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ログイン2018年4月10日
「許可・免許」は、企業が市場に進出し、経営活動を展開するための2つの「カギ」であるといえる。「許可」とは、係る各業種の主管部門によって発行される経営ライセンスを指す。「免許」とは、工商部門によって発行される営業免許を指す。2003年1月6日、国務院は無免許経営行為を規制するために、「無免許経営調査取締弁法」(以下「旧『弁法』」という)を公布した。その後、市場経済が絶えず発展し、商事制度改革が日増しに推進されるに伴い、旧「弁法」は幾度か調整されたものの、その運用において数々の問題が浮上していた。例えば、調査処分の範囲が広すぎるため、イノベーション・事業立上げ時の要求を満たすのが難しいこと、工商及び許可部門の監督管理における職責分担が不明瞭であること、係る条項が上位法と整合性がとれていないことなどが挙げられる。
このため、国務院は2017年8月6日に「無許可・無免許経営調査処分弁法」(以下「新『弁法』」という)を公布し、かつ2017年10月1日から正式に施行した。新「弁法」は、無許可・無免許経営の適用範囲、監督管理方法及び法的責任などの方面でやや大きな改正を行っている。本稿では、その具体的な内容について簡潔に分析する。
【旧】 「無免許経営調査処分取締弁法」 |
【新】 「無許可・無免許経営調査処分弁法」 |
筆者コメント |
法令名: 無免許経営調査処分取締弁法 |
法令名: 無許可・無免許経営調査処分弁法 |
■「取締り」の表面上の意味は、止めさせること、禁止を表す。新「弁法」第十条では、調査処分と指導が結び付き、処罰と教育が結び付くという原則を明確にし、許可証・免許の取得手続きを行うための法定条件を満たしており、経営者が引き続き経営していく意向がある場合には、それに対して、法に従い関連許可証・免許を行うよう促し、指導するとされており、一律に取締るのではなくなることを明確にした。従って、法令名の修正も当該調整に合わせたものである。
■旧「弁法」では、「無許可(免許を取得済み、又は免許の取得は不要である)経営」、「(許可を取得済み、又は許可の取得は不要である)無免許経営」、「無許可・無免許経営」、「抹消済み、はく奪扱い、又は経営期限満了後、再登記していない」及び「経営範囲逸脱」などのケースは、いずれも「無免許経営」の範囲に組み入れられたが、語義やロジック上、矛盾しているだけではなく、実際のところ、複数業種における無許可・無免許状況の監督管理の職責を工商部門に負担させていたのであり、法によりその他の部門の許可証を取得していない経営者に対しては「とりあえず処罰して、それでお終い」であったため、市場経営活動を確実に規範化することは難しかった。だが、新弁法では、「無許可」、「無免許」及び「無許可・無免許」という3つのケースを合理的に区分しており、立法技術上の進歩が体現されていると同時に、部門権限を明確化し、監督管理の品質を向上させることにも有利である。 |
第二条 いかなる組織及び個人も法律、法規の規定に違反し、無免許経営に従事してはならない。 | 第二条 いかなる組織及び個人も法律、法規、国務院決定の規定に違反し、無許可・無免許経営に従事してはならない。 | 適用範囲が変更され、「国務院決定」を新たに追加し、無許可・無免許経営の認定根拠として、上位の法である「行政許可法」と一致するようにした。 |
第二十一条 農民が農副産物取引市場又は地方人民政府が指定する区域内で、自己が生産した農副産物を販売することは、本弁法に定める無免許経営行為に属さないものとする。 | 第三条 次に掲げる経営活動は無許可・無免許経営に属さない。 (一)県級以上の地方人民政府が指定する場所と時間において、農副産物、日常生活用品を販売し、又は自身のスキルを活かし、法により許可の取得が不要とされる大衆に利する労務活動に従事すること。 (二)法律、行政法規、国務院決定の規定に従い、許可の取得又は登録登記が不要とされる経営活動に従事すること。 |
本条は「ネガティブリスト」の形式をもって、無許可・無免許経営の範囲に属さないものを限定している。 ■市場の活力強化、参入制限緩和という今日の改革の流れを踏まえると、筆者の理解では、国及び地方の法律法規で行政許可の取得が必須であるという明確な規定がある場合を除き、いずれも新「弁法」第三条第(二)号規定の「許可を取得する必要がない」経営活動に属すると考えられる。 ■法により「登録登記を行う必要がない経営活動」とは、主に法律事務所、非営利病院及び非営利学校などを指す。これらの機関は許可を取得した後、営業免許の取得手続きを行う必要はない。 |
