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ログイン2004年4月27日
<法務>
対中投資において、最近では中国に生産拠点のみならず、研究・開発部門を置く企業も増えてきている。このときに問題になるのが、中国人技術者の行った研究・開発をもとに特許技術が開発された場合の処理方法である。 以下の事例は、中国人技術者と中国企業との間で職務発明に対する実施報酬金額にかかわる紛争事案である。現状において、中国では職務発明者に対して、どの位の実施報酬金が支払われているのだろうか。
紛争当事者:申 立 人:王××(X)
被申立人:××集団総公司(Y)
調停機関:北京特許管理局
王××(以下、「X」という。)は、電子タイプライターのメーカー「××集団総公司」(以下、「Y」という。)の技術者である。
Xは、Y在職中に、Yの2件の特許「スクリーン文字処理機の表示方法」および「電子タイプライター」を発明し、Yは、当該技術にかかわる特許を取得した。また、Yは、この2つの特許技術を利用して、MS2400型、MS2401型、および2401H型タイプライターを生産した。このタイプライターの累計販売額は、約12億元であった。
その後、Xは、Yを退職したが、XはY退職半年後の1993年5月にYとの間で職務発明に対する実施報酬金の支払いに関する協議に合意した。この内容は、「Xは、国の関係規定により自己の合理的な報酬取得については、1993年12月31日前に解決しなければならない。」というものであった。この合意に基づき、Yは、1993年9月に電子タイプライター2400型の職務発明に対する実施報酬金としてXに「科学技術奨励金17万元」を支払った。
しかし、Xは、この金額に不服であることからYを相手取って北京専利(特許)管理局に対して、調停の申立てをした。
北京市特許管理局は、YにXに対して職務発明に対する実施報酬金として37万元を支払うように命じた。
この理由は、以下のとおりである。
Yは、2400型電子タイプライターについて、X以外の発明者に実施報酬金10万元を支払った。この実施報酬金からXへの支払いを計算すると、Xに支払った17万元の奨励金は、2400型電子タイプライターの実施報酬として1台当たり7.78元と試算できる。ただし、Yは、2401、2401H型の特許使用としてのXに対する実施報酬金の支払いは含まれていない。
然るに、2401型機は2400型の機能を向上させ、価格を引き上げた直接の原因として評価できる。一方、2401型の機能向上は、特許技術の価格に占める割合の低下の原因となっているが、計算の結果、これらの影響はあまりないと考えられる。
Yの職務発明者に対する2401、2401H型の未払い実施報酬金は、2400型の1台当たりの実施報酬額を適用することができる。
以上から、北京市特許管理局は、YにXに対して実施報酬金37万元を支払うよう命じた。
本件は、現時点における中国で最大の職務発明に対する実施報酬金をめぐる紛争である。この事件における職務発明に対する実施報酬金額の適否はどうであるのか。中国人一般ワーカーの賃金から見れば、極めて高いといえよう。一方、当該職務発明により取得された特許の実施に伴うYの売上げから見ると、必ずしも高額であるとはいえないだろう。
現時点において、中国でこのような紛争は比較的に稀であるといえる。しかし、今後は職務発明の実施報酬をめぐる紛争が増えることも予想される。中国に研究・開発部門を設置する日系企業としては、職務発明者に対する「報償制度」を規定しておくことが必要である。
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