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経済成長の維持(6) 11月の経済動向と国務院常務会議・各官庁の動向

中国ビジネスレポート マクロ経済
田中 修

田中 修

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2008年12月30日

記事概要

本稿では、11月の経済動向と国務院常務会議・各官庁の動向を解説する。11月の消費者物価上昇率は前年同期比2.4%と、伸びは前月より1.6ポイント反落した。これは7か月連続の反落であり、上昇率はピークの8.7%から大きく落ち込んでいる。

はじめに

 本稿では、11月の経済動向と国務院常務会議・各官庁の動向を解説する。

 

1.11月の経済動向

(1)物価

①消費者物価

 11月の消費者物価上昇率は前年同期比2.4%と、伸びは前月より1.6ポイント反落した。これは7か月連続の反落であり、上昇率はピークの8.7%から大きく落ち込んでいる。食品価格の上昇率は前年同期比5.9%であり、伸びは前月より2.6ポイント反落した。豚肉価格は前年同期比9.3%の下落であり、前月より下げ幅が8.1ポイント拡大した。穀物価格は前年同期比5.8%の上昇であり、伸びは前月より1.1ポイント反落した。居住関係価格は前年同期比1.1%の上昇であり、伸びは前月より3.5ポイント反落した。

(参考)94.6%→104.0%→112.4

 111月期では、前年同期比6.3%の上昇であり、伸びは110月期より0.4ポイント反落した。

②工業品工場出荷価格

 11月の工業品工場出荷価格の上昇率は2.0%であり、伸びは前月より2ポイント低下した。これは8月のピーク10.1%から3か月連続の反落であり、31か月ぶりの低水準となっている。生産財価格は前年同期比2.0%の上昇であり、原油は同14.7%の下落、石炭は同31.6%の上昇、非鉄金属材料類の購入価格は同18.4%の下落となった。

(参考)99.1%→106.6%→112.0

 111月期の上昇率は前年同期比7.6%であり、原材料・燃料・動力価格は同11.6%の上昇となった。

③住宅価格

 11月の全国70大中都市の建物販売価格は前年同期比0.2%の上昇であり、伸びは前月より1.4ポイント低下した。

(参考)93.5%→101.6%→110.2

 新築住宅の販売価格は前年同期比0.2%の上昇であり、伸びは前月より1.6ポイント低下した。地域でみると、上昇率が高い主要都市は、銀川9.3%、海口9.3%、温州8.4%、金華7.5%、ウルムチ6.8%、済南5.0%、西寧4.9%等であり、下降した主要都市は、深圳-18.0%、広州-8.8%、南京-5.2%、重慶-4.6%、アモイ-3.8%等13都市である。

(参考)93.9101.8%→110.2

(2)消費

 11月の全国社会消費品小売総額は前年同期比20.8%の増加であり、伸びは10月より1.2ポイント低下した。だが、物価の下落を反映し、実質の伸びでは17.6%と10月より1ポイント加速している。また、家電の農村普及優遇策の発動により、11月の全国家電・オーディオ器材の販売は6.7ポイント加速した(新華網北京電20081216日)。

(参考)923.21022%→1120.8

 111月期では、前年同期比21.9%の増加である。

(3)工業

 11月の一定規模以上の工業付加価値は前年同期比5.4%増で、10月より2.8ポイント低下し、5年ぶりの低い伸びとなった。主要製品でみると、発電量が前年同期比9.6%減となったほか、粗鋼が同12.4%減、鋼材が同11%減、自動車が同15.9%減となっている。

(参考)工業付加価値 911.4%→108.2%→115.4

 111月期では、前年同期比13.7%の増加である。

(4)投資

 111月期の都市固定資産投資は前年同期比26.8%増となった。111月期の不動産開発投資は前年同期比22.7%の増加であり、伸びは110月期より1.9ポイント反落した。

