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ログイン2015年8月14日
今回は、外国人の中国における個人所得税税額を計算する際に混乱しやすい、183日免税ルール、満1年滞在、満5年滞在、滞在日数カウント、勤務日数カウント、満5年滞在のリセット等に関しての日数(滞在日数、勤務日数)、年数(満1年滞在、満5年滞在)などについて解説します。
Q1、中国への短期出張者の給与所得について、「日中租税条約」の第十五条の183日免税ルールの適用が可能だと思いますが、その183日はどの期間内を指すのでしょうか。
A1、
中国への短期出張者の給与所得に係る個人所得税については、「日中租税条約」により、以下の三つの条件を満たす場合、中国で個人所得税は課税されません。
(a)報酬の受領者が、当該年を通じて合計183日を越えない期間、当該他方の締約国内に滞在すること。
(b)報酬が当該他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わるものから支払われるものであること。
(c)報酬が雇用者の当該他方の締約国内に有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されものでないこと。
このうちの(a)の合計183日を超えない期間は、中国の「個人所得税法実施条例」第七条に同一納税年度内と規定されています。中国の納税年度は歴年となり、1月1日~12月31日となっています。
即ち、歴年内(1月1日~12月31日)に中国での滞在日数が183日を超えず、且つ上記の(b)、(c)の条件を満たせば、中国で個人所得税を納める必要がありません。
また、183日は暦年内の合計滞在日数を指しますので、途中で中国から出国してもカウントはリセットされません。
Q2、183日免税ルールの滞在日数はどのように計算されますか。(滞在日数カウント)
A2、
「日中租税条約」には183日のカウント方法について規定されていません。ただし、中国の国内法・税務通達・国税発「2004」97号に、滞在日数の計算においては、入国日、出国日の何れも一日として扱うと規定されています。
例:日本居住者である出張者S氏は「日中租税条約」の第十五条の上記A1の(b)、(c)条件に該当し、滞在日数は以下となるので、S氏2014年度の中国における個人所得税は免税となります。
S氏2014年中国滞在日数合計:92日
中国へ入出国記録
入国日 | 1月1日 | 3月1日 | 9月1日 | 合計滞在日数 |
出国日 | 1月31日 | 3月31日 | 9月30日 | |
滞在日数 | 31日 | 31日 | 30日 | 92日 |
Q3、日本居住者である出張者T氏は、2014年度中国における滞在日数が183日を超えていました。T氏の中国における個人所得税はどのように計算されますか。(勤務日数カウント)
A3、
日本居住者である出張者T氏は、「日中租税条約」の第十五条の上記A1の(b)、(c)条件に該当しますが、滞在日数は以下となり、2014年度の合計滞在日数が183日を超えていました。
T氏2014年中国滞在日数合計:214日
中国へ入出国記録
入国日 | 1月1日 | 3月1日 | 9月1日 | 合計滞在日数 |
出国日 | 1月31日 | 7月31日 | 9月30日 | |
滞在日数 | 31 | 1+30+31+30+31 | 30 | 214日 |
31日 | 153日 | 30日 |
上記の滞在日数及び税務通達・国税発「2004」97号により、中国国内源泉所得について、中国で個人所得税の納税義務があり、以下の計算式に基づいて、個人所得税税額を計算します。
個人所得税税額=
[当月国内外給与課税所得額×適用税率-速算控除額]×[当月国内勤務日数/当月日数]
計算式のうちの国内勤務日数については、滞在日数の判定方法と異なり、入国、出国日のいずれも半日として扱うと規定されています(税務通達・国税函発「1995」125号)。よって勤務日数は以下のようになります。
T氏2014年中国勤務日数合計:211日
中国へ入出国記録
入国日 | 1月1日 | 3月1日 | 9月1日 | 合計日数 |
出国日 | 1月31日 | 7月31日 | 9月30日 | |
滞在日数 | 31日 | 153日 | 30日 | 214日 |
勤務日数 | 0.5+29+0.5 | 30.5+30+31+30+30.5 | 0.5+28+0.5 | 211日 |
30日 | 152日 | 29日 |
Q4、中国の勤務日数計算に際し、法定休暇日等の休日は含めますか。
A4、
税務通達・国税函発「1995」125号・一に、中国国内企業に就職、雇用されていない中国への出張者に対しては、中国国内の勤務期間には滞在期間中に享受した公休日が含まれると規定されています。
