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2007全人代の動向(1)

中国ビジネスレポート 政治・政策
田中 修

田中 修

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2007年4月9日

記事概要

ここでは、政府3報告以外で、主要閣僚の記者会見等2007年全人代の注目点を順次紹介することとしたい。

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 ここでは、政府3報告以外で、主要閣僚の記者会見等2007年全人代の注目点を順次紹介することとしたい。

 

1.国家発展・改革委員会馬凱主任記者会見(2007年3月7日)

(1)資源価格の改革

 中国の価格プロセスにおいて、価格改革は非常に重要な部分である。30年の改革を経て、一般商品の価格とサービス価格の市場化程度は既に非常に高くなった。現在、改革は堅塁攻略の段階、即ち資源性産品の価格と要素価格を、さらに調整しなければならなくなっている。

 現在資源性価格に存在する主要な問題は、少なからぬ資源価格が資源の希少性と環境コストを反映できないことである。これは、我々が成長方式を転換し、資源節約型・環境友好型の社会を建設するのに不利であり、持続可能な発展に不利である。改革は何としてもやり遂げなければならないが、資源性産品はやはり基礎的な産品であり、往々にしてわずかな事が全局を動かすことになるため、政府は穏健、積極かつ穏当、漸進的な方式を採用して推進する。

 我々は引き続き、石油・天然ガス・水等資源性産品価格の形成メカニズムを推進していく。しかし、推進に際しては各方面の影響、とりわけ低所得層への影響を考慮し、適切な補償措置を採用しなければならない。

(2)2006年の10.7%成長と2007年の8%成長目標について

 a成長率の振幅が比較的小さく、b価格が比較的安定しており、c財政収入・工業利潤の伸びが高く、d石油・電力・石油・輸送の逼迫状況が明らかに改善しているという点で、成長率は総体としては正常である。

 しかし、喜びの中にも憂うべくは、主として経済成長の代償が大きすぎることである。もし経済成長方式が転換されず、構造が改善されず、過度の資源消費の状況が改変されないならば、経済はうまく歩めず、遠く進むこともできない。そこで我々は、経済成長が更にほどよく調整され、良好ななかで速度を求め、平穏を維持し、乱高下を避けることを望んでいる。

 上述の分析を踏まえ、同時に現在のGDP指標が指導性・予期性のものであることを考慮し、社会各界、とりわけ各省・区・市の各クラス政府に1つの明確な方向性を示すため、2007年のGDP成長率目標を8%と定めたのである。言い換えれば、我々の活動の精力を成長速度の追求に傾けるのではなく、成長方式の転換、構造調整、経済運営の質の向上に傾け、盲目的に成長速度を競い指標を吊り上げてはならない。

 実際のところ、8%の成長速度は低い速度ではなく、世界の平均成長速度よりずっと高い。同時に、これもまた予期目標であり、執行過程で調整可能なものである。

(3)固定資産投資

 固定資産投資の伸びが速すぎることは、今回のマクロ・コントロールの1つの重点である。3年余りの実践において、速すぎる固定資産投資の伸びは既に初歩的に抑制された。2006年の増加率24%は、2004年26.6%、2005年26%に比べ、各々2-3ポイント下落しており、特に投資構造が改善をみた。

 しかし、反動増の圧力は依然存在しており、主として建設中の規模が比較的大きいことにある。24%は、なおも比較的高い伸びである。新規着工プロジェクトも比較的多く、とりわけ投資膨張を再発する体制メカニズムの問題が解決されておらず、再膨張の土壌がなお存在する。

 このため、2007年の投資政策は、「適度に投資規模を抑制し、投資構造の調整に力を入れ、投資収益の向上に努める」こととする。このための措置は多いが、根本はやはり土地とマネーのバルブをしっかり管理し、市場参入許可のハードルを高め厳しく管理することである。

 参入許可のハードル面では、土地・安全・環境保全等の技術基準や産業政策等のハードル以外に、2007年からは一部の重大プロジェクトとりわけ中央が管理する一部の重大プロジェクトに対して、省エネ基準のハードルを高めることにした。これは、投資の低水準の盲目的拡張の抑制に資するのみならず、節約型社会を確立し、省エネ・汚染物質排出減の目標の実現にも資するものである。

