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2007-08経済諸会議の動向(1)

中国ビジネスレポート マクロ経済
田中 修

田中 修

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2008年1月24日

記事概要

 国家発展・改革委員会の馬凱主任は、「2008年の国際情勢の複雑性と不確定性について十分推し量る必要があり、複雑困難な局面及び各種の突発事件に適切に準備を整えておく必要がある」とし、国内については、経済発展が少なからぬ挑戦(試練)とリスクに直面しているとして、次の5点を指摘している。

1.全国発展・改革工作会議(2007年12月7日)

 

 1.1 経済のリスク

 国家発展・改革委員会の馬凱主任は、「2008年の国際情勢の複雑性と不確定性について十分推し量る必要があり、複雑困難な局面及び各種の突発事件に適切に準備を整えておく必要がある」とし、国内については、経済発展が少なからぬ挑戦(試練)とリスクに直面しているとして、次の5点を指摘している(新華社2007年12月7日)。

(1)経済成長がかなり速い(状態)から過熱に転ずる危険性は依然存在する

 投資の膨張圧力は依然かなり大きく、貸出は依然かなり速い。金利・預金準備率を何度も引き上げるにつれ、流動性回収の政策余地は更に狭くなっている。

貿易黒字がなお拡大しており、外貨が過剰となり、過剰流動性が激化している。これがまた投資の拡張を支えており、工業とりわけ重化学工業の成長が速すぎる重要な原因となっている。

(2)物価の上昇圧力が更に顕著になっている

 消費者物価の総水準が持続的に上昇し、生産財の価格上昇が加速している。住宅価格も持続的に上昇している。

(3)省エネ・汚染物質排出削減の情勢が依然峻厳である

 1-9月期において、重工業の成長は19.6%であり、経済成長率よりも8.1ポイントも高い。6大エネルギー多消費業種の投資は前年同期比22.6%増で、伸びが4.5ポイント高まっている。

省エネ・汚染物質排出削減を促進し、落伍したものを淘汰する体制メカニズムと政策はなお不完全であり、企業が進んで落伍した生産能力を淘汰し、エネルギー多消費・高汚染製品の生産を緩和する動力が不足しており、汚染処理施設の建設は依然立ち遅れている。

(4)農業の安定的発展と農民の持続的な増収の難度がかなり大きくなっている

 工業化・都市化が加速し、農業が日増しに国際化している背景下、農産品の貿易競争は激化し、耕地の保護は巨大な圧力に直面しており、加えて異常気象が頻繁に発生するため、農産品の需給均衡を保障することは難度が増している。

農産品市場の構造的変化、農業生産要素の外部流出の激化により、農業に対する資源環境と市場の制約が強くなっている。非農業産業に移転就業するには、なお体制面の障害が存在し、中西部地域の農民の増収はかなり多くの困難に直面している。

(5)民生領域でなお少なからぬ解決を要する問題が存在する

 就業圧力は依然大きく、教育・医療・社会保障・所得分配・住宅保障等社会の調和に影響を与える要因が依然かなり多く、製品の質と食品の安全問題が比較的際立っており、安全生産に少なからぬ隠れた弊害が存在する。

 

 1.2 2008年の発展政策

 馬主任は、以下の8方面の工作をしっかり行うよう指示した。

①経済過熱とインフレの防止のため、引き続きマクロ・コントロールを強化・改善する

②農業インフラを強化し、新農村建設をしっかり推進する

③消費需要の拡大に力を入れる

④更に有力な措置を採用し、省エネ・汚染物質排出削減を推進する

⑤産業構造と市場競争力を引き上げる

⑥地域の調和のとれた発展を推進する

⑦改革を深化させ、開放を拡大する

⑧民生の改善と社会の調和の促進の施策を強化する

 なお、国家発展・改革委員会経済体制・管理研究所の専門家は、「GDPと消費者物価の目標は既に確定した。成長率目標は9-10%、消費者物価の抑制目標は4-4.5%となるだろう」と述べている(中国経済網2007年12月7日)。

 

