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四川大地震と中国経済(5)

中国ビジネスレポート 政治・政策
田中 修

田中 修

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2008年8月14日

記事概要

6月末から7月初にかけて、災害復興に関する国務院文書が次々に公表された。本稿では、これを中心に最近の政策動向を紹介する。

はじめに

 6月末から7月初にかけて、災害復興に関する国務院文書が次々に公表された。本稿では、これを中心に最近の政策動向を紹介する。

 

1.地震対策・災害救助における先進的な末端党組織及び優秀な共産党員の代表座談会(630日)

 胡錦涛総書記が重要講話を行った。その概要は以下のとおりである(新華網北京電2008630日)。

 1.1 地震対策・災害救助闘争の総括

 今回発生した四川汶川特大地震は、新中国成立以来最も破壊性が強く、最も波及範囲が広く、最も災害救助が難しかった地震である。この特大地震災害に打ち勝つことができるかどうかは、党の執政能力と先進性にとって峻厳な試練であった。現在、被災者の基本生活は初歩的に手配され、災害復興は徐々に展開している。地震対策・災害救助闘争は、重大な段階的勝利を勝ち取ったが、これは党・人民の偉大なパワーを示し、中華民族の偉大な精神を発揚させ、中国人民のたゆまぬ努力・団結奮闘の英雄凱歌を綴ることとなった。

 地震対策・災害救助闘争が重大な段階的勝利を迅速に勝ち取ることができたのは、多くの原因があるが、なかでも最も重要な原因は党の確固たる指導であり、各レベル党組織と広範な共産党員が発揮した大黒柱としての役割である。

 

 1.2 地震対策・災害救助闘争から得た重要な啓示

(1)正確な理想・信念を堅持し、中国の特色ある社会主義を発展させるため、全党の教育を常に断固として党建設の根本任務とするよう奮闘しなければならない。

 共産主義の遠大な理想と中国の特色ある社会主義の共同理想は、中国共産党員の崇高な希求・強大な精神的支柱である。広範な共産党員は、自覚的に満腔の情熱をもって党と人民の事業のために奮闘することができるのである。

(2)「立党は公のため、執政は民のため」を堅持し、最も広範な人民の根本利益をしっかり実現・擁護・発展させることを、常に党建設の核心的な価値としなければならない。

 心から人民のために奉仕することは党の根本趣旨であり、党の全ての価値が存在するところである。

(3)実践のなかで幹部を育成・養成することを堅持し、各レベルの指導部・指導幹部の指導レベル・執政能力を引き上げることを、常に党建設のカギとなる部分としなければならない。

 党の執政能力の建設は、党が執政を開始して以後の根本的な建設項目である。

(4)末端を掌握し、基礎を打ち固めることを堅持し、末端の党組織の凝集力・戦闘力を増強することを、党建設の基礎工程としなければならない。

 党の末端組織は、党の全活動・戦闘力の基礎である。末端をしっかり掌握し、基礎を打ち固めることは、わが党が各種の困難・リスクに対応する重要な決め手である。

(5)共産党員の党員意識を堅持し、党員の先進性を維持・発展させることを、常に党建設の永遠のテーマとしなければならない。

 党員意識は、共産党員が身を立てる根本であり、先進性を維持・発展させるための重要な前提である。

 

 1.3 今後の課題

 現在、地震対策・災害救助活動は被災者の安置と災害復興段階に入り、今年の経済社会発展の予期目標を実現するカギとなる時期に入った。北京オリンピックの開幕は目前であり、情勢は逼迫し、任務は非常に困難である。

(1)我々は、中国の特色ある社会主義理論体系で全党を武装することを堅持し、科学的発展観を深く学習し実践する活動を真剣に展開しなければならない。

(2)我々は、各レベルの指導部・末端党組織・党員の隊伍建設をしっかり行うことを堅持し、党組織の建設に更に力を入れなければならない。

(3)我々は、全党において地震対策・災害救助の優良な作風を大いに発揚し、党と人民大衆の血肉の関係を維持しなければならない。

 中国共産党は87年の風雨の歴史のなかで、人民を団結させ率い、あまたの苦難の荒波に打ち勝ち、あまたの困難・障害を克服し、党と人民の事業が繁栄・発展する良好な局面を切り開いてきた。全党同志は更に緊密に団結し、全国の各民族・人民が進取開拓し、職務に励むよう導き、地震対策・災害救助と災害復興の各種活動を適切にしっかりと行い、科学的発展を推進し社会の調和を促進する各種活動を適切にしっかりと行うことにより、改革開放と社会主義現代化建設で新たな勝利を勝ち取るよう努力・奮闘しなければならない。