新規着工は228776件であり、前年同期比17649件増となった。新規着工計画総投資額は77539億元であり、同5.4%増である。

 固定資産投資の伸びは鈍化したものの投資財価格がそれ以上に下落しており、実質ベースでは伸びが高まっている。また、投資拡大政策を反映し、新規着工計画総投資額が110月期より2.2ポイント加速し、11月単月では前年同期比26.9%増となった。111月期の中央の投資は前年同期比31.8%増と、110月期より3.1ポイント加速した。さらに111月期の全国鉄道運輸業の投資は前年同期比41.1%増と、110月期より1.3ポイント加速している(新華網北京電20081216日)。この効果がなければ、投資の伸びは更に落ち込んだだろう。

(参考)都市固定資産投資19月期27.6%→110 27.2%→26.8

  不動産開発投資19月期26.5%→11024.6%→111月期22.7

(5)対外経済

 11月の輸出は前年同期比2.2%の減少であり、伸びは10月より21.4ポイント大幅に反落した。輸入は同17.9%の減少であり、10月より26.6ポイント反落した。

(参考)9月輸出21.5%、輸入21.3%→10月輸出19.2%、輸入15.611月輸出-2.2%、輸入-17.9

 111月期の輸出は前年同期比19.3%増であり、輸入は同22.8%増であった。貿易黒字は2559.5億ドルであり、前年同期比6.9%、163.9億ドルの増である。貿易黒字は401億ドルと依然最高額を更新している。

 11月の外資利用実行額は前年同期比36.52%の減少であり、111月期では864.18億ドル、同26.29%の減少となっている。

(参考)926.11027.5%→11月-36.52

(6)財政

 11月の全国財政収入は3792.4億元で、前年同期比3.1%の減少であり、全国財政支出は5254.03億元と同16.5%増であった。この結果1461.63億元の財政赤字が出現した。

(参考)財政収入 93.110月-0.3%→11月-3.1

 111月期の全国財政収入は58068.21億元で、前年同期比20.5%増であり、全国財政支出は45825.34億元で、同23.6%増となっており、財政黒字は12242.87億元となっている。

(参考)財政収入 19月期25.8110月期22.6%→111月期20.5

(7)金融

 11月末のM2の伸びは前年同期比14.8%であり、10月末より0.22ポイント低下した。人民元貸出残高は11月末で同16.03%増加しており、10月末より1.45ポイント増加した。111月期の新規貸出増は4.14兆元であり、前年同期比5554億元増加した。

(参考)M2  915.291015.02%→1114.8

 

2.国務院常務会議(1210日)

 出稼ぎ農民対策が検討された(新華網北京電20081211日)。

(1)就業情勢

 今年に入り、わが国の就業情勢は総体としては良好であるが、少なからぬ新たな状況が出現した。国際金融危機の影響は不断に深まっており、国内の一部企業の生産経営は困難に直面しており、就業圧力は明らかに増加している。このため、更に積極的な就業政策をとらねばならず、とりわけ出稼ぎ農民の就業を高度に重視しなければならない。これは、直接に農村経済の発展と農民の増収に関わるものであり、経済社会の発展の全局に関わるものである。

 各地域・各関係部門は調査研究を深く行い、全面的に状況を掌握し、有効な措置を採用して、当面の出稼ぎ農民対策を適切にしっかり行わなければならない。

(2)具体的施策

①出稼ぎ農民の就業の門戸を広げなければならない

 積極的に労働集約型企業を支援し、出稼ぎ農民の就業を安定化する。生産経営が一時的に困難となっている企業に対しては柔軟に労働者を使用・労働時間の弾力化・組織的な訓練といった多様な措置を採用するよう誘導し、就業ポストを安定させる。労働を必要とする経済を大いに発展させ、出稼ぎ農民の移転就業を牽引する。

