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農業・農村金融サービスの強化

中国ビジネスレポート マクロ経済
田中 修

田中 修

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2014年5月12日

記事概要

4月22日、国務院弁公庁は「『三農』発展への金融サービスに関する若干意見」を公布した。これに併せ同日、国務院は全国農村金融サービス経験交流テレビ電話会議を開催し、李克強総理・馬凱副総理が重要指示・講話を行った。また、人民銀行は4月25日、県域農村商業銀行の預金準備率を2ポイント、県域農村合作銀行の預金準備率を0.5ポイント引き下げた。これらはいずれも、4月16日に国務院常務会議で決定された景気テコ入れ策の具体化である。本稿では、その概要を紹介する。【3,182字】


はじめに
4月22日、国務院弁公庁は「『三農』発展への金融サービスに関する若干意見」を公布した。これに併せ同日、国務院は全国農村金融サービス経験交流テレビ電話会議を開催し、李克強総理・馬凱副総理が重要指示・講話を行った。また、人民銀行は4月25日、県域農村商業銀行の預金準備率を2ポイント、県域農村合作銀行の預金準備率を0.5ポイント引き下げた。これらはいずれも、4月16日に国務院常務会議で決定された景気テコ入れ策の具体化である。本稿では、その概要を紹介する。

1.国務院弁公庁「『三農』発展への金融サービスに関する若干意見」(4月22日)
国務院弁公庁は4月22日、「『三農』発展への金融サービスに関する若干意見」(以下「意見」)を公布した。これは農村融資資金の供給を増やし、資金供給方式を刷新し、金融サービス体系を整備する詳細計画である(経済参考報2014年4月23日)。
経済参考報によれば、意見で提起された主な内容は以下のとおりである。

①銀行が特別に「三農」(農業・農村・農民)に用いる金融債を発行し、農業関連資産の証券化テストを展開することを支援する。
②「三農」金融サービスの要求に適合する県域農村商業銀行・農村合作銀行に対し、預金準備率を適切に引き下げる。
③監督管理要求に合致した県域銀行が貸付を拡大することを支援し、引き続き預貸比率を引き上げる。
④貸出メカニズムを整備し、農業関連業務の全面的なリスク管理を強化する基礎の上に、商業銀行が農業関連の貸出計画を独自に策定することを奨励し、貸出の審査・許認可権限を下放委譲する。
⑤農業産業投資基金、農業私募株投資基金、農業科学技術創業投資基金の設立を奨励する。
⑥主として「三農」にサービスするファイナンスリース会社の設立を支援する。
⑦政府出資を主とし、農業関連の保証業務を重点的に展開する県域融資性担保機関或いは担保基金の設立を奨励し、その他融資性担保機関が農業の生産・経営主体のために融資保証を提供するサービスを支援する。
⑧マイクロファイナンス会社の発展を規範化し、プラス方向の奨励メカニズムを確立し、資金調達ルートを拡大し、管理政策を整備する。
⑨財政補助政策を整備し、コスト・リスクを合理的に補償する基礎の上に、辺境の郷鎮全てを末端金融サービスでカバーする施策を引き続き推進する。

2.国務院全国農村金融サービス経験交流テレビ電話会議(4月22日)
農業部・人民銀行・銀行業監督管理委員会・証券監督管理委員会・保険監督管理委員会及び一部地方政府・金融機関のメンバーが参加した。

(1)李克強総理の重要指示
「三農」は政府活動の重点中の重点である。「三農」に対する金融支援を強化することは、食糧安全保障の強化、現代農業の建設、農民所得の増加、都市・農村格差の縮小にとって重要な意義を有する。「三農」を発展させるという要求から出発し、農村金融改革を深化させ、農村金融市場を育成し、農業関連貸出と政策支援を強化し、差別化した預金準備率制度をしっかり実施し、金融の監督管理とリスク防御のメカニズムを整備しなければならない。農業関連金融機関はインクルーシブ(普く恩恵が及ぶ)ファイナンスの理念を樹立し、自身の優位性を十分発揮し、経営の重心を末端に向けるよう努力し、農業から乖離してはならず、農業に多く恩恵を与え、農村金融サービスの能力・水準を不断に高めなければならない。