 1.3 2008年の改革

 以下の7点に重点が置かれている(新華社2007年12月9日)。

①経済体制改革の年度意見の策定を急ぎ、総合改革実験作業の取り組む

②新しい「政府認可投資プロジェクト目録」を制定・実施、届出制を規範化する

 大型プロジェクトの公示制度と責任追及制度を作る。

③資源性製品の価格改革と環境保護の費用徴収を管理しながら段取りを追って進める

④電力産業の改革、鉄道体制の改革、郵政体制の改革、電器通信企業の改革を進める

⑤社会事業分野の改革を加速する

 医療衛生体制の改革を深化させる

⑥中小企業成長プログラムを実施する

⑦法制整備作業を強化する

 

2.発展改革工作座談会(2007年12月7日)

 国務院が主催し、曽培炎副総理が次の6点を指示した(新華社2007年12月7日)。

①総量の均衡維持、構造改善、資源節約、良好な生態環境、民生の改善の基礎の上に、経済の良好で速い発展を実現する

②内需の拡大を主要な方向とし、省エネ・汚染物質排出削減を重点とし、自主的な創造・革新(イノベーション)を重大任務として、経済発展方式の速やかな転換を推進しなければならない

③活力の充満した基本経済制度、コストを完全に反映できる現代市場システム、全面的で調和のとれた持続可能な発展に資する財政・税制、平穏でかなり速い発展を促進するマクロ・コントロール体系を含む健全な体制メカニズムの確立に力を入れる。

④対外開放方式を刷新し、わが国の比較優位を更に発揮し、国際収支の基本的均衡を促進し、国家の経済安全を擁護する

⑤社会事業の発展を加速し、しっかり計画を立て、投入を増加し、政策を整備し、改革を推進して、調和のとれた社会の建設を積極的に推進する

⑥マクロ・コントロールの方法を改善し、経済的手段を更に多く運用してコントロールを行い、経済社会の各領域の総量の基本的均衡を実現する

 

3.全国物価局長座談会(2007年12月9日)

 国家発展・改革委員会の畢井泉副主任は、次のように語った(人民網北京電2007年12月9日)。

 「今年の物価上昇の来年への影響はかなり大きい。加えて、国際市場での取引の多い商品の価格が上昇しており、国内市場の需要は旺盛であり、資源性の製品価格と環境保護の費用徴収の改革等の要因の影響があるため、来年の物価総水準の上昇圧力は依然かなり大きく、物価の構造的上昇が明らかなインフレに変化することを防止する任務を達成するのは相当困難である。しかし、物価総水準の基本的安定の維持にとって有利な多くの条件もある。わが国の穀物が連年豊作となっており、重要物資の需給は充足している。国家の財力にはゆとりがあり、穏健な財政政策と引締め気味の金融政策が実行されること等である。努力を通じて、明らかなインフレを防止するという目標は実現可能である」

 そして、各レベルの物価主管部門は2008年に次の5点の施策をしっかり行わなければならない、とする。

①物価の総水準の速すぎる上昇を抑制する

 物価の萌芽的・傾向的な変化のモニターを更に強化し、国際市場で取引の多い商品の課価格動向に密接に注意を払い、物価モニター・事前警告・応急メカニズムを健全化する。国務院が確定した生産発展・供給保障の各措置を真剣に実施する。輸送をうまく手配し、備蓄システムを整備し、庶民の生活必需品・重要消費品の供給を保障する。政府が管理する重要商品とサービスの価格の調整の程度とテンポを合理的に把握する。

②農業関連の物価管理をしっかり行う

 主産地のモミ・小麦の最低購入価格政策を引き続き実行し、状況に応じてモミの最低購入価格水準を適当に引き上げる。農業用電力・用水価格政策を整備し、化学肥料等の農業生産財価格を安定化する。豚の生産を安定化する長期的に有効なメカニズムを整備する。主要農業副産品の輸送過程における税・費用の減免政策を引き続きしっかり実施する。

