こんにちわ、ゲストさん
ログイン2008年12月31日
本稿では、人民銀行の利下げ・預金準備率引下げと国務院常務会議の動向、国家発展・改革委員会の張平主任が全人代に対して行った第11次5ヵ年計画の進捗状況報告等を整理する。
はじめに
本稿では、人民銀行の利下げ・預金準備率引下げと国務院常務会議の動向、国家発展・改革委員会の張平主任が全人代に対して行った第11次5ヵ年計画の進捗状況報告等を整理する。
1.利下げ・預金準備率の引下げ
12月22日、人民銀行は12月23日から1年物預金・貸出基準金利を0.27%引き下げ、それぞれ2.25%、5.31%とするとともに、12月25日から預金準備率を0.5%引き下げることを発表した。これにより大手行の準備率は15.5%、中小銀行の準備率は13.5%になる。今回の緩和策は、9月以降5度目の利下げ、4度目の預金準備率引下げ、3度目の金利・預金準備率同時引下げとなる。
今回の措置について、識者は次のようにコメントをしている(新華網北京電2008年12月22日)
①銀河証券チーフエコノミスト 左小蕾
主として、来年の経済発展を刺激するための準備である。一面では、利下げにより投資意欲を動かし、他面では来年の国債発行の伏線となっているのである。
②財政部財政科学研究所金融研究室 趙全厚主任
10-12月期に相次いで示された経済指標が楽観を許さないものであったことが、2つの引下げの重要原因である。わが国が打ち出した内需拡大のための4兆元の投資計画は、大量の社会資金を必要とする。金融政策のコントロールを通じて、社会資金の投資コストを引き下げ、経済を牽引する目的を実現することに資するのである。
③成都大学 張其佐副校長
今回の調整はM2の供給を増やそうとするものであり、工業の成長を維持することがねらいである。適度に緩和した金融政策は、企業が融資難問題を解決するために更に大きな余地を提供することになる。また、預金準備率の引下げは商業銀行の積極性を誘発し、更に貸出を刺激する目的がある。
また、今回の利下げは、世界で普遍的に利下げが起こっていることと連動している。中国は頻繁に利下げを行うのは、ホットマネーの流入を防止する作用があるからである。
2.外貨準備の減少
国家外貨管理局資本項目管理司外債処の蔡秋生処長は、「最近外貨準備が2003年以来初めて下降した。月別では1.9兆ドルが最高であったが、現在はこの数字を下回っている」と述べた。彼は同時に、「純粋に外貨管理の観点からすれば、外貨準備の伸び率が適当に下降することは望むところであるが、今回の下降はコンフィデンスの変化・市場の変化・人民元レートの大幅な動揺を反映したものである。このため外貨管理局は、国家のマクロ経済管理部門として国家の成長維持・発展促進という全大局に従う必要がある」と述べた(上海証券報2008年12月23日)。
上海証券報の試算では、10・11月の貿易黒字と直接投資実行額からすれば、この両月に800億ドルを超える資金が流出したとみている。
中国銀行の世界金融市場部の袁躍東調査研究主管は、外貨準備下降の原因として、①最近人民元の切上げ速度が鈍化し、さらには切下げが発生した。これが企業の更なるドル保有をもたらした、②中国企業が最近海外投資を強化している可能性がある、としているが②についてはデータの裏づけが必要だとしている。また彼は、「わが国の貿易黒字・直接投資の伸びが鈍化し、人民元の振れ幅が拡大するにつれ、わが国の外貨準備の伸びは鈍化しているが、大幅な低下は出現しないだろう。外貨準備は巨額なので、外貨準備の適当な減少はわが国に打撃をもたらさない」としている(上海証券報2008年12月23日)。
建設銀行研究部の趙慶明高級副経理は、「外貨準備の下降は、わが国の米国債の購買力に直接影響を及ぼす。これは簡単な道理であり、以前わが国の外貨準備が増加し続けていたときは、手元の金が多く投資ルートを探さなければならず、米国債は良い投資先であった。現在外貨準備は減少し始めており、手元の金は少なくなったので、米国債の購入が減少し、さらには買えなくなるのは自然のことである」と指摘し[1]、「一部の資金が外部に流出した可能性があるが、外貨準備は長期には下降しない。中国経済の基本面はまだ非常に吸引力をもっており、短期の資金流出は正常なことである」としている(新京報2008年12月23日)。
