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日中比較文化論【最終回】

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2008年9月30日

記事概要

 中国人のことを理解する上で、やはり忘れてはならないのは彼らのDNAに深く刻まれている「中華思想」です。中国の文明は「中原」と呼ばれる黄河の中流、現在の河南省の一部で起こりました。古代ではそこが世界の中心であり、北京でさえ文明の中心からはるか離れた辺境の地にすぎませんでした。

中国人のことを理解する上で、やはり忘れてはならないのは彼らのDNAに深く刻まれている「中華思想」です。

中国の文明は「中原」と呼ばれる黄河の中流、現在の河南省の一部で起こりました。古代ではそこが世界の中心であり、北京でさえ文明の中心からはるか離れた辺境の地にすぎませんでした。その中原に住む人だけが文明人であり、それ以外は東夷、西戎、北狄、南蛮と呼ばれる野蛮人とされていました。文明があってこそ人間と言えるのであって、文明を持たない人間はケダモノと同じであると考えているのです。中華思想はこのような考え方がもとになっているのですが、「我こそが世界の中心にいる文明人である」と考えていた中国人のこのような考え方は、今も彼らの精神的よりどころとなって、脈々と生き続けています。

 

世界各国にもある中華思想

どこの国の人でも自分の国への愛国心は持っています。あまりにも自分の国を愛するあまり、自分の国が一番であると考えてしまうのは心情的によくわかります。フランス人はフランスを中心に宇宙は回っていると考えていて、フランス語は世界で一番美しい言葉であり、フランス料理ほど美味しい料理は無いと自慢しています。アメリカ人にいたっては何でも世界一が大好きな国民で、世界一の高層ビル、世界一の自動車生産台数、世界一の…と、世界の最も進んだ科学と文化がアメリカにはあると考えていることも、一種の中華思想だと言えるでしょう。日本も明治憲法に「万世一統の天皇これを統治す」と書かれていたように、血統を重んじる日本の文化の中で脈々と受け継がれてきた純血主義の象徴でもある天皇を中心とした日本こそ世界に冠たる国家であり、大和民族こそ真に優秀な民族であると思っていました。これらすべては自国や自分達の民族を愛するがあまり、そう信じたかったのでしょう。しかし中国の中華思想はこれらの諸国の中華思想とは若干考え方が違っています。

 

中国の中華思想

世界の国々の中華思想は、日本も含め自分達の国、民族こそ一番であると考えるのに対し、中国の中華思想は国、民族にこだわらないところが違っています。たとえ文明の光が及ばない未開の土地に住む野蛮な民族であっても、いったん中華の文明が伝わり広まれば、そこは中華の地となり、そこに住む人々も中華の民となる。このように自分達の民族だけではなく、他の異民族であっても受け入れる度量の良さを持っています。

言い換えれば純血主義にこだわらないのが大きな特徴といえます。この大きな度量の裏返しには、「我が中華文明を慕って来るとはなかなか感心な奴じゃ。蛮異の民が中華の民になりたいと望んでいるなら、ならせてやってもよい。」という尊大な態度が感じ取れます。

これに正反対の考えをしたのがヒットラー率いるナチスドイツです。優秀なドイツ民族の純粋な血統を守るため、ユダヤ人を大虐殺するという行為に走りました。当時の彼らの考え方には中国人のような中華思想は存在しなかったのです。

中国の文明が世界の中心であり、その世界の中華文明の中心にいる我々中華民族が世界で一番なのだと思っているのが中国人なのですが、現代でもこういった考え方が中国人の心の中に残っており、自慢話をさせればきりがないほど話が続きます。お国自慢だけならまだいいのですが、愛国心をあおるあまり、かつて中国に中華文明の教えを請いに来た東夷の小国である日本が、その恩を忘れて中国を侵略し、中国で人道に外れるひどい行為をしたと、反日教育に利用されたりするのは困ったものです。

 

中国の反日教育と遠ざかる日中友好の道

 私個人的には「日本は中国に対して侵略戦争をし、中国人民に多大の損害と迷惑をかけた。」と認識しています。したがって、今後は二度とこのような悲惨な戦争を起こさないよう、日中両国がお互いに理解を深め、友好を築き上げていくことが大切だと痛感しています。        

 しかしながら、中国に住んでいるとテレビでしょっちゅう戦争映画が放送され、その内容は決まって「チョビ髭を生やした中国人扮する日本の軍人が中国人民に極悪非道を行い、中国人民のリーダーがそれに対抗して日本軍をやっつける。」といったもので、日本人の私は見ていて不愉快で仕方がありません。それは日本人がやっつけられるからとかではありません。実際にこのようなことがあったとしても、それを同じようなストーリーで何度も何度も放送することで、せっかく築かれつつある友好の絆が失われてしまうからに他なりません。このような放送を繰り返し見ていると、日本や日本人に対する憎しみだけが増幅されるだけで、ほかには何も生み出されません。

 確かに「中国人は恩や仇に対して忘れることはしない民族だ」と説明しました。ですから中国人に過去のことを忘れろとは言いませんが、過去の不幸な出来事を繰り返さないためにはどうすればいいのかをお互いに考えて行くべきですと言いたいのです。

 なぜ中国政府はこのような反日教育、反日政策を取るのでしょうか?私は中国人民の現在の政府や共産主義に対する矛盾や不満を、愛国精神を利用した反日政策を取ることにより、そちらにエネルギーを振り向けようとする中央政府の意図が感じ取れます。

「愛国無罪」これは2005年4月、当時の小泉首相の靖国神社参拝問題で中国全土に起こった反日運動の時によく使われた言葉です。「国を愛する上での行為であれば何をしても許される」という意味ですが、上海や北京で日本大使館がデモ隊に襲撃された時に、その周囲を警備していた警察官は「愛国無罪」のスローガンのもと、石を投げて窓ガラスを割ったりする学生達をまったく制止しようとはしませんでした。

中国共産党への批判を日本政府への批判のはけ口としてすり替えることによって、現体制の安定を図った一つの策略であると思えてなりません。

 

日本の平和教育

 日本の戦後教育の中で一貫して推し進められているのが平和教育です。世界中で唯一被爆体験があるのは日本だけです。日本では修学旅行で広島や長崎を訪れ、原爆の悲惨さを改めて認識し、平和への願いを新たにするといった平和教育が学校教育の一環として行われています。高校の中には中国に修学旅行に出かける学校もあり、平和教育のため南京を目的地に選び、「南京大虐殺」の史実を認識し、これからの世界平和のために日本と中国の友好がいかに大切かを理解してもらう、という高校もあります。

 こうやって比較してみると、日本は「過去の過ちは素直に反省し、過ぎ去ったことは水に流して新しい関係を作り上げて行かなければならない」という日本の文化の思考回路で考え、中国は「怨は忘れることなく、利用できるものはすべて利用して自分達に利益になるような方法で物事を運ぶ」といった中国文化の特徴的思考回路で考えているということが良く分かります。

 

 

 いずれにせよ、地理的にも歴史的にも、経済的にも文化的にも、今後も日本と中国は切り離巣ことのできない密接な関係にあるのは明らかです。何かの縁で中国に携わっている日本人の一人として、両国の友好と発展を真に願わずにはいられません。(2008年9月記 2,910字)

 

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