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中国の自動車「自立」は10年先か―現地生産車の性能・品質に見る未熟度―

中国ビジネスレポート 各業界事情
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2004年10月27日

<各業界事情>

中国の自動車「自立」は10年先か
―現地生産車の性能・品質に見る未熟度―

アジア・マーケット・レビュー 2004年10月1日号掲載記事)

 ものづくりの歴史がないところに降って涌いた中国の自動車産業。外資との今弁企業は別として、民族系メー力一の実力はまたまたローカルレベルである。海外メーカー製品のコピー、あるいは設計を欧米に依頼した商品しか作れない。冷蔵庫やテレビなどの家電製品とは違い、自動車は3万点もの部品を組み付ける総合アセンブリー商品であり、設計から部品の加工、最終組み立てに至るまで緻密さが求められる。急速な発展を遂げている裏では、相変わらずの『外資頼み』が続いている。中国政府がWTO加盟時に公約した2006年時点での乗用車関税率は25%であつ、これが実施されると「国産車への影響は大きい」と言われている理由も、国産車の品質にある。日本のメディアでは触れられることがない『中国車の品質』について検証する。

絵を描く技量はあるが...

 中国の民族系メーカーから開発委託を受けている欧州のある企業は、現地メーカーの実力を「まだ幼児レベルだ」と語る。「ボディ設計を全面的に委託されているが、彼らはまだ自動車という工業製品を理解していない。もっと簡単な構造に出来ないかとは聞かれるが、なぜこのような構造にしなければならないのか、という質問はない」と語る。そういう状況だから、中国の地場企業は手取り足取り教えてくれる先生を求めているわけだ。
 6月に北京で開催された国際自動車展覧(モーターショー)は大盛況だったが、その中では地場メーカーが参考出品した概念車=コンセプトカーが目立った。しかし、コンセプトカーのほとんどは日欧米の専門エンジニアリング会仕あるいはデザインスタジオが制作したものだ。中国メーカーが独自に制作したモデルはすぐにそれと分かる。出品物の仕上げも悪いが、それ以前に「自動車の設計として成立し得ないもの」が出品されている。
 中国メーカーの依頼で研修生を受け入れ、自動車のスタイリング(デザイン)手法を教えているイタリアのとある自動車工房(カロッツェリア)では「彼ら研修生は技術の習得スピードが速い」と前置きしながらもこう言う。「まだ自動車という立体を3次元でとらえる能力がない」と。「彼らのスケッチは、SF映画に登場する未来の乗り物のようにカッコいいし、スケッチを描く技術は優れているのだが、実際に自動車として成立し得ないものばかり」だと言う。従って「ゼロからオリジナルデザインを考案し、それを立体モデルに仕上げるという作業は無理。ましてや、製品化するなど1O年は早い」と手厳しい。
 このカロッツェリアは台湾の自動車メーカーからもスタッフ育成を依頼されていたことがある。台湾と中国を比べてどうかと尋ねると「台湾はすでに生活の中に自動車があり、研修に来ていたスタッフも自分でクルマを運転し、改造を楽しんだりしている。しかし中国は、クルマで遊んだことのないエリートが、外観だけ真似しようとしている」との回答だった。

自動車そのものが未浸透

 将来の製品ではなく、現在まさに生産されている製品にしても、お世辞にもレベルが高いとは言えない。取材で中国を訪れた際に、現地製の乗用車を運転させてもらった(本来なら居住者以外の外国人は運転できない。中国は国際免許証の適用対象外)が、何車種かに乗るチャンスを得たところでの印象は、オリジナルモデルとの差だった。
 例えば、現地製のアウディA4を運転したところ、ドイツ製に比べるとややラフな印象を持った。VWでは「本国の品質と変わらない」と言うが、実際にはそうではない。ボディの「しっかり感」やハンドルを一定角速度で切って行く中での「手応えの連続感」が、同じA4とは思えないのである。これが個体差だとしても、ドイツ本国製では許容されない個体差である。
 中国の合弁メーカーが、新規生産車種の市販に当たって、顧客に与える印象を「考慮して」、中国製ではないまったく同じタイブの輸入車を販売するという禁じ手が使われるケースがあるが、それも無理はない。ある日本のメーカーの生産技術担当者は「合弁が決まって、生産認可が下りて、生産準備を始める。指導は徹底的に行うし目本の工場で綿密な研修を行う。それでも、現地調達をあきらめて日本から出荷しなければならない部品は出るし、生産ラインでのトラブルは多い」と言う。
 別のメーカーではこういう発言もあった。「生産現場で要衝を占めるべきスタッフでも自動車を運転した経験がない場合がある、イメージの中に自動車というものがない。だから説明するのも難しい」と。国策としての白動車産業育成という大義名分はあっても、ものづくりの現場に自動車は浸透していないのだ。

