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国務院常務会議

中国ビジネスレポート マクロ経済
田中 修

田中 修

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2013年4月15日

記事概要

李克強総理は、3月18日と3月27日に国務院常務会議を開催し、全人代終了後の国務院機構改革・政府活動報告の実施にむけた準備を開始した。本稿では、この2つの会議の概要及びこれに対する識者のコメントを紹介する。【4,943字】

はじめに
 李克強総理は、3月18日と3月27日に国務院常務会議を開催し、全人代終了後の国務院機構改革・政府活動報告の実施にむけた準備を開始した。本稿では、この2つの会議の概要及びこれに対する識者のコメントを紹介する。

1.3月18日会議
 機構改革の推進加速が検討された。重点は、政府の機能転換の各任務をしっかり実施することにしぼられた(新華網北京電2013年3月18日)。

 全人代で批准された「国務院機構改革・機能転換案」に基づき、国務院直属機構・単位の設置を討論・決定し、国家食品・薬品監督管理総局、国家新聞出版ラジオ・テレビ総局、国家鉄道局の設置と、国家海洋局、国家エネルギー局の再編を批准した。
 国家食品・薬品監督管理総局と国家鉄道局の主要職責・内部機構・人員編制の「三定」規定を討論・通過させた。今年6月末までに、その他の新設機構の機能を調整し、機構「三定」規定を完成しなければならない。機構改革のプロセスにおいては、紀律を厳しく改革し、人員編制・幹部のポスト数を厳格に抑制し、各施策が平穏に秩序立って行われることを確保しなければならない。

 「国務院機構改革・機能転換案」実施の任務分担を検討・確定し、「案」の内容を72項目の任務に細分化した。それぞれの項目は、責任部門と完成期限を明確にしている。「案」は法的効力を有しており、割り引くことなく貫徹実施しなければならない。機能が科学的で、構造が最適化され、廉潔で効率の高い、人民が満足する政府の建設を加速しなければならない。各部門は観念を確実に転換し、大局から出発し、関連施策を早急に展開し、重点を際立たせ、分けて実施し、段階的に推進しなければならない。

 2013年、各部門は四半期ごとに施策のスケジュール表を作り、改革を着実に推進し、実際の成果をもって人民大衆に実効あることを見せなければならない。
(1)いくらかの投資審査・許認可事項を減少ないし下に委譲し、確かに必要な審査・許認可・届出項目については、プロセスを簡素化し、期限を切って処理する。政府審査許認可投資プロジェクト目録の改訂版を公布する。
(2)国家補助・利息補填等の方式で支援している地方のいくらかのプロジェクトを下に委譲する。
(3)生産経営活動と製品・物品のいくらかの許可事項を取り消し、下に委譲し、各種機関及びその活動に対する認定といったいくらかの非許可審査事項を取り消し、いくらかの資質・資格許可事項を取り消す。
(4)法律・行政法規あるいは国務院が明確に規定しているものを除き、規定の基準に達しているか否かの検査、比較による評定、評価及び関連検査活動を取り消す。
(5)いくらかの財政特別移転支出項目を減少・合併し、地方に管理させた方が適切であるいくらかの特別移転支出を下に委譲する。
(6)登録資本の登記制度の改革等工商登記の条件緩和案を提起する。
(7)いくらかの行政事業性手数料徴収と政府基金のプロジェクトを取り消す。
(8)非許可審査項目の設定・実施を規範化する具体的方法を打ち出し、業種協会・商会、科学技術、公益・慈善、都市・農村コミュニティサービスといった類いの社会組織について、民政部門への直接登記制度を実行する案を早急に制定する。
(9)家屋、林地、草原及び土地の登記の職責を整理・合理化する。都市従業者基本医療保険・都市住民基本医療保険・新型農村共同医療の職責を整理・合理化する。
「案」が確定したその他の改革も積極的に秩序立てて推進し、機が熟したものから1つずつ打ち出していかなければならない。

