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経済成長の維持(12)2月主要経済指標、全人代最終日の温家宝総理記者会見

中国ビジネスレポート マクロ経済
田中 修

田中 修

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2009年3月19日

記事概要

2月の主要経済指標、及び全人代最終日に行われた温家宝総理の内外記者会見の模様を紹介する。

はじめに
  本稿では、2月の主要経済指標、及び全人代最終日に行われた温家宝総理の内外記者会
見の模様を紹介する。

1.2月の主要経済指標[1]

(1)物価
①消費者物価
  2月の消費者物価上昇率は前年同期比-1.6%と、ついにマイナスに転じた。上昇率は
ピークの8.7%(昨年2月)から大きく落ち込んでいる。下落幅は、都市-1.9%、農村-
0.8%と、都市の方の下落が大きい。

(参考)9月4.6%→10月4.0%→11月2.4%→12月1.2%→1月1.0%→2月-1.6%
  うち、食品価格は1.9%の下落であり、肉・肉製品は-8.8%(うち豚肉は-18.9%)で
あった。
  1-2月期では、前年同期比-0.3%であり、都市-0.6%、農村は0.3%の上昇となって
いる。

②工業品工場出荷価格
  2月の工業品工場出荷価格の上昇率は-4.5%となった。ピークの10.1%(昨年8月)か
ら急速に落ち込んでいる。
(参考)9月9.1%→10月6.6%→11月2.0%→12月-1.1%→1月-3.3%→2月-4.5%
  1-2月期では、前年同期比-3.9%であり、原材料・燃料・動力購入価格は、-6.2%で
ある。

③住宅価格
  2月の全国70大中都市の建物販売価格は前年同期比-1.2%であった。

(参考)9月3.5%→10月1.6%→11月0.2%→12月-0.4%→1月-0.9%→2月-1.2%
  新築住宅販売価格は前年同期比で-1.8%である。上昇したのは39都市であり、上昇率
が比較的大きかったのは、銀川8.7%、北海6.9%、金華6.1%、済寧5.3%、西寧4.7%等
である。逆に低下したのは30都市であり、主要なものは深?-16.3%、広州-8.9%、石家
庄-6.5%、南京-5.6%、アモイ-5.4%等である。

(3)消費
  1-2月期の全国社会消費品小売総額は2兆80.4億元、前年同期比15.2%の増加であり、伸
びは前年同期より5ポイント、2008年より6.4ポイント低下した。都市は同14.4%増、県及
び県以下は同17%と、都市の消費が伸び悩んでいる。

(参考)9月23.2%→10月22%→11月20.8%→12月19%→2009年1-2月期15.2%
  家電・オーデオ器材は前年同期比2.7%増、自動車は同9.3%増となっている。

(4)工業
  2月の一定規模以上の工業付加価値は前年同期比11.0%増で、1-2月期では同3.8%増で
あった。伸びが大きかったのはセメントで、2月42.5%増、1-2月期でも17.0%増となっ
ている。自動車は、2月は22.9%増と大きく伸びているが、1-2月期では-1.7%である[2]

(参考)工業付加価値 9月11.4%→10月8.2%→11月5.4%→12月5.7%→2月11.0%
  しかし、2月の工業使用電力量は前年同期比-10.37%で、1-2月期では同-5.22%であ
った。ここからは、工業の回復傾向は見られない。中国電力企業連合会統計部の責任者に
よれば、重工業の比率が高い華東・華北地域には明らかな回復の傾向は現れていない[3]
(上海証券報2009年3月14日)。

(5)投資
  1-2月期の都市固定資産投資額は1兆276億元で、前年同期比26.5%増となった。不動産
開発投資は2398億元で同1.0%増である。中央のプロジェクトは1070億元、同40.3%増、
地方のプロジェクトは9206億元、同25.1%増である。
プロジェクト新規着工は1万8533件、前年同期比4056件増であり、新規着工計画総投資額
は7437億元、同87.5%増となった。
不動産開発投資は低迷しているものの、プロジェクト新規着工が大きく伸びており、経済
対策の効果が現われている。また、中央のプロジェクトが大きく伸びていることから、現
在の投資拡大が中央主導で進んでいることが分かる。

(参考)都市固定資産投資1-9月期27.6%→1-10月期 27.2%→1-11月期26.8%→2008
年26.1%→2009年1-2月期26.5%
   不動産開発投資1-9月期26.5%→1-10月24.6%→1-11月期22.7%→2008年20.9%→
2009年1-2月期1.0%

