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外高橋保税区・物流園区実務セミナー(2007年2月7日)Q&Aレジュメ

中国ビジネスレポート 金融・貿易
水野 真澄

水野 真澄

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2007年8月28日

記事概要

 保税区の貿易会社は、8号令(外商投資商業領域管理弁法)に基づく国内流通権を取得しなくてはいけないのか。もしくは、取得しないまま、国内販売を続けていてもよいのか。国内流通権を取得しないまま国内販売を行う事で、今後、取り締まりを受ける事はないか。取り締まり(規制)の可能性があるとしたら、その時期(タイミング)はどの様になるのかなど。

質問1

保税区の貿易会社は、8号令(外商投資商業領域管理弁法)に基づく国内流通権を取得しなくてはいけないのか。

もしくは、取得しないまま、国内販売を続けていてもよいのか。国内流通権を取得しないまま国内販売を行う事で、今後、取り締まりを受ける事はないか。

取り締まり(規制)の可能性があるとしたら、その時期(タイミング)はどの様になるのか。

 

外高橋保税区関係者(新発展)回答:

2005年7月13日に商務部、税関総署弁公庁から発表された「保税区及び保税物流園区貿易管理関連問題に関する通知」には、「保税区、保税物流園区内の企業が《中国人民共和国対外貿易法》、《対外貿易経営者備案登記方法》、《外商投資商業領域管理方法》、並びにその他関連規定に従い、国内流通権を取得した外商投資企業のみが国内販売を行うことができる」と規定している。

現時点では、政府関連規定により保税区、保税物流园区内の企業に販売権の取得及び流通権の申請最終締め切り期限が設けられていない。

しかし昨年中、何社の保税区外資系企業は「国内流通権」を取得しないまま、国内販売を行った事により、所管の工商管理部門より「罰金徴収、非法所得の没収」という処分を受けている。

よって、経営活動の合法性を確保するため、国内販売を従事している外資系企業に、早急流通権を取得することを勧める。

 

水野よりの解説:

保税区貿易会社が行う国内販売の妥当性に付いては、かねてより議論があった部分(保税区企業の本来の活動範囲を超過しているのではないか、という議論)です。

これが、2005年7月13日に、上記規定(保税区及び物流園区貿易管理関連問題に関する通知(商資字[2005]76号)が公布された事により、一応の指針が出た形になっています。

ここで明確になった指針とは以下の通りです。

●         保税区企業でも、関連法規(外商投資商業領域管理弁法・対外貿易法等)に基づいて、国内流通権・貿易権(外貿流通経営資格)の取得申請ができる事。

●         国内流通権・貿易権を取得した保税区企業は、国内(区外)において販売活動、国内(区外)企業との販売・貿易活動が展開できる事。

 

この通知により、保税区企業の国内流通権・貿易権の取得が認められると同時に、あるべき論の履行(関連法規に基づく、国内流通権・販売権の取得)が厳格化されてきているようです。

現在は、過渡的に、8号令に基づく国内流通権を取得した保税区貿易会社と、正規の国内流通権を取得していない保税区貿易会社が混在しており、双方の形態の会社が国内販売をしている状況にあります。

但し、保税区関係者の発言では、国内流通権を取得していない保税区貿易会社が国内販売を行った事により、罰金徴収・利益没収を受ける事例が昨年よりでてきたという事で、今後、この動きが広がる可能性は高いと思われます。

よって、営業許可の変更手続(国内流通権の取得申請)を行っていない保税区貿易会社は、手続を急いだ方がよいと思います。

 

 


 
質問2

既に、保税区の貿易会社が有る場合、「既存の保税区企業の営業範囲を拡大した方がよいのでしょうか」と、「区外に新しい商業企業を設立する方法」の2種類が考えられますが、どちらが有利な方法でしょうか。

メリット・デメリットを教えてください。

 

 

水野よりの解説:

各々、メリット・デメリットがありますが、既存の保税区貿易会社を活用する場合(営業範囲の拡大をする場合)は、以下のメリットが考えられます。

●  既存の会社を活用するので、会社清算・新設(組織変更)の手間が省ける。

商業企業の新設自体は、随分容易になってきているが、会社の清算作業は、債権・債務の整理、資産・人員の移管を伴うので大変な作業になる。

特に、組織の改廃に当たり、不動産譲渡を伴う場合は、手間だけでなく、税コストが高額になるおそれがある。

●  保税区の優遇政策を活用できる為、税コストが節減できる。

現時点(2006年~2010年の政策)では、保税区貿易企業には、以下の通りの優遇措置が認められている。

(増値税)

増値税納税額100元に付き、7.5元の還付措置(財政補助)が適用される。

 また、新設企業に関しては、最初の2年間は、100元に付き15元の還付が実施される。

(企業所得税)

  現時点の税法では、15%の企業所得税が適用されているが、更に、納税額100元に付き12元の還付措置が適用される(新設企業の場合、最初の2年は24元)。

  その為、実質的な税率は、11.4~13.2%になっている。

● 中継貿易に対応できる。

  中継貿易は、貨物が保税区を経由して再輸出される場合、貨物が中国を介さずに外国間で転送される場合の二種類がありますが、保税区企業は共に認められている。

  勿論、外貨管理規定上は、仲介取引ができるのは、保税区企業には限定されていないが、保税区企業以外は、外貨送金許可が下りにくいという実情がある。

  因みに、三国間取引の場合、「貨物代金受領後の支払いが義務付けられる(仕入れ代金を先に送金できない)」、「売上代金>仕入れ代金でなければならない」という制限があるので注意を要する。

●  保税貨物の取り扱いが容易。

 

一方、既存の貿易会社を活用する際のデメリットとしては、増値税発票の起票・納税などを保税区で行う必要があるため、手間がかかるという点です。

⇒ 区外(上海市内)に営業性分公司を開設した場合でも、現在、分公司は一般納税人資格が取れない(同一市内に本支店がある場合は、本店で、企業所得税も増値税も納税するのが上海のルール)。

 

尚、国内流通権・貿易権を取得した保税区貿易会社の外貨対応(輸入代金決済の為の外貨送金ができるのか)が以前は不明確で、この点が、保税区企業を活用する事の最大の問題点と言われていました。

⇒ 保税区外貨管理弁法では、保税区企業は配当等の一部の支払いを除いては、銀行で外貨を購入できない(手持外貨からの送金のみ可能)という規定になっているため。

但し、現時点では、貿易権を取得した保税区企業に付いては、銀行での外貨購入が認められていますので、この問題は解消されています。

つまり、「貿易権を取得した保税区貿易会社が、貨物の輸入を行う場合、保税区企業の立場ではなく、区外(一般区)企業の立場で輸入をする為、外貨の購入が可能」という解釈・運用が行われているという事です。

 

 

 


 
質問3

上海市の通知では、国内流通権を取得していない保税区企業は、区外にコンサルティング性分公司(非営業性分公司)を作る事ができる事になっている。

これは、作らなくてはいけないのか。

作らなくてはいけないとしたら、制限期間はあるのか(何時までに作らなくてはならないという目処は有るか)。

 

外高橋保税区関係者の回答:

上海市外高橋保税区管理委員会と浦東新区工商局外高橋保税区分局は、2006年5月15日に発表した「外高橋保税区企業工商管理の若干の問題に関する通知」において、以下の事を規定している。

●  保税区内の、国内流通権を取得していない貿易・小口配送(パーツセンター)企業は、親会社(本店)と同じ業務範囲内の連絡、コンサルティング業務を行う分公司を設立できる。

 

ここで強調しておきたいのは、政府主管部門は保税区にある外資企業が、区外に「本社と同業務範囲内の連絡、コンサルティング業務の分公司」を開設する事に付いては、時間的な制限を設けていない事である。

よって、保税区企業は必要に応じて分公司を設立できる。

但し、多くの保税区外資企業は、市内(保税区外)に固定経営場所を有し、恒常的に「本社と同じ業務範囲内の連絡、コンサルティング業務」に従事しているという状況を勘案し、早期に、コンサルティング性分公司(非営業性分公司)の開設を行う事を推奨する。