 

2.汶川地震災害復興を支援する政策措置に関する国務院意見(629日)

 630日に公表された。ここでは、主な政策メニューを紹介する。

 2.1 基本原則

(1)全面的に支援し、重点を際立たせる

 政策措置の支援範囲は、生産回復・復興の各方面をカバーし、同時に都市・農村住民の倒壊・毀損家屋、公共サービス施設、インフラ等の再建を重点的に支援する。

(2)統一的に企画協調し、力を合わせる

 財政・税制・金融・産業・就業等の各種政策を総合的に運用し、中央・地方の各種財政収入・対口支援・国内銀行貸出等の資金を統一的に企画協調し、各種義捐金をうまく使用するよう誘導して、政策の手配・資金投入・再建計画を相互にリンクさせ、有機的に組み合わせ、力を合わせる。

(3)現地の事情に合わせて適切な方法を採用し、分類して指導する

 被災の程度・復興対象の違いに応じて、分類して支援を行う。被災の深刻な地域を重点的に支援する。公共サービス施設・公益的インフラの再建については、政府の投入を主とし、社会の義捐などその他の投入を従とする。工商などの企業の生産回復・再建については、市場メカニズムを運用し、企業が生産を自力救済することを主とし、国家は財政・税制等の政策支援を行い、銀行の貸出による資金投入を誘導する。

(4)自力救済に立脚し、各方面から援助する

 一方に困難があれば八方から支援し、自力更生・刻苦奮闘の方針を貫徹する。国家の支援・社会の援助・生産の自力救済を組み合わせ、被災地域の幹部大衆等の方面の積極性を動員・発揮させ、自力更生に立脚し、早急に復興する。

(5)力を入れ、簡明・容易に執行する

 被災地域の損失が深刻であり、復興の任務が非常に困難という特殊事情に基づき、法により政策措置支援の程度・対応性を強化し、同時に科学的に簡明で、操作がたやすく、執行を容易にする。

 

 2.2 政策措置の主要内容[1]

(1)中央財政は地震災害復興基金を設立する

 2008年は700億元を計上し、来年・再来年は引き続き相応に計上する。被災地域、主として四川省財政は、中央財政の方法に倣い相応の復興基金を設立する。

(2)財政支出政策

 中央財政の地震災害復興基金の支出は、住民への個人補助・プロジェクト投資補助・企業への資本金注入・貸出利息補助等の方式により、都市・農村住民の倒壊・毀損家屋、公共サービス施設、インフラの回復・再建及び工農業の生産回復・再建を支援する。

①家屋の倒壊・深刻な損壊により住む家のない農家の住宅建設は、中央財政が1戸平均1万元を基準に補助する。都市住民については、プロジェクト投資補助・住民への個人補助等の方式で支援する。

②教育・衛生・末端政府等の公共サービス施設の再建資金は、原則として中央と被災地域の財政が一定の割合で負担する。同時に、対口支援・義捐金を優先的に充てる。

③国有資産監督管理委が管理する中央国有重点企業の生産回復・再建については、中央財政は回復再建投資の一定割合を資本金注入・貸出利息補助の方式で支援する。中央軍需工業企業については、プロジェクト投資補助・貸出利息補助により支援する。地方の企業については、被災が重大な重点業種に中央財政が貸出利息補助を行う以外は、原則として地方政府が資金・支援方法に責任を負う。