③資源性製品価格と環境保護の費用徴収改革を推進する

 石油・天然ガスの価格形成メカニズムの改革を徐々に推進する。一部の地域の電力価格の際立った矛盾を適時に取り除き、電力価格の分類構造を統合する。環境保護の費用徴収改革を加速し、徴収基準を引き上げ、徴収方式を改革し、徴収範囲を拡大する。

④民生物価問題を解決する

 薬価の形成メカニズムの改革を積極的に推進し、教育の費用徴収の管理を強化する。不動産市場の価格の監督管理を強化する。価格の調整による低所得層・公益事業への影響を妥当に処理する。

⑤市場価格秩序を規範化する

 

4.全国財政工作会議(2007年12月19日)

 

 4.1 2007年1-11月の財政状況

 謝旭人財政部長によれば、1-11月の全国財政収入は4兆8177.12億元であり、前年同期比33.5%の高い伸びとなった。年間の全国財政収入は5.1兆元を超えるものと見られている。

 全国財政支出は3兆7084.77億元であり、主な重点支出は次のとおりである(人民網北京電2007年12月19日)。

 農林・水産   2360.97億元(前年同期比31.4%増)[1]

 教育      5578.19億元(  同  32.7%増)

 医療衛生    1418.85億元(  同  40.6%増)

 社会保障・就業 4128.46億元(  同  28.6%増)

 科学技術    1173.93億元(  同  33%増)

 この財政収入の高い伸びについて、財政科学研究所の賈康所長は、「財政収入の大幅な伸びは、主として税負担の増加ではなく、印紙税等の特殊要因によるものである。特殊要因は全体の伸びの4分の1を占めており、これを除いた伸びはおおよそ24%である」とし、中国税務学会副会長の安体富人民大学教授は、印紙税率引上げによる増収を300億元前後と推計している(第一財経日報2007年12月20日)。

 

 4.2 2008年の財政政策の基本方針

 2008年も引き続き穏健な財政政策を実施し、マクロ・コントロールにおける財政政策の役割を更に発揮させる。

 今後一時期、財政部は不断にマクロ・コントロールを強化・改善し、税制・予算・国債・利子補填・移転支出・政府購入等の多様な手段を総合的に運用し、かつ金融政策・産業政策との協調的組み合わせを重視して、経済構造調整と発展方式の転換に力を入れる。

 2008年は、穏健な財政政策を更に整備・実施し、財政赤字と長期建設国債の規模を適切に減少する。中央の基本建設投資は、農村の生産・生活条件の改善、生態環境保護、社会事業の領域と重大インフラの建設に重点的に用いる。財政支出の規模を合理的に把握し、構造調整と調和のとれた発展の促進に力を入れ、支出構造を改善し、社会保障・衛生・教育・住宅保障等の方面の支出をかなり大幅に増やす。

 2008年の財政によるマクロ・コントロールは、経済構造の調整・改善に一層力を入れる。財政部は「三農」への投入を増やし、科学技術のイノベーションを支援し、省エネ・汚染物質排出削減を推進し、産業構造を調整する。財政移転支出を強化し、地域の調和のとれた発展を促進する。

 このほか、輸出に係る税還付・関税等の関連措置を更に整備し[2]、エネルギー多消費・高汚染・資源性製品の輸出を抑制し、高付加価値製品の輸出を支援し、資源性・省エネ・汚染物質排出削減・重要部品などの製品の輸入を奨励する。省エネ・環境保護を奨励する税制優遇策を実施する(人民網北京電2007年12月20日)。

 財政・税制政策は物価安定方面で更に役割を発揮する。財政・税制をテコとして、穀物・食用油・肉等の農産品の生産を大いに支援し、基本生活の必需品の供給を保障し、物価の速すぎる上昇を抑制する。必需商品の輸入・備蓄物資の放出などに関連した財政施策をしっかり行い、市場の需給均衡と物価の基本的安定を促進する。物価上昇の民生への影響に密接に関心を払い、タイムリーに各種の財政補填政策を実施し、生活困難層の基本的生活を保障する(中国証券報2007年12月20日)。

 

 4.3 民生問題の改善(中国証券報2007年12月20日)