 

 

水野よりの解説:

昨年(2006年1月)の会社法改正に伴う一連の流れのなかで、外商投資企業の国内連絡事務所(弁事処)の登記が認められなくなっています。

「外商投資投資企業関連審査登記管理法規適用における若干の問題に関する執行意見(国家工商行政管理局・商務部・税関総署・外貨管理局)」では、以下の点を明確にしていますので、連絡事務所の開設自体が認められなくなった訳ではありません。

<執行意見により明確となった点> ● 中国の法律は、外商投資企業が、中国内に連絡事務所(弁事機構)を解説することを禁止しておらず、既存の出張所は、継続する事ができる。 ● 外資企業の出張所は工商登記を必要としない。 ● 出張所は営業に従事する事が禁止されている。   会社登記機関は、出張所が営業行為を行う事に対して、管理を強化する。   通常の外商投資企業(保税区以外の外商投資企業という意味です)の場合は、分公司の開設が認められていますので、会計・税務処理の煩雑さは伴いますが、「営業活動をしたい場合」、「登記無しの事務所が実務上不便を伴う場合」は、連絡事務所から分公司に組織を変更すればよい訳ですが、保税区企業は、従来、区外分公司の開設が認められていませんでした。 ⇒ 保税区の外資企業が区外に事務所を開設することに関する通知(工商企字[2001]第363号)」により、保税区企業は、区外に営業行為を行わない連絡事務所に限定して、開設できる事が規定されている。   よって、保税区企業の殆どは区外に連絡事務所を開設し、ここで実質的な営業行為を行っていた訳ですが、区外出張所登記ができなくなった事により、混乱が生じました。 この事態を収拾する意味で、上海市が出したのが上記の通知です。 ここでは、コンサルティング性分公司(非営業性分公司)という概念が導入されましたが、これは、連絡事務所(弁事処)と同様、直接的な営業行為を認められていない組織で、実質的には同じ形態です。 違いは、(現時点では)連絡事務所は登記が不可能であるが、非営業性分公司は登記ができる点です。   勿論、法制上、弁事処の開設・運営自体が禁止された訳ではありませんので、「一切の営業活動を行わない」という前提であれば、区外組織を連絡事務所のままにしておく事も可能ですが、区外で一切の営業行為をしないと断定できる保税区貿易会社は少ないと思いますので、やはり、分公司登記が必要でしょう。   因みに、非営業性分公司は、文字通り営業行為が認められない形態です。 区外で営業活動を行う場合は、営業性分公司を開設する(その前段階で、外商投資商業領域管理弁法の手続に基づいて、国内流通権を取得する)のが原則と考えてください。  

 

 

 


 
質問4

保税区の生産型企業が、国内流通権を取っても、他社商品取り扱いに関する増値税還付は受けられないと聞いたが本当か。

これでは、生産型企業が国内流通権を取得する事に困難が生じる事となるが。

 

外高橋保税区関係者の回答:

商務部令2004年第8号「外商投資商業領域管理弁法」及び商資函[2005]9号「商務部の外商投資非商業企業の流通経営範囲増加に関する関連問題の通知」」関連規定により、香港特別行政区、マカオ特別行政区、台湾地区を除き、中国国内の省、自治区、直辖市に設立した生産加工型企業を含むすべての外商投資非商業企業が、法律に従い「流通経営範囲の追加」が可能になった。

一方、現在では税務機関の企業輸出還付相関規定では、輸出還付方式は生産加工型企業方式と貿易型企業方式の二種類しか設けられていなく、輸出還付申請の際、そのいずれ一つを適用しなければならないと規定されている。                                 

なお、ここで強調したいのは、一般的には国家及び地方政府が企業をバックアップするという観点では、生産加工型企業の方が貿易企業よりはるかに重要性が高いとされている。

税務上のバックアップを受けるためには、現在の税務規定に従い、生産加工型企業として認定を受ける必要があり、認定の重要条件は自家製製品の販売収入が販売額の50%を超えるかどうかである。

