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ログイン2005年3月15日
はじめに
2004年12月から2005年2月にかけて全国工作会議が次々に開催され、また主要経済閣僚がインタヴューや論文寄稿を行った。ここでは、その主要なポイントを紹介することとしたい。
1.国家発展・改革委員会
(1)全国発展・改革工作会議(2004年12月8・9日)
馬凱主任は、「投資需要の膨張圧力は依然大きく、インフレ圧力は比較的明らかであり、石炭・電力・石油・運輸は逼迫しており、ボトルネックを解決する過程において発電所の無秩序な建設が再び出現している」と指摘し、その主要原因として経済構造の不合理・成長方式の粗放を挙げている。これを踏まえ、会議では2005年の政策について次のように決定した(2004年12月9日新華社北京電)。
A マクロ・コントロールを引き続き強化・改善する
固定資産投資の総規模の速い伸びを抑制することを堅持し、いくつかの産業の無秩序建設・過度な拡張の再発を防止する。土地審査と貸付の2つの関門をしっかりと把握し、鉄鋼・セメント・電解アルミ・カーバイド・コークス等の産業の投資反動を厳格に抑制する。違法発電所の整理を真剣に行う。穏健な財政政策と金融政策を真剣に実施する。政府投資の役割と使用方向を当初の社会投資・経済成長の牽引から構造調整の推進、脆弱な部分の強化、5つの統一的企画(都市と農村の発展、各地域の発展、経済と社会の発展、人と自然の調和のとれた発展、国内の発展と対外開放を統一的に企画)の促進に振り向ける。
B 経済体制改革の深化と体制的障害の除去
独占業種(電信・電力・民間航空・郵政・鉄道・煙草・水道・ガス等)の管理体制の改革のテンポを速める。投資体制改革決定を実施する。価格改革(電気・石油・天然ガス・水道・医療・教育等)を深化させる。
C 経済構造の戦略的調整を推進し、経済成長の方式を転換する
鉄鋼・電解アルミ・セメント・化学肥料等の産業に関する産業政策・計画を早急に公布・実施する。サービス業の発展を加速する。資源節約の推進に力を入れる。
また、第11次5ヵ年計画(2006−2010)について馬凱主任は、「策定過程においては新たな理念が必要であり、国民経済というパイを大きくすることのみを強調するのではなく、パイの質を良くし、パイをうまく切り分けなければならない」と述べ、具体的には次の方針を表明している(2004年12月8日新華網北京電)。
A 編成の出発点を、物質・財産の増加への偏重から人の発展を一層重視するよう転換する
就業の拡大、義務教育の強化、公共衛生、公共安全等の方面の計画を強化し、人文・社会指標を増加する。
B 負担能力を考慮し、需要のみならず可能性も考慮する
全国と当該地域の土地資源、水資源、生態環境、電力、輸送力等の負担能力から出発し、成長目標を合理的に確定する。
C 視野を拡大し、全局的な意識で臨む
三農問題の解決に当たっては、都市と農村を統一的に配慮し、非農業産業の発展・都市化・農民の減少を図らなければならない。
D 計画の位置付けを正確に定める
市場が役割を発揮する領域については、具体的経済指標・産業発展内容を減少させる。
E 個別計画の策定
現在41の中長期個別計画を策定中(エネルギー、石油天然ガス、重要鉱産資源、高速道路網、農村教育、電力、原子力、鉄鋼、アルミ、セメント、船舶、新エネルギー・再生可能資源、国家石油備蓄体系、総合交通網、農村衛生サービス等)。また、地域計画策定の試みとして、当面長江デルタ、北京・天津・河北地域の2地域について行う。
(2)経済の深層矛盾
しばしば中央の発表では、「マクロ・コントロールは顕著な効果を上げたが、経済の深層の矛盾は解決されていない」という言い方がされる。しかし、その「深層の矛盾」についての具体的説明はされないことが多い。この点につき、王春正副主任が2004年12月16日付け経済日報で詳細を説明しているので、紹介しておきたい。
A 国有企業改革
一部の企業の現代企業制度はまだ真に立ち上がっていない。コーポレート・ガバナンスは不完全で、多年累積してきた構造問題・社会負担問題・革新能力の問題は未だ根本的には解決されていない。企業の退出メカニズム・社会保障体系は不健全である。
