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温家宝総理の重要発言  

中国ビジネスレポート 政治・政策
田中 修

田中 修

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2008年11月19日

記事概要

ここしばらく、温家宝総理は訪米・夏季ダボス フォーラム・地方視察において、経済政策に関する重要発言を行っている。党3中全会を目前にした総理の一連の発現であり、その概要を紹介しておきたい。

はじめに

 ここしばらく、温家宝総理は訪米・夏季ダボスフォーラム・地方視察において、経済政策に関する重要発言を行っている。党3中全会を目前にした総理の一連の発現であり、その概要を紹介しておきたい。

 

1.米国経済・金融界人士との座談会(924日)

 924日段階ではごく断片が報じられただけであったが、新華網北京電2008930日は、その詳細を改めて報じている。

 本座談会は温家宝総理の要望で開催され、座談会にはニューヨーク連銀のガイトナー総裁、シティ・グループのルービン会長、米中貿易全国委員会の利偉誠主席(陶氏化学公司会長)、コロンビア大学のスティグリッツ教授、米国外交関係委員会ハス主席が出席した。

(1)サブプライムローン危機について(温家宝発言)

 米国のサブプライムローンは国際金融市場の激烈な動揺を引き起こし、世界経済の前途は楽観できない。同時に、現状と1930年代は異なるということを見てとらねばならない。ハイテクの経済的基礎を含む米国の実体経済は、なお良好である。過去数十年、世界経済はあまたの風雨を経験してきたが、最終的にはいずれも危機を乗り越え、新たな発展を実現した。今日、国際社会は金融リスクを防御する能力が不断に増強され、経験は一層豊富になっている。危機に対応するカギは、勇気と信念を奮い起こすことであり、これは黄金やマネーよりもずっと重要である。

 我々は米国政府・金融界が、すでに国内金融市場の安定のため一連の重要措置を採用したことに注目しており、現在の困難緩和に積極的な作用をもたらすことを希望している[1]

 中米経済関係は日増しに緊密になり、不即不離の地歩を固めた。米国金融で問題が出現したことに、中国は注意を払っている。中国が対外に送るものは、安定と協力のシグナルである。我々も資金安全問題には関心を払っているが、なお米国経済を信頼しており、役割を発揮されることを望んでいる。米国経済が金融の安定を維持することは、米国・中国・世界にとって有利である。中国は、米国が協調・協力を強化し、世界各国が一致して協力して困難を克服し、国際金融市場の安定を共に維持することを望んでいる。

(2)米側の中国に対する期待[2]

①ガイトナー

 現在の世界経済の下降情勢の下、人々は中国の発する情報を重視している。中国は世界経済・金融の安定・信頼の源泉である。

②利偉誠

 米国経済が鈍化する状況下、中国経済が安定とパワーを維持することは、世界にとって福音である。

③スティグリッツ

 世界の金融監督管理システムは、これまで発展途上国の声をおろそかにしてきた。今後、中国の声により耳を傾ける必要がある。

 中国は積極的な財政・金融政策を採用し、内需を拡大し、経済の安定的な成長を維持するべきである。米国の金融危機から教訓を汲み取り、金融の監督管理を強化し、金融デリバティブの安全と金融のイノベーション問題を重視すべきである。このほか、社会保障体系を整備しなければならない。

(3)米側の建議への温家宝の回答

 中国はすでに世界金融危機という試練への対応に着手している。中国は経済の平穏で比較的速い発展を希求する。我々は、経済発展と就業増加及びインフレ抑制の間で均衡点を探さなければならない。中国のCPIは最近毎月下降している。

疑いなく、外需の減少は一定程度中国の経済成長速度に影響を及ぼす。しかし、中国経済は自身の特徴をもっている。中国は13億人の人口を有し、うち8億は農民である。国内市場は広大であり、とりわけ農村市場には大きな潜在力がある。我々は内需拡大に立脚しなければならない[3]

 情勢の変化に対応し、中国はマクロ・コントロールを強化し、柔軟・慎重・弾力性に富む政策を採用し、マクロ経済・金融市場・資本市場の安定を維持する。

 