上述二点を纏めると、貿易業務が相当の割合を占めるときは、新しく貿易企業を設立し、業務を行うことを勧める。

 

 

水野よりの解説:

まずご説明しなくてはいけないのは、「ご質問があった問題は、保税区特有の問題ではなく、区外でも同様の問題である」という事です。

 

流通規制の緩和により、制度上は、非商業企業が、営業範囲を追加して流通権を取得する事ができるようになりました。

但し、兼業を行う場合は、増値税課税・還付政策上の問題が生じます。

つまり、生産型企業の計算式(免税・控除・還付方式)と、商業企業形式の二種類を併用する事が認められず、一種類を選択しなくてはならない事となります。

よって、どちらかの形態の増値税輸出還付(生産型企業型を選んだ場合は、卸売り流通に関する増値税還付)が認められない事になってしまい、これが最大の問題点となります。

これは、前述の通り、保税区に限定した話ではなく、区外でも同様の状況です。

よって、生産型企業と販売会社の兼業(既存の生産型企業の免許を拡大し、国内流通権を取得する方法)は、避けた方がよいと言えるでしょう。

質問5

他省に分公司を開いた保税区企業は何社くらいあるか。

上海市内に営業性分公司を開いた保税区企業は何社くらい有るか。

 

外高橋保税区関係者の回答:

政府部門は、分公司に関して統計を実施していない。

現在掴んでいる情報は、以下の通りである。

● 外高橋保税区企業が区外に設立した分公司総件数(他省、上海市内を含む)は約400件。

● 上記内、他地域(他省)に分公司を設立した保税区企業は約100社。

● 上海市内に営業性分公司を設立した保税区企業は約50~60社程度。 

 

 

 

質問6

保税区企業の区外出張所(弁事処)は、抹消登記が必要か。

営業許可が切れたままにしてはいけないのか。

 

外高橋保税区関係者の回答:

「外商投資の企業申請登記管理法律適用若干問題の執行意見に関する通知(工商外企字[2006]81号)・国家工商行政管理総局、商務部、税関総署、国家外貨管理局」には、「企業登記機関は外資系企業の出張所の登記を受理しない。すでに登記した出張所の変更もしくは延期の手続きを受理しない。当該出張所が期間満了の場合、抹消登記を行うか、必要に応じて分公司を設立しなければならない。」と規定されている。

 

水野よりの解説:

保税区企業の区外出張所(弁事処)の営業許可が切れた場合、登記抹消手続を行わなければならないか、そのままにしておいてもよいのかというご質問です。

これは、関連規定に抹消登記を行う事が要請されています。

よって、抹消登記を行った上で、区外分公司の開設を行うのが、適切な対応という事ができます。

 

 

 


 
質問7

国内流通権を取得した保税区貿易会社が、区外に営業性分公司を開設した場合、ここは増値税の一般納税義務者登録はできるのか。

 

外高橋保税区関係者の回答:

今まで保税区内企業がまだ申請成功した先例がない。

 

水野よりの解説:

上海市の運用として、市内に本支店がある場合は、企業所得税・増値税共に、本店で一括納付する事となっています。

よって、制度上はさておき(増値税関連規定上は、一般納税人の要件を満たせば、分公司でも一般納税人登録が可能)、実務上は、区内分公司が一般納税人資格取得は困難で、実例がない状況です。

よって、外高橋保税区企業の営業性分公司区外に有る場合でも、増値税は保税区で納税する事になります。

この形態の場合、実務の手間はかかりますが(保税区で起票・納税する手間)、保税区の優遇措置が享受できるので、税コスト上は有利になります。

 

 

 

質問8

保税区貿易会社が区外分公司を開いた場合、個人所得税の納税はどこで行うか。

営業性分公司、非営業性分公司で、納税方法は違うのか。

営業税はどうか。実際はどうなのか。輸出還付適用に当たっての注意点を教えて欲しい。

 