(4)不動産

 総体的に見ると、国家が一連の抑制措置を採用したため、不動産市場全体の情勢はなお健全であるが、当然いくらかの不健全な要素も存在する。

 住宅価格の上昇は引き続き反落傾向にある。2004年の家屋販売価格は9.7%上昇し、2005年は7.6%、2006年は5.5%上昇していたので、上昇幅は減少している。住宅構造もいくらか改善した。2006年の住宅投資は25.3%増加したが、そのうちエコノミー型住宅への投資は32.7%増加し、一部都市の中小一戸建て住宅の供給は更に増加した。

 当然、不動産市場には、一部大中都市の住宅価格が高すぎる、一部の中小一戸建て・中低価格帯の住宅供給比率がかなり低い、といったあれこれの問題が存在する。2007年は、これらの問題の解決に力を入れなければならない。

(5)年度の省エネ・汚染物質排出減の目標を設定しなかったことについて

 2007年は年度目標を設定しなかったが、これは主として実際の施策を考慮していくうえで、省エネ・汚染物質排出減が多くの要因によって決定されるものであることを痛切に感じたからである。省エネ・汚染物質排出減の措置のうち、あるものは当該年度に効果が顕れるが、構造調整や一定のプロセスを伴うプロジェクトは、効果が顕れるのは数年後である。このため、5年間の省エネ・汚染物質排出減の目標を毎年度に比較的正確に分解することには必ず困難がある。

 しかし、年度目標を提出していなくとも、私は「3つの不変、1つの強化」を強調しなければならない。

第1は、決意が不変ということである。エネルギー・資源の厳重な制約に対し、省エネ・汚染物質排出減の道を歩まず、資源節約型・環境友好型社会建設の道を歩まなければ、中華民族に退路はない。決意をもって省エネ・汚染物質排出減に取り組まなければならない。

第2は、目標が不変ということである。第11次5ヵ年計画で提起されたGDP単位当たりエネルギー消費を20%前後引き下げ、主要汚染物質排出量を10%減少させるという目標は堅固で揺るぎないものであり、実現を確保する。政府は毎年責任をもって全人代に当該年度の省エネ・汚染物質減の達成状況を報告し、5年で結果を総括する。

第3は、責任が不変ということである。国務院は、既に5年間の省エネ・汚染物質排出減目標を各省・区・市に分解しており、各省・市・区政府及び関連企業は適切に責任を負担し、現地の実際状況に基づき、段階的な活動目標・ノルマを制定・提出し、努力して達成しなければならない。

「1つの強化」とは、省エネ・汚染物質排出減活動の力の入れ具合を緩めることなく、引き続き強化しなければならないということである。

(6)教育費

 2006年から、まず西部地域の農村5200万の学生の学習雑費を全額免除し、小学生1人当たり140元、中学生1人当たり180元の負担を軽減した。中西部については、更に3730万余りの貧困家庭の子女に教科書代を免除し、小学生1人当たり70元、中学生1人当たり140元の負担を軽減した。同時に、780万余りの貧困寄宿生に毎年1人当たり2-300元の生活補助を与えた。

 非義務教育方面では、学校の費用徴収を規範化し、むやみに費用を徴収することの整理・整頓を強化した。同時に、我々は新聞出版総署と共同で教材価格の引き下げを図り、2006年秋の入学から小・中・高の教材価格を12億元引き下げた。

 このほか、助学金・奨学金について、中央の投入は2006年18億元であったが、2007年は95億元に引き上げ、2008年は200億元に引き上げることとしている。

(7)薬価

 薬価の問題は、確かにひどく混乱している。薬品に不当な高い価格をつけ、キックバックを行い、1つの薬品の多くの価格がつき、1つの薬品に多くの名前がつくといった現象は、いくら禁じても止まることを知らない。患者の負担を軽減するため、我々は22回にわたり1600余りの薬品の価格を計500億元引き下げた。しかし、一部の薬品は名前を変えてまた値上がりしており、これに対し、薬品監督部門は新製品の監督管理を強化している。

 しかし、我々は同時に、薬価が高すぎて混乱している問題を真に解決するには、価格のみを論じていてもだめなことを認識している。もし、病院が薬により医者を養うメカニズムを解決せず(この背景には、さらに病院の位置づけ、病院の財務体制改革の問題がある)、薬品の生産・流通上の問題を解決せず(現在薬品生産メーカーは全国に5000社余り、薬局は1万6、7千店あり、市場全体がひどく混乱している)、新薬の許認可制度の問題を解決しないならば、薬価のみ論じていても問題は解決できない。