②出稼ぎ農民の就業能力訓練を強化しなければならない

 関係部門と教育訓練期間は出稼ぎ農民の訓練への投入を増加し、訓練規模を拡大し、訓練方式を改善し、実用的な技能と就業能力の引上げを重視しなければならない。

③条件が整い能力のある出稼ぎ農民の帰郷・創業を支援しなければならない

 土地使用、費用徴収、情報、工商登記、納税などの面でハードルを引き下げ、金融サービスをしっかり行い、小額担保貸出を実施し、規定に合致した者には財政補助を与える。帰郷した出稼ぎ農民が農業・農村インフラ建設に参加することを奨励する。

④出稼ぎ農民の賃金が全額支払われることを確保しなければならない

 賃金保証金制度を整備し、賃金保証金の帳簿管理を強化し、賃金支払いの監督を強化する。出稼ぎ農民と使用側との労働争議を妥当に処理し、出稼ぎ農民の合法権益を擁護する。企業の閉鎖破産は法に基づき厳格に進めなければならず、悪意で賃金未払いのまま逃亡した事業主は厳格に調査処分する。

⑤出稼ぎ農民への社会保障・公共サービスをしっかり行わなければならない

 帰郷した出稼ぎ農民が新型農村共同医療に参加するよう積極的に誘導し、出稼ぎ農民の労災保険の権益を保障する。出稼ぎ農民の社会保険について他の場所へ移転した際の接続方法を早急に制定する。帰郷した出稼ぎ農民の疾病予防、計画成育、子女の義務教育、適齢児童への予防接種等の公共サービスを強化する。

⑥帰郷した出稼ぎ農民の土地請負権益を適切に保障しなければならない

 土地請負経営権の流通に対する管理・サービスを強化し、法に基づき土地争議を解決する。いかなる組織・個人も、差し押さえ・一部召し上げその他の方式により帰郷した出稼ぎ農民の土地流通権益を侵害してはならない。

(3)農機具購入への補助政策の実施

 農機具購入への補助政策の実施は、農業の機械化水準を引き上げ、農業機械工業の発展を牽引し、経済成長を促進するうえで重要な作用があり、多くの利点があるため、農民・企業から深く歓迎される好ましい政策である。農機具の購入補助を増加し、補助範囲を拡大することは、家電の農村への普及後に更に内需を牽引する重要な措置である。

 2009年は農機具の購入補助を増加する。中央は農機具購入補助資金100億元を計上し、今年に比べ60億元増やす。

 

3.国務院常務会議(1217日)

 3.1 不動産市場の健全な発展を促進する政策措置(中国政府網20081217日)

(1)基本方針

 最近国家が採用した内需拡大、経済の平穏で比較的速い成長を促進する政策措置は、すでに不動産市場に積極的影響を与えており、少なからぬ都市の分譲住宅の成約量がある程度反転上昇している。当面、住宅の市場化という基本方針を堅持し、住宅入手困難な低所得者に対し住宅保障制度を実行するという原則を堅持しなければならない。政策を強化し、社会保障的性格をもつ住宅の建設を加速し、住宅消費を更に奨励・支援し、合理的な不動産開発投資の規模を維持し、不動産市場の健全な発展を促進しなければならない。

(2)具体的政策措置

①社会保障的性格をもつ住宅建設を強化する 

 3年間で、750万戸近くの住宅入手困難な都市低所得家庭と240万戸の林業・開墾地・炭鉱等のバラックに住む住民の住宅問題を解決し、農村の危険な住宅の改造を積極的に推進する。中央は引き続き低家賃住宅の建設とバラックの改造のための投資への支援を強化し、中西部地域の補助基準を適切に引き上げる。一部の条件の整ったテスト地域を選び、住宅公的積立金の未使用資金の一部をエコノミータイプの住宅等の建設に充当する。

②普通分譲住宅の消費を更に奨励する

 ローンですでに購入した住宅の1人当り面積が当地の平均水準より低く、2件目の自己使用の住宅購入を再申請した者に対しては、1件目より優遇したローン政策を執行する。住宅譲渡の際の営業税については、暫定的に1年間減免政策を実行する。そのうち、個人で購入した普通住宅については、これまで5年以上経過で営業税を免税していたのを2年以上に改める。2年に満たないものについては、これまで譲渡収入全額に営業税を課していたのを、譲渡収入から購入原価を差し引いた額に課すことにする。