 政府の機能転換は、行政体制改革を深化させる核心であり、市場経済・法治経済を発展させる保障でもある。機能転換を新たな国務院の政策開始の要となし、行政審査・許認可の減少を機能転換の突破口としなければならない。行政審査・許認可事項を大幅に減少し、下に委譲して、真に市場に向けて権限を解放し、社会のパワーの役割を発揮させる。ミクロの事務への関与を減らし、経済社会の発展の活力を奮い立たせ、行政審査・許認可が一方で減り他方で増える問題に歯止めをかける。実施途中・事後の監督管理を厳格化し、政府が管理すべき事はしっかりとうまく管理する。同時に、マクロ管理を改善・強化し、長期・全局にわたる重大事項に更に多くの精力を集中し、政府管理の科学化レベルを引き上げる。

2.識者のコメント
 経済参考報2013年3月19日は次のように伝えている。
(1)国家行政学院 宋世明教授
 1982年から2008年まで、全部で6回国務院の行政体制改革が行われている。全人代が案を審議した際、文件の名は「国務院機構改革案」であった。つまり、機構改革に行政体制改革の全ての内容が含まれていたのである。この慣性の力の作用の下、大多数の人々は行政体制改革即ち機構改革、機構改革即ち行政体制改革ととらえていた。
 しかし今回の国務院の行政体制改革だけは、文件の名称が「国務院機構改革・機能転換案」となっている。今回の改革は、政府機能の転換を中国行政体制改革の核心としている。機構の調整に関わるものは6部門であるが、全ての国務院機構が機能転換を進めなければならない。このことが、今回の改革が過去6回と本質的に区別されるところであり、「表裏一体」と言ってもよい。機構改革が表であり、機能転換が裏なのである。

(2)北京大学中国国民経済計算・経済成長研究センター 蔡志洲副主任
 過去10年の中国経済は大きな成果をあげてきたが、新たな10年の起点に立つと、経済発展は疑いもなく多くの問題に直面している。とりわけ、社会主義市場経済を推進するプロセスにおいて、政府と市場の関係をいかに位置付けるかという問題について、特に各方面が関心をもっている。今回の国務院常務会議は9項目の具体的要求を提起しており、かつ各部門に四半期ごとの施策のスケジュール表作成を要求している。これ自体が、政府機能転換の好例である。

(3)清華大学公共管理学院 薛瀾院長
 国務院機構の整理・合理化の内容は、大部門制と比べ更に深い。今回の改革の際立ったポイントは、政府と市場、政府と社会の関係を調整し、政府を簡素化して権限を委譲し、活力を解放したことである。政府と企業の分離、政府と事業体の分離、政府と社会組織の分離を深く推進し、ミクロの事務への関与を減らし、市場・社会に権限を解放し、最大限度市場・社会の活力を奮い立たせるものである。同時に、マクロ管理を改善・強化し、事後の監督管理を厳格化し、管理すべきでないものは管理・関与せず、管理すべきものはしっかり管理し、根本から政府機能の過剰と不足の問題を克服するものである。

3.3月27日会議
 2013年の政府重点政策の部門別分担を検討・確定した(新華網北京電2013年3月27日)。

 中央経済工作会議の精神、政府活動報告及び第1回全体会議の要求に基づき、2013年の政府の6方面、及びこれに関連する部分の計48項目の重点政策を確定し、任務を項目ごとに各部門・各単位に分解した。今年の各政策を全面的に推進し、大衆・社会が関心をもち、小さなことから全局に影響が及ぶような事柄を着実になしとげなければならない。

(1)現在、内外環境には不確定・不安定要因がかなり多い
各部門・各単位はいずれも、
①内外経済情勢のフォロー・モニタリングと深い分析を強化し、安定成長・インフレ抑制・リスク防止と経済転換の推進を結びつけ、経済の持続的で健全な発展を促進し、物価総水準の基本的安定を維持しなければならない。
②農村の発展活力を更に強化し、年間の農業好収穫の実現に努力しなければならない。
③各方面の意見を広範に徴求して、都市化中長期発展計画を早急に制定し、これに付帯する政策措置を整備しなければならない。
④産業構造調整を加速し、生産能力過剰の矛盾を解消する具体的方法を業種に分けて提起し、関連部門に責任もって実施させなければならない。
⑤重要な分野の改革を積極的に推進し、実質的な進展を得るよう努力しなければならない。
・財政・税制改革は、案を提起し、順を追って進めなければならない。
・金融改革は、金利・為替レートの市場化推進、様々なレベルの資本市場の発展の方面で、新たな措置を打ち出さなければならない。
・価格改革は、資源性産品の価格形成メカニズムの整備を重点的に推進しなければならない。
⑥対外開放の新たな優位性の育成に努力し、新局面を開拓しなければならない。

