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経済成長の維持(11)1月の経済指標と、全人代直前の胡錦涛・温家宝の動向

中国ビジネスレポート マクロ経済
田中 修

田中 修

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2009年3月5日

記事概要

1月の経済指標と、全人代直前の胡錦涛・温家宝の動向を紹介する。

はじめに
  本稿では、1月の経済指標と、全人代直前の胡錦涛・温家宝の動向を紹介する。

1.1月の主要経済指標[1]

(1)物価

①消費者物価
  1月の消費者物価上昇率は前年同期比1.0%と、伸びは前月より0.2ポイント反落した。
これは9か月連続の反落であり、上昇率はピークの8.7%から大きく落ち込んでいる。
(参考)9月4.6%→10月4.0%→11月2.4%→12月1.2%→1月1.0%
  うち、食品価格は4.2%の上昇であり、肉・肉製品は-2.8%(うち豚肉は-13.3%)で
あった。

②工業品工場出荷価格
  1月の工業品工場出荷価格の上昇率は-3.3%となった。これは8月のピーク10.1%から5
か月連続の反落である。
(参考)9月9.1%→10月6.6%→11月2.0%→12月-1.1%→1月-3.3%
  うち、原材料・燃料・動力購入価格は、-5.3%である。

③住宅価格
  1月の全国70大中都市の建物販売価格は前年同期比-0.9%であった。
(参考)9月3.5%→10月1.6%→11月0.2%→12月-0.4%→1月-0.9%
  新築住宅販売価格が前年同期比で上昇したのは42都市であり、上昇率が比較的大きかっ
たのは、銀川・西寧・ウルムチ・蘭州・海口等である。逆に低下したのは28都市であり、
主要なものは深?(-16.5%)・広州(-9.0%)・アモイ(-5.6%)・南京(-5.2
%)・昆明(-3.9%)等である。

(2)対外経済

①輸出入
  1月の輸出は前年同期比17.5%の減少であり、輸入は43.1%の減少となった[2]。貿易黒字
は391億元で、同102%増である。輸出では、アパレル同5.7%増、電機製品-20.9%、穀
物-51.7%、鋼材-53.8%、ハイテク製品-28%であり、輸入は原油同-8.0%で、工業
製品-39.9%、鉄鉱砂-11.2%となっている。
地域別では、広東輸出同-23.6%・輸入-42.1%、江蘇輸出-19.1%・輸入-49.7%、上
海輸出-16.6%・輸入-43.3%、浙江輸出-17.4%・輸入-36.8%である(南方報業網20
09年2月12日)。
(参考)9月輸出21.5%、輸入21.3%→10月輸出19.2%、輸入15.6%→11月輸出-2.2%、
輸入-17.9%→12月輸出-2.8%、輸入-21.3%→1月輸出-17.5%、輸入-43.1%
  2008年の輸出は1兆4285.5億ドル、17.2%増であり、輸出は1兆1330.8億ドル、18.5%増
となった。貿易黒字は2954.7億ドルであり、前年比328.3億ドルの純増である。

②外資利用
  1月の外資利用実行額は75.41億ドルであり、前年同期比32.67%の減少であった。
(参考)9月26.1%→10月27.5%[3]→11月-36.52%→12月-5.73%→1月-32.67%

(3)金融

1月末のM2の伸びは前年末比18.79%増となった。
  新規貸出増は1.62兆元であり、前年同期比8141億元増となっている。
(参考)M2  9月15.29%→10月15.02%→11月14.8%→12月17.82%→1月18.79%

(4)財政
 
1月の全国財政収入は6131.61億元で、前年同期比17.1%減となった[4]
(参考)財政収入 9月3.1%→10月-0.3%→11月-3.1%→12月3.3%→1月-17.1%
 
2.胡錦涛総書記
 
2.1 中央政治局会議(2月23日)
  全人代に提出される「政府活動報告」の原稿が討議された(新華網北京電2009年2月3
日)。
  会議は、2009年は「新世紀に入って以来、わが国経済発展の最も困難な1年である」と
し、2009年の政府活動については、次のように概括している。

①内需を拡大し、成長を維持し、構造を調整し、水準を引き上げ、改革をしっかり行い、
活力を増し、民生を維持し、調和を促すという原則をしっかり把握しなければならない。

②国際金融危機に対応し、経済の平穏で比較的速い発展を促進することを主線とし、統一
的に企画し各方面に配慮し、重点を際立たせる。経済の平穏で比較的速い発展を促進する
包括的計画を全面的に実施し、政府投資を大規模に増加し、産業の調整・振興計画を大き
な範囲で実施し、自主的なイノベーションを大いに推進し、社会保障水準を大幅に引き上
げなければならない。