B 政府職能の転換
一部の地方では、政府がミクロな経済活動に過剰に介入し、市場・企業に過度に干渉する現象が存在している。これは市場の資源配分の基礎的役割を発揮させるのに悪影響を及ぼすのみならず、政府が経済コントロール・市場監督・社会管理・公共サービスを履行することにも不利に働いている。
Cマクロ・コントロール体系
現在のマクロ・コントロール体系は、経済主体の多元化・利害関係の多様化といった新情勢からくる要求に完全に適応できていない。財政・金融・投資等の領域の改革の一層の深化が急務である。
D市場体系
資本・土地・技術・労働力等の生産要素市場の発達が際立って遅れている。しかも、業種独占・地域封鎖は未だ根本的に除去されておらず、価格による調整や価格の市場大統一への役割が有効に発揮されていない。
(3)馬凱主任インタヴュー
馬凱主任は度々メディアのインタヴューに応じているが、ここでは全人代直前の2005年3月1日付け人民日報に掲載されたものを紹介しておく。
ここで、馬主任は2005年の中国経済について、国際面で3、国内面で6の問題点を指摘している。
A 国際面
a) 局部的な戦争や地域の衝突が頻繁に発生している。
b) 国際原油価格が高水準で波動している。
c) 米ドルレートの下落が続いている。
そのほか、国際貿易の保護主義が一層強まり、中国の輸出拡大の困難が増している。
B 国内面
このため、馬主任は「最も重要なことは、穏健な財政政策と金融政策を実行し、貸付と土地の2つの関門をしっかり把握し、固定資産投資規模の速すぎる伸びの抑制に力を入れ、一部の盲目的・拡張的な産業の投資反動増を適切に防止することである」と強調している。
2.財政部
(1)2004年12月7日付け人民日報財政部長論文
2004年12月1日に党中央政治局会議が開催され、2005年は穏健な財政政策を実行する旨が決定された。さらに続く12月3−5日に開催された中央経済工作会議において、穏健な財政政策への方針転換が正式に決定された。このようにして98年8月以来の積極的財政政策は、2004年12月に至りようやく名実ともに終止符が打たれることになったのである。
これを受け、金人慶財政部長は2004年12月7日付けの人民日報に寄稿し、穏健な財政政策への転換の理由を説明した。その概要は以下のとおりである。
A 時宜にかなった選択は、財政政策の要である
1998年以来デフレ傾向に対応し、積極的財政政策(拡張的財政政策)を実施し、9100億元の長期建設国債を継続発行して毎年GDP成長率を1.5−2ポイント前後押し上げた。
B 穏健な財政政策を実行することは、現在の経済情勢の発展変化の要請に基づくものである
a) 積極的財政政策は、実質的に拡張的財政政策であり、インフレがマクロ経済発展に影響を及ぼすプレッシャーとなっているときにこの政策を引き続き実施することは、固定資産投資の速すぎる伸びを抑制することに不利となるのみならず、甚だしきは逆方向への調節になりやすい。また、インフレ傾向の緩和に不利となるのみならず、投資と消費のアンバランスを激化させやすく、経済の健全な運営へのリスク・障碍を増大させる。このため積極的財政政策は適時に転換しなければならない。
b) 現在わが国経済は全面的に過熱しているわけではなく、経済社会発展の中で農業・教育・公共衛生・社会保障等多くの脆弱な部分を強化しなければならず、近いうちにインフレが発生する強烈なシグナルはない。このため、積極的財政政策は緊縮的財政政策へ一気に転換させてはならない。
C 穏健な財政政策を実行するには16字をしっかり把握しなければならない
a) 穏健な財政政策(経済学的には中立的(原文は「中性」)財政政策)を実行するには、「赤字を抑制し、構造を調整し、改革を推進し、収入を増加させ支出を節約する」(筆者注:意味は全国財政工作会議参照)の把握を重視しなければならない。
b) 財政赤字を適度に減少し、長期建設国債の発行規模を適度に減少する。当面中央財政赤字規模は大体3000億元前後を維持する。同時にGDPの不断の拡大に伴い財政赤字の対GDP比も不断に下降し、2005年度の財政赤字の対GDP比は2%前後と予想される。一定の赤字規模と長期建設国債の規模を維持することの必要性は、