③不動産開発企業が積極的に市場の変化に対応するよう誘導し、分譲住宅の販売を促進す

 る

 合理的な融資需要を支援し、中低価格帯・中小型普通分譲住宅とりわけ建設中のプロジェクトに対し貸出支援を増やす。実力と信用のある不動産開発企業の合併再編に対し、融 資・関連金融サービスを提供する。法定手続きに従い、都市不動産税を取り消す[1]

 

 3.2 製品油価格と税費用改革案(新華網北京電20081218日)

 国務院の手配により、最近すでに製品油価格と税費用の改革案を社会に公開し意見を求め、関係部門が改革案に更に修正を行った。現在、案を打ち出すタイミング・条件はすでに基本的に成熟した。製品油価格と税費用改革案を批准し、200911日から製品油・税費用改革を実施し、公道の修繕費等6項目の費用徴収を取り消し、2級公道の融資返済のための費用徴収を段階的に秩序立てて取り消す。

 同時に、製品油の消費税の単位当り税額を相応に引き上げるが、徴収に際して製品油の価格は引き上げない。案公布の日から整備後の製品油価格形成メカニズムを実施し、当面の国際市場原油価格の変化状況に基づき、製品油価格を引き下げる。

 各地域・各関係部門は組織的指導を強化し、統一的な企画協調を強化し、改革案の平穏な実施を保証しなければならない。

 

 3.3 珠江デルタ地域改革発展計画綱要(新華網北京電20081218日)

 珠江デルタ地域は、改革開放の先行地域であり、重要な経済の中心地域である。改革開放の30年、珠江デルタ地域は鋭意改革に取り組み、率先して開放し、進取の気性で開拓し、経済社会発展の歴史的な飛躍を実現し、全国の改革開放と社会主義現代化建設に重要な貢献を果たした。現在、珠江デルタ地域は、正に経済の平穏で比較的速い発展を維持しており、経済構造調整と発展方式の転換を推進するカギとなる時期にあり、更に思想を解放し、科学的発展観を深く貫徹実施し、改革開放を堅持している。

①現代的な産業システムの構築に力を入れ、経済発展方式を早急に転換し、率先して資源節約型・環境友好型社会を建設している。

②科学技術の進歩の推進に力を入れ、自主的なイノベーション能力を増強し、率先してイノベーション型地域を確立している。

③民生問題の解決に力を入れ、都市・農村地域の協調発展を促進し、率先して調和のとれた社会を構築している。

④改革の深化に力を入れ、体制メカニズムを革新し、率先して整備された社会主義市場経済体制を確立している。

⑤香港・マカオとの協力に力を入れ、内外への解放を拡大し、率先して更に開放的な経済システムを確立している。

 これらは、わが国が小康社会を全面的に建設し、社会主義の現代化推進を加速するうえで、新たな貢献を果たしている。

 現在、国際金融危機のわが国経済に対する影響は日増しに深まっている。珠江デルタ地域は中小企業が多く、輸出型企業が多く、対外依存度が高く、受けた打撃が比較的大きい。経済の平穏で比較的速い発展を維持することを当面の第1の任務とし、発展により成長を促進し、構造を調整し、民生を維持しなければならない。内需拡大と経済成長・社会建設・民生改善をさらにうまく結びつけ、更に改革を深化させ、開放水準を高めなければならない。これは、直面する困難を克服し、計画綱要を実施し、珠江デルタ地域の長期的発展を保証する基礎となるものである。広東省は、計画綱要を真剣に実施し、国務院関係各部門は広東省の改革開放と現代化建設に対する支援・指導を更に強化しなければならない[2]

 

4.人民銀行 周小川行長の最近の発言

(1)「財経」年次大会「2009年:予測と戦略」での発言(1213日)