③マクロ・コントロールを強化し、経済の平穏で比較的速い発展を維持しなければならな
い。

④内需とりわけ消費需要を積極的に拡大し、経済成長への内需の牽引作用を増強する。

⑤農業の基礎的地位を強固・強化し、農業の安定的発展と農民の持続的増収を促進する。

⑥発展方式の転換を加速し、経済構造の戦略的調整を大いに推進する。

⑦改革開放を引き続き深化させ、科学的発展観に資する体制メカニズムを更に整備する。

⑧社会事業を大いに発展させ、民生の保障・改善に力を入れ、社会の調和・安定を維持す
る。

⑨政府自身の建設を推進し、経済社会の発展の全局を統御する能力を高める。

2.2 政治局集団学習会(2月23日)
  世界経済情勢と中国経済の良好で速い発展の推進について、国務院発展研究センターの
趙晋平研究員と国家発展・改革委員会マクロ経済研究院の畢吉耀研究員から話をきいた
(新華網北京電2009年2月24日)。
  胡錦涛総書記は、次のような講話を行っている。

(1)世界経済情勢
  現在、世界経済情勢は峻厳・複雑であり、国際金融危機は未だ底をうっておらず、わが
国の経済成長の下振れ圧力は大きくなっている。困難なときほど自信を確固としなければ
ならない。情勢を全面的に分析し、わが国の経済発展に有利な条件を正確に把握し、十分
運用しなければならない。

①わが国の経済発展に基本的態勢には、根本的変化が発生していない
  わが国経済は、世界各国の経済成長において、依然として前列に位置している。

②わが国経済発展の優位な条件には、根本的変化が発生していない
  改革開放30年の高成長持続は、わが国が各種リスク・試練に対応する確固たる物質的基
礎を打ち立てた。

③わが国の工業化・都市化の急速な発展傾向には、根本的変化が発生していない
  わが国経済発展の内在動力は依然力強い。

④わが国発展の外部環境には、根本的変化が発生していない
  平和・発展・協力は依然現在の世界の潮流であり、世界経済が直面している調整・再編
もわが国経済発展に新たなチャンスをもたらす。

(2)2009年の経済政策

①内需拡大を主とし、外需の安定と組み合わせることを堅持しなければならない
  更に強力な措置を採用し、内需とりわけ消費需要を拡大し、経済成長を牽引しなければ
ならない。

②成長維持・構造調整・収益増強を統一することを堅持しなければならない
  質の向上・構造の最適化・収益の増加・消耗の低下・環境保護の基礎の上に成長維持を
打ちたて、新たな経済成長スポット・競争の優位性の形成に努力しなければならない。

③改革開放を成長維持の強大な動力とすることを堅持しなければならない
  チャンスを掴み、テンポを掌握し、程度を把握して、重点分野・カギとなる部分の改革
を積極的に推進し、活力が充満し、効率がよく、更に開放された、科学的発展に資する体
制メカニズムを早急に形成しなければならない。改革・イノベーションを通じて国際金融
危機の衝撃に対する対応能力を増強し、わが国の発展の深層の矛盾・問題を解決する能力
を増強しなければならない。

④民生改善を成長維持の出発点・足がかりとすることを堅持しなければならない
  成長維持・内需拡大・民生改善を緊密に結びつけることを重視し、人民が最も関心をよ
せ最も直接的・現実的な利益問題を更に解決し、社会の安定を適切に維持しなければなら
ない。

3.温家宝総理
 
3.1 5回の座談会(2月6-13日)
  次の5つのグループに分け、「政府活動報告」(意見徴求稿)について意見を聴取した
(新華網北京電2009年2月15日)。

①各民主党派中央・全国工商連責任者・無党派人士

②経済・社会分野の専門学者

③科学技術・教育・衛生・文化・スポーツ界代表

④企業界代表
  自動車・鉄鋼・エネルギー・運輸・金融・科学技術・不動産企業の代表が参加した。

⑤労働者・農民等末端大衆の代表
  郷鎮民政助理員、農家・養殖業者、技能労働者、帰郷した出稼ぎ農民、今期の大学卒業
生、コミュニティの民警、郷鎮衛生院の医者、大学・小学教師等が参加した。

3.2 ネットによる国民対話(2月28日)
  中国政府網・新華網を利用して、ネットによる交流を行った。経済部分の主要発言は以
下のとおりである。

(1)経済の現状と対策
  私は常々、「中国は自分の事を管理できるし、世界のことは管理しきれない」と言って
いる。世界市場は縮小し、経済発展の下振れ圧力は大きくなり、中国経済とりわけ外需に
大きな衝撃をもたらし、最も影響を受けたのは沿海地域・輸出型企業・労働集約型産業で
あった。
  外需の減少により、製品に市場がなくなり、工場経営は困難となり、出稼ぎ農民の大挙
しての帰郷・失業を生み出した。この危機に対し、昨年6月から一連の措置を採用し、こ
れまでに包括的な計画を打ち出した。これには、次のものがある。