 このため、2006年8月、国務院の許可を得て国家発展・改革委、衛生部等14の部門により、医薬衛生体制改革を深化させる部の垣根を越えた協調工作小組が設立された。第1段階として、調査研究と幅広い意見聴取を行っており、1万4000余りのネット上の意見、数百の手紙・案を受け取っている。小組は現在各方面の意見を消化し、方案を策定しているところである。我々は作業に努め、方案が成熟した段階で国務院の討論にかける予定である。

(8)エネルギー部の設立

 エネルギー施策の指導を強化するため、国務院は既にエネルギー領導小組を設立しており、温家宝総理が組長となり、関連部門が参加している。エネルギー部を設立するか否か、いつ設立するかは機構改革の問題であり、私の所管ではない。

(9)中国は世界のエネルギー安全の脅威か

 わが国の経済が速く成長し、とくに工業化・都市化が加速する段階に入るにつれて、エネルギー需要の伸びは確かにかなり速くなっている。しかし、それが世界のエネルギー安全の脅威となり得ないことは、弁ずるより事実が証明している。

 改革開放29年で、我々のエネルギー自給率は常に90%以上を保ってきた。これはOECD加盟国より20ポイント高く、米国より30ポイント高い。これは、我々がエネルギー消費大国であるのみならず、エネルギー生産大国だからである。

 我々は真に不足しているのは石油と天然ガスであるが、これらの消費水準も輸入水準も低い。2005年で見ると、我々の1人当たり石油消費は242キロであるが、世界平均は590キロであり、米国は3トン余り、日本は1.9トンである。1人当たり輸入でいうと、我々は100キロ、世界は400キロ、米国は2.1トン、日本は2トンに迫っており、いずれも我々の20倍である。このように消費量・輸入量が大きい国家が世界の石油安全の脅威と言われず、我々のように消費量・輸入量が少ない国家が脅威と言われるのは明らかに不公正である。

 未来において、我々は引き続き主として自力でエネルギー需要問題を解決する能力を完全に備えている。なぜなら、一面において我々のエネルギー供給にはまだ潜在力があり、豊富な石炭資源のみならず、石油・天然ガスの探査開発の潜在力もあり、とりわけクリーン・エネルギー、再生エネルギーの開発余地が非常に大きい。水資源でいうと、経済開発に利用可能な水電資源量は4億キロワットであるが、現在開発されているのは1.2億キロワットたらずであり、4分の3近くが開発されていない。10メートルの高さの風力エネルギーは4億キロワットの経済的開発価値があるが、現在ようやく110万キロワットの容量が設置されているに過ぎない。わが国は、日照時間が年平均200時間以上の国土面積が3分の2を占めており、その他バイオマスエネルギーの発展潜在力も非常に大きい。

 別の面では、我々の省エネの潜在力は非常に大きい。現在、我々のエネルギー効率と外国先進水準を比較するとかなり大きな開きがあるが、これこそが潜在力を有するのである。我々があらゆる手をつくしてエネルギー供給を増加させ、他方であらゆる手をつくして省エネを行いさえすれば、未来において必ず主として自力でエネルギー問題を解決することができる。

 全世界から見れば、中国はエネルギー安全の脅威でないばかりか、世界のエネルギー安全を維持する積極的要素である。なぜなら、発展中の人口国家として我々が、自力で世界の22%の人口を占める大国のエネルギー需要を解決するならば、食糧問題の解決と同様、これこそが世界のエネルギー安全への巨大な貢献となる。

 同時に、我々は石油・天然ガスの輸入国であるのみならず、エネルギー輸出国である。2006年の石炭輸出は6330万トンであり、コークス輸出は1300万トン余りである。これは直接の輸出だが、我々は間接的に少なからぬエネルギーを輸出している。例えば、2006年に輸出した4000万トン余りの鋼材、120万トン余りの未鍛造のアルミの中にはエネルギーが包含されており(1トンのアルミで消費される電力は1万5000度)、1200億度の電力輸出に相当する。2006年に輸出したカラーテレビ8600万台にもエネルギーが含まれている。したがって、我々はエネルギー上も世界に貢献している。