(2)全国財政工作会議(2004年12月21日)
金人慶部長は、「穏健な財政政策を実行することは、マクロ・コントロールの強化・改善からの要請であり、目的は経済の速く良好な発展である」とし、次のように述べている(2004年12月21日新華社北京電)。
A 穏健な財政政策を実行することは、経済発展の新情勢に対する科学的判断と正確な把握に基づくものである
(筆者注:前述の人民日報論文と同趣旨)
B 穏健な財政政策は、財政政策の重大な転形である
穏健な財政政策は、財政政策の名称と赤字規模の調整変化であるのみならず、財政政策の性質と誘導方向の根本的な転換である。これを概括的に言えば、「赤字を抑制し、構造を調整し、改革を推進し、収入を増加させ支出を節約する」(16字方針)ことである。
a)「赤字の抑制」とは、中央財政の赤字を適切に減少させることである。ただし、明らかに縮小するのではなく、緩和・引締めを適度に行い、コントロールの方向についてシグナルを伝達することに重点を置く。インフレの萌芽の継続的拡大を防止するとともに、デフレ傾向の再現を防止し、マクロ・コントロールの強化・改善とマクロ・コントロールの成果を強固にし発展させるという要請を体現するものである。
b)「構造の調整」とは、科学的発展観と公共財政の要求に一層則って、財政支出の構造と国債プロジェクトの資金振り向けの構造を調整することである。区別して対応し、あるものは保護しあるものは抑え、経済社会事業の脆弱箇所の強化に力を入れ、「5つの統一的企画」(前述)の実施と経済構造の調整という要請を体現するものである。
c)「改革の推進」とは、国債プロジェクトの資金に主として依存した経済成長を牽引する方式を転換することである。一定の中央財政投資規模を保証したうえで、国債プロジェクトの資金規模を適当に調整減少して体制改革・制度刷新の支援に使用し、経済の自主的成長と健全な発展に有利な長期的効果のあるメカニズムを確立し、経済成長方式の転換という要請を体現するものである。
d)「収入を増加させ、支出を節約する」とは、総体としての税負担を増やさず、或いは税負担をやや減少させることを基本に、厳格に法に基づき徴税を行い、財政収入の安定的な伸びを確保するとともに、支出を厳格に管理し、財政資金の使用効率を適切に高め、マクロ・コントロールのバランスと節約型社会の構築という要請を体現するものである。
C 穏健な財政政策を実行するのは、マクロ・コントロールを強化・改善するためである
a)穏健な財政政策を実行することは、マクロ・コントロールを強化・改善するうえで、財政政策が何もしないとか、することがないということでは決してない。逆に、財政政策は経済発展中の不健全・不安定な要因の除去、マクロ経済運営の安定化、経済社会の長期的に健全な発展の基盤強化、発展の持続可能性の強化等の方面で、更に重要かつ積極的な役割を発揮するものである。
b)中央財政は、西部大開発と東北地方等旧工業基地振興のための各種財政税制優遇策を断固として引き続き貫徹実施する。国債プロジェクトの資金を減少させると同時に、中央財政は予算内の経常的建設投資を適切に増加させる。この建設資金は、構造調整と区別して対応するという原則を遵守し、経済社会発展の脆弱部分に傾斜配分する。これには西部大開発・東北地方等旧工業基地振興支援が含まれる。
c)中央財政はこのほか、中部地域の興隆と東部地域の一層の発展支援、並びに県・郷財政の困難を緩和し、食糧生産の多い県の食糧生産を促進する一連の財政政策措置を積極的に検討・制定・実施する。
(3)2005年2月22日付け人民日報財政部長論文
2005年に入り金部長は再び人民日報に論文を寄稿した。その概要は以下のとおりである。
A 財政政策を正確に運用することは、科学的コントロールという基本的な要請の実現である
a)特定の財政政策は、具体的なマクロ経済の状態と関連する。一般的にマクロ経済運営には3つの基本状態がある。1つは、有効需要不足でデフレ・不況等の問題が発生している場合で、拡張的財政政策が対応する。2つは、需要が過度に膨張しインフレ・経済過熱問題が発生している場合で、緊縮的財政政策が対応する。3つは、社会需給の総量は基本的に均衡しているが経済発展が不均衡で、主として構造問題に対応する場合で、中立的(原文は「中性」)財政政策が対応する。