①大規模な政府投入と構造的減税による内需拡大

②大きな範囲での10大産業に及ぶ調整・振興計画

③科学技術の支援強化(2年間で1000億元)

④社会保障水準の大幅な引上げ(医薬衛生体制改革に3年間で8500億元)
  政府が採用した対応措置は、初歩的に効果が現れている。一部の地方・一部の分野で、
経済が良好な方面へ発展する傾向が始まっている。一部の重要な経済指標が我々の経済が
やや好転し始めたことを示している。
①貸出がやや伸びている
  新たな貸出増が、11月4400億、12月7700億、1月1兆6200億と伸びている。
②消費のGDP比
  11月38%、12月42%、1月45%となっている。
③消費
  1月の消費は前年同期比で18%増加したが、物価は昨年1月よりは低くなっている。
④発電量
  私はこれを非常に重視している。発電量・用電量が2月中旬からプラスの伸びとなった。
全国で2月中旬の伸びが15%であり、前月より13.2%増加している。南方では、前年同月
比10%、前月比8%増である[5]
  当然、これらの指標は暫定的なものであり、完全に対比できないものもある[6]。我々は、
今回の危機への対応の長期性・困難性を十分認識すべきであり、危機に直面して自信を奮
い起こし、沈着に対応し、更に有力な措置を随時準備し打ち出すことにより、危機が中国
経済に及ぼす危害を減少させるしか道はないのである。

(2)消費
  消費を決めるのは号令ではなく、消費者の財布に本当に金があるかどうかである。当然、
我々はお金のある消費者が大胆に消費することを希望するが、最も根本的なことはやはり
経済を発展させ、人々を職に就かせ、金を稼がせることにより真の消費を実現することで
ある。我々は、経済が迅速に回復し、多くの出稼ぎ農民が都市に戻り就業し、今期ないし
以前の大学卒業生が自分に合った仕事を見つけることができ、社会全体の各階層の所得が
いずれもある程度増加することを切望している。そうなれば、我々の消費に基礎ができる
ことになり、我々はこのために努力しているのである。

(3)不動産
  不動産については、政府は高度に重視している。我々は、金融危機に対応するなかで、
不動産業が安定的で健全な発展を維持できるよう希望している。なぜなら、不動産は人民
大衆の生活に直接関わるものであり、国民経済の発展に直接影響を与えるからである。
  我々は、市場の自信と期待を安定化し、不動産建設を安定化し、中低所得の家庭の住宅
支援を強化しなければならないと提起しており、これが政府の態度を表している。政府と
しては、より多くの金とより大きな精力を住宅入手が困難な家庭・住宅を持たない家庭に
投下しなければならない。
  他方で、これらの金はしっかり使用され、家屋建設の質・経済性・適用・安全・土地節
約を保証しなければならない。不動産建設が行われているところには、審計と監察を振り
向け、問題が発見されるごとに随時処理をさせてよい。我々はまた不動産業の分類管理の
強化を通じて、市場秩序を整頓し、取引行為を規範化することにより、不動産建設の規
模・住宅価格が合理的水準に維持されるようにしなければならない。

(4)株式市場
  株式市場の問題に私は非常に関心をもっている。

①資本市場を発展させ、直接金融の比率を徐々に高めることにより、経済建設を支援する。

②株式市場は社会資金を吸収し、経済建設に参加するとともに、投資を通じて株主の収入
を増加させることができる。
  しかし、株式市場はリスクが存在し、稼ぐときもあれば損をすることもある。
  政府の責任は、公開・公正・透明な市場環境を確立し、株式市場の操作などの違法犯罪
行為を断固として取り締まることである。同時に、私は皆さんに言っておきたいのだが、
株式市場の良し悪しを決定するのは、経済の基本面であり、企業の収益である。したがっ
て、どの株がよいかは株主自身が判断しなければならない。しかし、私は中国経済・中国
企業の発展に自信をもっており、したがって中国資本市場にも自信をもっている。