 以上を総括すれば、中国は過去にそうでなかったし現在もそうでなく、将来も世界のエネルギー安全の脅威とはなり得ないということである。

(10)所得格差の拡大傾向

 所得格差の拡大傾向は事実であり、党中央・国務院は高度に注目している。これについては、以下いくつかの観点を述べたい。

 まず、改革開放・経済発展に伴い、総体としてみれば人民大衆の所得水準が向上したことを、十分肯定すべきである。過去の自分と対比すれば、生活は明らかに改善している。2006年と1978年を比べると、都市住民可処分所得は343元から1万1759元に上昇し、農民純収入は134元から3587元に上昇した。物価要因を控除すると、いずれも毎年6.7%の伸びとなる。

 しかし、我々は確かに、都市・農村の間、異なる地域の間、異なる階層の間の格差が拡大しており、ものによっては比較的深刻になっていることを正視しなければならない。この問題がそのまま続けば、生産力の発展と社会の安定に悪影響を及ぼすことになる。

 所得格差を拡大する原因は多方面である。歴史的原因(これはわが国が生産力が劣後した二元経済構造の国家であることと関連している)もあるし、自然・地理条件の差もあれば、体制方面の原因(現在の所得分配制度が不完全である)もあり、調節力が不足しているという問題(違法所得、灰色所得が存在し、収入秩序にいくらか混乱がある)もある。当然ながら、段階的、過程的要因もある。国際経験が表明することは、工業化・都市化が加速する歴史の一段階においては、往々にして所得格差が拡大するプロセスが発生するのである。

 所得格差の拡大傾向を解決・緩和するために、党中央・国務院は、既に一連の措置を採用した。例えば、都市・農村の所得格差を縮小するために、「三農」に対する支援を強化した。また西部地域と東部地域の格差を縮小するために、西部大開発戦略を実施した。西部大開発戦略を実施して以降、国債及び中央予算内の投資総額は4600億元に達し、補助金・一般的移転支出は5000億元を超え、更に鉄道・道路等の特別プロジェクト基金が西部地域に投入されたため、総額で1兆2000億元を超える資金が大きな役割を果たした。

 低所得層の生産生活の困難を解決するために、都市・農村の最低生活保障制度を確立した。当然都市は既に確立したが、農村は2006年に25の省・市で確立し、2007年に全部に展開する。同時に、最低賃金制度を実行した。さらに高すぎる所得を調節するために、個人所得税の徴収を強化した。2006年は2400億元を徴収したが、これは2000年の3.7倍である。

 当然、この問題を真に緩和・解決するには、なお長期の努力を要する。根本は次の3点である。

 第1に、発展により解決する。科学的発展観を全面的に貫徹し、良好で速い発展を実現する。国民経済のパイを大きくしてこそ、うまく切り分けることができるのである。

 第2に、改革により解決する。所得分配体制改革を内包する多くの諸改革を深化させる。中でも最重要な1つとして、労働分配を主として多様な分配方式が並存した分配制度を整備しなければならない。同時にもう1つ重要な改革として、機会・ルール・プロセスが平等な体制メカニズムの環境を創造しなければならない。時として、機会の公平は、分配結果の公平よりもずっと重要であり、根本的なことなのである。

 第3に、調節により解決する。即ち低所得を引き上げ、中所得を拡大し、高所得を調節し、合法所得を保護し、違法所得を取り締まる。

(11)最近の世界的株価の動揺の震源は中国か

 株式市場の変化は、強気・弱気、下落・上昇を含め、市場取引の結果である。投資家は、株式市場のリスク・収益について理性的な判断と方針決定をすべきである。政府の職責は、主として公開・公正・公平の原則に基づきルールを制定し、監督管理を強化し、正常な取引秩序を維持することであり、これから欠けるものでも踏み越えるものでもない。

 資本市場を積極的に発展させ、株式市場の健全な発展を促進することは、政府が堅持している基本的立場である。これが変わることはあり得ない。各国の株式市場の変化は、全て自身の複雑な原因がある。異なる国家・地域においては、資本市場は当該国・地域の要因の影響を受け、同時に市場の国際化の程度が異なることによって、異なる程度に国際要因の影響を受ける。海外の株式市場と比べ、中国の株式市場の規模はなお比較的小さく、同時に我々はまだ人民元の資本項目を兌換可能にしていない。このため、中国株式市場が世界株式市場に大きな影響を与えることはあり得ず、その他の国家の株式市場に波動が出現するのは、自身の中に原因を探すべきである。