 「金融危機は、いつも経済の一部が過熱しバブルが出現した後に始まり、警戒が十分でなく、関係方面の調整が不足するものである。これにはマクロ・コントロールの不足が含まれるし、ミクロ面での調整の欠如も含まれる。マクロ・コントロールは一般に景気サイクルと逆向きに動くが、現在ミクロのメカニズムには景気サイクルに従う要因があり、経済の上昇サイクルでは容易に拡張し、経済の下降サイクルでは容易に収縮してしまう。このため、ミクロのメカニズムの中に景気サイクルに逆らう要因を入れ込むべきである。これには、金融市場・金融組織の奨励メカニズム・金融商品の構造に更に多くの景気サイクルに逆らう要因を注入し、大きな動揺を回避することが含まれる」(中国証券報20081215日)。

(2)米国のゼロ金利政策を受けての発言(1218日)

 「中国の金利調整は、主として国内の経済データによって決まるものであり、更に利下げを行うかどうかは米国の最近の利下げ措置によって影響を受けるものではない。11月の消費者物価の上昇率の低下幅は多くの人の予想を超えるものであった。消費者物価は引き続き下降するだろう」(上海証券報20081219日)。

 

5.工業・情報化部 李毅中部長記者会見(20081212日)

(1)産業の現状

①工業経済に峻厳な情勢が出現している

 工業の成長速度が明らかに鈍化しており、下振れの圧力が大きくなっている。工業付加価値の成長率は6月以降下降を続けており、状況は比較的深刻である。10月以降電力消費もマイナス成長となっている。

②一部の業種で赤字が出現した

 国際市場の1次産品価格が大幅に波動しており、国内市場の各種原材料価格は大幅に下降しているが、製造業が前期に購入した高価な原材料の在庫が多く、これには消化のプロセスを要する。製品価格の急落はすぐ現実化するため、製造業は二重の試練に遭遇している。鋼材の価格はおおよそ半分近く低下し、非鉄金属は2046%下降し、化学工業製品は4070%下降したが、このような状況はこれまで無かったことである。鉄鋼・非鉄・石油化学業種は全面的に赤字が出ている。

③企業の困難度が深まり、範囲が拡大した

 元々は小企業であったが、現在徐々に大企業に広がっている。生産量は低下し、在庫は増加しており、資金の多くが固定化し、困難が出現した。とりわけ注文が明らかに減少している。このような状況下、一部の企業の生産停止・半停止、破産・合併が確かに出現しており、一部ではリストラ・減俸・出稼ぎ農民の帰郷といった状況が出現した。一部の中小企業は苦境に陥っており、一部の大企業も深刻な傷を負っている。

(2)中小企業の融資難

 この問題は全社会が非常に注目している。実際のところ、中小企業の困難は今年年初に出現し、各地の反応は比較的強烈であった。国際金融危機の影響は、国内でまず輸出主導型中小企業からはじまったため、年初沿海の輸出型中小企業で輸出が困難・赤字となり、さらには休業・倒産・閉鎖の現象が現れた。金融危機が深まるにつれ、影響はその他の業種に拡大したため、中小企業の困難はすでに比較的普遍の問題となっている。まずは融資難であり、彼らは必要な流動資金、技術改造・基本建設に必要な資金を借りることができなくなっている。

 客観的にいうと、中小企業の資産は少なく、利潤は低く、企業の信用が良くないものもある。商業銀行も市場に参入しており、信用力の低い中小企業に対し商業銀行がある程度貸出を怠ることは理解できるが、このようにして生まれた困難により中小企業は資金を得ることができなくなり、地下銀行・高利貸からの借金に迫られ、このような高金利は目先の急場をしのぐだけで将来の大禍をもたらすのである。