b)指摘しておかなければならないことは、中立的財政政策は決して単純に完全な均衡をもって判断基準とするものではないということである。国際的には、財政収支から景気循環の影響を消去した部分が均衡していることを中立的財政政策と定義するか、或いは財政収入の対GDP比と利払い以外の支出の対潜在GDP比を不変に維持することが中立的財政政策なのである。財政収支の完全均衡は決して「中立」の必要十分条件ではなく、総需要に対する現実の影響が拡張でも緊縮でもないことこそが財政「中立」のキイポイントなのである。
B 財政政策を適時に転換することは、政府のマクロ・コントロール水準の重要な体現である
積極的財政政策を実施した1998年時点と比べると、現在のわが国のマクロ経済情勢には既に重大な変化(経済の自主成長メカニズムの基本的形成、経済成長の新たな上昇サイクル入り、経済運営における深層問題の突出)が発生しており、財政政策運営も転換点を迎えた。
C 穏健な財政政策は中立化と発展支援を弁証的に統一したものである
a)現在の中央財政の赤字規模は引き続き拡大してはならず、一度に解消してはならない。3000億元前後の赤字を維持するが、経済発展とGDPの増加につれ、財政赤字の対GDP比は不断に下降傾向を示すことになろう。
b)2005年の中央財政は国債プロジェクト資金を800億元計上するが、これに前年からの繰越し500億元を加えると、2005年に実際に使用可能な規模は1300億元前後となる。同時に中央予算内の経常的な投資を100億元増加するので、中央の投資調整力は基本的に維持され、重点・重要・重大プロジェクト建設の資金需要は確保できる。
(4)コメント
このように、財政部長が何度も穏健な財政政策を説明しているのには、国家発展・改革委員会への配慮がある。2004年5月末に金部長が積極的財政政策の中性化を提言した際、国家発展・改革委はこれに直ちに反発し、積極的財政政策継続の必要性を公言した。
国家発展・改革委が心配したのは、中立的財政政策の意味である。彼らは中性=財政均衡ととらえ、財政政策の中立化は財政赤字を一気に解消する急激な財政引締めと解釈していた。彼らはもしこれが実施されれば、自分達が第10次5ヵ年計画で推進している大型国家プロジェクトが資金難により達成困難になると考え、猛反発したのである。しかし、この理屈でいけば、日本は国債発行を開始した1965年以来一貫して拡張的財政政策を取っていることになり(事実、国家発展・改革委は2002年の報告で日本のことをそのように評価している)、現実と全く反している。
このような反対意見は財政政策に関する全くの無知に基づくものであるが、マクロ経済政策に関して最も強い発言権をもつ国家発展・改革委がそう考えている以上、財政部としては中立的財政政策がそれほど急激な引き締めを伴うものでないことを説明する必要があったのであろう。事実、新規の長期国債発行額を減額しても、前年度からの繰越しと税収内での公共事業の拡大により資金は十分確保される形となっており、財政部長は国家発展・改革委が影響力をもつ重点・重要・重大プロジェクトの資金確保を明言しているのである。逆に言えば、2005年度の財政政策の転換は国家発展・改革委の顔色を窺いながら恐る恐るの転換であり、財政政策の観点からは極めて不徹底なものである。これが財政部の力の限界ともいえよう。
また、急激な財政引締めの印象は地方政府の反発を招き、全人代において財政報告への反対票が急増するおそれもある。これも繰り返し説明がなされる理由の1つであろう。
3.国家税務総局
(1)全国税務工作会議(2004年12月24日)
謝旭人局長は2005年の税制改革の重点として、次の4項目を挙げている(2004年12月24日新華社北京電)。
A 輸出に係る税還付のメカニズムの整備
改革措置の実施過程で発生した問題を全面的に把握し、検討・解決する。
B 農村税・費用改革の推進
農業税の免税範囲の拡大、農業税の減税強化。
C 東北地方の一部業種について増値税転換テストを引き続きしっかり行う
