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プロクレーマーによる食品・医薬品に対するクレーム行為

中国ビジネスレポート 法務
王 穏

王 穏

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2018年4月11日

孫氏は知人と天津のスーパーにて2,000元の中国語表記ラベル無し化粧品を購入した後、店主に、「商品代金の10倍相当の損害賠償金を支払わなければ、市場品質監督管理局に通報し、店を閉店に追い込む」と脅迫した。店主は、やむを得ず1万元の支払いに応じた。孫氏達は、その後も、権利保護と称し同様の手口で別店に対し損害賠償請求を行ったところ、天津検察院より、当該行為が恐喝罪に相応する可能性があることから、逮捕許可が出された。
これは、司法機関がプロのクレーム行為に対して制約し始めたことを意味するのだろうか。多くの日系企業が輸入商品を取り扱っていることから、このようなクレーマー被害に遭遇する可能性は十分に考えられる。現状の司法環境において、プロのクレーマーにどのように対応しているのか分析する。

【分析】
1.昨今、司法機関は、金銭目的とした食品・医薬品に対するクレーム行為を制限し始めている。金銭目的のクレームがビジネス化されている傾向にあり、行政及び司法組織に対し悪質な影響を及ぼしている。2017年5月19日、最高人民裁判所は、徐々にこれらのクレームに対する規制の検討をしていくと言及している。

2.その他商品におけるラベル/説明書に対するクレームも徐々に規制を受け始めた。原価が安く、証拠の収集が安易なため、ラベル・説明書上の瑕疵にクレームが集中する。2015年改正の「食品安全法」では、「商品ラベル、説明書に瑕疵があるものの、商品の安全性に影響を及ぼさないものについては、県レベル以上の司法当局により訂正を命じ、購入者は、商品代金の十倍または損失の三倍の賠償金の規定を主張してはならない。」という内容が追記された。そのため、クレーム訴訟案においても裁判所は前述の賠償を否決、事業者は、商品代金を返金し、瑕疵のある部分を訂正することになる。

3.クレーム行為が規制を受けたとしても、「食品安全法」及び「最高人民裁判所の食品医薬品紛争案件適用法律の若干問題に関する規定」に基づき、事業者は食品と医薬品の欠陥によって行政責任と賠償責任を負う。商品が安全基準を満たさない場合、購入者は商品代金の十倍に相当する賠償を求めることができる。ラベル/説明書の瑕疵については、事業者の商品代金を返金、是正に応じることになる。

【弁護士提案】
▪プロのクレーム対応として、先ずは、食品・医薬品の品質が関連する法令法規に適合し国家基準/業界基準に合致しているか厳しく確認する必要がある。可能であれば、市場投入前に、第三者機関によるサンプル検査を行ったほうがよい。検査報告書は行政部門の後日の検査に備えおくこと。

▪行政機関のサンプリング検査により発生しうる商品品質上の瑕疵について、検査に協力し、自主再検査を行う場合、可能な限りサンプリング検査所在地がある第三者機構にて検査を行う。同時に、対象となる商品をすべてリコールし、行政部門と意思疎通を図り、可能な限り処罰責任の軽減/免除に努める。

▪クレームが食品の安全性に影響を与えないラベル/説明書である場合、事業者は商品代金を返金し、瑕疵の修正のみを行えばよい。尚もクレーマーから商品代金の十倍というような賠償を請求された場合、必要に応じて警察に通報できる。

【法的根拠】
「最高人民裁判所の食品医薬品紛争案件適用法律の若干問題に関する規定」
第3条:食品・医薬品の品質による紛争にて、購入者が製造者、販売者に権利を主張、生産者、販売者が商品に瑕疵があることを明らかに知った上で購入したという理由で抗弁した場合、人民裁判所は購入者の主張を支持しない。
第15条:食品安全基準に適合しない食品を製造、または明らかに基準に適合しない食品であること知りつつ販売した場合、消費者が損害賠償を請求するほか、製造者、販売者に対し商品代金の10倍の賠償金の支払い又はその他の法律基準に基づき賠償請求したものについて、人民裁判所はこれを支持する。

《食品安全法》 第184条2項
食品安全基準に適合しない食品を製造、または明らかに基準に適合しない食品であること知りつつ販売した場合、消費者は損失の賠償を求める以外に、さらに商品代金の10倍または損失額の3倍の賠償金の支払いを求めることができる。賠償額が一千元に満たない場合は一千元とする。但し、食品のラベル、説明書が、食品安全に影響なく、かつ消費者を誤った方向に導く可能性のない瑕疵については除外する。

《刑法》 第274条
恐喝により公私の財物を取得した者は、金額が比較的大きい、または繰り返し行為の場合、3年以下の懲役、拘役、又は管制に処し、罰金を併科/単科する。金額が非常に大きい、または他の重い情状がある場合、3年以上10年以下の有期懲役、罰金を科する。金額が極めて大きい、またはその他特に重い情状がある場合、10年以上の有期懲役、罰金/財産の没収を併科する。

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