④農業・林業の生産回復・再建については、中央財政がプロジェクト投資補助・貸出利息補助の方式で適切に支援する。中央財政は、貧困扶助・貸出利息補助の資金を増加する。

⑤破壊が深刻で全体の再建・移転が必要な非経営性都市インフラについては、中央財政はプロジェクト投資補助で支援し、経営性ないし利用料を徴収するインフラについては、貸出利息補助で支援する。交通インフラについては、中央財政はプロジェクト投資補助・貸出利息補助の方式で支援する。損害を受けたダムについては、中央財政は危険除去の強化工事に投資補助を与える。

(3)税制政策

①企業の迅速な生産回復の促進

 200871日から、被災の深刻な地域で企業が機械設備を新たに購入する場合は、増値税の控除範囲を拡大する。

損失の深刻な企業は、2008年の企業所得税を免除する。

企業が国内で満足な供給のない物資・設備を直接再建に使用するため輸入する場合は、3年間優遇税制を与える。

②個人税負担の軽減

 被災地域の個人が各レベルの政府から得た資金・義捐金は、個人所得税を免除する。

③被災地域のインフラ・家屋・建築物等の復興支援

 被災者が組織的に建設した仮設住宅については、都市土地使用税を免除し、譲渡の際は土地増値税を免除する。

家屋の倒壊した農民の住宅再建については、耕地占用税を一部免除する。政府が組織的に建設した仮設住宅の内装・販売・賃貸契約については、印紙税を免除する。

毀損した住宅の未納分の契約税は徴収しない。被災者が仮設住宅を購入した場合は、契約税を半減する。

省レベル政府の批准により2008年末までは、毀損した不動産・土地につき、不動産税・都市不動産税・都市土地使用税を免除する。

④社会各界の地震対策・災害救助・災害復興への支援の奨励

 単位・個人経営者が物資を公益性社会団体・県レベル以上の政府及びその部門経由で被災地域に無償で贈った場合は、増値税・都市維持建設税・教育附加金を免除する。

企業・個人が上記の組織経由で被災地域に贈った義捐金は、その年の企業所得税・個人所得税から全額控除する。

財産所有者が財産を被災地域に贈った場合は、権利譲渡書類の印紙税を免除する。

地震対策・災害救助・災害復興のために専ら使用する特殊車両を新たに購入した場合には、車両購入税を免除する。

⑤就業の促進

 被災の深刻な地域の企業が新たに就業ポストを増やし、地震災害により職を失った都市労働者を雇った場合は、その実際の雇用人数に応じ営業税・都市維持建設税・教育附加金・企業所得税を減じる。額は1人につき毎年4000元を基準とし、上下に20%調整でき、被災地域の省レベル政府が実情に応じ具体的に確定する。

 被災が深刻な地域で地震により職を失った都市労働者が個人経営に従事する場合には、毎戸毎年8000元を限度に営業税・都市維持建設税・教育附加金・個人所得税を減じる。

 以上の優遇政策中、増値税の控除範囲拡大以外の期限が明記されていないものについては、一律執行を2008年末で停止する。実際に期限を延長する必要がある場合には、国務院が別途決定する。

(4)政府性基金・行政事業性手数料の政策

 被災の深刻な地域の企業・個人の基金・手数料負担を軽減するため、3年間被災が深刻な地域の一部政府性基金及び行政事業性手数料を減免する。

(5)金融政策

①金融機関が金融サービス機能を速やかに全面回復することを支援する。

 金融の末端ネットワークが速やかに修復し、合理的に配置し、被災者が集中して暮らしている地域の金融サービスを強化・改善する。被災が深刻な全国性金融機関はその本店経由で対口支援し、被災が深刻な地方法人金融機関については、実力があり経営の安定している金融機関が市場化原則に基づき合併・リストラすることを奨励する。金融機関がリスクを有効にコントロールする前提の下、被災地域に支店を設立することを奨励する。

②銀行が被災地域に貸出を行うことを奨励する。

 総量を引き締め気味にするマクロ政策を堅持すると同時に、被災地域への貸出を区別して対応し、維持するものと抑制するものを区別する。全国性銀行は系統内の調整を強化し、貸出を被災地域に傾斜する。被災地域の地方法人銀行は、自己資本比率を満足するという前提の下、十分資金を運用し、復興の合理的な貸出需要を支援する。銀行がM&A融資業務を展開することを認める。被災地域に営業ネットワークのない銀行が地域を越えて貸出業務を行い、被災地域の復興支援を行うことを認める。災害前に行った貸出で、災害後期限に償還することができなくなった各種貸出の償還期限を6ヶ月延長し、2008年末までは督促せず、懲罰的利息を課さず、不良記録を作成せず、引き続き貸出支援を受けることを妨げないようにする。

