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金融諸会議の動向(1)

中国ビジネスレポート 政治・政策
田中 修

田中 修

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2007年2月21日

記事概要

 全国金融工作会議が開催されて以降、各金融監督部局が個別会議を開催している。ここでは、その内容を順次紹介したい。

 

はじめに

 全国金融工作会議が開催されて以降、各金融監督部局が個別会議を開催している。ここでは、その内容を順次紹介したい。

 

1.人民銀行工作会議(2007年1月20日)

 

(1)2006年の金融政策の成果

 2006年12月末のM2の伸びが16.9%、金融機関の人民元貸出の伸びが15.1%にとどまり、中長期貸出の急速の伸びの勢いが弱含みに変化したことにより、「貸出の速すぎる伸びはある程度緩和され、融資構造が更に改善された」と判断している。しかし、新規貸出増が当初目標の2.5兆元を大きく上回り、3.18兆元となったことについては、言及がない。

 

(2)2007年金融政策の基本方針

 「2007年は、わが国のWTO加盟過渡期終了後の第1年であり、マクロ・コントロールの成果を更に強固にし、金融の改革・開放を深化させ、経済の良好で早い発展を実現する意義は重大である」としたうえで、「穏健な金融政策を引き続き執行し、金融の改革・イノベーションを速やかに推進し、金融の市場システムを健全化し、人民元レート形成メカニズムの改革を着実に推進し、外貨管理を強化・改善し、金融システムの安定を擁護し、中央銀行の記入サービスの水準を更に高め、経済の平穏でかなり速い発展と社会主義の調和のとれた社会の建設を促進する」ことを要求している。

 

(3)2007年の主要任務

Aマクロ・コントロールの連続性・安定性を保持し、引き続き穏健な金融政策を実行する

a全般

 人民銀行は流動性の管理を強化することをしっかりと中心にすえ、穏健な金融政策を引き続き執行し、多様な金融政策手段をバランスよく運用して、総量の均衡を維持すると同時に、国民経済の平穏でかなり速い発展を促進する。

b数値目標

 2007年のGDP成長率の見込みを8%前後とし、消費者物価上昇率が3%を超えないものとして、貸出総量の予期目標をM2    の伸び16%前後と設定する。

 経済・金融の趨勢に対する判断と予見性を適切に高める。

c人民元レート

 市場需給の人民元レートの形成に対する基礎的な役割を更に発揮させ、管理された変動相場制度を整備し、人民元レートの弾力性を増強し、人民元レートを合理的な水準で基本的に安定させることを保持する。

d金利改革

 金利市場化改革を積極的かつ穏当に推進する。金利手段を臨機に運用し、価格の金融政策におけるテコの役割を徐々に発揮させる。

e貸出政策

 区別して対応し、維持するものと抑制するものを分ける貸出政策を引き続き堅持し、商業銀行の貸出のバルブを厳しく管理し、貸出の進度・テンポを把握し、融資構造を改善する。

f国策との協調

 金融資源による経済構造調整、地域の調和のとれた発展を積極的に誘導する。国家の奨学ローンと一時帰休・失業者への小額担保融資の新政策を貫徹実施する。

g消費拡大

 消費ローン政策の指導を強化し、国内消費の伸びを促進する。

h不動産対策

 不動産へのコントロール政策を貫徹実施し、不動産業の健全な発展を促進する。

B企業法人のコーポレート・ガバナンスの整備と金融構造の改善を重点とし、金融改革を更に深化させる

a工商銀行、中国銀行、建設銀行のコーポレート・ガバナンスの整備を引き続き推進し、経営メカニズムの改革を更に深化させる。

b農業銀行の株式制改革を着実に推進する。

c政策性銀行の改革を加速する。

d農村金融改革を全面的に推進し、農村信用社改革を引き続き深化させる。

 農村の特色に適合した多様な所有制農村金融機関の発展を模索する。小額融資方式を革新し、農村金融商品とサービスの革新を大いに推進する。

eその他金融機関の改革を着実に推進する。

C外貨管理を更に強化・改善し、国際収支の均衡を促進する

a外貨管理の改革を引き続き深化させ、外貨政策の調整を強化する。

 越境資本とりわけ短期資本の流動管理を強化し、短期外債を厳格に抑制し、銀行・企業が国内の外貨資源を十分利用することを支援し、外資企業が国内資本市場に融資することを奨励する。

