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ログイン2008年1月29日
「外商投資」、「貿易」、「税務」、「労務」など各分野での新しい法規定の最近の動向です。担当は上海開澤(ジョイ・ハンド)法律事務所です。
外商投資
新「外商投資産業指導ガイドライン」
☞ 特定分野のサービス業の更なる開放
1、 「外商投資産業指導ガイドライン(2007年改正)」(「新ガイドライン」という)は2007年12月1日から実行された。中国政府は環境保護、人民元切上げなどの要因を考慮して、新ガイドライン領布前から外資における生産型投資企業政策の変化をPRしているので、外資系の生産型企業が注目すべき新ガイドラインの重点はそれほどないと思われる。(事実上、新ガイドラインが増加した制限類生産型企業としての外商投資は実務上すでにほぼ飽和状態となっている。)
2、 ただ、注目すべきものは、新ガイドラインに「請負サービス」、「現代物流」などを奨励項目に分類していることであり、当所の調査分析によると、以下業界の外商投資は更に開放される可能性がある。
業種 | 投資可能な領域 | 投資提案 | コメント |
情報技術 | 情報システム管理、情報技術請負サービス、情報技術育成訓練等 | 経営範囲の増加 | |
人的資源 | 人材請負サービス、人材育成訓練等 | 株権譲渡或いは買収 | 人材サービス業界の投資は未だに一定の条件制限を受けている。
例:資質(ライセンス) |
投資型企業 | 情報管理、財務情報の請負などの業務を含む | 経営範囲の増加 | 投資型企業に関する規定ではすでにこれを明確にしている。 |
3、 業務コンサルティングと情報コンサルティング間の業務に関しても、広げられる可能性がある。
「税関総署広告2007年第67号」
☞ 外資免税項目の具体的範囲を明確化
1、 「外商投資産業指導ガイドライン(2007年改正)」の実行に伴って、外資免税項目の具体的範囲もそれに応じて調整された。具体的内容は以下の通りである。
実施時期 | 分類項目 | 根拠 | コメント |
2007/12/01以後 | 奨励類 | 新ガイドライン | 課税商品を除く |
2007/4/1-2007/11/30 | 奨励類 | 2002ガイドライン、2004ガイドライン | 2008/12/31以前に税関に免税申請が必要 |
2、 各地商務部門或いは税関の「輸入設備に伴う技術、部品、予備品」(当該技術、部品、予備品も免税範囲に属している)に対しての認定標準が異なっている。実務上、設備と同時に輸入されていない部品は免税できないというケースが存在している。当所の経験によれば、リスクヘッジのキーポイントは設備輸入契約に対して合理的なスキーム構成を行うことにある。
「2007年第二回加工貿易禁止類商品目録(輸出禁止)」
☞ 589種類の商品が対象
1、 当該目録に関する業界は化学工業、冶金業などを含む。
2、 2008年1月21日以前に届出済みの加工貿易契約は当該目録の制限を受けない。加工貿易は税関照合、税金還付等の行政部分に関わっているが、実務上各行政部門の対策に対する理解が異なっているため、2008年1月21日以前に届出済みの加工貿易契約でも他の行政部門に制限される可能性があり(例えば、税務局が目録に基き、税金還付を却下するなど)、これには注意を払ってください。
3、 税関が監督管理している区域(保税区、輸出加工区)の加工貿易の政策と区外一致を維持しようとしている。
4、 中国政府は実際の状況に基づいてこのような目録に対して修正を行うため、新設加工貿易業務の開拓を準備している外資生産型企業は経営範囲を慎重に選ぶ必要がある。
「『中華人民共和国税関の加工貿易貨物に対する監督管理方法』に関する改正」
☞ 「輸出加工」における規制緩和
1、 当訂正は従来の「輸出加工」に対する一定の制限の取り消しを決定付けた。その概要は以下の通りである。
要点 | 新決定 | 旧決定 |
加工工程に対する要求 | 特定の工程に限定していないため輸出可能な加工範囲が拡大した | 特定の工程に制限していた |
発注に対する要求 | 生産条件を限定するが厳格ではない | 生産条件審査を厳格に行っていた |
加工実行期限 | 特に強調していない | 加工マニュアル有効期限内に実行する必要があった |
切れ端の処理 | 批准のもと、自ら処理ができる | 送り返す必要があった |
2、 当訂正は輸出加工区の生産型投資企業の業務状態にある一定の影響を与えることを決定づけた。実務上税関及び外国為替管理局は加工貿易の精算管理システムに適当な調整をする可能性があると推測できる。
