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工業・情報化部の発足

中国ビジネスレポート 政治・政策
田中 修

田中 修

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2008年8月26日

記事概要

6月29日、今回の行政機構改革の目玉である工業・情報化部が正式に発足した。本稿では、現在までに判明している同部の全体像を紹介したい。

はじめに

 629日、今回の行政機構改革の目玉である工業・情報化部が正式に発足した。本稿では、現在までに判明している同部の全体像を紹介したい。

 

1.国務院常務会議(625日)

 国務院を組成する部門・直属機関・部委の管理する国家局の「主要職責・内部設置機構・人員編制規定」を審議・決定した。

 その要点は次のとおりである(新華網2008625日)。

(1)政府機能の転換という核心をしっかり踏まえ、政府・企業の分離、政府・資本の分離、政府・事業単位の分離、政府・市場仲介組織の分離という原則に基づき、管理すべきでない事項については取消し・下部への移譲・移管を行う。エネルギー管理、環境保護、大衆の切実な利益に関わり国が担当する民生の、社会管理・公共サービスの職責を強化する。

(2)1つの事項は1つの部門が責任を負うという原則に基づき、部門の職責分担を明確にし、部門の職責関係を整理し、長期にわたり存在する職責交錯の問題を解決した。実際に多くの部門が処理する必要のある事項については、リードする部門を明確にし、第1次的な責任を明らかにし、健全で協調的な組み合わせのメカニズムを確立する。

(3)権限と責任を一致させるという原則に基づき、部門に機能を賦与すると同時に、受け持つべき責任を明確化し、権限には必ず責任が伴い、権限と責任が対等となるようにする。

(4)簡素・統一・機能的という原則に基づき、人員編制・指導的ポストの数を厳格に抑制する[1]

 会議は、「わが国経済社会の発展情勢は総体としては良好である。しかし、改革・発展の任務は十分困難であり、マクロコントロールの改善・公共サービスの強化の面でなお大量の荷の重い仕事がある。内外情勢は少なからず新たな複雑要因が出現しており、政府活動は少なからず新しく峻厳な試練に直面している。我々は総合的な協調能力とリスク防御能力を全面的に高める必要がある。各部門は新規定をできるだけ速やかに実施し、国務院の活動の全体としての機能を向上させ、各方面の任務の全面的達成を確保し、実践・人民・歴史の検証に耐えうる実績の創造に努めなければならない」と強調している。

 

2.工業・情報化部の発足

 この国務院常務会議での決定を受け、629日、工業・情報化部が正式に発足した。

 72日、工業・情報化部は全国工業・情報化工作テレビ電話会議を開催し、主要な職責・機構設置に関連する状況を伝達するとともに、下半期の活動の手配を行った(新華網200872日)。

 

 2.1 主要職責

 次の6項目である。

①工業の業種計画・産業政策・基準を策定し、組織的に実施する。

②工業の業種の日常の運営をモニターする。

③重大な技術装置の発展と自主的なイノベーションを推進する。

④通信業を管理する。

⑤情報化建設の推進を指導する。

⑥国家の情報安全を協調的に擁護する。

 国家発展・改革委の工業業種管理と情報化に関する権限、原子力発電管理以外の国防科学工業委の権限、情報産業部と国務院情報化工作弁公室の権限を工業・情報化部に組み入れる。

 なお李毅中部長は会議において、「工業・情報化部の設立は、全社会が十分注目している。その運営状況は大部門制改革の成否に関わるものであり、極めて模索的で、試練と一定のリスクを伴うものなので、着実に推進し、穏やかに進める中で良好な成果を求めなければならない。工業・情報化部の受け持つ任務は十分荷が重く、たゆまぬ努力を払う必要がある」と強調した。

 