また、チャーター銀行の王志浩エコノミストは、「中国の外貨準備の減少は、外資の撤退・人民元切下げ期待等多くの要因が重なった可能性がある。中央銀行の資産負債表から試算すると、今年10月の資本流出は50億ドルに達すると思われる」と述べている(新京報2008年12月23日)。
3.国務院常務会議(12月24日)
以下の2項目が議論された(新華網北京電2008年12月24日)。
(1)消費の促進
①農村の流通ネットワークを健全化しなければならない
来年・再来年は農家店と農村商品配送センターを新たに建設・改造し、配送の品揃えを増やし、総合的なサービス機能を増強する。重点販売地区・生産地区において農産品卸・農産物取引市場を新たに建設あるいは改造し、農産品の流通を活発化し、農民の増収を促進する。
②品揃えを更に拡大し、「家電の農村普及」を強化しなければならない
中央財政は再び補助金を増加し、各農村の需要に基づき、助成対象の品揃えを選択・増加する。普及する家電の質を保証し、アフターサービスをしっかり行わなければならない。
③都市コミュニティの住民へのサービス施設を整備しなければならない
いくつかの野菜市場を選択し標準化改造を行い、住民の簡便で安心な消費需要を満足させる。
④都市耐久財の消費をグレードアップ・代替わりさせなければならない
古物市場を規範化し大いに発展させ、異なる所得層の連動した消費を加速する。生産・小売企業が「古い物を回収し、新しいものを販売する」、「旧製品を新製品に代替わりさせる」ことを展開するよう奨励し、新製品の販売と資源節約を牽引する。
⑤流通企業の発展を促進し、消費コストを引き下げなければならない
大型流通企業が区域をまたがって合併再編することを支援し、経営の優位性を強化し、コストを引き下げ、消費者の利益に資する。中小商業貿易企業の発展を支援し、金融機関は差別的な信用供与の条件を制定し、中小商業貿易企業の貸出担保問題を解決しなければならない。
⑥新しい消費のホットスポットを積極的に育成し、休日・展示即売の消費を大いに促進しなければならない
⑦流通企業の食品の質・安全に対する監督管理を強化しなければならない
流通業の発展を支援するため、2009年中央財政は農村物流サービスシステムの発展特定資金とサービス業発展特定資金の規模を増額する。
(2)対外貿易の安定的成長
①財政・税制政策の支援を強化する
一部の技術含有量・付加価値の高い電機製品の輸出税還付率を引き上げる。中央の対外貿易発展基金の規模を適切に拡大する。
②加工貿易の転換・グレードアップを着実に推進する
加工貿易禁止類・制限類の目録を調整し、国家の産業政策に符合し、エネルギー多消費・高汚染の製品に属さず、比較的高い技術含有量を備えた製品は禁止類の目録から削除する。一部の労働集約型製品と技術含有量が比較的高く環境保護・省エネの製品は制限類の目録から削除する。加工貿易の中西部への移転を奨励する。
③輸出入金融サービスを改善する
政策性銀行の輸出の買い方への貸出を適切に拡大する。商業銀行が輸出税還付の口座を委託管理しながら貸出業務を行うことを奨励する。保証書による融資規模を拡大し、中小貿易企業の融資難を緩和する。広東・長江デルタ地域と香港・マカオ地域、広西、雲南がアセアンと行う貨物貿易について人民元決済のテストを行う。
④国内に需要のある製品の輸入を拡大する
先進技術、重要設備及び重要部品ならびに重要エネルギー・原材料等の製品輸入を重点的に増加する。
⑤投資・貿易の相互作用を促進する
外資がハイテク技術、省エネ・環境保護産業及び現代サービス業に投資することを奨励する。国際サービスの下請けを大いに発展させ、蘇州工業パーク技術先進型サービス企業に関する税制テスト政策を、国家が認定したサービス下請け基地都市及び模範パークに拡大する。
⑥サービスの簡便化水準を高める