 被災地域の重点インフラ・重点企業・支柱産業・中小企業・災害による失業者への貸出を増加する。

 被災地域の「三農」発展への貸出支援を強化する。

 被災地域の住民が自ら住む住宅を購入する場合、その貸出金利の下限を人民銀行が定める貸出基準金利の0.6倍とし、最低頭金比率を10%に引き下げる。

③被災地域の金融機関が貸出能力を増強することを支援する。

 2008年は、被災地域への中央銀行貸出枠を200億元増加し、今後は実際の需要に基づき適切に増加する。また、その使用範囲を拡大し、農業・農村への優遇貸出金利を1%引き下げる。

 引き続き、被災地域の地方法人金融機関に対して傾斜的な預金準備率政策を執行する。

④資本・保険市場の機能を発揮させ、災害復興を支援する。

 被災した金融機関・企業が債券市場を通じて再建資金を調達することを支援する。

 被災地域の企業が株式市場を通じて資金を調達することを支援する。被災地域の上場会社がM&Aにより再編し、資本を注入し、全体として上場することを支援する。被災地域の企業の上場育成サービスを強化し、条件の適合した企業の上場を推進する。

 保険機関が災害復興に参加するよう積極的に誘導する。被災地域に必要な各種保険を提供し、保険料に優遇を与える。

 各種ファンドが災害復興を支援することを奨励・誘導する。

⑤被災地域の信用環境建設を強化する。

 被災地域の顧客の合法権益を保護する。被災地域の金融機関の顧客基本情報を早急に整理・事実確認する。

 現行の帳消し規定に適合した貸出については、関係政策と手順に従い適時に帳消しする。金融業は市場化・法制化・持続可能の原則に基づき復興を支援し、金融リスク・モラルハザードを防止する。

 被災地域の信用体系建設を推進する。被災地域の金融モニターを強化し、被災地域の金融秩序・金融安全を維持する。

(6)産業支援政策

①特色と優位性のある産業の生産能力を回復する。

国家の産業政策・現地の資源環境条件・災害復興計画に符合する、特色と優位性をもつ産業の発展を大いに支援する。農牧畜業・農業副産品加工業・大型発電設備基地・ハイテク・環境保護建材及び化学肥料・農薬・飼料等の農業生産財の生産を重点的に回復・再建する。観光業をリード産業とし、重点観光スポット・地区の再建を加速する。

②産業構造を調整する。

産業をハイレベルに再建し、循環経済を発展させ、省エネ・汚染物質排出削減を強化し、技術水準を引き上げる。エネルギー多消費・高汚染企業及び国家の産業政策に符合せず、安全生産条件を備えていない落伍した生産能力を断固として淘汰し、重要水源保護区内の汚染の深刻な企業を閉鎖する。中央財政は、地方がエネルギー多消費・高汚染・資源性の落伍した生産能力を淘汰することに適切な奨励を与える。

③産業配置を最適化する。

元の場所に再建することが適当でない企業は、他の地に移転させ再建しなければならない。成都・徳陽・綿陽・広元等の地に企業を相対的に集中し、資源を効率的に利用し、土地使用を節約し、環境を総合的に管理し、機能を有効に発揮する産業集積区を形成する。

④産業の発展環境を改善する。

 復興期間内に、復興計画の要求に基づき、新たな石炭建設プロジェクトの規模制限を適度に調整する。電力直接購入のテストを実行する。

(7)土地・鉱産資源政策

①建設用地を新たに増やした際の土地有償使用費・土地譲渡収入の徴収を免除する。

②土地の割当てを行う。

③地価を引き下げる。

④鉱産資源補償費等の地方留保分を増やす。

(8)就業援助・社会保険政策

①前に述べた就業を奨励する税制・金融政策以外に、被災地域の就業援助を強化する。

 省レベル政府が確定した地震災害により出現した就業困難者は、規定に基づき直ちに就業援助の対象範囲に組み入れ、被災地域の就業ゼロ家庭で少なくとも1人が就業することを優先的に保証する。

