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ログイン2008年12月9日
本稿では、12月3日の国務院常務会議の模様と、主要3官庁幹部の記者会見・インタビューの概要、地方政府の投資計画、出稼ぎ農民の帰郷問題を紹介したい。
はじめに
本稿では、12月3日の国務院常務会議の模様と、主要3官庁幹部の記者会見・インタビューの概要、地方政府の投資計画、出稼ぎ農民の帰郷問題を紹介したい。
1.国務院常務会議(12月3日)
当面の金融政策について、9項目の政策措置が決定された(新華網北京電2008年12月3日)。
(1)適度に緩和した金融政策を実施し、貸出の安定的な伸びを促進する
預金準備率・金利・為替レート等多様な手段を総合的に運用し、銀行システムへの流動性の十分な供給を維持し、政策性銀行の2008年の貸出規模を1000億元追加する。
(2)貸出サービスを強化・改善し、資金の合理的な需要を満足させる
①中小企業
地方政府が資本注入・リスク補償等により信用担保会社への支援を増やすことを奨励する。多層にわたる中小企業融資担保基金・担保機構を設立し、中小企業金融の比重を引き上げる。条件に適合した中小企業信用担保機構に対しては、営業税を免除する。
②農村
農村融資担保メカニズムを確立し、農村における有効な担保物件の範囲を拡大し、農村に多様な形式の担保によるローン商品を積極的に模索する。
③住宅・自動車・農村消費のローン市場を積極的に拡大する。
(3)多層にわたる資本市場システムの建設を加速し、市場の資源配分機能を発揮させる
株式市場を安定化させ、先物市場の着実な発展を推進し、インフラ・民生プロジェクト・生態環境建設・災害復興に係る債券の発行規模を優先的に拡大する。
(4)保険の保障・融資機能を発揮させ、経済社会の安定的運営を促進する
「三農」、住宅・自動車消費、健康、年金等の保険業務を積極的に発展させ、保険会社が債権等の方式により交通・通信・エネルギー・農村インフラプロジェクトに投資するよう誘導する。
(5)融資方式を革新する
合併融資、不動産投資信託基金、株式投資基金、民間融資を規範的に発展させる等の多様な形式により企業の融資ルートを開拓する。
(6)外貨管理を改善し、貿易投資の簡便化推進に力を入れる
とりわけ中小企業の貿易融資を簡便化し、外貨資金の使用効率を高め、対外貿易の発展を支援する。
(7)金融サービスの現代化を加速する
支払い手段のシステムを更に豊富にし、農業・災害復旧への国庫補助の直接支払い範囲を拡大し、輸出税還付のプロセスを改善し、中小企業・農村信用体系の建設を引き続き推進する。
(8)財政・税制政策の支援を強化する
財政資金のテコ作用を発揮し、金融業の不良債権処理と経済成長促進能力を増強する。
(9)金融改革を深化させる
金融監督管理体系を整備し、リスクのモニター・管理を強化し、金融の安全・安定を適切に維持する。
2.国家発展・改革委員会 張平主任(11月27日)[1]
(1)追加1000億元の下達
第11次5ヵ年計画に盛り込まれたプロジェクトで、前期の作業が完成したもののうち、一部を選択して1000億元に充てている。計画は40%超下達済みであり、残りも早急に下達する。
(2)4兆元の内訳
①社会保障的性格の住宅安定プロジェクト 2800億
②農民民生プロジェクト・農村インフラ 3700億
③鉄道・公道・都市農村電力網 1兆8000億
④医療衛生、文化教育事業 400億
⑤生態環境方面 3500億
⑥自主的なイノベーション・構造調整 1600億
⑦災害復興 1兆
4兆の投資は、全社会の投資の一部分に過ぎない。昨年の全社会総投資は13兆を超えた。今年は17兆を超え、来年は20兆前後となるだろう。この4兆元の投資で、経済成長を毎年1ポイント牽引することになる。
(3)11月の経済状況
11月の国内の一部経済指標には確かに下降加速の傾向が現れている。一部の企業の生産経営に困難が出現し、とりわけ輸出製品の生産を主とする企業は、甚だしきは生産停止・生産半停止状態となっている。これは必然的に就業に影響を及ぼし、一部の地方では出稼ぎ農民の帰郷現象が現れている。
(4)燃料税
今回の燃料税改革の総体的要求は、「公平・規範・節約・負担減」である。
①公平
多く石油を使う者は多く負担するという原則の体現である。
②規範