外高橋保税区からの回答

分公司が浦西にある場合、分公司の利益部分の企業所得税は33%で課税され、親会社の保税区税務局に納付する。

また、分公司の流通税(増値税・営業税)も保税区税務局に納付する。

一方、親会社の利益部分の企業所得税は15%にて課税される。

 

 

水野よりの回答:

先ず、分公司の形態が、営業性分公司か非営業性分公司かで対応は変わってきます。

非営業性分公司は、営業をしないという名目なので、企業所得税・流通税の納税義務は原則として発生しません(本店で利益を一括計算します)。

営業性分公司は、営業活動を行う分公司である為、分公司の利益を個別計算する必要がありますし、分公司としても納税義務が発生します。

 

その上で、

①  本支店が共に上海市内にある場合は、企業所得税・流通税・個人所得税も全て保税区で納税します。

但し、浦西に営業性分公司が有る場合は、企業所得税率が異なるので、区外分公司の所得を33%の税率で計算した上で、本店所得と合算して保税区で納税します。

  非営業性分公司の場合は、所得計算を行いませんので、本店(保税区)で利益を一括計算して納税します。

② 営業性支店(分公司)が他省に有る場合は、以下の通りになります。

● 企業所得税は、合算納税方式(本店所在地で合算納税)と分割納税方式(本店所在地と支店所在地で個別に計算して納税)の二種類があり、所管の税務局と協議の上決定します。勿論、合算納税方式を採用する場合でも、支店の所得は個別計算します。

● 流通税は、原則として取引地での納税になりますので、支店が営業活動を行い、発票を起票するのであれば、支店所在地で納税が必要となります。

  ● 個人所得税は、居住地で納税します。

 

 


 
質問9

保税区貿易会社が区外分公司を開いた場合、個人所得税の納税はどこで行うか。

営業性分公司、非営業性分公司で、納税方法は違うのか。

営業税はどうか。実際はどうなのか。輸出還付適用に当たっての注意点を教えて欲しい。

 

外高橋保税区関係者の回答:

上海分公司の個人所得税は保税区税務局に納付する。

外地(他省)の分公司の個人所得税は現地の税務局に納付する。

非営業性分公司は納税申告が不要。

 

 

水野解説:

これは、質問8と同様のご質問ですので、上記を参照ください。

 

 

 

質問10

企業所得税の統合(内外資)が検討されている。

これが実現すれば、標準税率が25%に引き下げられると共に、サービス業に対する優遇税率は撤廃される。この制度変更が、保税区企業に与える影響はどうか。

 

外高橋保税区関係者の回答:

外高橋保税区は国の優先実行・試行地域として、国家から与えられた特殊な優遇政策を享受すると共に、浦東新区の優遇政策も享受できるので、国家の新しい優遇政策が出されば、外高橋保税区は必ず優先的にその政策を享受できると言える。

 

 

水野よりの解説:

ここ数年間、毎年話題になっていた企業所得税の統合(内・外資)も、いよいよ実施されそうな気配です。

まだ、草案段階で未定なので、実施時期も詳細(特に、既存の外資企業の移行措置)もはっきりせず、ここでは、明確な回答をする事ができません。

一義的には、税制が改正されれば、標準税率は25%程度に切り下げられるものの、各種の優遇税制、特に、地域による優遇措置(浦東新区、経済特区、etc.の優遇税率適用)は廃止される可能性が高いので、外高橋保税区の15%の優遇税率も継続は難しいかもしれません。

ただ、税制改正に当たっては、何らかの移行措置(税制改正前に設立された企業に対する移行措置)が有ると言われていますし、外高橋保税区としての優遇措置(財政補助)が設定される可能性もあります。

ただ、税制改正自体が確定していない為、この点に付いてのコメントは現時点では出来かねるという状況です。

 

 