 現地の就業困難者が地震対策・災害救助関連の活動に参加している場合には、現在ないし新たに開発する公益性ポストの認定範囲に組み入れ、期限を3ヶ月とする。この者にはポストに対する助成と社会保険の助成を与える。

 被災地域の企業が再建中に就業困難者を雇い入れた場合には、相応の社会保険の助成を与える、など。

 被災地域の就業援助に関係する所要資金については、規定により就業特定資金から支出し、特定項目移転支出を通じて適切に支援する。

②労災保険・年金保険の支払いを保障する。

③被災による困難者の基本生活を保障する。

 被災地域の失業保険条例に符合する失業者には、すぐに満額の失業保険金を支払う。都市住民の最低生活保障の条件に符合する者は、規定により都市最低生活保障の範囲に組み入れ、都市最低生活保障を享受させる。臨時生活救助の条件に符合する者は、規定により臨時生活救助を実施する。

(9)食糧政策

①被災地域の穀物市場を安定させる。

 被災地域の中央・地方穀物備蓄を適時充実させ、被災地域の市場への供給を増加する。

②被災地域で損害を受けた穀物倉庫の修繕・再建を支援する。

③被災地域の作付農民の増収を促進する。

 上述の9つの政策は、新た制定したか、現行政策の執行範囲を拡大したものである。現行の法規・政策で地震対策・災害救助・災害復興に適用できる各種優遇政策措置は、全て被災地域で引き続き執行される。

 

 2.3 活動への要求

(1)思想と統一し、指導を強化する

 各地域・各部門は、党中央・国務院の決定した各種政策・手配に思想・行動を適切に統一させなければならない。

(2)責任を明確化し、密接に組み合わせる

 各地域・各部門は、それぞれの責任を負い、協調・組合せを強化しなければならない。

(3)政策を細分化し、方法を整備する

 国務院関係部門は、関係政策の具体的実施方法を早急に制定し、政策措置の適用範囲・執行期限を明確にし、災害復興の進展状況と実際の需要に基づき、各種政策措置を適時調整・整備しなければならない。被災地域の省レベル政府は、その地域の実情と組み合わせ、具体的実施操作方法を制定・貫徹実施し、各政策措置の執行に資するようにしなければならない。

 

3.汶川地震災害復興活動に関する国務院指導意見(73日)

 概要は以下のとおりである。なお、国務院の629日意見(以下「政策措置意見」と省略)と重複するものは省略する[2]

 3.1 指導思想と基本原則

(1)指導思想

 科学的発展観を深く貫徹し、人間本位・自然の尊重・科学的再建を堅持する。被災者の基本生活条件と公共サービス施設の回復を優先し、生産条件を早急に回復し、都市・農村、インフラ、生産力の配置を合理的に調整し、生態環境を徐々に回復する。自力更生・刻苦奮闘を堅持し、被災地域の各レベル政府が主導し、広範な幹部・大衆が主体となり、国家・各地域・社会各界の力強い支援の下、入念に計画・組織・実施し、故郷を良好かつ速やかに再建しなければならない。

(2)基本原則

①科学的に計画し、秩序立てて推進する。

 災害復興は科学的な計画の基礎の上に確立しなければならない。災害評価と地質・地理条件、資源環境受容能力の分析等の基礎活動を真剣にしっかり行い、経済・社会・文化・自然等各方面の要素を考慮し、重点を際立たせ、各方面に配慮し、当面は急ぎ後は緩和し、統一的に企画・手配し、計画的に段取り良く復興活動を展開しなければならない。

②現地の事情に合わせ適切な方法を採用し、分類して指導する。

 災害復興は被災地域の現実から出発し、民意を尊重し、実効を重視しなければならない。現在に立脚し将来を見通し、再建すべき地域とすべきでない地域を科学的に画定し、都市・農村の配置、人口分布、産業構造・生産力の配置を調整・最適化しなければならない。