(2)民生の保障・改善は、政府活動の出発点・着地点である
①経済成長の安定と経済構造の調整を通じて、就業ポストを増やさなければならない。
②社会保障制度を整備し、重点は特殊困窮者の問題解決に努力することとする。
③不動産市場コントロールを引き続きしっかり行い、不動産を安定的・健全に発展させる長期有効なメカニズムの確立を加速し、社会保障的性格をもつ安住プロジェクトの建設を強化しなければならない。
④監督管理体系を整備し、食品・薬品の安全と安全生産の保障水準を引き上げなければならない。
⑤重点地域で的確に措置を採用し、大気・水・土壌等の際立った汚染問題への対策を強化し、パワーを集中して堅塁攻略戦に打ち勝ち、人民大衆に希望を見せる。

(3)公正は社会の創造活力の源泉である
①制度上から教育の公平・就業の公平・創業の公平を推進し、国有単位が公開・公平・公正に優秀な人員を採用することを段階的に実現し、社会の縦方向の流動と労働力の合理的な流動を促進しなければならない。
②確実・有効な措置を打ち出し、民間投資の市場参入を拡大し、民間投資の活力を奮い立たせなければならない。
③2兆元余りの年度教育財政経費をうまく使用し、各レベル・各種教育の質を高めなければならない。
④社会建設・社会分野の改革を全面的に推進する。

(4)2013年は新政府のスタートの年であり、政府活動をしっかり行うことは重要な意義を有する
 各部門・各単位は、大局と自分が負う責任を考慮して、しっかりと実施し、実効を求めなければならない。
①組織的な指導を強化しなければならない
分担の細分化案を早急に制定し、実際と結びつけて自己の施策の重点を提起し、1任務ごとに具体的単位・人に割り当て、スケジュール表を作成しなければならない。
②密接に協力・手配しなければならない
 主管部門は組織的に協調する責任を負い、その他の部門は積極かつ主動的に手配を行い、政府の執行力・効率を高めなければならない。
③思考を刷新しなければならない
 作風を転換し、深く末端に入って調査研究を展開し、本音を聞き取り、新たな情況・新たな問題をタイムリーに発見し、パワーを集中して際立った矛盾を解決しなければならない。
④監督・検査を強化しなければならない
 業績考課と行政の問責を強化し、年央に検査し、年末に監督・処置して、重点政策の期限どおりの完成を確保し、年間の経済社会発展の予期目標を実現しなければならない。

4.識者のコメント
(1)交通銀行 連平チーフエコノミスト
 中央と地方の財政力と権限の釣り合った財政・税制をいかに確立するか、予算管理をいかに強化するか、地方財政・税システムをいかに再建するか等の一連の財政・税制改革は、期待がもてる。
 会議の記述と先般の両会から伝え聞いた情報からすれば、市場化改革の考え方が更に明確になっている。わが国は経済成長の動力を切り換える重要な正念場に直面しており、切り換えに成功するカギは市場経済体制改革の深化である。
(2)中央財経大学銀行業研究センター 郭田勇主任
 会議は明確に金利・為替レートの市場化改革推進を提起した。今年いかに金利市場化改革を引き続き推進するか、いかに人民元レート形成メカニズムを整備するかは、金融体制改革の新たな注目点となっている。
 中央銀行は今年の年初、工作会議において金利市場化改革を着実に推進し、人民元レート形成メカニズムを更に整備することを提起した。今年、人民元の対ドルレートの変動幅は、1%の基礎の上に引き続き拡大する可能性があり、資源配分において市場が更に基礎的役割を発揮するだろう。

(3月29日記 4,943字)

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