過去の各種の費用徴収あるいは行動の維持・管理及び水路の維持・管理関係の費用を燃料消費税に変えるということである。
③節約
多く石油を使う者は多く負担するので、我々はこのような措置を通じて燃料の節約を促進できると期待している。
④負担減
現在の内外石油価格の水準の下、税費用改革を実行すると各方面で負担が軽減される。我々の改革案では、税・費用の総量は均衡しているからである。しかし、現在の価格水準では、費用を税に改める改革の過程で皆の負担が軽減されるだろう。現在国際石油価格は国内より確実に低いからである。
(5)就業
来年は、大学生の卒業人数が新たなピークを迎え、600万人を超える。就業解決の最も根本的な道は、経済の平穏で比較的速い成長を維持することである。
3.人力資源・社会保障部 張小建副部長(人民日報2008年11月22日)
(1)現状
9月末の都市登録失業率は4.0%である。しかし、10月に入り、国際経済情勢の変化は、わが国の就業情勢に影響を与えている。これは主として、現在一部の企業とりわけ労働集約型中小企業に現れており、一部では閉鎖・生産停止・生産半停止状態が現れ、一部の人員の失業を生み出している。従業員と労働契約を解約していないものでも、長期休暇させ、隠れた失業状態となっている。
(2)当面の措置
現在の就業情勢は峻厳だが、この影響はなお更に拡大している。関係部門は措置をとっており、一面では企業が難関を乗り越えできるだけ失業を減少させることを援助し、就業情勢を安定化させている。他方では、労働者の失業状況については、企業に対し労働契約法と関連法規の規定に基づき労働関係で出現した問題を妥当に処理するよう要求しており、とりわけ従業員の給料支払いを保証するよう要求している。年末の登録失業率が4.5%におさまるよう全力を挙げる。
(3)失業抑制策
①あらゆる手を尽くして、現在生産停止・生産半停止の企業を援助し、隠れた失業が顕在化した失業に変わることを防ぎ、全体の社会的失業を減少させる。
②就業拡大と内需拡大を緊密に結びつけ、現在発展中の経営状況が比較的良好な企業を支援し、就業拡大を継続させ、就業の伸びを保証するよう努める。
③政策支援と就業サービスを強化する。
重点を都市失業者、就業困難者、高等教育卒業者の就業援助に置く。同時に、重点業種の出稼ぎ農民を併せ配慮する。
④全社会において大規模な職業訓練を組織的に展開する
更に多くの都市・農村労働者職業訓練に組織し、労働者の就業能力・素質を高めると同時に、失業し職を求めている者を再就職準備状態に置き、社会に散らばらないようにする[2]。
4.国土資源部 鹿心社副部長(12月3日)
4.1 内需拡大の政策措置
(1)積極主動的にサービスを行う
①土地利用総体計画の統一的企画と管理・コントロールを強化する
②科学的に調整し、計画的に配分し、重点と緊急需要を際立たせる
第4四半期の1000億投資新規増のプロジェクトを早急に実施する。
③土地の審査・認可と供給を速やかに行う
④地質鉱産探査と情報サービスを強化する
(2)管理を厳格に規範化する
①最も厳格な耕地保護制度を実施する
②最も厳格な用地節約制度を実施する
③法に基づく監察と国家による土地査察を強化する
(3)農民の権益を適切に擁護する
①土地収用のプロセスを厳格に履行する
操作を公開透明にする。
②土地収用の補償方法を整備し、補償基準を合理的に確定する
③積極的に生活安定ルートを開拓する
土地を収用された農民の就業・住宅・社会保障等の問題を適切にしっかり解決する。
④土地収用の実施プロセスの監督を強化し、関係費用が土地を収用された村組織・農家に全額支払われることを確保する
4.2 地方政府の土地財政依存
一部の地方政府は土地による収入に過度に依存しており、我々は既にこの問題に注意を払っている。我々は現在財政部門と共に、この問題を解決する方法を積極的に検討中である。最も主要な点は2点である。
①更に多くの土地有償使用方式を採用し、土地の有償使用収入が1回の譲渡に過度に集中しないようにする
②土地収益の分配使用方法を検討し、土地の収益の分配・使用を更に合理化する
4.3 大量の土地収用による紛争防止
①厳格な耕地保護・用地節約の原則に基づき、できるだけ少なく収用し、農民の土地をできるだけ少なく占有する
②農民の土地を収用する必要がある場合は、厳格に法律のプロセスに基づき行う
とりわけ、公開を推進し、農民に知る権利と参加権を与える。
③農民に合理的な補償を与える