③自力で更生し、刻苦奮闘する。

 被災地域の各レベル政府は、指導組織の役割を十分発揮し、広範な幹部・大衆の積極性・主動性・創造性を十分動員しなければならない。信念を増強し、精神を奮い立たせ、自ら取り掛かり、生産を自力で救済し、仕事に一生懸命励み、故郷を再建しなければならない。

④一方で困難があれば、八方から支援する。

 中華民族の優良な伝統を大いに発揚し、社会主義制度の優位性を十分に発揮し、政府主導と社会資源の十分な動員を組み合わせなければならない。対口支援活動を組織的に実施し、社会各界のパワーを広範に動員し、多様な形式を採用して、被災地域の復興を加速しなければならない。

 

 3.2 主要任務と活動要求

(3)都市・農村住宅

 都市・農村住民の毀損した住宅の修繕・再建を、際立てて優先的に位置づけなければならない。都市・農村住民の住宅建設の異なる特徴に応じて、相応の補助政策を制定する。

 農民の住宅再建は、社会主義新農村建設と貧困扶助開発と組み合わせなければならない。農民の希望を十分に尊重し、農家が自力で建設し、政府が補助し、社会が助けることを組み合わせて実行する。

 都市住民の住宅再建は、政府主導・市場による運営・政策支援・大衆の自助という原則に基づき、元の場所での再建・他の地での新建設と修繕・補強を組み合わせ、軽微・中程度の損壊住宅の修繕・補強を優先的に手配しなければならない。

(4)公共サービス施設

 資源の合理化・配置の最適化・標準化建設の推進により、耐震基準と建築の質を引き上げなければならない。学校・病院等の公共サービス施設の再建を優先的に手配する。

 学校の配置を合理的に調整し、教育資源を合理化し、教育の質を高める。

 県・郷両レベルの医療衛生機関・計画生育機関を重点的に再建し、市・県・郷・村の基本医療・公衆衛生サービス体系を全面的に回復する。

 公共文化・スポーツ施設を合理的に配置する。

 民族文化の救済・保護を重視する。

 社会福利・社会救助・軍人遺族の安置・障害者へのサービス・労働就業・コミュニティ管理等の施設を再建する。

 公共サービス施設の建設が基本的に完成した基礎の上に、節倹と実用の要求に基づき、各レベル行政機関の公務施設を再建する。

(5)インフラ

 各種インフラの再建は機能の回復を第一とし、地質・地理条件と都市・農村の分布に基づき配置を合理的に調整し、現地の経済社会発展計画・都市農村建設計画・土地利用計画とリンクさせなければならない。短期と長期見通しを組み合わせて、建設基準を合理的に確定し、安全保障能力を増強しなければならない。

 交通インフラの再建では、総合交通体系の整備に着眼しなければならない。重点を、幹線鉄道、幹線道路、農道、重点鉱工業企業・重点森林地区を往来する専用道路、損害を受けた民間航空施設の再建に置き、観光交通を早急に回復する。

 通信施設の再建は、通信幹線ネットワークの再建に重点を置く。

 エネルギー施設の再建は、高圧送電変電施設、都市・農村低圧配電ネットワーク、石油ガスパイプラインに重点を置く。

 水利施設の再建は、ダム・地震湖対策・堤防・郷村供水施設・灌漑水利施設・水文水資源施設に重点を置く。

 市の公共施設は、都市供水・排水・汚水処理・天然ガス・熱供給・ゴミ処理・公園緑地・避難場所等の施設を再建する。農村インフラ建設を積極的に推進する。

(6)産業構造調整と生産力配置

 市場志向で、資源環境の受容能力・産業政策・就業需要に基づき、経済発展方式の転換、産業構造の改善・グレードアップと有機的に組み合わせ、被災企業の現地での再建、他の地での移転建設、閉鎖・生産停止・合併・転業を合理的に手配し、特色と優位性のある産業の発展を支援する。

 農業・林業・牧畜業の生産能力を早急に回復する。

 観光業の再建を強化する。

 各種企業が適度に集中して配置され、循環経済が発展し、資源の効率利用・土地の節約使用・環境対策が促進されるよう誘導する。

(7)市場サービス体系

 市場の安定・供給の保障・需要の満足・人民のための安全・就業の増加の要求に基づき、被災者の基本生活の保障と生産回復に重要な役割を有する市場サービス施設の再建を優先し、市場サービス体系の基本機能を回復する。