2.夏季ダボスフォーラムにおける講話(927日)

 天津で開催された。彼の講話の概要は以下のとおりである(新華網天津電2008927日)。

(1)経済社会が抱える軽視できない問題

①都市・農村の間、地域間、経済と社会の発展の間には不均衡・不協調が存在する。

②経済発展の方式が粗放である。

③人口・資源・環境の圧力が大きい。

④労働就業、社会保障、所得分配、教育・衛生等の面の問題が依然かなり多い。

⑤汚職・腐敗現象が深刻である。

 これらの問題を解決するには、つまるところ改革の深化によらなければならない。改革開放を堅持し、中国の特色ある社会主義の道を断固として歩んでこそ、国家には明るい未来がある。この意義からして、改革開放は中国の現代化建設の全過程を貫くものでなければならない。

(2)経済体制改革の深化

①基本的経済制度を更に整備し、市場システムを健全化する。

②財政・税制、金融体制改革を深化させ、マクロ・コントロール体系を整備する。

 当面、資源性製品の価格形成メカニズムの改革を加速し、資源配分において市場にその基礎的役割を一層発揮させる。

③国有企業の株式制改革を引き続き深化させ、現代的な企業制度を健全化する。

④公共財政システムと移転支出制度を更に整備し、増値税の転換改革を全面的に推進する。

⑤資源の有償使用制度と生態環境の補償メカニズムを確立し、資源税制度改革を適時推進する。

⑥各種金融市場を大いに発展させ、資本市場の安定した健全な発展を促進する。人民元レート形成メカニズムを整備し、資本項目の兌換可能性を徐々に実現する。

⑦改革の深化を通じて、体制全体を現代の経済発展の要求に更に適応させる。

(3)政治体制改革・その他の面の改革の推進

①政治体制改革

 人民民主は社会主義の生命であり、民主がなければ社会主義もない。我々は、経済の発展を通じて人民の生活を改善するだけでなく、民主法制建設を通じて人民の民主的権利を保障し、社会の公平・正義を実現しなければならない。

 我々は社会主義法治国家を建設し、法に基づき国家事務・社会事務を管理し、人民が更に有効に政府を批判・監督するための条件を創造しなければならない。人々の心がのびやかで、生気にあふれた政治局面を作り出すことに努め、社会の調和を促進しなければならない。

②教育

 人民が満足するような教育を行い、どの子供も学校に行き、しっかり学べるようにしなければならない。

③医療・衛生

 基本的な医療・衛生制度を確立し、人民全体に基本的な医療保障を享受させなければならない。

④社会保障

 都市・農村をカバーする社会保障体系を早急に健全化し、社会的弱者に更に愛情を注ぎ、人民全体に改革・発展の成果を享受させる。

(4)対外開放の深度・範囲の拡大

 開放は改革であり、開放を同時に受け入れてこそ国家は富強となることができる。中国の対外開放は長期的・全面的で相互利益をもたらすものである。およそ対外開放政策に資するものは、我々は皆堅持していく。我々は不断に、人類が創造した一切の優れた文明の成果に学び、手本としていく。

我々は、経済のグローバル化プロセスに積極的に参加し、公正で合理的な国際貿易システムと金融体制の建設を推進し、ドーハラウンドが早急にバランスのとれた結論に達することを断固として支援し、国際貿易のルール整備を支援し、貿易・投資の自由化・簡便化を推進し、マルチの経済貿易システムにおいて引き続き建設的な役割を発揮する。

引き続き経済体制改革を深化させ、経済関連の法規・政策を整備し、市場参入を拡大し、知的財産権の保護を強化し、外資による投資・起業環境を改善する。

制度を更に整備し、社会に活力を充満させ、安定的な発展を持続し、対外的に更に開放された中国は、13億の中国人民の福祉増加に資するのみならず、必ずや世界の平和・発展に更に大きく貢献することになる。

(5)中国経済の現状

 今年の初め、私は「今年はおそらく中国経済にとって最も困難な1年となるだろう」と述べた。我々は深刻な氷雪災害・特大地震災害に見舞われ、内外の複雑で変化に富む環境に直面している。我々は度重なる困難を克服し、経済の平穏で比較的速い発展の態勢を維持した。総体としてみると、中国経済発展の基本面は変わっておらず、マクロ・コントロールの予期した方向に向かい発展している。