第四条 次に掲げる違法行為については、工商行政管理部門が本弁法の規定に従い調査処分する。 (一)許可証又はその他の認可文書及び営業免許を取得すべきであるのに法に従い取得せず、無断で経営活動に従事する無免許経営行為。 (二)許可証又はその他の認可文書を取得する必要なく営業免許を取得できるのに法に従い営業免許を取得せず、無断で経営活動に従事する無免許経営行為。 (三)すでに法に従い許可証又はその他の認可文書を取得したが、法に従い営業免許を取得せず、無断で経営活動に従事する無免許経営行為。 (四)すでに抹消登記手続きを行い、又は営業免許を取り上げられ、及び営業免許の有効期間の満了後に規定に従い新たに登記手続きを行わず、無断で引き続き経営活動に従事する無免許経営行為。 (五)審査確認を経て登記された経営範囲を超え、許可証又はその他の認可文書を取得した場合に限り従事することのできる経営活動に無断で従事する違法経営行為。 前項第(一)号、第(五)号規定の行為については、公安、国土資源、建設、文化、衛生、品質検査、環境保護、新聞出版、薬品監督管理、安全生産監督管理などの許可・審査認可部門がさらに法律、法規で付与された職責に従い調査処分しなければならない。…… |
第五条 経営者が法に従い許可を取得せずに経営活動に従事した場合、法律、法規、国務院決定で規定した部門が調査処分する。法律、法規、国務院決定で規定がなく、又は規定が不明瞭である場合、省、自治区、直轄市人民政府で確定された部門が調査処分する。
第六条 経営者が法に従い営業免許を取得せずに経営活動に従事した場合、工商行政管理の職責を履行する部門(以下、「工商行政管理部門」という)が調査処分する。 第七条 経営者が法に従い許可を取得しておらず、尚且つ法に従い営業免許を取得せずに経営活動に従事した場合、本弁法第五条の規定に従い調査処分する。 |
今回の改正は、「無許可(免許を取得済み、又は免許の取得は不要である)経営」、「(許可を取得済み、又は許可の取得は不要である)無免許経営」及び「無許可・無免許経営」という3つのケースを合理的に区分しているとともに、それぞれの監督管理部門も明確に規定している。そのうち、 ■「無許可経営」については、法律、法規、国務院決定で定めた部門が調査処分し、規定がなく、又は規定が不明瞭である場合には、省級政府で確定された部門が調査処分する。なお、一部業種における「無許可経営」行為は、依然として工商部門の監督管理範囲に該当する。具体的には以下の通りである。 ●法律、法規及び国務院決定では、工商部門が調査処分すると明確に定めた「無許可経営」。例えば、たばこ専売小売許可証を取得せずに、たばこ製品小売業務を経営する場合、工商部門が処罰する。認可を得ずに直販活動に従事した場合、工商部門が処罰する。その他。 ●法律、法規及国務院決定では、工商部門及びその他の職能部門がそれぞれ職権により調査処分すると定めた「無許可経営」。例えば、認可を得ずに、出版、印刷又は複製、輸入、配布業務に無断で従事した場合には、出版行政部門、工商行政部門が法定職権に基づき取締りを行うと規定している。 ■「無免許経営」については、工商部門が調査処分することを明確にした。 ■「無許可・無免許経営」の調査処分は「無許可経営」と同じく、法律、法規、国務院決定の部門が調査処分し、規定がなく、又は規定が不明瞭である場合には、省級政府で確定された部門が調査処分する。 |
第九条 県級以上の工商行政管理部門は、無免許経営の疑いのある行為について調査処分、取締りを行うときは、次に掲げる職権を行使することができる。 …… (三)無免許経営場所に立ち入り、現場検査を実施する。 (四)無免許経営行為と関連のある契約書、証票、帳簿及びその他の資料を閲覧し、複製し、封印し、差し押さえる。 (五)専ら無免許経営活動への従事に用いられた用具、設備、原材料、製品(商品)などの財物を封印し、差し押さえる。 (六)人体の健康に危害をもたらし、重大な安全上の潜在的危険性が存在し、公共の安全を脅かし、環境資源を破壊することを示す証拠のある無免許経営場所を封印する。/td> |
第十一条 県級以上の人民政府工商行政管理部門が無免許経営の疑いについて調査処分するときは、次に掲げる職権を行使することができる。 …… (三)無免許経営への従事の疑いのある場所に立ち入り、現場検査を実施する。 (四)無免許経営の疑いと関連のある契約書、証票、帳簿及びその他の関連資料を閲覧し、複製する。 無免許経営への従事の疑いのある場所については、封印することができる。無免許経営の疑いのあることに用いられた用具、設備、原材料、製品(商品)などの物品については、封印し、差し押さえることができる。 無許可経営の疑いについて調査処分を行い、関連法律、法規の規定に従い措置を講じる。 |