 多層次で多様なルートの対外投資システムを整備・確立し、資金の秩序立った流出を誘導する。

b外為市場の発展を加速し、銀行間の外為市場での取引メカニズムを改善し、取引品目を増やし、国内の外為市場の機能・競争力を強化する。

c外貨準備の経営管理を更に強化する。

Dリスクの防止・除去を強化し、金融システムの安定を積極的に擁護する

a一部のハイリスクな金融機関のリスク処置をしっかり行う。

b中国金融安定のモニタリング指標体系を更に整備する。

c預金保険制度の立法を推進し、機能が完備し、権利と責任が統一され、運営が効率的な預金保険制度を早急に確立する。

E金融商品のイノベーションを大いに推進し、金融市場規範の発展を加速する

a金融商品のイノベーションに適応した関連市場規則を確立・整備する。

b資産の証券化業務テストを積極かつ穏当に推進し、インターバンク市場の規模を更に拡大する。

c金市場の対外開放と産品のイノベーションを加速する。

d外為市場のイノベーションを強化する。

e商業銀行がファンド会社を設立するテストを引き続き推進する。

f市場のインフラ建設を加速する。

F支払いシステムの建設を引き続き着実に推進する

G反マネー・ロンダリング活動を法に基づき深く推進する

H金融サービスの現代化建設を加速する

 湖南省における金融サービス革新のテストを引き続き深く推進する。

I金融の対外交流と協力を引き続き強化する

J内部管理を強化し、サービスの保障水準を引き上げる

K上海総本部の建設を引き続き加速する

 上海国際金融センターの建設を積極的に推進する。

 

(4)留意点

 今回の会議では、抑制目標からM1、貸出新規増がはずされ、M2のみとなり、しかも拘束ではなく予期目標となっている。これは、人民銀行のマネー・サプライに対するコントロールの手詰まり感を象徴するものともいえよう。

 現在、人民銀行は過度の人民元レート切り上げを回避するため、ドルの買い支えを行っているが、この結果貿易黒字の拡大と相まって外貨準備が急増し、過剰流動性が発生している。このままこれを放置すれば、インフレ(資産インフレを含む)を誘発しかねない状況にある。

 これを防ぐべく人民銀行は利上げのタイミングを図っているが、利上げには国内の反対も強く、またホット・マネー流入の防止の観点から中米金利差も考慮しなければならないため、その発動は容易ではない。このため、人民銀行は手形発行による資金回収と預金準備率引上げにより過剰流動性の減少を図っているが、既存の手形の期限が次々に到来し、増大する外貨準備に対応が追いつかない状況となっている。

 他方、金融機関の貸出意欲は強く、人民銀行は直接にこれを抑える必要があるが、2003年の銀行業監督管理委員会の分離により、監督権限の多くが同委に移管されたため、人民銀行の金融機関への影響力は弱化している。2006年前半の融資再過熱以降、人民銀行は金融機関への窓口指導を強化しているが、これも処分権限をもつ銀行業監督管理委と歩調を合わせなければ必ずしも効果的とはいえない。

 このように、人民元レートの安定が大前提とされ、金融政策の伝達メカニズムが十分ではなく、金融機関への影響力も限定的ななかで、マネー・サプライのコントロールの最終責任を人民銀行が負わされるのはかなわないという組織防衛本能が、目標削減の背景にあるように思われる。

 

2.全国貸出・金融市場会議(2007年2月5日)

 

 江蘇省常州で開催され、人民銀行の項俊波副行長、易綱行長助理、江蘇省の李全林副省長が講話を行った。従来、この会議は存在そのものが報道されなかったが、今回は項副行長の講話が大きく報道されている。そのポイントを紹介しておきたい(人民網2007年2月7日)。

 