Q5、中国で満1年滞在の場合は、中国国内源泉所得、及び中国国外源泉所得のうちの中国国内企業の負担分について、中国で納税義務があります。中国国内の満1年滞在の判定基準について教えてください。(満1年滞在の判定基準)
A5、
「個人所得税法実施条例」の第三条に、満1年滞在の判定基準が規定されています。
満1年滞在とは、一つの納税年度内(歴年1月1日~12月31日)において、中国国内に365日間滞在することを指します。一時出国の日数を控除することはできません。一時出国というのは、一つの納税年度内に、一回の出国が30日を超えない、或いは累計出国日数が90日を超えない出国を指します。
例:U氏2014年中国滞在日数合計:334日⇒満1年滞在(×)
中国へ入出国記録
入国日 | 1月1日 | 4月1日 | 9月1日 | 合計滞在日数 |
出国日 | 2月28日 | 8月31日 | 12月31日 | |
滞在日数 | 31+28 | 30+31+30+31+31 | 30+31+30+31 | |
59日 | 153日 | 122日 | 334日 |
上記のU氏は3月に中国から離れているので、30日を超える出国となり、2014年の納税年度においては満一年滞在とはなりません。よって、中国国内源泉所得のみ中国で納税する義務があります。
例:V氏2014年中国滞在日数合計:320日⇒満1年滞在(○)
中国へ入出国記録
入国日 | 1月1日 | 2月1日 | 3月1日 | 7月1日 | 8月1日 | 合計 滞在日数 |
出国日 | 1月15日 | 2月15日 | 6月30日 | 7月15日 | 12月31日 | |
滞在日数 | 15 | 15 | 31+30+31+30 | 15 | 31+30+31+30+31 | |
15日 | 15日 | 122日 | 15日 | 153日 | 320日 |
上記の例のV氏は、2014年度内の中国滞在日数320日は、U氏の滞在日数334日より少ないですが、一時出国30日、累計出国日数90日を超える事がないため、満1年滞在となります。中国国内源泉所得、及び中国国外源泉所得のうちの国内企業が負担する分について、中国で納税義務があります。
Q6、中国滞在満5年の場合、全世界源泉所得に対して、中国で納税する義務があると聞きましたが、満5年滞在の条件について、教えてください。(満5年滞在)
A6、
税務通達・財税字「1995」98号に満5年滞在について規定されています。中国国内における満5年滞在とは、中国国内に連続して5年間居住することを指します。連続して5年間滞在するというのは、何れの納税年度においても満1年滞在することを指します。
Q7、満5年滞在後の各納税年度においては、全世界源泉所得に対して、中国で個人所得税を納付しなければならないでしょうか。
A7、
税務通達・財税字「1995」98号により、満5年滞在した個人は、6年目以後からの各納税年度で満1年滞在となる年度については、当該年度の全世界源泉所得について納税申告しなければならず、満1年滞在とならない場合、当該年度の中国国内源泉所得のみ納税申告しなければならないと規定されています。
例:6年目 満1年滞在 課税対象:全世界源泉所得
7年目 滞在1年未満 課税対象:中国国内源泉所得
8年目 満1年滞在 課税対象:全世界源泉所得
Q8、満5年の滞在期間のリセット方法を教えてください。
A8、
満5年滞在のリセットについて、税務通達・財税字「1995」98号により二つの方法が考えられます。一つ目は5年間の何れかの納税年度において、一回30日を超える出国、若しくは累計90日を超える出国をすることです。二つ目は満5年滞在以降の納税年度において、中国国内の滞在日数を90日未満にすると、次に満1年滞在した年度から、改めて5年の期限を計算することとなります。
以上
参考:
「個人所得税法実施条例」・中文原文:
http://hd.chinatax.gov.cn/guoshui/action/GetArticleView1.do?id=157773&flag=1
税務通達・国税発「2004」97号・中文原文:
http://hd.chinatax.gov.cn/guoshui/action/GetArticleView1.do?id=1303&flag=1
税務通達・国税函発「1995」125号・中文原文:
http://hd.chinatax.gov.cn/guoshui/action/GetArticleView1.do?id=1194&flag=1
税務通達・財税字「1995」98号・中文原文:
http://hd.chinatax.gov.cn/guoshui/action/GetArticleView1.do?id=1202&flag=1
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