上海
☞ 外商投資企業・保税区企業の非経営性分公司設立の禁止
1、 2007年11月末より、上海市工商局はすでに外商投資企業が上海当地に非経営分公司を設立することを禁止している。「公司登記管理条例」第46条の規定によれば、分公司は企業がその住所以外に設立した経営活動に従事する機構である。2007年11月以前に批准された非経営性分公司においては現状維持しても良い。
2、 各地で企業登記管理条例に対する理解が異なるため、上海に登録している外商投資企業は依然として他の地域において非経営性分公司の設立ができる。
輸出入
「2008年関税実施方案」
☞ 輸出入商品の最新関税税率を確定
中国政府が産業構造の調整を行ったことを背景として、当方案の実施は現行輸出還税政策に重要な影響を与える。具体的輸出還税優遇措置は随時調節される可能性があり、それによって外商投資企業の生産、加工原価が増加する可能性が出てくる。
「外商投資企業の課税輸出品に関する徴税を明確にする公告」
☞ 輸出徴税を強化
1、 輸出徴税商品の範囲が拡大した。
2、 関税納付に間に合わなかった場合による滞納金、信用度低下などのリスクが起こり得ることを考慮して、外商投資企業は輸出商品の事前分類、申告などの業務を前もって行う必要がある。一旦トラブルが発生しても対応時間で余裕をもつことができる。
税務
「国務院の企業所得税経過優遇政策の実施に関する通知」
☞ 生産型外資企業への猶予措置を明確化
1、 当通知は低税率及び定期的免税優遇政策を享受している企業に対して過渡期を設定した。具体的内容は以下の通りである。
原税率 | 過渡期 | 過渡税率 |
15%
|
2008年 | 18% |
2009年 | 20% | |
2010年 | 22% | |
2011年 | 24% | |
2012年 | 25% | |
1、 定期的免税 | 既に享受しているものは継続できる。
まだ享受していないものは2008年より享受できる。 |
|
24% | 2008年よりð 25% |
上述の過渡期は主に生産型企業、且つ2007年3月16日以前に営業許可書を取得したものに対するものである。従って新所得税法が生産性型外商投資企業に与える影響は今のところあまりない。
2、 過渡期は貿易型企業に適用しないため、厳密に言えば、保税区内に登録した外商貿易企業の所得税税率は2008年から直接25%引き上げられることになり、税金は10%増加する。(原所得税税率は15%である。)現在、保税区内に登録している大部分の外商貿易企業であるため、税金の引き上げはこのような企業の運営コストを増加させてしまう。
3、 保税区又は浦東新区政府がどのような財政補助金を出すかが、まだ不明であるが、もし保税区当地政府が積極的に財政補助措置を以って対応しなかった場合には、保税区はもう外商貿易企業登録の優先区域になり得ないのではないかという見方もできる。
「新設立ハイテク企業に経過優遇税制を実行する通知」
☞ 特定区域のハイテク企業に更なる優遇税制を実施
当該通知は特定区域のハイテク企業により優遇税制措置を与えるもので、概要は以下の通りである。
新税法 | 当該通知 | |
適用区域 | 全区域 | 深圳、珠海、汕頭汕头、厦門と海南経済特区 |
浦東新区 | ||
税率 | 15% | 2免(0%)3減半(12.5%) |
1、 より優遇税制措置を与えることになるが、実務上当該措置を享受できる公司の数は少ないと思われる。以下の要因は重点として考慮すべきである:①ハイテク企業に対しての認定標準が比較的高い。 ②特定区域内で取得した収入に限るので、他区域で取得した収入は当該措置に適用しない。 ③優遇期間中、ハイテク企業の認定は持続すべきであり、中断してはならない。
2、 当所の経験上、実際に税収優遇措置に符合する条件を揃えていても、なお、省級国税部門の批准が必要であるため、実質上手続きの難度を増加させる結果になる。
3、 今後の実践中、当該優遇措置は内資公司に有利になるという見方もある。
外商投資企業及び外国企業は耕地占用税収の納税義務者へ
改定された「中華人民共和国耕地占用税暫行条例」によると、外商投資企業と外国企業も耕地占用税の徴収範囲内にある。同時に、耕地占用税税額標準はおよそ4倍になる。これは外資の土地や工場の購入に対して生産型企業の設立費用が増加することを意味する。
【コメント】
地方政府による耕地の工業用地化を制限するための一環として、税金面において耕地の工業用地化のコストを増加させる狙いである。
労務
年次有給休暇制度の問題点
☞ 年休制度の運用に注意