(1)経済発展における深層の体制的・長期的問題

A投資・貸出の反落は、基礎がなお不安定であり、国際収支のアンバランス問題は依然際立っており、金融マクロ・コントロールは多重の試練に直面している。

B流動性を管理する任務は非常に困難である。

C物価の上振れリスクは大きくなっており、全体としてのインフレ圧力には注意を要する。

D金融マクロ・コントロールへの要求は不断に高まっており、金融調節手段の整備が必要である。

 

(2)金融市場の直面する問題

A直接金融と間接金融の構造的アンバランスの矛盾が依然際立っている

 銀行貸出が社会融資総量において絶対的比重を占めており、2006年でもなお80%以上である。

B市場の発展がアンバランスである

 債券市場の発展が株式市場より立ち遅れており、企業債券市場の発展が相対的に落伍している。

C情報開示、信用ランキング付けなど基本的な市場を規制し、奨励するメカニズムが未だその役割を完全に発揮していない

D金融商品の種類と厚みが豊富でなく、市場の機能は更に向上する必要がある

 

(3)2007年の支店における貸出・金融市場に関する施策の重点

 次の8点が指摘されている。

 

A金融政策の分析・研究を強化し、金融政策によるコントロールの科学性・先見性・有効性を高める

 各支店は金融政策を分析する水準・質を高め、経済・金融運営の趨勢を判断する予見性を適切に高めなければならない。マクロ的な意識と全局的な観念を樹立し、地域の特色の分析を強化し、分析方法を改善し、分析制度を整備するという4方面に重きをおいて、金融政策の分析を改善しなければならない。

B金融政策手段の管理を強化し、穏健な金融政策をしっかり貫徹執行する

 各支店は、本店の授権に基づき各種の金融政策手段を運用し、金融政策のコントロールの意図を正確に伝達し、貸出総量の適度な伸びを促進し、地域金融の安定・安全を維持しなければならない。預金準備金・人民銀行貸出・金利への管理を更に強化しなければならない。

C「三農」に対する金融サービスを強化し、社会主義の新農村建設を着実に推進する

 農村信用社改革テストへの資金支援政策を引き続き組織的に実施する。農業・農村支援貸出が一定比率に達する農村合作銀行に対し、個別の預金準備率を執行する施策をしっかり行う。小額融資の方式を革新し、小額融資を大いに推進する。

Dさらに方式を改善し、制度を整備して、就職・再就職拡大を支援する金融サービス活動を適切に実施する

 リスクを防止することを前提に、小額融資と労働集約型小企業への金融支援活動を適切に実施し、「小額融資+創業訓練+コミュニティの信用建設」という長期的に効果のある連携メカニズムの確立を着実に推進する。

E貸出政策の実施方式を引き続き強化・改善し、経済構造の戦略的な調整を促進する

 エネルギー・資源多消費、高汚染の企業及び生産能力が過剰な業種のうち質の劣った企業への貸出を厳格に制限する。多様な方式を採用して中小企業・非公有制経済の発展を支援する。

F不動産金融をうまく行い、不動産の健全な発展を推進する

 適切有効な措置を採用して当地の住宅価格を安定させ、弱者集団の住宅需要を支援する金融政策を検討・模索する。

G金融政策の業務報告制度を整備し、地域の金融運営の分析をしっかり行う

 各支店の貸出部門は定期的に遅滞なく本店に対し、金融政策手段の運営状況、金融政策の効果及び管轄地域内の貸出執行状況を報告し、本店が情勢を分析・判断するうえでの有力な支援を提供する。地域報告は、地方経済の調査・研究・分析に重点をおく。

H金融市場の監督・管理を強化し、金融市場の健全な発展を促進する

 銀行間の債券市場、手形市場、外為市場、金市場へのモニタリング・分析・管理を強化し、市場リスクの事前警告の指標体系を不断に健全化する。

 

(4)留意点

 以上の内容からすると、この会議の目的は本店の行う金融政策の意図を支店に徹底させるとともに、地域の経済・金融の実情、金融政策の効果を本店に遅滞なく報告させることによって、金融政策の予防的発動の意思決定プロセスとその伝達メカニズムを強化する狙いがあるものと思われる。