④農民の就業・住宅・社会保障について統一的な手配を行う
5.地方政府の投資計画
新京報2008年11月25日は、これまでに発表された24省の投資計画の総額が18兆元近くに及んでいるとした。
(1)北京市
今後2年で1200-1500億元の政府投資を行い、1兆元の社会投資を誘引する。この中には、100キロの軌道交通、高速道路網、発電所建設、南水北調プロジェクト等が含まれる。
(2)雲南省
今後5年で約3兆元の投資を行う。これには中国―ミャンマー石油ガスパイプライン、石油精製プロジェクト、鉄道建設等の大型プロジェクトが含まれる。
(3)広東省
今後5年で2.3兆元の投資を行う。これには、珠江デルタ軌道交通、武漢―広州旅客鉄道が含まれる。
(4)上海市
2010年までに1600億元の政府資金を用いてプロジェクト建設を行い、1.1兆元の社会投資を誘引する。これには、軌道交通、地域を跨ぐ主要幹線、万博等が含まれる。
(5)遼寧省
2009年に1.3兆元の投資を行う。これには、重大インフラ建設、サービス業の発展、省都経済の振興等が含まれる。
(6)浙江省
今後2年で政府投資を3500億元行い、1兆元の社会投資を誘導する。これは、沿海鉄道建設・水運開発等に用いる。
(7)吉林省
今後数年で約4000億元を投資する。これには、鉄道建設・飛行場拡張等が含まれる。
このほか、海南省2070億元、安徽省3890億元、河北省5889億元、河南省1.2兆元、江蘇省2009年まで3000億元を完成し、2010年までに更に6500億元追加、といった計画が打ち出されている(中国新聞網2008年11月24日)[3]。
このような地方の投資熱の異常な盛り上がりに、投資過熱・盲目的投資の再来を懸念する声がエコノミストから出始めている[4]。ただし、財政部財政科学研究所の王朝才副所長は、「地方政府の投資熱は高まっているものの、最終的に許可されるのはこれほど多くはないだろう」としている(新京報2008年11月25日)。
6.出稼ぎ農民の帰郷
他方で、出稼ぎ農民の帰郷も相次いでいる。人民日報2008年12月1日によれば、安徽省では11月30日までに40万人の出稼ぎ農民が帰郷した。これは同省の出稼ぎ農民の3.6%に相当する。また、労務輸出大省の江西省でも30万人の出稼ぎ農民が帰郷している。
このような大量帰郷の背景として人民日報は①都市の収入が低く、都市での生活に比べ帰郷して生活するコストの方が低い、②国家の一連の政策が農村に傾斜しており、出稼ぎ農民は帰郷しても発展の可能性があると感じている、との2点を指摘している。
各地・各部門もすでに対策を講じており、江西・安徽・湖北の各省は出稼ぎ農民を省内の企業に誘導し、職業訓練を受けさせている。教育部も通達を発し、出稼ぎ農民を職業学校で訓練するよう指示している。帰郷した出稼ぎ農民を学校に閉じ込めることで、農村の不安定化を防ごうとしているのであろう。
また、新華網貴陽電2008年11月29日は、「中央が社会主義新農村建設の戦略を打ち出して以降、各地は積極的に新農村建設を推進してきたが、1つの難題に遭遇している。農村労働力の絶大な部分が出稼ぎに行っており、留守の多くは老人・女性・子供となっており、村によっては空洞化が進み、労働力が深刻に不足している。労働力が豊富な地方であっても、都市・農村の所得格差がかなり大きいため、農民は故郷を建設する熱意に乏しく、村内の公益事業には力が入らず、新農村建設の進展は緩慢となっている」とし、帰郷した出稼ぎ農民を故郷の建設に向かわせるべきだとしている。
(2008年12月8日記・4,876字)
[1] 中国証券報2008年11月22日は、個人所得の拡大と国内消費を全面的に刺激する案を国家発展・改革委が策定中と報じている。その内容は個人所得税の課税最低限の引上げ、賃金の広範囲の引上げ、低所得層への補助を長期有効に保障するメカニズムの確立、住宅補助の基準引上げ等に及び、中央経済工作会議で議論されることになっている。
[2] これは当局が失業者による暴動を恐れていることを示すものである。
[3] 日経2008年12月8日は、その後投資総額は更に上積みが進み29兆2300億元に達していると報じている。
[4] たとえば、国務院発展研究センターマクロ経済研究所の張立軍研究員(中国新聞網2008年11月24日)。
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