(6)対外経済
①輸出入
2月の輸出は649億ドル、前年同期比25.7%の減少であり、輸入は600.5億ドル、同24.1%
の減少となった。

(参考)9月輸出21.5%、輸入21.3%→10月輸出19.2%、輸入15.6%→11月輸出-2.2%、
輸入-17.9%→12月輸出-2.8%、輸入-21.3%→1月輸出-17.5%、輸入-43.1%→2月
輸出-25.7%、輸入-24.1%
  1-2月期の輸出は1553.3億ドル、前年同期比21.1%の減少であり、輸入は1114.4億ドル、
同34.2%減となった。貿易黒字は438.9億ドルであり、同59.6%の増である。対日輸出は
同-17.5%、日本からの輸入は同-32.1%、日中貿易総額は同-25.7%と大きく縮小して
いる。これに対し、中米貿易総額は同-17.4%、中欧貿易総額は同-20.2%となっている。
輸出では、アパレル同-11%、靴-2.3%、旅行鞄-7.3%、玩具-17.1%、電機製品-21.
8%、穀物-46.7%、化学肥料-55.4%、石炭-41.6%、コークス-93.9%、鋼材-52%
であり、輸入は原油同-13%、製品油-6.4%、工業製品-29.3%、電機製品-29.6%、
化学製品-28.7%、自動車-29.6%、鋼材-26.8%となっている。

②外資利用
  2月の外資利用実行額は58.33億ドルであり、前年同期比15.81%の減少であった。1-2
月期では133.74億ドルであり、同-26.23%である。

(参考)9月26.1%→10月27.5%[4]→11月-36.52%→12月-5.73%→1月-32.67%→2月-
15.81%

(9)金融
2月末のM2の伸びは前年同期比20.48%増となった。人民元貸出残高は同24.17%増である。
  2月の新規貸出増は1.07兆元であり、前年同期比8273億元増となっている。1-2月期で
は、2.69兆元であり、同1.64兆元増と大幅な伸びとなった。

(参考)M2  9月15.29%→10月15.02%→11月14.8%→12月17.82%→1月18.79%→2月20.
48%

(12)財政
  2月の全国財政収入は4108.23億元で、前年同期比50.52億元、1.2%減となった。1-2月
期では、1兆239.84億元で、同1315.55億元、11.4%減となっている。うち、1-2月期の税
収は9237.27億元で、同13%減となっている[5]
(参考)財政収入 9月3.1%→10月-0.3%→11月-3.1%→12月3.3%→1月-17.1%→2
月-1.2%

 

2.温家宝総理内外記者会見(3月13日)
 
ここでは、経済関連部分のみ紹介する。
(1)4兆元の対策について
①半年の努力を経て、我々が形成した包括的計画は政府投入の大規模な増加、産業調整・
振興計画の広範囲での実施、科学技術によるてこ入れ強化、社会保障水準の大幅な引上げ
の4項目を内容とする。この4項目は相互に連携しており、分割不可能なひと固まりのもの
である。それは、我々の計画が長期・短期を結びつけ、表面だけでなく根本から対策を行
っていることを表すものである。

②大規模な政府投入は、最も直接的・有力で効果のある措置である。2年間で4兆の投資計
画には、中央政府直接投資1.18兆元が含まれるほか、投資プロジェクトの実施を通じた社
会投資・民間投資の吸収及び銀行貸出が含まれる。この1.18億元は全く新規の投資増であ
り、今年は予算の中に5915億元が入っている。

③中央政府の投入する1.18億元は、主として民生プロジェクト・技術改造・生態環境保
護・重大インフラ建設・地震災害復興に用いる。
その他若干の方面については、この2年間4兆元の計画には含まれていない。例えば、税費
用の減免は実際のところ5000億元を超え6000億元近くに達する。このほか、企業退職者の
年金基準を引き上げる。1200万人の義務教育段階の教師に業績評価による給与を実施し、
その給与水準を引き上げる。農民の収入を増加させ補助範囲を拡大し、補助基準を引き上
げる。3年内に8500億元を投入し、医薬衛生体制改革を実行する。これらの資金は、いず
れも4兆元には含まれていない。

④新たに増加した2年間4兆元の投資には、第11次5ヵ年計画に元々含まれているプロジェ
クトも確かにある。例えば、公道・鉄道等のインフラ建設などである。これらのプロジェ
クトは、十分な論証を経て準備されたものであり、速度をはやめて推進しなければならな
い。このようにしたからこそ、我々は短期間にこれだけ多くのインフラ建設プロジェクト
を確定できたのである。

新たに手配したものもある。例えば、社会保障的性格をもつ住宅安定プロジェクト建設で
ある。我々は、3年間で7500万戸の困難な大衆の住宅問題、240万戸のバラック地域の改造
問題を計画的に解決しなければならない。これらのプロジェクトは、いずれも論証を経て
おり、全て公開され、全プロセスで監督を受けることになる。