これは、依然投資の再過熱の危険があるうえに、年末の消費者物価の上昇傾向によりインフレのリスクが顕在化してきたことが背景にあろう。2006年前半に発生したような投資の再過熱を未然に防止するためにもモニタリングとアラーム・システムの整備が重要課題となっているのである。

 

3.全国外貨管理工作会議(2007年1月21日)

 

(1)2007年の重点施策

 人民銀行副行長・国家外貨管理局長の胡暁煉は、この会議で「2007年、外貨管理局は外貨管理体制改革を深化させ、資本の流出ルートを秩序立てて拡大し、外為市場の発展に力を入れ、外貨準備のリスク防止を強化し、資金流入と外国為替決済の監督管理を厳格にし、国際収支の基本的な均衡を積極的に促進し、国民経済の良好でかなり速い発展を実現しなければならない」と述べ、以下の4つの重点を指示している(中国経済時報2007年1月22日)。

A改革を推進する

 市場化の方向を堅持し、外貨管理体制の改革を更に深化させなければならない。

 2007年の重点は、企業・個人の外貨保有・使用の制限を引き続き秩序立てて緩和し、外為市場の発展を加速して、銀行の金融商品イノベーションのために更に緩和された政策環境を創造することである。

 また、外為市場の商品を拡大し、人民元レートの形成メカニズムを更に整備して、外貨準備の経営管理を強化し、リスクを有効に防止しつつ、外貨準備の使用ルート・方式を積極的に模索・開拓する。

B流出を促進する

 対外投資のルートを更に拡大し、資金の秩序立った流出を誘導しなければならない。

 2007年の重点は、機関・個人の対外金融投資の規模・品目等の制限を徐々に緩和し、対外金融投資方面における新たな進展を勝ち取ることである。

 同時に、対外直接投資の外貨管理を更に改善し、実力があり信用を守り競争力のある各種所有制企業の「海外進出」を引き続き大いに支援する。

C監督管理を重視する

 国境を越えた短期資本流動とりわけ投機資本に対する有効な監督規制を強化する。

 2007年の重点は、外債の管理方式を改善し、外債の速すぎる伸びを厳格に抑制し、貿易における外貨の受取り・決済、個人の外貨、外資の不動産への参入等の3大監督管理政策を引き続き実施・強化し、貿易融資などの資金流入に対する管理を強化し、異常な資金流入を厳格に監督規制することである。

D先進的な技術・手段を積極的に採用して監督管理を実施する

 2007年の重点は、異常な越境資金と違法な外為取引に対して厳密なモニタリングを実施し、外貨管理のIT化水準を更に高め、現場検査・非現場検査の効率を高め、各種政策の実効を確保することである。

 また、外貨管理の行政能力を高めることも必要である。

 

(2)留意点

 ここから分かることは、外貨当局が増大する外貨をもて余しており、その海外での使用方法を懸命に模索していること、他方で貿易取引・不動産投資に仮装したホット・マネーの流入を何とか押さえ込もうとしていることである。

 温家宝総理も、2007年1月15日、フィリピンで開催された「第2次東アジアサミット」において、「東アジア地域の金融市場と事前警戒メカニズムの建設を推進し、『ホット・マネー』に対する監督規制を強化し、危機防止能力を増強しなければならない。また、この地域に豊富な外貨準備の利用を研究討議し、地域の金融安定と経済成長を促進しなければならない」と強調している(第一財経日報2007年1月16日)。

 この温家宝発言につき、社会科学院の世界経済・政治研究所の何帆所長助理は、「タイで2006年12月に発生した金融混乱は、我々に大きな啓示を与えた。即ち、流動資金が一国の金融システムを直撃することが依然存在するということであり、これへの対応措置が非常に重要であるということである。現在、東アジア金融協力には事前警戒メカニズムの建設が欠けており、温総理がこの度地域の事前警戒メカニズムの建設を提起したことは非常に重要である」と解説している(第一財経日報2007年1月16日)。

 

 ここまで中国が金融危機のアラーム・システムの構築に真剣になっているのは、まさに中国の金融システムの脆弱性と大量の短期資金の流入・過剰流動性の発生が、中国発第2次アジア金融危機をもたらしかねない状況になっていることの表れであろう。(2月13日記・6,641字)

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