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中国税務ここがポイント(10)中国の外商投資企業のIT優遇税制-2

中国ビジネスレポート 税務・会計
旧ビジネス解説記事

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2005年3月20日

前回に引き続き、企業所得税制と増値税制の両方に関係するものですが、中国のIT優遇税制について解説します。(なお、ここに言うIT優遇税制というのは、当方にてIT関係の優遇税制を総称したものであり、中国の税務当局の方で「IT優遇税制」そのものを謳っているわけではないことに御留意くださいませ)

.IT優遇税制の種類

IT優遇税制、と一括りに言いましても、法人が行う技術コンサルティングなどの役務提供や特許権等の無形資産譲渡には営業税と企業所得税、設備等の販売には増値税と企業所得税が各々課税されます(ただし、設備に付帯する技術で権利保護のされていない非独占的なものがある場合は、設備に増値税が課税され、営業税の課税はありません)。

IT優遇税制の対象となるジャンルは、大別すると次の3つがあります。

  1. 特許権等の独占的技術(ノウハウ)及びテクニカルサービス
  2. コンピューターソフト
  3. 集積回路

これらのジャンル内でさらに、権利譲渡・使用、製品販売、輸出入時の関税及び増値税(輸出還付を含む)、課税所得・研究開発費・減価償却・再投資税額還付等につき、優遇税制があります。


2. 独占的技術及びテクニカルサービス

本格的なIT優遇税制は、後記の財税〔1999〕273号及び国発〔2000〕18号の各通達で規定されましたが、これらの法規が公布される以前にも、特許権等の独占的技術権利の譲渡・使用について優遇税制が規定されています。これらの優遇税制は、前述の2通達で記述のあるコンピューターソフト・集積回路に関する権利の譲渡・貸付にも基本的に適用されることとなります(期限の条項があるものを除きます)。

A. 企業所得税

1) 課税と非課税の区分

(82) 財税字326号では、中国に恒久的施設を持たない外国企業の独占的技術及びテクニカルサービスにつき、非課税(源泉徴収を行わない)対象を下記の通りに定めています。

中国に恒久的施設のない外国企業を対象

【外資企業所得税の非課税の条件】

  1. 独占的技術の使用権の譲渡がないこと
  2. 恒久的施設を有しない

【外資企業所得税の非課税の適用対象】

  1. 建設工事・生産技術の改革・経営管理の改良等・投資プロジェクトの実現可能性分析・設計手法及び入札手法の選択等に対し、コンサルティングサービスを提供して収受する所得
  2. 学校・科学技術研究所・企業等で、企業管理と生産技術の応用等の業務知識及び技術的知識を習得する為に支払われる技術指導料・要員研修費用・図書図面料
  3. 中国の現有の設備及び製品につき、特定の技術目標に対し技術協力を行い、改良を要する部分及び部品の再設計・試験及び契約に規定する技術目標を達成する際に取得する技術協力料
    従って、これ以外のものは課税されます。

2) 免税

1983年1月1日から施行された(82) 財税字326号通達では、日本から中国に当該権利の譲渡・貸与した場合で、中国内に恒久的施設がない場合の、外資企業所得税の減免税一部適用について記しています。すなわち源泉徴収税率20%が、減税の場合は10%に、免税の場合は当然0%になります。ただし減税については、2000年1月1日より一律10%に引き下げられましたので(国発〔2000〕37号)、今となっては(82)財税字326号通達の減税適用は意味を失っており、免税適用のみが有効となっています。

この免税規定は次の通りとなっています。

中国に恒久的施設のない国外の外国企業を対象
(82)財税字326号:

【外資企業所得税免税の条件】

  1. 先端技術、及び条件の有利なもの
  2. かつ管轄の技術導入主管部門・税務部門の意見に基づき、財政部が承認した場合(注:国税発〔1990〕021号から抜粋)

【外資企業所得税の免税対象となり得る使用料】

  1. 農林水産業に関する技術で、土地改良・新品種・農業生産効率の高い低毒性農薬・科学的生産管理・自然災害への対抗能力増強、に関するもの
  2. 中国科学院等の科学実験研究等に供するもの
  3. エネルギー開発・交通輸送の発展における重点建設プロジェクトに関するもの
  4. 省エネルギー・環境汚染防止に関するもの
  5. 中国が重要技術を開発する上で、下記範囲で提供されるもの
    ・ 重要かつ先端的機械電気設備の生産技術
    ・ 核エネルギー技術
    ・ 大規模集積回路生産技術
    ・ 光合成・マイクロウェーブ半導体とマイクロウェーブ集積回路生産技術及びマイクロウェーブ電子管製造技術
    ・ スーパーコンピューターとマイクロプロセッサー製造技術
    ・ 光通信技術
    ・ 遠距離超高圧直流送電技術
    ・ 石炭の液化・気化及び総合利用に関する技術

3) 減税

減税面では次の通りです。

外国企業を対象
国発〔2000〕37号:
恒久的施設のない外国企業、および恒久的施設があっても該当業務の関係のない場合の使用料等につき、2000年1月1日より、外資企業所得税の源泉徴収税率が一律10%に変更

次に、外商投資企業の技術開発費でも、再度課税所得から一部を控除できる特典があります。

恒久的施設のある外国企業、及び外商投資企業を対象
国税発〔1999〕173号、国税函〔2001〕45号:

【技術開発費の優遇税制適用の条件(全て)】

  1. 外商投資企業、及び外国企業の恒久的施設で発生した技術開発費が、前年度の技術開発費よりも10%以上増加した場合。なお、このケースには、技術開発の成果を占有もしくは共同占有するために、他の事業体と共同開発、あるいは他の事業体に新製品・新技術・新工芸の開発を委託する場合も含む。
  2. 技術プロジェクト開発計画と技術開発費予算を策定し、専門機構と専門人員を配置して技術開発費の実際発生額を正確に計算する場合
  3. 税務機関の承認がある場合

【再控除可能額】
当年の技術開発費の実際発生額の50%

【対象となる技術開発費】
新製品・新技術・新工芸の研究開発において発生した、

  1. 設計費
  2. 工芸規則制定費用
  3. 設備試運転費用
  4. 原材料及び半製品の試作費
  5. 技術関係の図書資料費
  6. 国家計画に組み入れていない中間実験費用
  7. 研究機構構成員の給与
  8. 研究設備減価償却費
  9. 新製品の試作と技術研究に関する関連費用

【制限】

  1. 技術開発費に含めないもの
    ・ 他の事業体より購入・譲受した技術使用権に関し支払った費用及び据付費
    ・ 技術開発業務に従事する企業で発生したその技術開発サービス業務のコスト
  2. 技術開発費が前年度比10%以上増加の場合で、技術開発費実際発生額の50%が課税所得よりも多い時は、課税所得を限度として控除が出来、控除未済額は翌年に繰越さない
  3. 繰越欠損により課税所得が発生しない場合は、適用外とする

B. 営業税

営業税は元来、工商税という税目でしたが、1984年の税制改正で、中国資本企業を対象とする産品税・増値税・営業税と、外商投資企業及び外国企業を対象とする工商統一税の4税目に分割され、その後1994年1月1日に、工商統一税の内容を、増値税・営業税・消費税の3税目に整理しなおし、現在に至っています。

したがって、独占的技術権利等の無形資産は、1993年末までは工商統一税の課税対象であったのが、1994年以降は営業税の課税対象となりました。ただ、以前は権利譲渡収入および使用料に対して課税するという意識が希薄であったため、国税発〔1998〕4号及び国税発〔2000〕70号、財税〔2001〕36号などの通達にて、各年度の営業税の課税範囲を明確にしました。

1) 免税

国外の外国企業及び外国籍人員を対象
財税〔2001〕36号:

  1. 1993年末以前契約…営業税徴収なし
  2. 1994年1月1日以降契約、1997年末以前に収入取得…営業税の還付及び追加徴収を行わない。
  3. 1994年1月1日以降契約、1998年初以降に収入取得…営業税徴収。
  4. 1994年1月1日以降契約、1999年10月1日以降に収入取得…原則営業税徴収だが、承認の上で免税も可能。

したがいまして、企業に上記の契約が残っていれば、これは法律上免税となります。の免税措置については、次に解説します。

商投資企業、国外の外国企業、外国籍人員を対象
財税〔1999〕273号:1999年10月1日施行

【営業税免税の条件】

  1. 事業体及び個人の、技術譲渡・技術開発業務、関連技術コンサルティング・テクニカルサービスによる収入であること
  2. 免税の承認を受けること

【免税となる範囲の定義】

    (用語定義)

  1. 技術譲渡…特許及び非特許技術の所有権・使用権を有償で他人に譲渡する行為
  2. 技術開発…他人からの委託により新技術・新製品・新工芸・新材料、およびその系統において研究開発を行う行為
  3. 技術コンサルティング…特定の技術プロジェクトにフィージビリティの論証、技術的予測、技術的特別調査・分析等の報告
  4. テクニカルサービス…前掲の技術譲渡・技術開発業務の契約において関連するものとし、その代金は前2者と同じインボイス(発票)上に記載されること
    (金額の範囲)
  5. 図面資料等により技術・開発成果を提供する場合は、相手から受取る代金及びこれ以外の代金を含む全ての代金
  6. サンプル・設備等で物品以外の役務提供の部分(物品代金は増値税課税)。この場合は営業税の免税範囲部分を区分出来るようにしておく。なお、課税部分の課税対象価額が明らかに低い場合は、管轄税務機関で課税価額を決定する。
  7. バイオテクノロジーの場合は、付随する微生物菌種母株及び動植物の新品種(大量販売する微生物菌種は増値税の課税対象)

【免税申請の手順及び免税方法】

  1. 中国国内の営業税納税者の場合
    技術譲渡・開発契約を管轄の省級科学技術主管部門に持参し、審査意見証明を受領する。次に省級税務機関に当該審査意見証明を持参し、チェックを受ける。
  2. 外国企業及び外国籍個人の場合
    中国国外から国内に技術譲渡を行う場合、(技術導入企業たる)納税者及びその授権者が、技術譲渡・開発契約と申請書面を、技術導入企業の所在地の省級科学技術主管部門に持参し、審査意見証明を受領する。次に省級税務機関に当該審査意見証明を持参し、チェックを受ける。その後、国家税務総局に報告され、その承認を得る。
  3. 免税承認時の免税方法
    免税承認前に先ず納税者は営業税を納付し、承認後に、納付すべきその他の営業税から免税額を控除して納付する。承認後1年以内にその他の営業税納付行為が発生しない場合、あるいは免税額を控除してもまだ控除不足額がある時は、納税者が管轄税務機関に還付を申請する。

また、次の場合も、営業税の課税対象とはなりません。

外商投資企業、外国企業、外国籍人員を対象
財税〔2002〕191号:
無形資産を中国内の企業に現物出資した場合

次回に続く。

(2005年3月記・4,215字)

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