(6)中国経済の発展は引き続き維持できるか

 当面、困難は少なくない。一面において、国際経済環境は更に峻厳で複雑になっており、金融の動揺は激化し、経済は明らかに減速している。他面において、国内の物価上昇圧力は依然大きく、農業の基礎はなお脆弱であり、エネルギー・資源が経済発展を制約するという矛盾は比較的際立っている。一部の業種・企業は生産経営が困難となっており、金融分野には少なからず隠れた弊害が存在する。

 しかし我々は、中国の遭遇している困難は、発展プロセスにおける困難であると考えている。中国経済が持続的に高成長を行うことを保証する有利な条件は多い。中国は工業化・都市化が急速に発展する段階にあり、経済成長の潜在力は大きい。今後比較的長期間、中国の発展はなお重要な戦略的チャンスの時期にある。我が国の労働力・資金の供給は依然余裕があり、国内の消費・投資需要の持続的成長の潜在力はなお大きい。市場は広大であり、企業の競争力・活力は不断に増強され、マクロ・コントロールの能力・水準は実践のなかで引き続き向上している。政治社会は安定しており、とりわけ我々は改革開放において、中国の国情と人民の願望に符合した路線・戦略・方針政策をすでに形成している。

 平和と発展は依然今の世界のテーマであり、国際環境は総体としてはわが国の発展に有利である。我々は、前進中の各種困難を克服し、国民経済の更に長期間良好で速い発展を維持する自信と能力がある。

 

3.夏季ダボスフォーラムにおける質疑応答(927日)

 次のように出席者からの質問に回答した(人民日報天津電2008927日)。

(1)企業指導者に対する建議

 中国の経済政策の根本は、長期にわたり平穏で比較的速い発展を維持することである。これは、中国の需要のみならず、世界の安定にも有利である。このため、我々は断固として改革開放を堅持し、同時に当面の国際金融経済の動揺に対し、柔軟かつ慎重なマクロ経済政策を採用し、直面する問題・矛盾を解決している。我々は、中国経済の発展に自信をもっている。

 企業は経済の主体であり、私は企業家に2点希望する。

①イノベーションを堅持しなければならない

②企業家はモラルがなければならない。

(2)国際経済危機への対応

 当面、国際経済・金融にとって最も深刻な試練は、米国サブプライムローン危機が一部の金融企業更には実体経済にまで広がり、世界経済の減速を生んでいることである。当面の危機に対し、最も重要なことは次の3点である。

①各国は協力を強化しなければならない。

②金融・経済の危機が到来した際には、エコノミスト・企業家の信念、人民の信念、国家指導者の信念がとりわけ重要である。このようなときは、信念が黄金・マネーより貴重である。

③中国は、力強く平穏で比較的速い経済成長の態勢を維持しており、大きな起伏は出現していない。このことは、世界経済への最大の貢献である。

(3)中国が直面する2つの問題

①国際的に出現した金融の動揺と経済問題

 我々はこれに適切に対応しなければならない。我々は、経済成長・就業とインフレの間に1つの均衡点を探し出さなければならない。

 我々は、経済が調和を欠き持続が不可能という問題を解決することにより、経済を秩序立てて発展させなければならない。

 我々は、省エネ・環境保護に注意を払い、人口・資源・環境への対応能力を高めなければならない。

②最近出現した「問題粉ミルク」事件

 これにより、我々は生産監督管理部分に多くの問題を抱えていることが暴露された。これは政府に責任がある。同時に、1つの国家の発展プロセスにおいては、企業モラル・職業モラル・社会公共モラルの建設を重視しなければならないことが暴露された。

 これらの問題を解決するには、次の3点に着手しなければならない。

1)この事件を真剣に調査処分し、絶対手を緩めないことにより、全国に警鐘をならす。

2)各方面の監督検査制度を確立・整備する。

3)全社会に良好なモラルの気風を樹立する。これには比較的長い時間を要する。

(4)自主ブランド商品の輸出

 中国の輸出の伸びは速いが、我々は自身の自主的なブランドを欠いており、とりわけ自身の知的財産権を欠いている。しかし、現在の国際競争とはとどのつまり知的財産権の競争に帰着する。