税関と出入国の検査・検疫について24時間の予約通関を実行する。2009年は、引き続き農産品輸出入の検査・検疫費用を減免し、紡績・サービス製品輸出の検査・検疫費用を引き下げる。
⑦マルチの経済貿易関係を強化・改善する
国際貿易摩擦を積極的に取り除き、輸出製品の質・安全問題を妥当に処理し、良好な国際環境を作り出す。企業が新興市場を開拓することを支援する。
(3)専門家の解説(京華時報2008年12月25日)
①中華商業情報センター 王耀主任
農村市場の発展速度は都市市場より非常に緩慢であるため、農村市場をうまく発展させることは、内需拡大に比較的明確な効果をもたらす。同時に、農村市場の発展は社会安定の基礎を保証する。金融危機の影響を受け、多くの出稼ぎ農民が帰郷しており、農村経済の発展は、農村の労働力就業問題の解決に資するものであり、農民の収入を保証し、社会の安定を維持するものである。
以前は、流通企業が地域を越えて合併することには多くの制限・条件があり、流通企業が地域を越えて合併することは実現困難であった。現在、金融危機の影響を受け、一部の規模がかなり小さく実力のかなり劣る流通企業が破産・倒産に瀕しており、失業者が増加し、個人消費に影響を及ぼしている。実力のある企業が合併を通じて市場の資源を統合し、企業規模を拡大することにより、企業のリスク抵抗能力を高め就業を増加することができる。
②中国電子商会 陸刃波副秘書長
「家電の農村普及」の強化は、農民の選択機会を増加させる。他方で、輸出が阻まれるにつれ、わが国の一部家電メーカーはリストラ・減産の苦境に直面しており、しかもわが国の3・4級都市には潜在的な消費者がかなり多いため、「家電の農村普及」は農村市場の消費を刺激し、系列産業を活性化し、家電メーカーの正常な運営を保証するものであり、同時に、系列産業の収縮がもたらす企業労働者の一時帰休等の問題を回避することができる。
③金融アナリスト(匿名)
(差別化による信用供与について)、多くの銀行は中小企業融資増加を表明しているが、中小商業貿易企業は規模が小さく、担保物件が少ないという特徴がある。このため、国家が政策面で中小商業貿易企業への融資を支援しても、銀行には独自のリスク評価体系があり、執行過程においてリスクや企業の資質を考慮すると、銀行は政策を実行し難いのではないか。
④社会科学院金融研究所 胡志浩
(人民元による貿易決済について)実際のところ、わが国とアセアン等の地域との貨物貿易量・人民元決済量は非常に小さい。今回米国は金融危機で重い傷を負ったが、ドルの国際決済通貨の地位は依然動揺し難い。しかも、わが国の国内金融市場は依然整備されていない初級段階にあり、人民元が完全に国際化することは実現困難であるのみならず、わが国の経済に不利である。
⑤国務院発展研究センター金融研究所 夏斌所長
急激に下降する内外経済情勢に対して、政策性銀行が輸出の買い方への貸出を適切に拡大することは、当面の世界経済の発展を推進し、中国経済の速すぎる下降を防止し、企業の発展を推進するうえで、いずれもプラスである。
⑥人民大学金融・証券研究所 李永森教授
輸出企業が輸出を終わっていない状況下、国内で購入した物は課税されてしまう。資金が逼迫し融資を申請しても、輸出企業の貸出口座と輸出税還付口座は往々にして異なる銀行で開設している。現在、商業銀行が輸出税還付口座の委託管理により融資業務を展開することを奨励することは、商業銀行にとっては企業の財務状況・資産信用状況を把握できるので、貸出リスクを減少させることができる。輸出企業にとっては、比較的簡便に輸出税還付の委託管理による融資を受けることが可能となる。
4.国家発展・改革委員会 張平主任の全人代常務委員会への報告(12月24日)
第11次5ヵ年計画綱要の中期実施状況を報告した。
(1)綱要実施が直面する軽視できない矛盾・問題(上海証券報2008年12月25日)
①経済の構造的矛盾が際立っている
産業構造では工業の成長が高すぎ、サービス業の発展が立ち遅れ、農業の基礎が脆弱であり、経済成長が主として工業の牽引に依存する局面が根本的に反転していない。
需要構造では内需と外需、投資と消費の構造がアンバランスであり、経済成長が過度に投資と輸出の牽引に依存している局面が根本的に反転していない。