(12)北京・天津・河北地域の発展政策について

 北京・天津・河北の都市圏地域計画は、2004年から編制を開始した。2年余りの努力を経て、3省市と関連部門の共同努力の下、現在計画は既に基本的に完成し、修正過程にある。修正後、我々は速やかに国務院の許可を受けたいと希望している。

(13)消費について

 内需は、中国の経済成長を推進する根本的な動力である。我々は何十年もこれでやってきた。1979年から2006年に到るまで、GDPの年平均成長率は9.6%であるが、うち内需の貢献は92%以上であり、外需は7-8%に過ぎない。

 消費需要を総量で見ると、伸びは遅いとはいえない。社会消費品小売総額で見ると、最近数年の伸びはいずれも12、13%であり、加速プロセスにある。特に国際比較で見ると、住民最終消費支出の伸びは、2000年から2005年までで中国は7%、米国は3%、世界平均は2.4%である。これは世界銀行のデータである。これからすると、多くの外国専門家が消費の伸びが1、2、3%の国家を消費不足と言わず、我々のように7%成長している国家を消費不足と言うのは、客観的ではない。

 問題の所在は、相対的に投資の伸びが速すぎるのに対し、消費の伸びが相対的にやや緩慢なことにある。消費自身について言えば、もし問題があり、不足があるとすれば、主として農村地域の消費不足であり、低所得階層の消費不足である。このため、消費拡大の重点は農村地域と低所得層にある。

 同時に、我々は現在教育体制、社会保障体制がなお不健全であり、住民消費は後顧の憂いがあるため、現在の消費を先送りしているのである。したがって、もし継続的に消費を拡大するならば、教育・医療・社会保障の改革を深化させ、住民の現在の消費願望を増強しなければならない。中国政府は正にこのような政策を行っている。

 

コメント

 以上が馬主任の会見概要であるが、特にエネルギー問題についてコメントしておきたい。

 中国は自国の説明をするとき、掛け算と割り算を使い分ける傾向がある。即ち、自国を大国に見せるときは一国全体の数値で議論し、自国を発展途上国に見せるときは人口1人当たりの数値で議論するのである。

 馬主任が言うとおり、現在中国の1人当たりのエネルギー消費は国際的水準より低い。しかし、中国は2020年までに1人当たりGDP3000ドルを目指しており、しかも低所得層の引き上げと中所得層の拡大を指向している。もし、国民1人1人がGDP3000ドル相当の消費を始め、これを14億倍すれば大変なエネルギー消費量となろう。

 また、現在の中国のエネルギー効率が悪いことをもって潜在力が大きいとするのは、論理のすり替えである。大きな赤字に陥っている企業が「だからこそわが社は大幅黒字転換の潜在力がある」と説明したとして、どこの銀行がこれを評価し融資を増やすであろうか。事実、中国は第11次5ヵ年計画の省エネ目標の実現に初年度から失敗しているのである。経営改善計画に初年度から失敗した企業は、どのように言いつくろったとしても、メイン・バンクから見放されることになろう。中国の国際エネルギー安全に対する脅威の本質は、中国がエネルギー・資源の多消費と環境破壊の高成長を続けながら、国民の大多数がGDP3000ドルの消費水準に立ち至る可能性があることなのである。

 また、鋼材・アルミの輸出は、国内の消費が十分でないため生産能力過剰のはけ口を海外に求めている側面があり、非効率な投資の責任を海外に転嫁しているともいえる。これをもってエネルギー輸出に貢献しているというのは、牽強付会であろう。過去の日米の経済摩擦が深刻だった時期に、日本側が「鉄鋼・自動車・カラーテレビの輸出はエネルギーの輸出であり、米国のエネルギー需給改善に貢献している」と主張したとして、米国政府のいったい誰が相手にしただろうか。中国は国内の過剰生産能力を整理することが先決である。

 すなわち、現在中国にとって必要なことは、あれこれと理屈を並べ立てて中国は世界のエネルギー安全の脅威でないと強調することではなく、強いリーダーシップをもって第11次5ヵ年計画の省エネ・環境目標を必ず実現することである。そのとき、初めて各国は中国のエネルギー効率の低さを、将来の省エネの潜在力として認めることになろう。(3月14日記・8790字)

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