(1)医療・衛生

 衛生への投入を強化し、公衆衛生サービス体系の建設を強化する。

 2008年は、新型農村共同医療制度を全面的に実施し、財政補助の基準をかなり大幅に引き上げる。都市住民の基本医療保険テストを拡大し、新型農村共同医療制度と同歩調で財政補助の基準を引き上げ、中央財政・地方財政・個人の3者による資金分担の仕組みを確立する。

 政策的に閉鎖・破産させられた国有企業の退職者で保険未加入の者を都市従業者基本医療保険システムに組み入れ、中央財政が適切な補助を与える。健全な都市・農村の医療救助制度を支援する。

(2)社会保障

 2008年は、農村最低生活保障制度を全面的に確立・整備し、中央財政の補助金の分配方法を改善し、地方財政の投入を強化する。都市住民の最低生活保障制度を健全化する。

 企業従業者の年金保険制度を整備する。企業退職者の年金水準を引き続き引き上げ、中央財政は財政に真に困難を抱えている中西部地域・旧工業基地に引き続き適切な支援を与える。失業保険制度を更に整備する。

 このほか、2008年は低家賃住宅の保障を更に強化する。国務院の規定に厳格に従った資金ルートにより低家賃住宅保障の資金を調達し、低家賃住宅建設等の面における税制・費用の優遇策を実施し、都市低所得家庭の住宅難を速やかに解決する。

(3)教育

 2008年春学期から、中央財政・地方財政はそれぞれ所管の農村義務教育課程の教科書無料化資金を手当する。家庭の経済が困難な学生の寄宿生活費補助を更に実施する。中央財政は、中西部地域に50%の奨励的補助金を支給し、省レベルの財政は地方が負担すべき資金を確保する。東部地域の所要資金は地方財政が負担し、中央財政は適切に奨励金を与える。

 中央は、2008-09年に農村義務教育段階の小中学生の1人平均公用経費の基準額を定め、中央と地方の経費分担率は国務院の関連規定に基づき執行する。中西部地域の農村小中学校の校舎修繕・改造の基準単価を引き上げる。

 教育部直属の師範大学において、引き続き学生の授業料免除を実施する。大学・高等職業学校・中等職業学校の家庭の経済が困難な学生に全面的に資金援助を行う。

 

 4.4 2008年の財政・税制改革(新華社2007年12月19日)

(1)税制改革

①2008年1月1日から、新しい企業所得税法及び関連措置を全面的に実施する。

②増値税の転換改革テストを東北地方の旧工業基地及び中部の26の旧工業基地の8業種で引き続き実施し、テストを全国で推進するための方案を検討・制定する。

③資源税等の改革案は現在、上申・審査中である。従価により税額を計算し、資源を保護する。

④新しい耕地占用税条例を実施する。

⑤内資・外資企業の都市建設税・教育費附加制度の統一を検討する。

⑥個人所得税改革を推進し、個人所得税の所得分配への調節作用を強化する[3]

(2)財政体制改革

 基本的な公共サービスの均等化と主体的機能区の建設を中心に、財政体制改革の整備、予算制度改革の深化、農村総合改革の範囲拡大、所得分配制度改革の推進、金融体制改革の深化等多くの措置を通じて、科学的発展に資する財政・税制制度を徐々に構築する。

(2007年12月記 5,739字)


 


[1]  中央財政の「三農」関連支出は年間で4318億元と見込まれており、前年同期比22.8%増となっている。
[2]  財政部は12月20日から小麦・モミ・米・トウモロコシ・大豆など84種の穀物及びこれから製造した粉の輸出に係る税還付を取り消している(国際金融報2007年12月19日)。
[3]  これに関連し、現在給与所得控除の限度額を1600元から2000-2500元に引き上げる改正案が12月下旬に開催される全人代常務委員会で審議されるのではないか、という報道が出ている(広州日報2007年12月20日、上海証券報同日)。なお、上海証券報によれば、2006年1月1日の控除限度額の800元から1600元への引上げでサラリーマンの納税者は全体の60%から26%に減少し、税収は280億元前後減少したという関係部門の試算を紹介している。

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