⑤今回の金融危機に対して、我々は長期に困難に対応する準備を行い、政策の余地を残し
た。我々は、更に大きな困難への対応案を準備し、必要な「弾薬」を備蓄しており、情勢
の変化に基づき、新たな経済刺激策を随時提出することができる[6]

(2)米国債の購入について[7]
  中国は確かに、米国の最大の債権国である。米国は、世界最大の経済体でもあり、我々
は米国経済の発展を十分注視している。オバマ大統領の新政府は、金融危機に対応する一
連の措置を採用しており、我々はこれらの措置の効果に期待をよせている。我々は巨額の
資金を米国に貸し付けており、当然、我々の資産の安全に関心をもっている。正直なとこ
ろ、私は確かにある程度心配している。
 
ご承知のとおり、多年の改革・建設を経て、我々は巨額の外貨を累積した。これは、中
国の経済実力を示すものである。外貨準備の問題においては、国家の利益擁護が第一であ
る。外貨の「安全・流動・価値維持」の原則を常に堅持し、リスクを防止し、多元化戦略
を実行する。同時に、我々は国際金融市場の安定をも考慮しなければならない[8]。この両
者は相互に関係しているからである。

(3)IMF増資について
  我々は、IMFの増資問題に十分関心を払っているし、この問題が十分複雑と考えている。
我々は次の原則を提起している。

①IMFのガバナンス改革は、投融資のリスクを防止し、権利・義務対等の原則を貫徹し、
発展途上国の利益を更に重視しなければならない。

②IMFの増資は一国の問題ではなく、各構成国がそのシェアに応じて責任を共同負担する
よう、我々は主張している。

③その他の国際金融機構も、多様な融資方式を採用して融資を行わなければならない。

④いかなる国家も、IMFの増資に対して自国の現実から出発すべきであり、自発的という
原則に基づくべきである。

(4)8%成長目標について
  私は、この目標を実現することには確かに困難があるが、努力によって可能性はあると
思っている。8%前後の経済発展目標は、3方面の認識によるものである。

①その必要性と可能性を考慮しなければならない。

②これは、政府の承諾・責任である。

③我々の自信と希望を表明するものである。
  発展目標は、船の羅針盤のようなものである。もし羅針盤がなければ、船はどちらの方
向にいくのか、いつ到達するのか分からない。
 
8%前後という目標の実現可能性について、私は3点を強調したい。

①中国は正に、工業化・市場化・都市化の発展加速の時期にあり、消費拡大・構造グレー
ドアップの時期にある。
  中国13億の人口のうち8億は農民である。農村に行ってみれば、投資はそれほど多くは
ない。中国の市場は人口・面積からいっても、欧米市場より大きい。

②中国は豊かな労働力資源と多くの人材という優位性がある。
  現在、就業には困難が存在するが、長期的にみれば、これは発展の重要条件である。

③30年の改革開放とりわけ最近10年の改革を経て、中国の金融システムの基本は健全で安
定的であり、これが経済発展に強力な支援を与えている。
 
米国・欧州が金融分野と実体経済という2つの戦線で作戦しているとするならば、中国は
金融リスクを防止するだけでよく、財政資金によって金融の損失をカバーする必要はない。
むしろ、現在金融は、経済建設に大量の融資を提供している。昨年11月の貸出は4700億元、
12月は7700億元、今年1月は1.62兆元、2月は1.07兆元である。
 
実のところ最も重要なことは、数ヶ月の努力を経て、中国人の心が温まってきたことで
ある。心が温まることは、経済が温まるということである。私は、全中国人が自分の心を
暖めることによって中国経済を暖めることを希望する。

(5)財政リスクについて

①我々の財政赤字は、まだコントロール可能な範囲にある、債務も安全である。
  これは、我々がここ数年不断に赤字を削減してきたことと関係がある。2003年の頃、当
該年度の財政赤字は3198億元であり、GDPの2.6%を占めていた。2008年に至り、我々の赤
字は1800億元、GDPの0.6%となった。2003年の国債発行は1400億元であったが、2008年は
300億元である。ここ数年の経済発展と財政の増収は、赤字・債務の余地を広げた。

②我々は積極的財政政策の重要性を深刻に理解しなければならない。
  現在、金融危機への対応で最も直接的・有力で効果的な方法は、財政の投入を増やすこ
とであり、これは早ければ早いほどよい。
  これとは別の事情もある。経済の下降を防止しておけば、経済が好転するに伴い財政収
入も増加する。