 2.2 下半期の施策

 次の6項目に重点が置かれている。

(1)地震被災地域の生産回復のための各種施策を引き続きしっかり行う

 被災地域の生産回復活動は段階的な進展を勝ち取ったが、更に有効な措置により工業生産の回復をスピードアップさせなければならない。措置を採用し、産業政策をしっかり実施して、被災地域の石炭・電力・石油・輸送の需要の解決を協調して推進し、業種・地方の回復・再建政策を積極的に助ける。業種・企業間の対口支援を組織的に展開し、生産回復と再建計画をうまくリンクさせ、軍需工業と通信の生産回復を重点的にしっかり行う[2]

(2)工業業種管理の施策体系を早急に確立し、工業経済の運行の指導・モニター・コントロールをうまく行い、経済発展方式の転換を推進する

 職責・プロセスを早急に整理し、管理体系を確立し、「インフレ・経済過熱防止」のためにマクロ指導を強化・改善する。調査・研究を展開し、わが国の工業業種の状況・優位性・問題を明らかにして、すでに取られている措置を改善・整備し、産業構造の改善・グレードアップを促進する。産業政策を整備し、工業構造調整の目録を修正・整備する。重点業種のエネルギー・資源消費指標、環境コントロール指標を確定し、省エネ・汚染物質排出削減を推進する。工業経済の運行のモニター・分析を強化し、工業の運行状況をタイムリーに把握し、定期的に公表することにより、工業経済の平穏な運行を保障しなければならない。

(3)TDSCDMAの商業化テスト、電信体制改革の深化、重大科学技術の特定プロジェクト等の重点任務を積極的に推進する

 TDSCDMA[3]の発展は、わが国がイノベーション型国家を建設し、自主的なイノベーションの道を歩むことへの決意・信念に関わるものである。TDSCDMAの発展を支援する各種政策措置を全面的に実施しなければならない。電信体制改革を深化させ、改革期間の通信の保障と陣容の安定をうまく行う。新世代のブロードバンド無線モバイル通信、核心となる電子部品、高品質の汎用チップ・基礎的なソフトウエア等の科学技術の重大特定プロジェクトをしっかり実施し、段階的成果を勝ち取る。

(4)国防軍需工業の重大プロジェクトの円滑な実施を確保する

 国防科学工業局の職責・機構・人員の規定を早急に実施し、重点科学研究・生産の年度任務の円満な達成を保障する。核心能力の建設保障を強化し、「嫦蛾1号」衛星・月探査第2期プロジェクト・神舟7号有人宇宙飛行等の重点プロジェクトをしっかり実施する。

(5)オリンピックの保障・社会安定維持に関連した施策に全力を傾ける

 中央の統一手配とオリンピック組織委の要求に基づき更に指導を強化し、組織化と協調を強め、施策案と応急措置案を整備し、オリンピックの保障に万が一にも手落ちがないよう確保する。監督検査を重点的に強化し、所要の応急訓練を組織化し、オリンピックの通信の保障、無線電話の安全保障、インターネット・情報の安全保障をしっかり行う。

(6)部内の隊伍建設・作風建設・廉潔政治建設を強化する

 地震対策・災害救助において広範な幹部・職員が見せた団結奮闘・無私献身・頑強に奮闘する精神を大いに発揚し、部内の隊伍建設・作風建設を強化・改善し、さらに仕事への熱意と責任感を強化し、学習を強化して水準を引き上げる。党の末端建設と党風の廉潔政治建設を強化する。

 