■新「弁法」は、工商部門による強制措置の適用基準を引き下げ、法執行を取り扱いやすくするようにしており、また、企業が強制措置が講じられるリスクを増加させた(「疑いがある」だけで強制措置を講じられる)。例えば、「専ら無免許経営活動への従事に用いられた」を「無免許経営の疑いのあることに用いられた用具、設備」への修正、「人体の健康に危害をもたらし、重大な安全上の潜在的危険性が存在し、公共の安全を脅かし、環境資源を破壊することを示す証拠がある」という文言の削除など。
■「無免許経営の疑いと関連のある契約書、証票、帳簿及びその他の関連資料」を工商部門が封印し、差し押さえる権限を明確に取り消し、閲覧及び複製の権限のみを残している。 |
第十四条 無免許経営行為については、工商行政管理部門が法に従い取締り、違法所得を没収する。……刑事処罰に至らない場合には、併せて2万元以下の過料に処する。無免許経営行為の規模が比較的に大きく、社会への危害が重大である場合には、併せて2万元以上20万元以下の過料に処する。無免許経営行為が人体の健康に危害を及ぼし、重大な安全上の潜在的危険性が存在し、公共の安全を脅かし、環境資源を破壊する場合には、専ら無免許経営への従事に用いられた用具、設備、原材料、製品(商品)などの財物を没収し、併せて5万元以上50万元以下の過料に処する。 無免許経営行為の処罰については、法律、法規に別段の定めがある場合、その規定に従う。 第十五条 本弁法に規定する無免許経営行為に属することを知り、又は知り得べきでありながら、それのために生産経営場所、輸送、保管、貯蔵などの条件を提供した場合には、工商行政管理部門が直ちに違法行為を停止するよう命じ、違法所得を没収し、併せて2万元以下の過料に処する。人体の健康に危害を及ぼし、重大な安全上の潜在的危険性が存在し、公共の安全を脅かし、環境資源を破壊する無免許経営行為のために生産経営場所、輸送、保管、貯蔵などの条件を提供した場合には、併せて5万元以上50万元以下の過料に処する。 |
第十三条 無免許経営に従事した場合、工商行政管理部門は関連法律、行政法規の規定に従い処罰する。法律、行政法規で無免許経営への処罰について明確な規定を定めていない場合、工商行政管理部門は違法行為を停止するよう命じ、違法所得を没収し、併せて1万元以下の過料に処する。
第十四条 無免許経営に属することを明らかに知りながら、経営者に経営場所を提供し、又は輸送、保管、貯蔵などの条件を提供した場合、工商行政管理部門は違法行為を停止するよう命じ、違法所得を没収するものとし、5,000元以下の過料に処することができる。 |
■「取締り」という措置を明確に取り消し、その代わりに「違法行為の停止命令」を規定している。そもそも「行政強制法」などの法律法規において「取締り」という行政強制措置を設置していないため、当該改正も現行の法律法規と一致している。
■新「弁法」において、工商部門の「無免許経営」行為に対する処罰のみが規定され、「無許可経営」行為の罰則は、依然として関連法律法規における規定を適用する。 ■法律、行政法規で処罰の明文規定のない無免許経営行為に関しては、新「弁法」では危害程度のランクをなくし、処罰の度合いを引き下げた。例えば、経営者の無免許経営に対する過料の金額を2万以下、2万以上20万以下、5万以上50万以下という3つのランクを1万元以下に引き下げた。無免許経営のために利便を提供した経営者に対する過料の金額についても2万以下、5万以上50万以下という2つのランクを5,000元以下に引き下げた。 ■新「弁法」では、「無免許経営者に利便条件を提供する」ことへの処罰の証明基準を引き上げ、主観的要件を「知り、又は知り得べきである」から「明らかに知る」に変更した。 |
以上から、法令名の変更であれ、罰則の調整であれ、過料の金額の減少であれ、全体的に見て、いずれも政府部門の「調査処分と指導が結び付き、処罰と教育が結び付く」という法執行の理念の変化を表しており、企業の直面し得る法律上のリスクは大幅に軽減された。例えば、旧「弁法」規定の「審査認可された経営範囲を超えて経営活動に従事する」ことを例に挙げるならば、旧「弁法」によると、法理において、企業の直面し得る最も重い罰則は、断固たる取締りの対象とされることであった(つまり、営業免許のはく奪である。実践においては極稀であるが)。しかし、新「弁法」によると、企業にとって、営業免許をはく奪されるリスクはなくなり、最も重い罰則は違法行為の停止命令を受けることである。また、企業は違法行為の停止命令を受けた後、違法行為を止めることも、経営範囲の変更登記を遡って行ったうえで係る行為を引き続き行うこともできる。このように、速やかに是正がなされるよう企業に余地を与えたことには間違いない。
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