切削加工も現地ではまだ無理

 一般の人々が親しんでいる乗用車といえば、都市部ならタクシー。北京でも上海でも、街中を走っているタクシーは外資との合弁メーカーが生産した車種だが、見た目は新しくても、乗ってみると「使い倒されたクルマ」と感じる。シートクッションは潰れきっていて、エンジン音もうるさい。新車のタクシーを狙って手を上げても、後部座席に乗っていて左右に小刻みに揺れるのを体験すると、組み立て精度が低いのではと感じてしまう。
 ある合弁工場で「スボット溶接の不良率」の話しを聞いた。2枚以上の薄板を溶接ガンではさみ、電流を流して溶接するスポット溶接は、自動車のほとんどの部位に用いられているが、ロボットを使って人間のミスを排除した白動溶接でさえも、確実に溶接されていない打点が2〜3%発生すると言われる。中国の工場では、この「溶接ミス」が意外と多いと言う話しも聞いた。溶接されていない打点が多ければ、ボディの剛性は落ちる。剛性が落ちると、微小な振動やハンドル操作に対して不正確な挙動が出る。
 それでも、合弁メーカーはまだ品質検査がしっかりしている。「スボット不良率は高めだが許容範囲」とは、ある欧州系合弁の駐在員。問題は小規模メーカーの場合で、本来ならスポット溶接以上に丈夫なはずの線溶接部分でも「あやしい」ケースがあるようだ。もっとも、「自動車用の薄板の扱い方を、経験として知っているスタッフが少ない」のは無理もないことだ。
 同じ金属で言えば、切削加工についても未熟さがあるようだ。現地で指導していたある日本人エンジニアは「中国のものづくりはITから入っている。素材の研究はまったくと言っていいほど手つかず。切削加工にしても、削り方の初歩、例えばどんな刃を使ってどれくらいの速さで削ればいいのかを指導しなければならないが、応用ができない」と語ってる。いつになっても『先生頼み』ということだ。「日本の工場なら、残留応力をどう処理すればいいのかなどを現場スタッフが感覚的に知っているが、中国にそこまでは求められない」と。
 金型製作は中国で可能になり、金型のメンテナンスも一部ではできるようになったが、白動車のエンジンに使うクランクシャフトなどの機械加工は外資系がすべて生産現場を仕切っている。逆に「その部分を渡さないかぎり、中国は我われを追い出せない」というのが外資の強みだ。もっとも、金属加工についてはASEANの日系自動車工場でもなかなか現地化されていない。日本国内の工場稼働率を維持する、あるいは現地への設備の導入には莫大な投資が要るという要素もあるが、それ以上に技術移転の難しさがある。
 中国の地場メーカーは、経験ある日本人技術者を短期契約で雇用し、技術習得を図っている。幸い、そうした人材には事欠かないようで、日本企業を早期退職、あるいはリストラされた人たちが、かなりの部分で中国の小規模地場メーカーに貢献しているのは皮肉だ。

完成車輸入というカード

 ブラジルでも生産されているVW(フォルクスワーゲン)の小型乗用車「ゴルフ」を中国で生産を立ち上げた時の様子について、あるVWのスタッフは「立ち上げ白体には大きな問題は発生しなくなった」と語る。しかし「工場スタッフの自動車に対する総合的な理解度では、たぶんブラジルのほうが上だろう」と言う。だから「部品の現地化をどこまで進められるかについては、なかなか難しい」と。
 VWやGMなどの外資はいいが、地場メーカーは2006年に自動車の関税率が25%まで下がることを気にしている。また、年内に輸入許可(インポートライセンス=IL)制度が廃止されると、これまで輸入額が総量規制され、しかも外資には1Lが発行されなかったことで抑えられていた完成車輸入が急増すると予想される。政府通達で事実上の禁輸になっている2000

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