出始めている。彼らの食生活も変化しつつあるのである。

 

 また、「中華料理」を見ても、もともと中国には日本のようにスープに麺を入れて食べる日本式ラーメンは一般には存在していなかった。「方便麺」と呼ばれたインスタントラーメンは当初見向きもされなかった。ところが、台湾から持ち込まれたカップラーメンが流行し、日本から日本式ラーメンが持ち込まれるや否や、中国でもラーメンが大ヒットし、今では大学の学生食堂の定番料理にまでなっている。マクドナルドハンバーガーも当初は「鳴かず飛ばす」だったが、日本式ラーメンと同様、まず若者たちから「デートコース」として受け入れられ、今では一般化している。

 

 このように、古い過去の常識や固定観念から、「そんな料理が中国で受けいれられるハズがない」と言われてきたメニューがここへ来て大ヒットするケースがいくつもお目見えしている。野菜サラダ、コーヒー、ハンバーガー、ピザ、カツドン、おでん、てんぷら、カレーライス、たこ焼きなど沢山ある。その多くは、海外留学生(いわゆる「海亀族」や「白領族、金領族」など)が外国から持ち帰った、新しい食文化がきっかけとなったのではないかと思われる。

 いわば、かつての「食わず嫌い」から、最近では「新しい味覚への興味と新鮮さ」が受けて大ヒットしているというわけである。誰かが「おいしかった」、「健康によい」といい始めれば、最初は興味本位で食べ始めたものが、やがてはブームとなっていく。

 しかし、ヒットしている日本食の内容をよく見ると、本来の日本食とも多少違っているところがあるようだ。

 たとえば、中国人だけの結婚式パーティーなどで刺身の舟盛りがヒットしているが、お刺身といっても中国ではおもにサーモンが好まれ、マグロはあまり人気がない。この辺りが微妙なポイントである。同様に、初めて訪日した中国人に「幕の内弁当」を出すのもあまりお勧めできない。懐石料理も同様だが、やはり日本料理の冷たく、少ない量の食事は、基本的に歓迎されないからである。

 

3.居住生活

 

 日常の生活面を見ると、中国の人々は石造りの家に住み、部屋には土足で上がり、西洋式の「椅子にベッド」の生活である。日本人のように、正座やあぐらをかいて床に座る習慣も無く、まっすぐな膝をしている。

最近の高級マンションでは、日本流に靴を脱いであがる家も一部にはあるが、一般的には室内でも土足の生活パータンである。しかし、トイレだけは西洋式ではなく、日本とよく似た和式スタイルである。

 

 中国にも古くから銭湯はあるものの、最近の高級アパートやマンションを見ても基本的には個人別の個室温水シャワーであり、初めて日本に来た中国人に対しては、寮や宿舎などの共同風呂は避けたほうが無難である。また、湯船の中で身体を洗うという習慣もあるので、注意が必要だ。少なくとも、日本の一般家庭には靴を脱いであがることと、洋式トイレの使い方は教えておいたほうが無難だ。

 

4.挨拶の仕方

 

 中国を初めて訪問した日本人が注意すべき点は、挨拶の仕方である。中国は欧米と同様、「握手」が基本的な挨拶のスタイルであり、「お辞儀」ではない。故錦涛主席の訪日の様子を見ていても、お辞儀はせず、軽い会釈程度で、握手をしている。

できればこちらから積極的に手を差し伸べて、笑顔で握手を求めるようにしたい。握手しながらお辞儀をする習慣もないので、ご用心。やたらペコペコお辞儀ばかりする日本人は奇妙な目で見られる。

また、名刺交換の習慣は全国的に定着しているが、日本のような細かい名刺交換のマナーはまだ無いので、名刺を投げられてもムッとしないことである。

 

 会談の前にタバコを勧めるという習慣もある。吸わない場合は断ってもよいが、勧められたタバコを断って自分のタバコを吸い始める態度がもっともよくない。これは「あなたの好意は受け取れない」と態度で示しているようなものである。

こちらがタバコを勧め、火をつけてあげる場合は、マッチで火をつけるタバコは二本までとする。これは「三火」=「散伙」(友人と別れる)の語呂で縁起を担ぐ習慣である。

中国でもタバコによる健康被害は唱えられ始めているが、まだまだ「嫌煙権」の発言力は小さく、タバコを吸う前に、周囲に「タバコを吸ってもよいですか」と尋ねるマナーもあまり、まだ聞かない。

 

5.雑感

 

 筆者自身も中国人の生活習慣でいくつか永年にわたって理解に苦しんでいる点がある。明快な結論は得ていないが、たとえば以下のような解釈をしている点もある。

 

○なぜ、親が子に対して「ありがとう」と絶対に言わないか

 そもそも、親しい中国人であっても「ありがとう」を言わず、素っ気無く「不用謝」と言い返す人が多い。どうも「ありがとう」の根本的意味が日本とは違うようである。あるとき、ふと「ありがとう」を「ごめんなさい」に置き換えれば説明がつくことに気づいた。

 

○なぜ、自分の非を認めず、言い訳ばかりするのか

 まず、「謝る」という動詞が中国語に無い。中国人でもなかなかすぐには思い浮かばないようだ。しいて言うならば「認錯」(rencuo)が近いようだ。しかし、これは日本語の「謝る」とはだいぶ意味が違う。日本人の場合は、自分の誤りを率直に認めるというよりも、相手に迷惑を掛けたことについて謝るのではないだろうか。要は、中国人はこういう謝り方はしないということだろう。

 

 ちなみに、日本に暮らしなれた中国人に「日本で驚いたことは何か」と聞くと、多数の興味深い回答が得られるが、そのなかでも特に印象に深かったのが、ある日本企業勤務中国人の、「日本人がマイカーでスーパーやファミレスの駐車場出口で鉢合わせになったとき、互いに先を譲り合う風景が多く、これは驚きだった」という感想がある。

 現実には、「譲り合い」というよりは事故防止のために慎重に一時停止しているためと思われるが、確かに中国でこういう「譲り合い」の風景は珍しい。

 また、自分自身の経験としても、数年前に青島のアスファルト道路で、信号の無い横断歩道を歩いて渡ろうとしたとき、走ってきた乗用車が目の前で停車する、という難忘的「事件」があった。私は「何があったのか」とギョッとして立ち止まり、不用意に歩き出すと却って危ないと思って運転手を覗き込むと、その運転手は「早く渡れ」とばかりに手を横に振っていた。

最近では、上海の地下鉄ホームでも、「線路に飛び込むな」という面白い注意書きを前に、誰にも言われずちゃんと乗車ラインに並ぶ市民を見ていると、「これが本当の文化大革命かもしれない」とつくづく感じさせられる。

しかし、切符売り場では、いまだに券売機の前でマゴマゴしていると、どんどん他の人が横から割り入って来て、切符を買っていく。ひょっとしたら、青島での運転手は韓国人か日本人だったのかもしれない。そんな気もする。(つづく)

20086月記 3,660字)

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