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保税区域の外貨管理規則統合の内容とその影響

中国ビジネスレポート 金融・貿易
水野 真澄

水野 真澄

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2007年8月24日

記事概要

 2007年8月16日に、「保税監管区域外貨管理弁法(匯発[2007]52号)」が公布され、10月1日より施行される事となりました。この弁法により、今まで異なる規則が適用されていた保税区、物流園区、輸出加工区の外貨管理が統一されると共に、外貨管理の原則が明確になっていなかった、保税物流中心A型・B型に付いても、保税開発区(保税区・物流園区・輸出加工区等)と同一ルールが適用される事が明確にされています。

2007年8月16日に、「保税監管区域外貨管理弁法(匯発[2007]52号)」が公布され、10月1日より施行される事となりました。

この弁法により、今まで異なる規則が適用されていた保税区、物流園区、輸出加工区の外貨管理が統一されると共に、外貨管理の原則が明確になっていなかった、保税物流中心A型・B型に付いても、保税開発区(保税区・物流園区・輸出加工区等)と同一ルールが適用される事が明確にされています。

では、この弁法により、どの様な点が変更となるのでしょうか。また、商流における外貨管理の原則はどうなるのでしょうか。これらの点を、以下、解説します。

 

 

1.保税監管区域外貨管理弁法による変更点

今回の弁法の意義は、規制緩和と、規定内容の明確化に有るといえます。

その主要な変更点は、以下の通りです。

 

(1)保税区域の企業の外貨購入制限撤廃

現在、保税区企業に適用されている「保税区外貨管理弁法(旧弁法)」では、特定の場合(配当等)を除いて、保税区企業の外貨購入は禁止されており、輸入貨物代金・非貿易項目の対外送金は、保有外貨からの支払が必要となります(旧弁法第24条)。

その制限が、今回の弁法で撤廃され、保税区域の企業でも、対外決済に際して銀行で外貨が購入できる事となりました(新弁法第九条・第十条)。

 

(2)外貨口座開設制限の緩和

外貨口座の開設に当たっては、区外の外貨管理規定に基づいて手続を行なう事となりました(新弁法第七条)。因みに、区外での外貨経常口座の開設は、「経常項目の外貨管理政策を調整する事に関する通知(匯発[2006]19号)」により、外貨管理局の事前審査が廃止されており、開設申請書・営業許可証・企業認証番号証を銀行に提示し、直接手続を行う事が出来ます。

一方、保税区外貨管理弁法(旧弁法)では、外貨経常口座開設にあたり、外貨管理局の事前審査が求められている他、「企業登記地に原則1つ」という制限が付けられています。これが撤廃されるものと判断されます。

尚、口座開設とは異なりますが、以前は、「保税区企業の場合は外貨の保有制限なし(全額保有可能)」、「一般区の場合は制限あり(一定水準を超える外貨は人民元への換金義務あり)」という管理状況となっていました。これが、2007年8月13日より、一般区の企業に関しても、外貨保有制限が撤廃されましたので(匯発[2007]49号)、この意味でも、区外・区内の状況は同一となっています。

 

(3)保税区域の外貨管理ルールの統合

新弁法は、保税区、輸出加工区、保税物流園区、保税港区、総合保税区、珠海・マカオクロスボーダー工業園区、保税物流中心(A型・B型)等の、税関封鎖監督地域全般に対して適用される事が明記されています。

更に、最も柔軟性があった物流園区の規定内容(例:区内で所有権が転換される貨物に関しては、国内区外企業間であっても外貨決済が可能)が織り込まれていますので、全体的に規制緩和に繋がっています。

尚、新弁法施行と共に廃止される外貨管理規定は以下の通りです。

● 保税物流園区の外貨管理関連問題についての通知(匯発[2005]92号)

● 海口保税区企業の通関輸入に関わる外貨購入関連事項に関する批復(匯総復[2005]16号)

● 保税区企業が国内区外企業に対して振替る外貨の問題に関する批復(匯総復[2004]79号)