執行中出現した問題を検討・解決し、以後の全国実施のために経験を蓄積する。
D 税制改革案に関して積極的に検討する
増値税転換(設備投資に係る増値税を仕入税額から控除)改革の全国実施案の検討を深める。消費税の課税範囲・税率構造の適切な調整を検討する。内外資本の企業所得税合併案の検討・準備を引き続き進める。個人所得税制度を完備する。
そのほか、一時帰休・失業者の再就職促進、ハイテク産業の発展奨励等の税制優遇策を引き続き実施すると同時に、中部地域興隆と循環型経済の発展等を支援する税制を真剣に検討する。
(2)謝旭人局長インタヴュー
2004年の税収(関税・農業税収を除く)が、2兆5718億元に達し、対前年比25.7%、5256億元増となったことから、謝局長に対しメディアから質問が殺到した。ここでは、2005年1月6日の中央電視台「経済30分」における説明を紹介したい。
A 2004年の税収が大きく伸びたことは比較的正常である
a)税収は名目価格で計算する。2004年の名目GDP成長率は、15%前後である。
b)税収は主として第2次産業・第3次産業からあがっている。第2次産業の成長率、一定規模以上の工業の成長率、全社会固定資産投資の伸び、輸入増加、企業利潤増が成長率を上回ったため、増値税は22%、営業税は25%、輸入関連税収は33%、企業所得税は34%前後の伸びを示した。
c)GDPは純輸出で計算するが、2004年は多くなかった。税収においては、3700億元が輸入関連税収であり、輸入の伸びに伴い33%、900億元余の増収となった。
B 2005年の増収の余地は縮小する
a)東北旧工業基地振興のための税制優遇策が実施される
b)2004年の税収ベースが高いため、更なる増収の困難が増している
c)物価等の不安定要素がある
4.金融
(1)人民銀行工作会議(2005年1月4日)
金融関連の会議は先に銀行・証券・保険の合同会議が開催され、後に人民銀行工作会議が開催されるのが通例であるが、今回は合同会議は開催されず、人民銀行工作会議も北京から南寧に場所を移して開催された。主な施策は以下のとおりである(2005年1月5日人民網)
A 2005年のコントロール目標
M1、M2の伸びは15%とし(2004年実績は13.6%、14.6%)、全金融機関の新たな貸付けの伸びは2.5兆元(2004年実績は2.26兆元)とする。
B 2005年の金融政策
周小川行長は、引き続き穏健な金融政策を実施するとしたうえで、次の各施策を指示した。なお、周行長は「穏健」の意味について、「『穏』は『穏やかで行き過ぎや過ちがない』、『健』は『健全』の意味である」とわざわざ解釈している(2005年1月10日新華網北京電)。
a)金融のマクロ・コントロールを引き続き強化・改善する
中央銀行の窓口指導を強化・改善する。中長期の貸付けを厳しく抑制する。農業・中小企業向け貸付けの拡大に努力する。不動産金融の健全な発展を推進する。金利の市場化改革を引き続き深化させる。
b)金融市場の発展・育成に力を入れる
金融商品の刷新を重点とし、市場の透明度を強化し、金融市場の全面的で調和のとれた発展を促進する。
c)金融企業改革を加速する
中国銀行・建設銀行のコーポレート・ガバナンスの整備、内部管理の健全化、経営メカニズムの転換を引き続き推進する。その他の国有商業銀行の株式制改革関連施策も積極的に行う。農村金融改革の全体案を早急に検討・論証する。
d)金融システムの安定維持に努力し、市場化による金融リスクの補償メカニズムを早急に確立する
関連部門と協調し、金融市場からの退出施策を規範化する。
e)外貨管理を強化・改善する
人民元レートの形成メカニズムの改革を積極かつ穏当に推進し、人民元レートの合理的で均衡のとれた水準での基本的安定を維持する。外為市場の秩序を整理・規範化する。
C 「金融生態」
この会議で周行長は、「2005年は金融生態環境の改善を更に推進しなければならない」と強調している。この「金融生態」という言葉は、彼が2004年11月以降しばしば用いているもので、彼は『財経』誌インタヴューの中で「金融生態の良し悪しは、貸出しリスクの大小と新たに増えた不良債権の比率に直接関係する。金融生態とは、ミクロレベルの金融環境をいい、法律、社会信用体系、会計及び会計検査規則、中小サービス体系、企業改革の進展及び銀行・企業関係等の方面の内容を含む。金融生態の改善は、この5方面から着手することによって可能となる」と説明している(2005年1月10日付け国際金融報)。