③我々は財政投入にあたり、2つの点を把握しておかなければならない。
  第1に、財政投入を、金融危機の最も重要でカギとなる緊迫した部分の解決に用いなけ
ればならない。第2に、財政投入を通じて、我々の孫子の代に貴重な財産を残さなければ
ならない。財政全体の運営において、我々は必ず監督管理を強化しなければならない。こ
れには中央財政と地方財政の問題も含まれ、我々は全過程で監督管理を実行し、人民に対
して公開する。

(6)失業問題について
  失業問題は我々が直面している十分深刻な問題である。我々が包括的な計画を採用し、
財政投入を増やしているのは、根本から経済発展を促進するためである。しかし、失業問
題を解決するには、中小企業の発展を大いに支援することが最も重要である。中小企業は、
雇用の90%を吸収しているからだ。大学生と出稼ぎ農民の就業問題の解決に関して、我々
は具体的政策を既に制定しており、しっかり実行しなければならない。

昨年下半期と今年1-2月期、失業者が増加し多くの出稼ぎ農民が帰郷する状況下、我々の
社会は総体としてなお安定している。我々は、就業拡大を経済社会発展の重要任務とし、
引き続き有力な措置を採用する。前にも述べたことがあるが、大学生であれ、出稼ぎ農民
であれ、就業は彼らの生計に関係するのみならず、彼らの尊厳に関わるものである。この
ことにつき政府は百倍重視し、軽んじてはならない。

(7)改革について
  金融危機への対応にあたっては、改革を緩めてはならず加速しなければならない。メカ
ニズム・体制上の問題を解決してこそ、各措置の実施も保証できるのである。我々は引き
続き経済体制改革を推進しなければならない。主として、社会主義市場経済体制を更に整
備しなければならない。具体的には、

①強力なマクロ・コントロールだけでなく、資源配分における市場の基礎的な役割を十分
に発揮させなければならない。

②国家が大規模な財政投入を行うだけでなく、民営企業の発展と民間資本の投入を奨励し
なければならない。

③産業調整・振興計画だけでなく、企業の活力・動力を大いに発揮させることを重視しな
ければならない。

我々は、政治体制改革を積極的に推進しなければならない。当面最も重要なものは3方面
である。

①社会主義民主政治を発展させ、人民の自由・権利を保障しなければならない。

②司法体制改革を推進し、社会の公平・正義を促進しなければならない。

③各方面の監督管理を強化することにより、政府の行政運営を法に基づき進め、かつ監督
下に置かなければならない。
(2009年3月記6,707字)

[1] 2 月については、前年には春節があったこと、前年は閏年であったことを考慮しておく必要がある。したがって、全体のトレンドを見るには、 1 - 2 月期の前年同期比の方が参考になる。

[2]これは、 1 月の自動車購入優遇策の影響かもしれないが、 3 月の動向を確かめる必要がある。

[3]雲南・貴州省は、昨年豪雪被害を受けているので、電力使用の伸びが大きくなっているが、これは経済の回復を示すものではない。

[4]新華網北京電 2009 年 2 月 16 日は、 1 月のデータ発表の際「 2008 年 10 月以来 4 ヶ月連続マイナス成長」と報じており、 10 月の数値が改定されている可能性がある。

[5]この内訳は、前年同月比国内増値税- 3.2 %、国内消費税 24.5 %増、営業税- 5.1 %、企業所得税- 21.6 %、個人所得税 8.1 %増、輸入貨物増値税・消費税- 15.7 %、関税- 18.8 %、証券取引印紙税- 90 %、車両購入税- 6 %となっている。このほか、輸出税還付が前年同期比 39.8 %増である。

[6]これが追加対策として大きく報じられているが、いずれにせよ 1 - 3 月期の経済動向がはっきりする4月中下旬までは、大きな追加刺激策が打ち出される可能性は低い。

[7]1 月末の中国が保有する米国債は、 12 月より 122 億ドル増えて、総量は 7396 億ドル(米国債総額の 6 %)に達した。中国は、昨年 7 - 10 月に連続して大幅に米国債の保有を増やしており、 9 月 446 億、 10 月 659 億、 11 月 290 億、 12 月 134 億と保有を増やしている。 11 月末時点で、中国の米国債保有高は 7000 億ドルを超えていた。これに対して、日本は 1 月に 88 億ドルを買い、総量は 6348 億ドルに達した。従来 3 位だった英国は、 1 月に 53 億ドル保有を減らし、第 6 位に後退し、その地位をわずか 1 億ドル買った石油輸出国に取って替わられた。その国の保有高は 1863 億ドルである(中国証券報 2009 年 3 月 17 日)。

[8]要するに、今後の米国債購入方針は玉虫色になっている。

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