● 保税区自動車パーツ企業の外貨購入問題に関する批復(匯総復[2003]32号)

● 外国企業が区内倉庫内に保管する貨物を保税区企業が購入する場合の対外送金問題に対する批復(匯総復[2003]27号)

● 保税区外貨管理弁法(匯発[2002]74号)

● 輸出加工区外貨管理暫定弁法(匯発[2000]116号)

 

 

 

2.保税区域が関連する取引に関する外貨管理

新弁法に規定された、「保税区域が関係する取引に際しての外貨管理ルール」の概要は以下の通りです。

 

(1) 大原則(新弁法・第五条)

以下の大原則に関しては、新・旧弁法(「保税監管区域外貨管理弁法」と「保税区外貨管理弁法」)で違いはありません。

● 保税区域と外国間の取引に関する決済は、外貨建て・外貨払いが義務付けられる。

● 保税区域と区外一般区の取引に関しては、人民元建て人民元決済、外貨建て外貨決済が共に認められる。

  ⇒ より具体的には、通関を伴う取引の場合は外貨決済、伴わない取引(非保税貨物の取扱)は人民元決済が原則となります。

● 保税区域内企業と区外一般区企業との非貿易取引決済(サービス対価の支払い)は、人民元建て人民元決済が義務付けられる。

● 保税区域企業間の取引は、人民元決済・外貨決済が共に認められる。

 

(2) 保税区域企業と外国企業間の決済(新弁法・第九条)

保税区域の企業が、外国企業が所有権を有する貨物を購入した場合は、以下の何れの場合でも外貨送金が可能である事、また、決済用の外貨を銀行で購入できる事が規定されています

1)             外国から輸入された場合

2)             保税区域内で購入した場合

3)             区外一般区から購入した場合

筆者注:中国一般区内の取引に関する外貨決済は、「外貨管理条例」により禁止されていますので、3)のケースは、外国企業が所有権を有する来料加工貨物等を、保税区域の企業が保税区域搬入時に購入する様なケースが該当すると思われます。

 

(3) 外国企業と区外一般区企業間の輸出取引(中国⇒外国)に、保税区域の企業が関与する場合(新弁法・第九条)

区外一般区の企業が輸出通関を行い、保税区域企業経由外国企業に輸出を行なう取引(区外一般区企業が一般区の港で輸出通関⇒保税区域企業がオフショアで購入⇒外国企業が購入という流れの取引)に関しては、保税区域の企業が外国企業から外貨回収後、同一通貨で区外一般区企業に外貨を支払う事ができます。

 

(4) 区外一般区企業の貨物が保税区域に搬入される場合(新弁法・第九条)

保税区域の企業が区外一般区の企業から貨物を購入する場合(貨物が区外一般区から保税区域に搬入される場合)は、外貨決済を行なう事となりますが、それに必要となる外貨は銀行で購入する事ができます。

 

(5) 保税区域企業間取引(新弁法・第十二条)

保税区域企業間の取引は、外貨決済・人民元決済の双方が可能ですが、外貨決済を選択する場合は、保有外貨からの支払が義務付けられ、銀行での外貨購入は認められません。

 

(6) 区外一般区の企業が保税区域内の貨物を購入する場合(新弁法・第十三条)

区外一般区の企業が、保税区域内の貨物を購入した場合(保税区域内で貨物の所有権が転換された場合)は、外貨決済が義務付けられます。

この場合、元の所有者が「外国企業の場合(対外送金)」、「保税区域企業の場合(保税区域の企業に支払)」、「区外一般区企業からの場合(中国一般区域の企業に対して支払)」の全ての場合に関して外貨決済が可能です。

これは、物流園区の外貨管理規定のみに織り込まれた特徴的な規定でしたが、それがそのまま踏襲されていますので、今後(2007年10月1日以降)は、全ての保税区域において、同様の取引が可能になるものと思われます。以上(2,007年8月記・2,844字)

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