(2)銀行業監督管理委員会工作会議(2005年1月19日)
劉明康主席は、2005年の施策につき次のように指示した(2005年1月22日付け新京報)。
A 工商銀行の株式制改革を推進するとともに、農業銀行の内部改革に対する指導を更に強化する
B 商業銀行は、貸付けについて次の3つを堅持しなければならない
a)企業規模の大小をもって貸付け条件としないことを堅持する。
b)企業の所有制の性質をもって貸付けの取捨選択を決定しないことを堅持する。
c)リスク判断とリスク回避の能力を不断に向上させ、貸付け条件を充足するプロジェクト・企業の資金需要を積極的に支援することを堅持する。
C 農村信用社改革過程における財産権制度と管理体制の問題解決に力を入れる
D 不良債権の監督管理を引き続き強化・改善する
5.農業
(1)中央農村工作会議(2004年12月28・29日)
2003年に続き、年末に開催された。これは、2004年に続き農業関連施策を党中央・国務院第1文件とするためであり、今回は「農村工作の強化・農業総合生産能力の向上に関する中共中央・国務院の若干政策意見(案)」が討議された。会議では、次のような点が強調されている(2004年12月30日新華社北京電)。
A 農業・農村経済の良好な勢いが出現した状況下において、「三農」(農業・農村・農民)を強化するという決心を動揺させてはならず、「三農」扶助の程度を弱めてはならず、「三農」強化を疎かにしてはならない。
B 2005年の農業・農村施策をしっかり行うことは、第10次5ヵ年計画の任務を全面的に達成し、経済社会の全面的で調和のとれた持続可能な発展を促進するうえで、十分重要な意義を有する。
C 農業は天下を安んじ、民心を安定させるための戦略的産業であり、常にしっかりと把握しなければならない。
D 農業の総合生産能力の建設を強化し、農業の発展に追い込みをかける力を全面的に増強しなければならない。
E 農業税の減免税、農民への補助、農業のインフラ建設と科学技術進歩への支援、食糧生産の多い県への財政支援を強化しなければならない。
F 「三農」問題の解決を全党活動の重点中の重点とすることを堅持し、党の農村施策への指導を更に強化しなければならない。
(2)人民日報社説
2004年12月30日付け人民日報社説は、中央農村工作会議開催を受け、農業・農村の抱える問題について次のように指摘し、「2004年の情勢が好転したからといって、決して有頂天になり盲目的に楽観してはならない。現在の農業の生産能力、農民の富裕程度、農村の発展水準は、決して過大評価してはならない。2005年の食糧の安定的な増産、農民の持続的な増収は困難さが増大するので、農業・農村発展の良好な勢いを引き続き維持するという任務は十分困難である」としている。
A 2004年の食糧増産・農民増収は、回復的なものであり、基礎はまだ堅固ではない。
B 食糧需給はなお不足している。
C 品種と地域不均衡の矛盾がなお際立っている。
D 農業総合生産能力はまだ明らかに高まってはいない。
E 都市・農村の所得格差拡大傾向はまだ反転してはいない。
F 農業への投入不足という状況はまだ改善されていない。
G 食糧増産・農民増収の長期的なメカニズムはまだ確立されていない。
H 農業・農村の発展を制約する深層の矛盾はまだ除去されていない。
I 2005年の気候条件・市場条件には多くの不確定性があり、予見困難である。
6.労働・社会保障部
2004年12月17日に開催された全国労働・社会保障工作会議において、鄭斯林部長は、2005年の目標を都市登録失業率4.6%(2004年4.2%)とし、就業増加900万人(2004年980万人)、一時帰休・失業者の再就職を500万人(2004年510万人)とした。
(2005年3月3日記・11.018字)
信州大学教授 田中修
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