②資源環境圧力が不断に増大している
エネルギー多消費・高汚染の業種の成長がかなり速く、省エネ・汚染物質排出削減のノルマ達成は相当困難である。
③重点分野・カギとなる部分の改革が不十分である
④社会建設になお少なからぬ矛盾・問題が存在する
主として、就業情勢が峻厳であり、所得分配が不合理であり、社会保障が未整備である。
(2)今後の政策の重点(新華網北京電2008年12月24日)
①公開・透明・高効率に中央投資を実施する
プロジェクトの全プロセスで監督検査を更に強化し、途中での流用・留保不使用・建設資金の浪費を厳禁する。
②今後2年の更なる内需拡大政策措置を早急に検討する
③重点産業の振興計画を早急に打ち出し、組織的に実施する
鉄鋼・自動車・造船・石油化学・紡績・軽工業・非鉄金属・装置製造・電子情報等の9産業の振興計画を早急に制定する。
④農業・農村政策を適切にしっかり行う
あらゆる手を尽くして農業の増産・農民の増収を促進する。
⑤就業・社会保障政策を真剣にしっかり行う
(3)具体的政策(新華網北京電2008年12月24日)
①内需拡大に力点をおき、経済の平穏で比較的速い発展を維持する
今後2年は、経済の平穏で比較的速い発展の維持を第1の任務とし、引き続き積極的財政政策と適度に緩和した金融政策を実施し、内需拡大・構造調整・発展方式の転換・民生の保障への支援を強化する。
②自主的なイノベーション能力の向上と構造の改善に力点をおき、発展の協調性を増強す
る
再び低コストの優位性に依存して数量的拡張を推進する、旧い道を歩んではならない。自主的なイノベーション能力という中心部分をしっかり把握し、産業構造の改善・グレードアップを早急に推進しなければならない。
③資源要素価格と財政税制体制改革に力点をおき、経済発展の方式の転換を促進する
資源要素価格は不合理で財政税制体制が未整備であることは、経済発展方式の転換が緩慢な重要原因である。資源要素価格形成メカニズムを早急に合理化し、同時に、財政力と事務権限が相相応する財政体制を早急に形成し、地方の盲目的な工業プロジェクト立上げとりわけ重化学工業プロジェクトを立ち上げようとする勢いを根本から抑制しなければならない。
④省エネ・汚染物質排出削減に力点をおき、持続可能な発展能力を高める
公共資源の合理的配分と行政力の有効な運用を通じ、法律の実施・監督管理を強化し、行政問責制を強化することにより、省エネ・汚染物質排出削減の目標を実現するための堅塁攻略戦に断固として打ち勝たねばならない。
⑤サービス型政府の建設に力点をおき、民生を保障・改善する
今後2年、就業拡大を経済社会発展において更に際立って位置づけ、更に積極的な就業政策を実施し、とりわけ経済減速がもたらす出稼ぎ農民の失業問題の解決を高度に重視しなければならない。社会保障制度の建設を全面的に推進する。
(4)省エネ・汚染物質排出削減の達成状況(新華網北京電2008年12月24日)
GDP単位当りエネルギー消費は2年で5.38%下降し、計画目標の26.9%を達成した。二酸化硫黄は計画目標の32%を達成し、化学的酸素要求量は計画目標の22%を達成した。
(5)その他の指標(新華網北京電2008年12月24日)
2年間で、都市住民の平均可処分所得は年平均11.3%伸び、農民の平均純収入は年平均8.4%伸びた(計画は5%)。
基本公共サービスでは、2007年の国民平均教育年限は8.7年であり、2005年より0.2年高まり、計画目標の20%を達成した。
今年6月末までで、都市基本年金保険のカバー率は2.1億人となり、計画目標の73%を達成した。新型農村共同医療は全国の農業人口を有する県(市・区)をカバーし、計画目標を前倒しで達成した。
(2008年12月記・6,551字)
有料記事閲覧および中国重要規定データベースのご利用は、ユーザー登録後にお手続きいただけます。
詳細は下の「ユーザー登録のご案内」をクリックして下さい。
2024年11月19日
2024年11月12日
2024年11月7日
2024年10月22日
2024年10月9日