私は中国人がなお聡明と信じている。我々の政策がライバルに対し自由で競争的な環境を創造できさえすれば、人民の頭脳・才覚が発揮され、我々の輸出製品の質は高まり、自主的なブランド・知識財産権が増加するだろう。しかし、これは非常に困難なプロセスである。

(5)経済成長を保証する措置

 中国は、経済の平穏で比較的速い発展を維持する条件がある。

①中国は大きな国内市場を有する。

 世界経済が動揺している時期に、我々はなお挽回の大きな余地がある。

②経済発展の立脚点を内需拡大、とりわけ消費需要に置かなければならない。

 現在、社会全体の貯蓄は46兆元に達し、個人貯蓄は16兆元を超えており、資金には余裕がある。

③我々には素質が普段に高まっている人的資源がある。

(6)成長持続のための長期的課題

 中国経済は平穏で比較的速い発展をすでに30年続けてきた。引き続き20年の平穏で比較的速い発展を維持するには、大きな努力を払う必要がある。

①中国のような発展途上国は、大きな周期的波動を絶対回避しなければならない。

②我々の発展を全面的で調和のとれた持続可能なものにしなければならない。

 これには、気候変化への対応・資源節約・環境保護が必要である。

③カギは人にあり、人の頭脳・叡智・才覚にある。

 中国人がリーダーとなり、他国に追いつき前面に出ようと思うならば、制度・科学技術・企業・製品のイノベーションに勇気をもって取り組まなければならない。これなしには、全てが持続不可能となる。

 

4.広西・チワン族自治区視察(1045日)

 経済全般については、以下のように述べている(新華網南寧電2008105日)。

「今年に入り、世界経済情勢は急激に変化し、米国サブプライムローン危機は不断に悪化し、影響は日増しに深まり、世界の金融市場に対し強烈な衝撃を与え、世界の経済成長は鈍化している。内外の多くの不利な要因に対し、我々は転ばぬ先の杖で積極的に対応し、マクロ・コントロールの予見性・対応性・柔軟性の向上に努め、タイムリーに経済運行中の際立った矛盾・問題を解決し、経済の平穏で比較的速い発展の勢いを維持した。総じて見ると、わが国経済の基本面は変わってはおらず、マクロ・コントロールの予期した方向へと発展している。

 このほか、わが国の金融機関の実力は普遍的に増強されており、営利能力・リスク対抗能力は高まり、市場の流動性は総体として余裕があり、金融システムは穏健で安全である。

このことは、我々が外部の衝撃がもたらす不利な影響に対して、有力な支えを提供するものであり、我々は中国の経済発展と金融の安定に対し自信に溢れている。

今回の金融危機に対し、最も重要なことは我々のやるべき事をしっかりとやるということであり、経済の安定・金融の安定・資本市場の安定を維持することである。13億の人口を有する大国が、長期にわたり経済の平穏で比較的速い発展を維持するということは、即ち世界への最大の貢献となるのだ。」

2008年10月記・6,279字)


 


[1]  これに対しルービンは、「米国は主要な責任を負い、主要な行動を採用すべきだが、その他の国の協力も必要である」と発言している。

[2]  以下の発言には、「中国機関車論」的な論調が含まれており、これと地方の金融緩和・積極財政要求が結びつくと、政府・中央銀行は過剰な景気対策を余儀なくされるおそれがあり、注意を要する。

[3]  これを語る際、温家宝は「米国は借金して消費し、中国は預金して消費しない。いずれも問題である。中国の貯蓄は45兆元であり、うち20兆元は個人貯蓄である。これは3年の財政収入に相当する」と述べた。これに対し米側が嘆息し、「米国は現在、貯蓄はほぼゼロであり、米国に中国と同様の『問題』が発生してほしい。まさに、無節制な消費に金融家の無節制な貪欲さが加わったことが、金融危機を導いたのだ!」と答えている。

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