 食糧流通施設・国家物資備蓄施設を再建し、日用消費品のネットワーク・農業副産品の取引ネットワークを回復・整備する。

 金融サービス機能を回復し、金融の安全な運営を保障する。

(8)防災・減災と生態回復

 自然・ルール・科学の尊重を堅持し、健全な防災・減災システムを確立し、生態保護・環境対策を強化し、人口・資源・環境の協調的な発展を促進する。

 各種2次災害の防止と危険性の大きい地質災害スポットの早急な対策を重視する。

 自然の回復と人工的な対策を組み合わせ、生態システムの機能を徐々に修復する。

 都市・郷村と工業集積地域の再建活動を組み合わせる。

 防災・減災システムの建設を強化する。気象、洪水・旱魃対策、地震防止、地質災害、水質汚染のアラーム・予報システム、指揮・コントロールシステムを回復・強化し、災害への観測・予測・予防能力を高める。

 

 3.3 段取りをつけた実施と保障措置

(9)計画を先行させることを堅持する

 災害復興計画は、復興活動の重要な根拠であり、全面的な調査研究・科学的評価・十分な論証の基礎の上に確立しなければならない。

10)入念に組織し、実施する

 被災地域の各レベル政府は、入念に組織・施工・管理するという要求に基づき、災害復興の各種活動を統一的に企画・手配しなければならない。

11)政策支援を強化する

 「国務院政策措置意見」を真剣に実施し、財政・税制・金融・土地・産業・就業等政策手段を総合的に運用し、災害復興を支援する。

12)活動の責任制を実施する

 地方各レベル政府と国務院関係部門は、災害復興任務の困難性・複雑性・緊迫性を十分に認識し、全局的意識を樹立し、組織的指導を適切に強化し、災害復興の各種活動を全面的にしっかり行わなければならない。

13)監督検査を強化する

 被災地域の各レベル政府は、「災害復興条例」の要求に基づき、再建プロジェクトの管理を強化し、基準を超えたり、盲目的に功を争ったり、大風呂敷を広げ浪費したりしてはならない。

14)宣伝活動をしっかり行う

 ニュース宣伝活動を強化し、世論の動向を正確に把握し、地震対策・災害救助の偉大な精神を大いに発揚しなければならない。

 

4.地震対策総指揮部会議(712日)

 温家宝総理が主催し、被災地域の困難な大衆の救助政策等が検討された(新華網北京電2008712日)会議の概要は以下のとおりである。

 「現在までに、地震により住む家・生産財・収入源を失った困難な大衆881.5万人を既に救済し、孤児・独り身の老人・独り身の障害者26.1万人を救済した。

 9月に入ると、大部分の被災地域の生産生活秩序は、基本的に正常に回復すると予想される。しかし、一部の重度の被災地域の被災者の生活はなお不安定な状態であり、多くの困難が存在する。このため、会議は、3ヶ月間の臨時生活救助政策の期限が到来した後、政府は生活がなお不安定な被災者に引き続き救助を与えることを決定した。救助政策は現金補助を主とし、食糧は給付しない。1人平均200元であり、孤児・独り身の老人・独り見の障害者への補助基準は適切に引き上げられる。補助期限は911月である。この満期到来後は、生活困難な被災者は、それぞれ都市・農村最低生活保障、農村伝統保障制度、冬季・春季被災者臨時生活困難救助制度に組み入れられ、基本生活を保障する」(2,008年7月記・11,202字)

 
 


 

  

      [1]  資料は膨大なので、ここでは要点のみを紹介する。

 

  

      [2]    指導意見が総論であり、政策措置意見が各論であるので、本来であれば総論が先に公布されるのが普通である。しかし、政策措置意見は各主管部門の提出した政策をホッチキスすればいいので、比較的策定しやすいのに対し、指導意見は部門をまたがるので調整が必要だったのであろう。また、被災地のニーズとしても、高邁な総論より具体的な政策を早く提示することが必要であったと考えられる。

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