こんにちわ、ゲストさん

ログイン

特許権における職務発明者の概念と権利

中国ビジネスレポート 法務
旧ビジネス解説記事

旧ビジネス解説記事

無料

2004年3月1日

<法務>

特許権における職務発明者の概念と権利

梶田幸雄

はじめに

 対中投資において、最近では中国に生産拠点のみならず、研究・開発部門を置く企業も増えてきている。このときに問題になるのが、中国人技術者の行った研究・開発をもとに特許技術が開発された場合の処理方法である。
 以下の事例から、中国人技術者の権利意識や特許権の帰属に関する判断基準が理解できる。

1.事件の概要

(出所:http://www.2003.com.cn/editor/Edu-FaLvShuoShi/200382711958.htm/)

 1993年3月、紅光機械工場(以下、「X」という。)は、機械部主催の全国映像機械規劃会議に出席した。ここで、Xは、F映写機の研究開発任務を委ねられた。
そこで、Xは、工場内に技術者某(以下、「Y」という。)をリーダーとする5人のチームを結成し、研究開発に従事させた。Yは、映写機装置の設計案を提案し、これに基づく研究・開発が行われた結果、映写機製造の技術的問題も解決されるようになった。Yは、映写機の全体設計、装置および部品の設計などすべての図面設計を行い、この図面上に自らの氏名を署名した。その後、1995年5月にYはXを離職した。
Yの離職後に他のチーム・メンバーも前後して離職したので、1996年末にXは、Z(Xの副工場長)をリーダーとする新たなチームを結成した。Zらは主に設計図面の整理、製造工程の編制、技術鑑定文献の編集などを行った。
1998年1月、Xは中国専利局に対して、当該映写機の実用新案特許および外観設計の意匠申請をし、設計者としてZの氏名を記載した。
Yは、この事実を知り、1998年2月にXに対して設計者はXに改めるように要求した。しかし、XはYの発明創造は職務発明であり、研究開発課程でチーム・リーダーも代わっており、Xの利益維持のために最終的に映写機を完成させたのはZであるとして、Xの要求を拒否した。
そこで、XとYとの間に紛争が生じた。Yは、当該映写機にかかわる発明創造の設計者であり、映写機の設計図面には設計者として、Yに署名権があることを要求する訴えを提起した。

2.法院の判断

 Yは、当該映写機にかかわる発明創造の設計者であり、Xには設計者を決定する権利はなく、Yに設計者としての署名権を付与すべきである。
 理由は、以下のとおりである。
 特許法実施細則11条は、発明者とは、発明創造の本質的特徴に対して創造的な貢献をしたものをいうとしている。(この特許法実施細則は、1992年12月21日公布、1993年1月1日施行のものである。現在は、改正後の特許法実施細則として2001年6月15日公布、2001年7月1日施行のものがある。改正特許法実施細則においては12条で同様の規定がある。)
 発明創造を完成させる過程で、ただ組織の管理責任者として物的条件を利用する便宜を与えたもの、または単なる補助者は、発明者または設計者とはいえない。
 本件において、YはXを離職する以前にすでにすべての設計図面を完成させ、技術方法も確立しており、爾後のチームは新たな改造もしておらず、実質的な完成をしているとはいえない。従って、Yは当該映写機に関して実質的に、創造性のある貢献をしたものであるといえ、設計者として認定できる。Zは、チームを引き継いだが、ここで行ったことは図面の整理、製造工程の編制、技術鑑定文献の整理などであり、発明創造後の補助的業務をしただけであり、設計者とは認定できない。
 特許法17条は、発明者は、特許書類注に自分が発明者であることを明記する権利を有すると規定している(この特許法は、1992年9月4日公布、1993年1月1日施行のものである。この特許法は2000年8月25日に改正、公布され、2001年7月1日からの改正特許法が施行されている。改正特許法においても17条で同様の規定がある。)。
 Yは、明らかに発明者であり、従って特許書類中に署名する権利がある。

3.派生的争点と課題

 本件において、法院が認定した事実から導いた結論に疑問はない。Yも職務発明者としての署名権を主張しているだけであり、非職務発明を争っているわけでもないので、Xとしても許容できる判決ではないかとも考える。
 では、この事案にかかわる派生的争点としてどのようなことが考えられるか。つまり、本件では争われていないが、実務上どのような紛争が生じているかということを検討しておきたい。
 第一に、(1)職務発明の概念=職務発明の適用範囲である。どのような条件、環境の下でなされた発明を職務発明と認定し、どのような条件、環境の下でなされた発明が非職務発明と認定されるのか。明確な判断基準があるのか否かということである。
 第二に、(2)上記の問題から派生する問題として、発明特許の帰属の問題がある。職務発明と認定されても、

ユーザー登録がお済みの方

Username or E-mail:
パスワード:
パスワードを忘れた方はコチラ

ユーザー登録がお済みでない方

有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。

ユーザー登録のご案内

最近のレポート

ページトップへ