 この問題を解決する切り口は、次の3つの措置がある。

①誰かが中小企業に担保を提供する

そうすれば銀行は彼らへの貸出を望むようになる。つまり、中央財政・地方財政が資金注入を増やし、中小企業金融の健全な担保機関確立を強化すると同時に、政策上中小企業が他の資産・株主権を担保に用いることを認めることである。中央財政は昨年8億元を担保機関に注入し、今年は10億元増加した。銀行の個人に対する小額貸出の上限は2万元から5万元に拡大し、小企業への貸出の上限は100万元から200万元に拡大している。

②輸出税還付を増加した

 紡績・アパレルを例にとると、輸出税還付率は11%から14%に引き上げられた。これはまず中小企業を受益させるものである。

③中小企業基金

 中小企業基金はいくつかの部門が掌握しており、現在我々の統計では51.1億元、前年より22億増加した。この資金の用途は、主として中小企業の技術改造・海外進出による市場開拓・担保機関への資金注入である。

(3)鉄鋼業

 鉄鋼業は、今回最も重大な影響を受けた業種の1つである。鋼材価格はここ数ヶ月で半分近く低下し、鉄鉱石価格も急落した。しかし残念なことに、我々の鉄鉱石の海外依存度は50%であり、鉄鋼企業は昨年・今年の年初、鉄鋼石価格が急騰したとき大量の高価な鉄鉱石を購入した。鉄鋼協会によれば、鉄鋼工場の鉄鉱石の在庫は3000万トンであり、埠頭には9000万トンが積み上げられている。さらに長期契約で注文したもののうち1億トンがまだ出荷されておらず、これを合わせると22000万トンにもなる。高価な原料を消化するには来年3月までかかるが、低価な製品はすぐ現実化するので、鉄鋼の全業種に赤字が出ている。小企業のみならず大企業も赤字が出ており、情勢は確かに比較的峻厳である。

 我々は関係部門と相談し、おおよそ以下の数点の支援を考慮している。

①輸出入の税率

 鋼材の輸出において、我々は一部製品の輸出入税率を調整し、エネルギー多消費で質の低い鉄鋼製品については輸出を制限し、ハイレベルの製品については輸出を奨励し、輸出の税還付率を数ポイント増やすよう建議している。

②鉄鋼企業の技術改造支援

 中国の鉄鋼生産能力は6億トンであり、今年の実際の生産量は4.84.9億トンとなる可能性がある。生産能力過剰に対しては、再び大風呂敷を広げてはならず、技術改造がカギである。来年の技術改造支援は鉄鋼業が重点となる。

③落伍した生産能力の淘汰

 大鉄鋼企業が小鉄鋼工場を合併することを奨励する。中国には現在鉄鋼精錬企業が1000社近くあり、集中度が低すぎる。金融危機の衝撃を受けているこのチャンスを掴み、小鉄鋼企業は閉鎖すべきものは閉鎖し、合併すべきものは合併して、我が国鉄鋼工業が大から強に変化することを促進するため、合併方面で関連の政策を打ち出さなければならない。

④鉄鋼製品の備蓄

 もし政府の補助により企業に製品を備蓄させ、あるいは政府が一部分を購入するならば、生産能力を遊ばせる必要はなく、生産量を引き続き維持させ、当面の困難に対応することが可能となる。国家発展・改革委等の部門は、現在この方面での備蓄の具体的数量・方法を制定している。もともと我々が不足している鉄金属(マンガン・クロム)は、現在国際価格が低いときをねらい輸入を増やしてもよい。当然これにはリスクがあり、中国が輸入を増やすことにより価格を上昇させる可能性がある。我々もこのような罠に陥ってはならない。

 あと付け加えておきたいことは、中国の鉄鉱石の対外依存度は50%であり、世界最大の輸入国であり、鉄鋼協会によれば全世界の鉄鉱石貿易量のおよそ半分を占めているということである。中国は鉄鋼石の価格決定に発言権をもつべきであり、過去の現象は不公平であった。我々は鉄鋼協会の意見を支持する。内部は統一し、連合し、対外交渉において国家の利益を擁護しなければならない。相互に価格を争い、価格を引き上げてはならない。さもなくば、最後に損失を被るのは我々自身である。今回の教訓は大変深く、第2次の損失を被ることがあってはならない。

