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ログイン2018年2月26日
日系企業が所有する高い技術力は、中国において最も市場競争力を向上させ、その価値によって大きな経済的利益をもたらす要素の1つである。そのため、これが流出してしまうと、その損失は多大なものとなるケースも多い。
技術情報は営業秘密の一種であり、企業は保護の重要性を認識しているものの、どのような情報が営業秘密となるのか、その領域や、社内人員や取引先への情報公開方法、制限領域、情報流出の経路、漏えいの防止策、漏えい発覚後の対応方法等、明確に理解して制度を構築している会社は非常に少ない。
また、中国へ進出してから10年~20年となる日系企業も多く、必然的に、中国人スタッフの管理層、営業部、技術部のトップ人員も増えている。その人員流出(他社からの引き抜き、給与待遇の不満、不正関連トラブルによる解雇などの理由)は避けられない現状だが、やはり、時間をかけて育てた人材がライバル企業へ行くのは手痛く、更に、顧客情報・技術情報が持ち出され、最終的に取引先を奪われ死活問題となるケースも出ている。
【事例】
A社の従業員Cは退職し、同業B社に転職した。CはA社在職中、製品のコア技術に触れる機会が多く十分な知識を得ていたことから、B社でその機密技術をやや改変させB社製品として製造・販売した。 結果、B社は巨額の利益を得た。
【分析】
一般的に、企業は自社の秘密情報漏洩が発覚後、行政官庁への救済措置の申立や裁判所への訴訟という方法で自己権益を守ることができる。だが、先ずは、自身の主張が事実である証明のため、確実な証拠収集、関連準備が必要となる。実務においては、「価値性・実用性・非公知性(機密性)・秘密保持措置」が技術秘密を構成する要素とされ、これが判断根拠となる。
訴訟において、「価値性」「実用性」に関する裁判所要求はさほど高くない。法律上、「情報が実際に経済的価値を有し、権利者に競争優位性をもたらす場合、実用性と価値性を有すると認定する」と規定されている一方、判例では、「企業の生産経営が当該技術秘密に係われば経済的価値を有する」と認定されているケースが多い。
「非公知性」は徹底されなければならないが、技術情報は専門分野であり、一般人(素人)にとって複雑・難解なものが多い。つまり、裁判官も、非公知性を判断できない場合が多い。そのため、技術鑑定機関による「司法鑑定意見書」の結果に基づき、非公知性と技術価値(機密性)を判断することになる。
行政・司法手段の他ほか、従業員や関連取引先と「秘密保持契約」、「競業避止契約」を締結、つまり社内制度の完備が「秘密保持措置」のひとつとなる。この契約書では、秘密保持の対象を明確にすることが必須である。訴訟の際に裁判所から支持を得るかどうかは契約書内容次第となる。
往々として漏洩した情報は機密とされず、従業員の誰もがアクセスできる一般情報だと詭弁される。従業員との形式的な秘密保持契約締結だけでなく、対象情報には「機密」という表示を、情報開示や管理方法においても、社内の制度完備が重要となる。
上記のとおり、立証が確実にできれば、漏洩者及びライバル企業に10万~300万元の行政処罰、また、合理的なコストを含む民事損害賠償責任(損害算出が困難な場合は300万元以下)が生じ、7年以下の懲役という刑事責任まで追及される場合もある。
万一の場合に即対応できるよう、普段からこれらを意識しておくことが大切である。
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