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「総経理のための中国企業会計講義」第2回

中国ビジネスレポート 税務・会計
斉藤 孝史

斉藤 孝史

無料

2009年3月16日

記事概要

「固定資産の認識と測定、仕入税額控除」

第2回「固定資産の認識と測定、仕入税額控除」

前回は、金融危機の現在、製造業にとって影響の大きいと考えられる固定資産の減損を取
り上げた。今回は基本に戻り、新準則の下での固定資産の認識と測定、さらに2009年から
開始された固定資産の増値税仕入税額控除の会計実務を掘り下げてみることにしたい。

中国における固定資産の定義は、新準則・新税法上「生産経営のために保有し、使用期間
が一年以上」でほぼ一致している(表1)。ただし金額の小さな工具・用具・備品等は、
一年を超えても実務上は棚卸資産(消耗材料)に計上する。

表 1:固定資産の認識

 

新企業会計準則

企業所得税法

保有目的

商品の生産、役務の提供、賃貸、経営管理

生産経営のため

使用期間

1 会計年度を超過

12 ヶ月以上

価格

記載なし

記載なし

固定資産の取得原価には、購入価格、税金費用、運送費、据付費用等が含まれるが、2009
年1月1日より適用となった増値税暫行条例は固定資産の増値税仕入税の控除を認めている
ため、増値税は固定資産の取得原価に含まれないことに注意する必要がある。

改訂前後の仕訳を比較してみると以下のようになる(購入価格100万元、増値税17万元の
場合)。購入設備に対する増値税額は巨額になると考えられるため、仕入税額がきちんと
控除されているか(すなわち「应交税费」の金額が減少しているか)を財務諸表や申告書で
確認してほしい。もちろん、正式な増値税専用発票を取得していることが前提となる。

~ 2008 年

2009 年~

輸入設備免税の適用がない場合

(借方) 固定资产117

(貸方) 银行存款 117

輸入設備免税の適用がある場合

(借方) 固定资产 100

(貸方) 银 行存款 100

(借方) 固定资产 100

     应交税费 — 应缴增值税(进项税额)17

          (貸方) 银行存款 117

旧企業会計制度からの変更点として、特殊な業務(石油ガス、核設備等を用いる業務)を
行う企業の固定資産の除却費用を取得原価に含めることになったが、一般の企業の固定資
産に発生する処理費用は除却費用に含めず、発生時に費用処理すればよい。

認識した固定資産は、期中に減価償却を行う。新準則では4つの償却方法が例示されてい
る一方、新税法では定額法を基本とし、技術進歩や陳腐化の速い場合など条件によって耐
用年数短縮や加速償却(倍額残高逓減法、級数法)を採用することができる。

耐用年数についても新税法で項目ごとに定められているため、実務上はこれに合わせるの
が一般的である(表2)。尚、減価償却の開始及び停止は、購入及び使用停止のそれぞれ
翌月になることにも注意したい。

表 2:固定資産の減価償却

 

新企業会計準則

企業所得税法

償却開始・停止

購入の翌月より償却開始、使用停止の翌月より償却停止

購入の翌月より償却開始、使用停止の翌月より償却停止

償却方法

定額法、作業量法、倍額残高逓減法、級数法

定額法(条件により倍額残高逓減法、級数法も可)

残存価額

固定資産の性質及び使用状況により確定

合理的に確定

耐用年数

固定資産の性質及び使用状況により確定

建物・構築物: 20 年

飛行機・列車・船舶・機器・機械・その他生産設備: 10 年

生産経営活動に関係する器具・工具・家具等: 5 年

飛行機・列車・船舶以外の運搬工具: 4 年

電子設備: 3 年

(条件により上記の 60% 以上の範囲で短縮可能)

減価償却方法を選択する際に考慮する点として、以前より優遇税制を受けていた企業は過
渡的な措置があり、時間が経つにつれ税率が上昇する。そのため通算で考えれば、税率の
低い時期に多く、税率の高い時期に少なく償却する方法を採用することに税務上のメリッ
トがある。

参考のために、「倍額残高逓減法」と「級数法」について解説しておく。

「倍額残高逓減法(双倍余额递减法)」とは、定額法の2倍の償却率により償却額を計算する
方法である。耐用年数を5年とすれば、定額法の償却率は20%(1/5)であるから、倍額残
高逓減法の償却率は40%となる。期首の固定資産純額に償却率を乗じた値が償却額となる。
「級数法(年数?和法)」とは、耐用年数の級数和(1+2+3+4+5)を分母とし、残存耐
用年数を分子として償却率を計算する方法である。耐用年数を5年とすれば、1年目は5/1
5、2年目は4/15、‥‥、のように償却率が逓減する。

【今回のポイント】

  • 固定資産の定義は「経営用途で使用期間が1 年以上」で会計・税務が一致
  • 2009 年以降に購入した設備は、増値税仕入税額が控除されているか確認
  • 償却方法選択の際は、優遇税制の過渡的措置にも注意

【新出会計科目】

科目番号

中国語

ピンイン

日本語

1601

固定资产

gùdìng zīchǎn

固定資産

2221

应交税费

yīngjiāo shuìfèi

未払税費

1002

银行存款

yínháng cúnkuǎn

銀行預金

【参考リンク】

 

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