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ログイン2008年7月10日
もともと中華人民共和国憲法は1954年に旧ソ連憲法をモデルとして制定された。その後、75年版、78年版、82年版の三回にわたる全面改定を経て、現在の憲法(全文138条)は82年版をべ一スとしている。
もともと中華人民共和国憲法は1954年に旧ソ連憲法をモデルとして制定された。その後、75年版、78年版、82年版の三回にわたる全面改定を経て、現在の憲法(全文138条)は82年版をべ一スとしている。
90年代以降は、党大会で承認された歴代指導者の路線が憲法前文に書き込まれる例が続き、1993年の改正では郵小平の「社会主義初級段階論」が、99年改正では「社会主義市場経済」が、2004年改正では江沢民の「三つの代表重要思想」が前文に追記された。このように、欧米や日本など諸外国とは異なり、中国憲法は時折の政権交代や指導思想の変貌に合わせて過去たびたび改正されているのである。
たとえば、日本では労働者のストライキ権も団体交渉権も「憲法で認められた労働者の基本的な不変の権利」と認められている。実は中国でも、文化大革命時代は憲法第一条の規定が労働者のデモ権とスト権の保障であったと記憶している(間違えていたら申し訳ない)。それが82年版改正で削除され、現在の憲法第一条「中華人民共和国は労働者階級が領導する、労農同盟を基礎とした人民民主主義独裁の社会主義国家である。社会主義制度は中華人民共和国の基本制度である。如何なる組織もまた個人による社会主義の破壊もこれを禁止する」に取って代わられた。
中国では労働法にも、労働契約法にもスト権、団体交渉権といった労働者の基本的権利が明確に保障されていないように見える。これは文化大革命という社会的大混乱に懲りた中央政府の慎重さ(憲法から街頭デモ権、スト権を削除し、破壊活動禁止を盛り込んだ)が現われたものとも理解できよう。
中国憲法の前文には中国革命の歴史が総括的に記述されているが、その後半部に中国が歩む基本路線として、「中国各民族人民は引き続き中国共産党の指導の下で、マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論および『三箇代表』重要思想の指導の下に、人民民主主義独裁を堅持し、社会主義の道を堅持し、…」という有名な一文があり、これが中国社会の「骨格」とも言うべき「国家四原則」と呼ばれるくだりである。この四原則は、かつては天安門前広場などの象徴的な場所に、大きな文字で掲げられていたが、最近では何故か全国的に影を潜めている。
その内容を簡単にまとめれば、以下のような内容である。
中国という国家は、
1)中国共産党の指導の下に存在し、
2)マルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論と「三つの代表」重要思想に導かれ、
3)人民民主主義独裁体制を堅持し、
4)社会主義の道を歩む、
という国家の四大基本路線である。
(原文では、このあとさらに、改革開放路線、社会主義市場経済…と続く、以下略)。
この国家四原則を見れば歴然としているが、中国は日本と異なり中央政府から地域の町内会(街道居民委員会)活動に至るまで、すべての組織と個人が中国共産党の単独一党執政の指導下に存在し、日本のような三権分立制や議会政治制度、普通選挙制度はとられていないのである。
日本では内閣総理大臣、最高裁判事、衆議院議長が「三権の長」と呼ばれ、それぞれ別の人物が歴代就任しているが、中国では、中国共産党総書記(党)、国家主席(政府)、中央軍事委員会主席(軍)が「三権の長」に相当し、歴代同一人物(現在は胡錦涛氏)が兼務している。これも日本とは大きく異なる国家体制である。
ちなみに中国では共産党の指導下にある「軍」、「公安」、「検察」が三大権カと呼ばれ、相互牽制の取れたバランス関係にはない。
基本的な骨格が日本とは異なる中国でビジネスを進める以上、こういった相違は「所与の条件」として対処することが必要である。
中国ビジネスの限界としてよく取り上げられる「地方保護主義」、あるいは「強制執行難」などは、こういった根本的な骨格の相違から生じる現象であり、企業や個人の努カで解決できる間題ではないのである。
日本であれば政府とマスコミは、往々にして拮抗関係にあるが、中国では協力、補足関係に立つことも少なくない。いったん中国で外国製品が製造責任を間われる事態となれば、政府、マスコミ、消費者が一体となって外国企業バッシングを始めることも珍しくない。
これも基本的な社会の骨格の相違から生ずる現象と思われる。
この種の間題の解決のためには、土俵を変えて対策しなければならない。
現在、急速な経済成長と市場経済化の副産物として中国社会では貧富格差が拡大し、地方都市、農村でも企業内でもたびたび騒動やストライキ等の発生が報道されている。本来は「労働者と農民の国」であるにもかかわらず、このように内部からいろいろな問題が湧き上がる矛盾は、実は骨格が揺らいでいる現象であり、過去にはポーランド「連帯」が国家を覆したという前例もあり、今後の中国の行方を占う上でも重要なポイントのひとつと思われる。(つづく)(2008年7月記 2,008字)
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