(2)馬凱副総理の講話
各地方・各部門・金融機関は、李克強総理の重要指示の精神を真剣に貫徹実施し、農村金融サービスを強化・改善することを1つの系統的プロジェクトとし、目標を定めて施策を発動し、実務にしっかり励み、実効が上がるよう努力し、「三農」への金融サービスの能力・水準を全面的に引き上げなければならない。
当面、農村金融サービスをしっかり行うには、以下の施策への取組みに力を入れなければならない。

①農村金融改革を深化させる
農村信用社・農業発展銀行・農業銀行の優位性と商業銀行の役割を十分発揮させて、社会(民間)資本が農村金融分野に参入するよう奨励・誘致し、「三農」支援への凝集力を形成する。
②多様なルートで資金を調達する
「三農」への貸出は増やすのみで減らしてはならず、食糧生産・現代農業・農業科学技術の開発・農村インフラ建設等の分野に重点的に投下する。
③農村金融サービスのイノベーションを積極的に奨励する
農村のインクルーシブファイナンスを発展させ、末端金融サービスの行政村へのカバー・延伸を促進する。
④農業保険を大いに発展させる
農業大災害保険制度を確立し、農業保険商品を豊富にする。
⑤農村の金融環境を改善する
農村金融の消費者権益を保護し、システミック・地域的リスクを発生させない最低ラインを固守する。
⑥農村金融に対し、優遇した財政・税制、不良債権償却、預金準備率、預貸比率等の政策を実行する

3.「三農」向け預金準備率の引下げ(4月25日)
人民銀行は4月25日、県域農村商業銀行の預金準備率を2ポイント、県域農村合作銀行の預金準備率を0.5ポイント引き下げた。これに対する人民銀行スポークスマンの解説は以下のとおりである。

①今回の措置は金融政策の緩和或いは転換を意味するのか?
県域農村金融機関に係る今回の準備率引下げは、国務院常務会議及び全国農村金融サービス経験交流テレビ電話における馬凱副総理の講話精神を貫徹実施したものであり、「三農」発展に対する金融支援を強化し、農業関連貸出を増やすよう誘導する構造調整措置であり、金融政策の方向の改変を意味せず、銀行システムの総体としての流動性に影響を与えるものではない[1]。当面、人民銀行は穏健な金融政策を引き続き実施し、適度な流動性を維持し、マネー・貸出及び社会資金調達規模の合理的な伸びを実現する。

②今回の調整政策は、なぜ県域農村商業銀行・合作銀行のみ考慮したのか?
都市にある農村商業銀行、農業合作銀行と比べ、法人が県域に存在する農村商業銀行と農業合作銀行は農業関連貸出のウエイトが高く、農業支援力が大きい。これらの県域農村金融機関に対し預金準備率の調整を進めることは、「農業・農村支援」という政策の方向性を強化し、県域農村金融機関の財務実力と「三農」発展を支援する能力を高めるのに資するものであり、貸出資源が更に多く「三農」と県域に向うよう誘導するきっかけとなり、実体経済への金融のサービス能力を増強するものである。

③今回の政策と既往の「三農」発展を支援する準備率政策との関係如何?
人民銀行はずっと差別化した預金準備率政策を運用し、「三農」発展への金融支援を強化してきた。2003年以降、農村金融機関に対し比較的低い準備率を執行し、2010年には県域法人金融機関が新たに増えた預金の一定比率を現地での貸出に用いることを奨励する政策を打ち出し、県域に設立され一定比率の預金を現地に貸し出す農村法人金融機関に対し、比較的低い預金準備率を執行する基礎の上に、さらに準備率を1ポイント引き下げた。
今回、県域に係る農村金融機関の準備率の調整を進めたのは、貸出資源が「三農」と県域に向かうよう更に奨励・誘導する措置であり、2010年に打ち出した一定比率の預金を現地に貸し出すことへの優遇政策に更に追加して執行するものである。すなわち、調整後、県域農村商業銀行・農村合作銀行はそれぞれ16%・14%の準備率が執行され、そのうち一定比率の預金を現地に貸し出す基準を満たした県域農村商業銀行・農村合作銀行にはそれぞれ15%・13%の準備率が執行されることになる。

(4月28日記 2,182字)

[1]証券日報2014年4月23日によれば、準備率引下げにより解放される資金は1248億元を超えない

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