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中国案例指導制度が本格的にスタート(十五)

中国ビジネスレポート 法務
劉 新宇

劉 新宇

有料

2013年9月30日

記事概要

本稿では、法人間の債権債務の責任負担をめぐって争われた民商事分野の指導性案例を検討するものとしたい。【2,823字】

―関連会社間の法人格混同にかかる法的責任-

今回は、法人間の債権債務の責任負担をめぐって争われた民商事分野の指導性案例を検討するものとしたい。

現在の中国会社法制度において、株主の有限責任は、投資者の投資リスクの抑制、積極的な投資の奨励のため重要な役割を果たしている。しかし、株主の利益保護の強化は、一方で債権者の利益保護の軽視へとつながり、株主が会社の法人格を濫用して債権者の利益を害するケースがしばしば発生している。これに関し、アメリカの判例においては会社の債務にかかる直接的な責任を会社の裏の株主に負わせる「法人格否認」の法理が確立され、株主が信義誠実の義務に反して会社の法人格を濫用したときはその法人格を認めないものとすることで、債権者の利益保護が図られている。

中国会社法(2006年改正)も、その20条[1]
において法人格否認の制度を導入しているが、原則的な規定内容にとどまり、株主が会社法人の独立的地位、株主の有限責任を濫用して債権者の利益を害する行為の類型を具体的に定めているわけではないため、司法実務において、今のところ、期待を寄せられたほどの成果は見られていない。法人格否認に関する指導性案例の本件は、間違いなくその適用要件を明確化する一助となり、効果的な債権者の保護が実現されるものと期待される。

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