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企業における共産党末端組織について

中国ビジネスレポート 法務
劉 新宇

劉 新宇

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2010年7月8日

記事概要

日本のクライアントからは、「当社は合弁企業であるが、中方から共産党組織の設立を要求されている。これにいかに対処すべきか。このような組織が経営に関与することはあるのか」といった相談が時々寄せられる。本稿では、社内に共産党末端組織を設立する企業の義務や、企業内の共産党組織の役割について概述するものとしたい。(2,435字)

中国では、国有企業のみならず、一部の外商投資企業においても、社内に共産党末端組織が結成されている企業が見受けられる。中国共産党中央組織部が発表した最新資料によると、中国全国の企業263万4000社のうち、党組織の設立要件を満たしているものは59万8000社、その99.6%を占める59万5000社において、現に共産党末端組織が設立されている。この傾向は、国有企業ではない民間企業、外商投資企業においても認められ、党組織設立要件を充足した非公有制企業の99.4%・計38万社において、実際に共産党末端組織が設立されている。

日本のクライアントからは、「当社は合弁企業であるが、中方から共産党組織の設立を要求されている。これにいかに対処すべきか。このような組織が経営に関与することはあるのか」といった相談が時々寄せられる。「共産党組織」に馴染みのない人が、そのような要求に「驚異」ないし「脅威」を覚えたとしても、それはごく自然な感情と思われる。そこで、本稿では、社内に共産党末端組織を設立する企業の義務や、企業内の共産党組織の役割について概述するものとしたい。

1.企業は社内に共産党末端組織を設立する義務を負うか?

現行の「中国共産党規約」29条は、企業、機関、学校、社会団体などの末端単位に3名以上の正式党員が所属するときは、末端の共産党組織を設立しなければならない旨を定めている。しかし、同規約は、あくまで共産党の内部文書にすぎず、法令ではないため、その規範の名宛人は、共産党の各級の組織・党員に限られ、企業がこれに拘束されることはない。

他方、末端の共産党組織について定めた「法令」としては、「会社法」(2005年10月27日改正、2006年1月1日施行)が挙げられ、その19条は、「会社においては、中国共産党の党規約に基づいてその組織を設立し、党の活動を展開する。会社は、党組織の活動のために必要な条件を提供しなければならない」と定めている。このように、会社法は、企業に対し、末端の党組織を設立することを明確な形で義務づけてはおらず、企業内にこれを設立するか否か、どのような手続で設立するかといった点は、中国共産党規約に従うものとしている。

会社法に定めるこの内容以上に、末端の共産党組織の設立を企業の義務として明確に定めた法令は存在しない。また、「中国共産党規約」に関しても、企業にそのような義務を課すような運用はなされていない。このように、中国の法令上、企業に対して末端の共産党組織を設立することが義務づけられていない以上、企業が自主的にそのような組織を社内に設立する必要はないといえる。

2.共産党員である従業員から協力要請がなされた場合における法人の義務

前出1で触れたように、企業は、末端の共産党組織を社内に設立する積極的な義務は負っていない。しかし、「会社法」19条は、その後段において、「会社は、党組織の活動のために必要な条件を提供しなければならない」と定めている。したがって、企業は、共産党員である従業員から、党組織の設立に向けての活動を含め、党組織の活動に必要な条件の提供を求められたときは、これに応じる必要がある。

ここにいう「必要条件」の意義について明確に定めた規定は存在しない。しかし、その具体的な内容としては、党の活動に必要な場所・時間を提供すること等が考えられる。

確かに、企業は、自主的・主体的に末端の党組織を設立する義務を負っていない。しかし、このことは、その設立のためにまったく何もする必要がないということを意味するわけではなく、共産党員の従業員から末端の党組織を設立する活動に対する協力を要請されたときは、そのために必要な場所・時間を提供しなければならない。

3.共産党末端組織の企業に対する役割、同組織の会社経営への関与

企業内の共産党組織の役割に関して、「中国共産党規約」は、その32条において「非公有制経済組織における中国共産党の末端組織は、党の方針政策を貫徹し、企業による国家の法令遵守を引率監督し、労働組合、中国共産党青年団等の組織を指導することにより従業員を団結させ、各方の合法的権益を保護し、企業の健全な発展を促進する」と定めている。

このように、共産党の規約からしても、企業内の共産党組織の主たる役割は、党の方針・政策の貫徹、従業員・会社の合法権益の保護、企業の合法的で健全な発展の促進など、企業の精神面、文化面での発展にあり、このような組織が企業の経営に関与することは認めていないものと考えられる。共産党員である従業員個人、共産党組織は、党規約を遵守しつつ、会社に対し何らかの提案をすることができるが、それを受け入れるか否かは、完全に会社側の判断に委ねられている。また、共産党組織は、政府機関に対し会社の違法行為を告発することができるとしても、だからといって、共産党組織が企業内の一権力機関として、その経営を左右することはできない。国有企業においては、共産党組織の幹部が企業の経営に強大な影響力を行使するケースも多く見受けられるが、それは、その幹部が企業の高級管理職を兼任しているための、企業の管理者としての権限行使による影響力であって、共産党の幹部ゆえの影響力というわけではない。

以上のように、企業内に設立された末端の共産党組織は、企業の経営に対しては何らの権限も有しておらず、したがって、必ずしも企業と対立する立場にあるわけではない。逆に、企業が組織変更、リストラ等を実施するにあたって、従業員による騒動が発生したとき、内部の共産党組織が企業に協力して騒動を静めるなど、企業改革をスムーズに進めることができたというケースも多い。中国において、共産党は絶対に無視することのできない存在であり、企業内の共産党組織を脅威として捉えるのではなく、先入観を捨てて上手に付き合っていくことが重要で、むしろ、企業の利益のためにこれを活用するくらいの気持ちが必要かもしれない。

(2,435字)

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