(5)経済格差
  現在、我々の経済社会の発展には不均衡・不協調・持続不可能の問題が存在するが、最
も重要なものは地域の不均衡、都市・農村の不均衡、所得の不均衡である。1つの公正な
社会とは、大衆が改革発展の成果を享受できる社会である。
  私は最近、アダム・スミスの『道徳情操論』を愛読している。スミスは、2つの見えざ
る手を述べており、1つは市場、1つは道徳である。もし富を少数の人々が独占し、多数
の人々が貧困状態にあるならば、それは不公平であり、このような社会の不安定化は必然
である。このため、我々は貧富格差の問題の解決を非常に重視している。
  当然のことながら、私は1つの道理を述べなければならない。静止状態では公正の問題
をどんなに解決しようとしても、貧困人口は経済の逼迫状態から脱することはできない。
発展・進歩の状態があってこそ、人々の困難を根本から解決できるのである。我々は経済
社会を発展させ、同時に徐々に貧富格差を縮小しなければならない。これは、我々の目標
である。

(6)中小企業
  中小企業は、就業人員を多く吸収し、我々の経済社会の発展に不可欠な構成部分である。
我々は確固として力強い、私営企業を含む中小企業支援政策を採用しなければならない。
  今回の金融危機に対応するには、民間資本・民営企業の発展を推進すべきである。これ
は重要な措置である。中小企業にとって、現在存在する最大の困難は融資難である。
  国家はすでに政策を制定したと言う人もいる。最重要なものは3つである。

①各大商業銀行は、みな中小企業営業部を設置しており、各種指導を通じて、銀行が中小
企業に貸出を行うよう奨励している。

②各レベルの財政部は、みな中小企業のために担保を提供する基金を設立した。

③財政は、最近中小企業への一部の貸倒れを免除する規定を打ち出した。
  しかし、どうしてネットでこれほど多く中小企業の問題が取り上げられるのか?私は、
これらの措置がまだ実施されていないと考えている。私は、我々の銀行が早急にこれらの
措置を実施することを希望する。エコノミスト・企業家・銀行家の身体には道徳の血液が
流れていなければならない、と私は常々言っている。危機の衝撃を受け、国家が困難にあ
るとき、我々は制度の基礎を整備したうえで、積極かつ主動的に中小企業にサービスを提
供すべきである。これは国家のために困難を分かち合う実際行動である。私は、各銀行が
みなこれを行うことを希望する。

4.国務院常務会議(2月25日)
  非鉄金属と物流業の調整・振興計画が決定された(中国政府網2009年2月25日)。

(1)非鉄金属
  次の6項目が定められた。

①国内市場を安定化・拡大し、輸出環境を改善しなければならない。

②総量を厳格にコントロールし、落伍した生産能力の淘汰を加速しなければならない。

③技術改造・研究開発を強化しなければならない。

④企業の再編を促進し、産業立地を最適化しなければならない。

⑤内外の資源を十分に利用し、資源保障能力を増強しなければならない。

⑥全社会をカバーする非鉄金属の再生利用システムを早急に建設し、循環経済を発展させ、
資源の総合利用水準を高めなければならない。

(2)物流業
  次の4項目が定められた。

①物流市場の需要を積極的に拡大し、物流企業と生産・商業貿易企業の相互連動発展を促
進し、物流サービスの社会化・専業化を推進しなければならない。

②企業の合併再編を加速し、サービス水準が高く国際競争力の強い大型現代物流企業を育
成しなければならない。

③エネルギー・鉱産・自動車・農産品・医薬等重点分野の物流発展を推進し、国際物流・
保税物流の発展を加速しなければならない。

④物流インフラ建設を強化し、物流の標準化程度と情報化水準を高めなければならない。
(2009年3月記6,562字)

[1] 1月の消費・投資・工業生産の統計は発表されていない。

[2] 税関総署は、春節要因を除けば、輸出は前年同期比 6.8 %増、輸入は- 26.4 %になるとしている。

[3] 新華網北京電 2009 年 2 月 16 日は、「 2008 年 10 月以来 4 ヶ月連続マイナス成長」と報じており、 10 月の数値が改定されている可能性がある。

[4] この内訳は、前年同月比国内増値税- 2.8 %、国内消費税 13.2 %増、営業税- 2.7 %、企業所得税- 24.8 %、個人所得税- 1.9 %、輸入貨物増値税・消費税- 19.1 %、関税- 19.3 %、証券取引印紙税- 95.7 %、車両購入税- 21.2 %となっている。このほか、対外貿易企業の輸出税還付が 634.27 億元(前年同期比 126.75 億元、 25 %増)である。

[5] 昨年 1 - 2 月に南方では大雪害が発生しており、前年同期比で大きく伸びるのは当然であろう。

[6] 春節が昨年は 2 月であったが、今年は 1 月である。春節には、最低 5 日間生産が稼動しないので、 1 月・ 2 月の前年同期比はバイアスがかかり参考にならない。景気の動向を確認するには、 1 - 3 月期の数値が確定するのを待つ必要がある。

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