日系企業は、派遣会社から従業員を受け入れている場合、派遣会社の制度より従業員にとって有利な年休制度を実施しているところもあるものの、出勤率などによって、これまでは法的義務ではなくとも、年休を与えてきた。
2008年1月1日から施行される「従業員年次有給休暇条例」では、すべての企業及びその他の雇用者は年休を与えなければならないことを義務付けたところは良いとするが、他の企業よりもいち早く、しかも有利な日数の年休を与えて日系企業をはじめ外資系企業にとって、法定基準以上に与えている年休制度が逆に裏目に出るおそれがあり大きな遵法負担となるリスクになりかねない。
各種不明確な問題、更には矛盾する問題が存在している。当問題はさらに調査する必要がある。
1、 矛盾点
享受の前提条件のところ、第2条と第3条に同じ意味で「継続」と「累計」を使っている。
第2条:継続就労期間 満1年
第3条:累計就労期間 満1年
当所の理解:労働法の原規定は「連続就労期間満1年」であり、第2条は労働法一致を保持するためのものである。立法者の本意は累計就労期間が満1年であれば、享受できることにあるため、異なる勤務先での労働を含むことになる。
2、 不明朗な点
どのように従業員の累計勤続年数を証明するのか?実践中の各地の基準が違う。(労働手帳がない地域もあるため、証明できない。)
第4条「累計病気休暇」の概念がはっきりしてしない。従業員が他部門で就労した期間内の病気休暇を含むべきか?
当所の理解:その年内の累計病気休暇で享受できる休暇を指すべきである。
第5条「300%の年次休暇給与報酬」の適用範囲がはっきりしていない。企業が自ら規定した条例最低休暇日数を超過した日数も当該範囲に属すのか?
当所の理解:含むべきである。未使用の超過休暇にも300%の報酬を支払うべきである。
3、 リスク
勤続年数累計計算のため、新卒より途中採用を好み勝ちであるが、途中採用の場合には、比較的重い休暇付与の義務を負うことになる。
300%報酬の問題により、比較的休暇が多い企業はさらに大きいリスクを負うことになる。当所の提案としては、超過した条例最低休暇日数について、企業はこれに対して「年次休暇」とのタイトルをつけてはならない。
労働部・「従業員年間月平均労働時間と給与換算問題に関する通知」
☞ 残業手当の計算等に影響
「月計給日数」(21.75日)という概念を明確にした。
1、 21.75日は残業手当の計算基数となり、企業は残業手当を少なく支払うことになる。(従来は20.92日を基数としていた。)
2、 従業員の日給収入が若干減った。(日給=月給収入÷月計給日数<21.75日>)(従来は20.92を基数としていた。)
【コメント】
労働部の通知で、いずれ上海市でも実施される方向にあるが、今のところでは、上海市ではまだペンディングのままである。
「中華人民共和国労働議論仲裁法」
☞ 労務人事に影響
当該法律は2008年5月1日より施行され、雇用者側には以下の影響を与える可能性がある。
1、 部分裁判事件に対して条件付の「終局裁判」を実行する。このような裁判事件は給料延期、医療費、経済補償或いは賠償金;就労時間の争議;社会保険の争議を含む。
【コメント】
高い比率で従業員に負けている企業の対抗手段の一つとしては、持久戦に持ち込むことで従業員との和解を促すことだったが、持久戦はできなくなる。
また、法的判断を行う裁判官と比べ、法的判断より従業員側に立っていることもすくなくない仲裁委員が、本当に適切な仲裁ができるかどうかが疑問視される。
2、 仲裁申請の時効期間の延長は1年である。
【コメント】
今まで60日というきわめて短い労働仲裁案件の時効は、1年まで延長される。
3、 審理期限は最長60日を超えてはならない。
4、 無料仲裁。
【コメント】
300人民元の仲裁費用を納付する必要がなくなった。
5、 一部裁判事件に対して支払命令の申立てができる。このような裁判事件は給料延期、医療費、経済補償或いは賠償金を含む。
【コメント】
今までのより従業員の労働仲裁の申立て安さを一層強化されたものである。
今後、採用試験・面接という入口のところで、対抗意識の強い従業員を選別することも非常に重要となってくるであろう。
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以上の情報は、事務所の正式な法律意見ではなく、参考として提供するものであることを申し添えます。(2008年1月記 5,194字)
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