(4)自動車産業

 自動車はすでに大衆消費の時代に入った。自動車工業の発展は確かに速く、中国は自動車の生産・消費大国となった。昨年の自動車生産量は880万台であり、今年は900万台を突破した。今年17月、8月は高速成長の勢いであったが、その他の工業企業と同様、自動車産業も金融危機の影響を受け、ここ23ヵ月伸びが低下し、10月には-0.7%、11月には更に-16%低下した。マイナス成長は自動車工業に深刻な影響を与えている。

 我々は現在、一連の調査・研究を行い、一部の部委と相談している。

①低排気量の自動車の奨励:購入の際、購入費用の一部を減免できないか

②廃車・前倒し廃車の奨励:古い車は、エネルギー消費が多く、汚染がひどい

③政府は、自主的な知的財産権を有する国産車を優先的に購入する

④個人の自動車購入の奨励:自動車ローンの金利の優遇ができないか

⑤廃車の回収、再利用

⑥製品油価格の改革深化、燃料税費用改革案の適時の提起

 なお、李部長は1219日、内部会議において中央経済工作会議で2009年の成長率目標が実質8%前後となった旨を明らかにした(共同北京電20081220日)。

 

6.国家発展改革委員会責任者の発言

 2009年招商証券年度戦略報告会において、4兆元の投資新政策について、もし2009年のGDP成長率が8%に達すれば投資新政策の貢献度は約2.8ポイントであり、成長率が9%に達すれば貢献度は3.8ポイントであると発言している。また、今年の1000億元増の中央投資計画は既に全部下達しており、財政部門は迅速に関連資金を交付し、実施に移っているとした(中国証券報20081219日)。

 

7.人力資源社会保障部・財政部・国家税務総局通知(新華網北京電20081221日)

 目的は企業の負担を軽減し、就業情勢を安定させることにある。以下の措置で、企業の1000億元を上回る負担が軽減され、1000万社を上回る企業の従業員のポストが安定するものと予想されている。

(1)困難な企業には一定期限内、社会保険費の徴収を緩和する

 地域全体で社会保険が遅滞無く全額交付されることを確保し、社会保険基金に不足が発生しないことを前提に、2009年度内は徴収を緩和する。緩和期限は、最長で6ヶ月を超えないものとする。

(2)4項目の社会保険費率を段階的に引き下げる

 上記と同様な前提で、2009年度内は都市従業員基本医療保険・失業保険・労災保険・生育保険費の率を適切に引き下げる。期限は12ヶ月を超えないものとする。ただし、年金保険費の率は勝手に下げてはならない。

(3)リストラをせず、あるいはリストラを少なくしている困難な企業は、失業保険基金を使用して社会保険の補填・人件費の補填にあてることができる

 補填期間は2009年度内で、最長6ヶ月を超えないものとする。

(4)困難な企業が在職のまま職業訓練を行い、従業員の安定を図ることを奨励する

 所要の資金は企業従業員教育経費から支出し、不足分は就業特定資金から適切に支援する。

(5)困難な企業が経済補償を支払う問題を妥当に解決する

 従業員と企業が法に基づき平等に交渉し、多様な措置を採用して難関を乗り越えるよう奨励する。困難な企業が多くの努力を経てなおも経済的リストラをせざるを得ないときは、企業と労働組合あるいは従業員の法に基づく平等な交渉で一致をみた後、期間を分割ないしその他の方式で経済補償を支払う協議を締結することができる。

200812月記・10,439字)


 


[1]  この会議に基づき、1221日に国務院は「不動産市場の健全な発展を促進することに関する若干の意見」を公布した(新華網北京電20081221日)。

[2]  これは汪洋書記のこれまでの成果を肯定したうえで、広東経済を絶対に破綻させずに引き続き改革開放の尖兵になるよう要求したものと考えられる。

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