 2.3 機構・定員

 新華網北京電200872日によれば、内部部局は24であり、構成は以下のようになっている。

(1)総合司局 10

 産業政策司・運行監測協調局・中小企業司は国家発展・改革委から移管。

 財務司を設立し、財務・資金管理・会計検査を担当させる。

 人事教育司を設立し、国防科学工業委参加の7つの高等教育機関を所管させる。

 このほか、機関党委・離退職幹部局、紀律検査・監察局(中央紀律検査委から出向)を置く。

(2)工業業種を主として管理する専業司局 5

 原材料工業・装置工業・消費財工業については個別の司を設けるが、業種別の司は設置しない。

 工業業種管理においては、とりわけ省エネ・環境保護・安全等経済社会発展の重大問題に注意を払う。

(3)国防工業を管理する職能の司局 1

 国防工業の管理面では、国家国防科学工業局の役割を発揮させることとし、部内には軍民結合推進司のみを設置する。

(4)情報産業・業種の管理、情報化の推進司局 8

 ソフトウエアサービス業司を新設し、今後の発展に重点を置く。

 通信発展司を設立し、通信業の管理を強化する。

 通信保障局を設立し、インターネット情報の安全に関する監督管理を強化する。

(5)人員

 7月末に599名でスタートし、情報産業部から多数が組み込まれ、国家発展・改革委から100名近くが移り[4]、国防科学工業局も100人程度の人員となる。

 

3.国家エネルギー局をめぐる騒動

 人民網2008629日は、国家エネルギー局についても、以下のように骨格が固まったと報道した。

(1)内部機構 9

 総合司・戦略計画司・政策司・国際合作司・科学技術省エネ司・新エネルギー司・石炭司・電力司・石油天然ガス司を置く。

 これらは、以前の国家エネルギー弁公室、国家発展・改革委のエネルギー局、資源節約・環境保護司、工業司、国防科学工業委主管の核エネルギー系統プロジェクト関係の2司が再編されたものである。

(2)主要な職責

 エネルギー業種計画・産業政策・基準の策定と組織的実施、新エネルギーの発展、省エネの推進等である。

(3)人員

 当初200人近くを想定したが、激しい論争を経て、中央編制弁公室は112人に査定した。1司当たりの人員は十数人であり、大きな業種を所管するには人手不足との不満が出ている。

 人事的には以前の国家エネルギー弁公室24人、国家発展・改革委エネルギー局30人前後及びその他の司局の一部の人員、国防科学工業委の2司から人員が移ることになるが、うまく調和を図ることができるか懸念されている。

(4)トップの体制・党組織

 国家発展・改革委の張国宝副主任が国家エネルギー局の局長を兼任し、これを前国家発展・改革委エネルギー局長の趙小平、前国防科学工業委の孫勤副主任の2名が補佐する。

 また、エネルギー局は単独の党組織を設置する。これは部委が管理する国家局ではまれなことであり、今後この局が組織・人事面で更に大きな自主権をもつことを意味する。

(5)残された問題

 人民網は、次の点が未解決と指摘している。

①エネルギー価格の決定権があるのか

②電力・石炭等の業種協会が管轄下に入るのか

③国家石油備蓄センターが管理下に入るのか

④エネルギー問題をめぐり、今後国家発展・改革委、商務部、電力監督管理委、工業・情報化部、中国石油・中国石化・国家電力網公司等の大型エネルギー企業はどのように折り合いをつけるのか

(5)国家エネルギー局の反発

 張国宝国家エネルギー局長は、72日メディアに対し、以上の人民網報道を全面否定し、「職責・機構・定員案はまだ確定しておらず、文書も正式に通達されていない。私はこの問題に答えることはできない。エネルギー局は価格決定の権力を求めようとは思わない」とした(新京報200873日)。

 他のメディアであればともかく、人民日報の報道を国家機関が全面否定するのは極めて珍しいことであり、エネルギー問題をめぐり関係者の対立が深刻であることを窺わせる。

2008年7月記・4,383字)

 
 


 

  

      [1]    中国の行政組織は、部長(大臣)の下に多くの副部長・部長助理が置かれており、その下に多くの司(局)があるので、官職がインフレ気味となっている。

 

  

      [2]    これを見ると、今回の震災復興の政府の重点が、工業面では軍事関連に置かれていることが分かる。

 

  

      [3]  第3世代の携帯電話方式で、中国の大唐電信とドイツのシーメンスが共同開発した中国国内向けの規格。周波数の利用率を高めることができるので、人口密集地域などに特に向いているとされる。

 

  

      [4] 現在、国家発展・改革委からすでに38名が移り、地震対策と工業の業種管理に従事している。

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