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中国第四世代指導者に課せられた歴史的任務

中国ビジネスレポート 政治・政策
田中 則明

田中 則明

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2003年3月14日

<政治・政策>
中国第四世代指導者に課せられた歴史的任務

田中則明

新しい国家主席、首相も決まり、中国の新体制が整った。新体制が直面する課題はどのようなものであろうか?私は、これを読み解くキーワードとして、謎めいた言い方を許してもらえるならば、「五・四・三」を挙げたい。「五・四・三」とは何か?何のことはない「五星紅旗」と「第四世代指導者」と「三つの代表」を指す。

先ず「五」。何故、「五星紅旗」か?

それは、21世紀の中国が中華人民共和国の建国当時の姿、即ち、大きな1つの星=「共産党」と4つの小さな星=「労働者」「農民」「民族資本家」「知識人」からなる国という国是に向かってまっしぐらに突き進んでいると見るのである。「民族資本家」の中国共産党への入党許可、「知識人」の社会的地位の著しい向上を見れば、それは火を見るよりも明らかである。

「知識人」に関して言えば、最近会った中国の資本家が、私にこういう謎掛けをした。
 「田中さん、あなたが本当の中国通かどうか試してあげましょうか?今、中国で最も有望なビジネスは何だかご存知ですか?」
と来た。正直言って私は答えに窮した。彼曰く、
 『高等教育』  と 『病院経営』
なのだそうだ(後で分かったが、何のことはない、彼自身がそのどちらも手掛けており、しこたま儲けていたのであった)。

教育に携わる者と知識人の代表であるお医者さん達の地位が徐々に向上しているのである。まだまだ、欧米諸国や日本には及ばないと言われてはいるが、文化大革命以後の数十年とは様変わりなのである。

今や、中国は、「労働者」と「農民」のみの国ではない。中華人民共和国建国当時の社会構成へと回帰し始めているのである。それも、かなりの猛スピードで。我々は、このキーワード「五星紅旗」を抜きには、現在の中国という国の姿と将来像を描くことは出来ないであろう。

次に、「四」。「第四世代指導者」。

 「第四世代指導者」こそが責任を以って、上記の「建国の理念」を具体化して行かねばならないのである。

そして、「三」。「三つの代表」。

この江沢民が強調した政治的スローガンの意味するものは何か?「3つの代表」とは、執政党である中国共産党が、「科学的生産力」と「先進的文化」と「全ての人民の広汎な利益」を代表するというものである。ということは、とりもなおさず、中国共産党一党が、「五星紅旗」の最大の星でありつづけるのみならず、四つの社会階級全てに網をかぶせ、大きく取り込んでしまう、包摂してしまうということを意味する。執政党である中国共産党一党があらゆる社会階級の利益を代表する、即ち、中国共産党の発展=あらゆる階層の中国人の発展となるということを意味している。このスローガンは、まさに、その方向性を、単なる願望を超えた決意として表明したものと筆者は理解する。

しかし、ここに大きな疑問が湧いて来る。

市場経済社会へとまっしぐらに進むつつある中国において、「様々な利害関係」、例えば、富者対貧者、農民対非農民、資本家対労働者、失業者対政府、外資系企業経営者対国営企業経営者、地方政府対地方政府等等の錯綜した利害関係がそんなに簡単に図式通りに調整できるであろうか?

利害関係は複雑の度を強めており、それを調整するためにより精緻な法律の策定が必要不可欠となっているのは、欧米や日本を見れば明らかである。この面での中国の深刻化も空前絶後のスピードで進んでいよう。

また、様々な価値観が生まれて来ており、それを調整し、国を国民を一枚岩にすることがそんなにうまく出来るのであろうか?今や、異なった政治的価値観を有する団体が、中国を取り巻く世界には、下記の如く多数存在するのである。

中国共産党(執政党)
   中国国民党革命委員会(民主諸党派)
   中国民主同盟(同)
   中国民主建国会(同)
   中国民主促進会(同)
   中国農工民主党(同)
   中国致公党(同)
   九三学社(同)
   台湾民主自治同盟(同)
   民主党(香港)
   民主建港連盟(同)
   自由党(同)
   前進(同)
   民権党(同)
   民主進歩党(台湾)
   国民党(同)
   新党(同)
   台湾団結連盟(同)
   中国人権(アメリカ)
   チベッタン・センター(インド)等等

以上より、第四世代の歴史的任務は、喩えてみれば、荒れ狂う海上での巨船の舵取りといったもので、並外れた高度なスキルと集中力とバランス感覚なしには遂行し得ないものであることが見て取れよう。

さらに、上記は主として国内政治にかかわるものであったが、対外政治に目を転じてみると、そちらにも、中国の命運に関わる決断を迫られるような問題が山積している。中でも突出しているのは、アメリカ対イラク問題である。この問題への対応如何では、遅れてやって来た中国の改革開放政策によりもたらされた繁栄がフイになってしまう危険性が全くないとは言えないのだ。その位、現在の国際政治上の利害関係も錯綜を極めているのである。

このように見て来ると、中国第四世代指導者達に課された責務は重く、その力量が厳しく問われていると言わざるを得ない。

(2002年3月14日記・2,038字)
心弦社代表 田中則明

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