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人材活用 人材登用の発想~台湾系企業の人材活用に学ぶ

中国ビジネスレポート 労務・人材
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2003年7月23日

2003/08/01 Walker China 8月号 46ページ PDF

人材活用
人材登用の発想~台湾系企業の人材活用に学ぶ

人材をどのように登用していくか―ときに台湾系企業など、さまざまなケースを参考にしながら、自社のスタイルに最もふさわしい形で人材を登用していくことが大切です。とくに工場系では、規律を始めとする「ルール」を確立することがポイントになります。

幹部登用のメリットデメリット

日本本社の最精鋭を中国へ送り込む、若しくは中国現地で中国ビジネスや工場管理に携わっていた現地採用の日本人を幹部にするメリットは、日々の運営を監視できる、本社の意向が伝わりやすい、日本人顧客にはやはり日本人が理解し合えるなど。デメリットは日本的経営の押し付けになりがち、日本人優遇のイメージを与える、中国人スタッフが消極的となり、ボトムアップの提案が少ない、昇進への不安によるやる気の低下、という点が挙げられます。

日本語堪能な実務経験のある中国人を登用するメリットは権限委譲による昇進への期待、経営現地化による帰属意識の発生。官公庁への迅速な対応、そして駐在員の人件費削減。デメリットは転職時に顧客を丸ごと持って行かれる、汚職・不正、突発的な事態が起きた時の意思決定遅延など。

両ケースともメリット、デメリットが表裏一体です。日系企業がどのケースに当てはまるのかは、資本や規模の大小ではなく、企業文化や経営方針の相違によって、前者であったり後者であったり、或いは双方クロスしています。

~ケーススタディ 台湾系企業の規律的人材活用~

中国大陸進出がブームになる前の1960年代から80年代後半まで、日本企業の多くは台湾地区に進出していました。その頃日系企業で働き、日本的経営等を学んだ台湾人達が企業家となり、現在大陸で活躍しています。広東省東莞、福建省アモイ、江蘇省蘇州及び昆山などは台湾系企業が多く進出しています。その多くが大企業ではなく中小企業です。典型的な従業員200名ほどの労働集約型企業を探ってみましょう。

★ 本身・本銭・本領= 三本書

これは経営者の心構えです。本身:強靭な肉体を持ち、本銭:活きた金を使い、本領:本領を発揮する、とでも言いましょうか。この三つが三位一体ではじめて事業をやる資格がある、ということです。

(1)どの企業も紀律を徹底的に守らせているのが特徴

現場なら現場の、管理職なら管理職の職務分掌がマニュアル化されています。製造・技術・財務・人事・業務(総務)・品管・営業など、それぞれの部門のそれぞれの従業員が「仕様書」(※台湾企業では職務分掌を仕様書と呼んでいます)を熟読し、サインをします。サインをしたということは、その職務を忠実に実行することを意味します。これは職務分掌に限らず、業務上のあらゆる書類にも適応されています。サインの重みを理解させるのが先決です。

実例① こんな総務部のマニュアルがあります。「当社の顧客は主に日系企業なので、電話や応対は日本式のマナーに基づくこと」幹部による教育が施されたにも関わらず、できない従業員がいたとしましょう。電話に出ても「○○さんは居ますか?」との客先からの質問に「不在!」「いつ戻りますか?」「不知道!」こういう応対では、その従業員は解雇の対象となります。サインしたにもかかわらず職務をまっとうしてないからです。

実例② こんな部品検査部のマニュアルがあります。「品質は生産ラインで作り上げるもので、品質管理部の出荷検査で発覚した部品不良の責任は部品検査部にある」出荷検査の段階で不良が発生した場合、まず原因を出荷検査不良解析室で調査します。外注先の部品不良だった場合、生産ライン投入許可を出した部品検査部が職務を遂行してないと判断され、相応の処分(状況により注意か警告、あるいは罰金)を受けます。

(2)目標管理、信賞必罰制

どんな小さなことであっても、従業員の見本となるような行為や会社に貢献したものは表彰し、好ましくない行為や会社への損失は罰します。

表彰の実例:先月と比べて不良率が1%ダウンすると、該当部門メンバーは全員名前が掲示板に張り出されて表彰です。金一封が出ることもあります。

罰則の実例:パソコンの消し忘れが発覚し、電気の無駄使いということでやはり該当従業員の名前が張り出され、注意を促します。注意の次は警告、その次から罰金となります。

(3)権限と監視

たとえば、△△省出身の購買担当主任が購買課長に昇進した場合、すぐ下の助理(アシスタント)のポジションに○○省出身の者をつけます。ポイントは同じ省出身の者同士を組ませないことです。この二人を統括するのが派遣幹部。随時報告を要求し、そして日々の業務遂行状況を自分の目で確かめます。

(4) 幹部は台湾人が主で世界から現場までを飛び回る

意思決定は完全なトップダウンです。董事長→総経理→工場長→各部門長という流れです。各部門長までは台湾地区出身者で固めます。

董事長や総経理が自ら世界中を飛び回って営業をこなし、工場長に伝えます。工場長は各部門長へ意向や目標を伝えます。また、抜き打ち的に現場に足を運び、日々の運営状況や管理体制、財務状況を自らの目で確認します。

(5)従業員は中国全土の都市、地方から採用する

北は黒龍江、西は新疆、中部は甘粛、東部・南部は各沿岸都市と、ありとあらゆる地域から採用します。これはどういうことかというと、同じ出身者どうしで固まられて労働効率が低下するのを防ぐ意味があります。また、地元の者だけで従業員を固めると、ホームでは強くてもアウェーで弱くなります。公官庁との対応もそれぞれの都市出身者がいれば、中国全土をカバーできるわけです。

以上がおおまかな台湾系企業の規律的人材活用です。一見抵抗を示す方もおられるかと思いますが、現存する台湾系企業は今まで十数年に渡り、地図や羅針盤の無い状況下、中国大陸で生き残ってきた強者揃いです。参考になる部分も大いにあります。

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