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【中国子会社原価計算】第1回‐見積価格は本当に合っていますか?

中国ビジネスレポート 税務・会計
斉藤 孝史

斉藤 孝史

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2013年1月11日

システムに頼らず自分でできる!中国子会社原価計算


(1)見積価格は本当に合っていますか?

原価計算制度の導入には手間と時間がかかる。
中国工場は労務や税関、現地政府のリスクを抑えるのに必死でそこまで手が回らないという工場も多い。

だからといって原価計算による損益管理をあきらめるのは本末転倒である。
損益管理は中長期的な投資判断に関わる重要な分析事項であるはずだ。
この連載ではシステムに頼らずできるだけ簡単な方法で中国工場の原価計算を行う現場のノウハウをお伝えしたい。

本格的な原価計算制度を導入していない工場の場合、近似的な原価データを持っているのは営業部門である。
営業部門では見積書作成時に製品ごとの詳細なデータを測定し、採算が取れることを確認した上で見積価格を算出する。

製造業の見積書は通常、以下のような構成で作成されているはずである。

■ 見積書の例

材料費:100 元
加工費:50 元
利益率:10 %
―――
見積価格:165 元

・材料費内訳
材料A:10元×8kg=80元
材料B:5元×4コ=20元
―――
材料費合計:100元

・加工費内訳
加工A:2元×10秒=20元
加工B:1元×20秒=20元
加工C:0.5元×20秒=10元
―――
加工費合計:50元

原価計算の観点から、見積書の優れている点は2つある。

1. 製品ごとの原価が明示されている2. 売価(売上)との対応が取れている

これらは原価計算の最終的な目的でもある。
すなわち製品ごとの原価を測定し、売上との対応を取ることで製品ごとの採算性を検証することが原価計算の目的の一つなのである。

一方で見積書には欠点もある。
見積に使われた材料価格・必要数量、加工チャージ・時間のデータはいずれも当初の見込計算によるものであり実績値ではない。
もし何年も改訂されていなければ実績値と大きく乖離している可能性もある。

しかし実績値と比較しようにも製品ごとの原価を計算していないのだから比較する術がない。

そこで簡便法として、見積書から材料費、加工費の全製品合計を算出し、月次決算書の材料費、加工費と比較することにしたい。
原価計算を行っていない月次決算書の材料費・加工費[1]は
すべて発生額(当月製造のために投入した費用)であることに注意する。

まず当月生産したすべての製品の見積書と生産量・仕掛品在庫データを用意する。
生産量・仕掛品在庫データから当月投入量データを算出し、これに見積書の原価を掛けたものが理論上の当月発生額に相当する。

・当月投入量=当月生産量+当月末仕掛品在庫ー当月初仕掛品在庫・理論上の当月発生額=当月投入量×見積書の原価

理論上の当月発生額をすべての製品について算出し合計したものを実際発生額と比較してみよう。

実際発生額の方が明らかに大きくなっていないだろうか?
それはつまり見積書で想定した原価に収まっていないという意味である。

以上のような簡便法では大雑把な比較はできるのだが、一歩踏み込んだ分析となるとお手上げだ。
原因を詳しく知るには、本格的な原価計算に足を踏み入れなければならない。

[1]加工費とは、人件費や減価償却費、消耗品をはじめ、工場運営にかかる材料費以外のすべての費用のこと。
つまり月次決算書の材料費、販管費、その他費用を除いた製造に関するすべての費用を集計する必要がある。

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