 
質問11

保税区貿易会社でも、国内流通権を取得した場合は、増値税の輸出還付が適用されるという通達が国家税務総局より出ている(2006年7月。青島税務局宛て)。

但し、実際には、この適用は難しいという(保税区企業が区外で輸出をした場合、輸出通関データが保税区に反映されないため、輸出還付が適用できない)という話を聞いた。

実際はどうなのか。

輸出還付適用に当たっての注意点を教えて欲しい。

 

外高橋保税区関係者の回答:

今保税区の貿易会社が国内販売権を取得したあと、区外の税関で直接輸出する場合、関連部門に提出した資料が貨物と一致し、国家の関連規定に符合すれば、税金が還付される。

但し、貿易会社が貨物を外高橋保税区に搬入した上、「出国登録」の形で外国へ輸出する場合、輸出通関の電子データがないなどの技術的な問題があるので、輸出税金還付申請は難しいのが実情。

 

 

水野よりの解説:

増値税還付関連規定では、「貿易権を有する企業のみが、増値税の輸出還付申請を行う事ができる」と規定されています。

以前、保税区貿易会社は、原則として貿易権を有していませんでしたので、増値税の輸出還付適用は認められていませんでしたが、2006年7月に、「貿易権を有する保税区貿易会社が区外で輸出をした場合は、増値税の輸出還付を認める」という国家税務総局の通知が出されています。

これに基づき、国内流通権・貿易権を取得した保税区貿易会社の場合、増値税の輸出還付請求権があります。

この運用状況はどうかというのがご質問の趣旨ですが、規定通り運用されているというのが、外高橋保税区関係者からの回答です。

但し、区外の港から輸出した場合は還付が適用されるのですが、保税区経由で輸出された場合は、輸出還付が実施されていません。

これは、実務運用上の問題であり、保税区経由の貨物の輸出は、避けるべきだという事ができます。

 


 
質問12

保税区外貨管理弁法の改定は予定されていないのか。●2002年に改定された、「保税区外貨管理弁法」では、保税区企業は、(配当などの一部の例を除いて)外貨の取得が出来ないと規定されている。

但し、「国内流通権・貿易権を取得した保税区企業」は、銀行で外貨の取得が出来る(輸入代金の支払いの場合など)ようになったという話を聞いた事があるが本当か。

弁法は改定しないのか。

 

 

外高橋保税区関係者よりの回答:

2002年には、保税区貿易会社は、まだ国内販売権・貿易権が取得できなかったので、輸入商品代金を支払う際に、直接銀行から外貨を購入できなかった。

現時点で、国内販売権・貿易権を取得してない企業は、2002年版の「保税区外貨管理弁法」を守らなければならない。

国内販売権と貿易権を取得した保税区貿易会社は、輸入商品代金を支払う時、銀行から外貨を購入することができるようになった。

 

 

水野よりの解説:

保税区の外貨管理に関してはQ1でも簡単に解説しましたが、「保税区外貨管理弁法」には、保税区企業は、配当、その他の限定された場合に関してのみ外貨の購入が認められる事となっています。つまり、保有外貨からの送金が原則となります。

この点が、既存の保税区の貿易会社を活用する際の問題点だと言われていました。

つまり、保税区企業が国内流通権・貿易権を取得した場合で、輸入⇒中国内販売が主体の場合、外貨が枯渇し、通貨バランスが取れなくなるという事が懸念された訳です。

但し、貿易権を取得した保税区貿易会社は、区外企業の立場で輸入通関を行う事ができ、この様な取引は、保税区取引ではない(保税区外貨管理弁法の影響を受けない)という点が明確になっています。

よって、実務運用上も、貿易権を有する保税区会社が行う輸入取引については、保税区企業であっても、銀行で外貨を購入の上、対外送金を行う事ができます。

 


 
質問13

保税区内の生産型企業に付いては、増値税課税政策上、「免税・控除・還付」方式が適用されると理解している。

国内部材を使用した場合、この増値税は還付の対象となるのか。

⇒ 保税区の場合、貨物が保税区に搬入されても増値税の輸出還付は適用されない。

  実際に輸出された段階で、増値税は還付されると規定されている。

  但し、実際には、保税区の会社の殆どは貿易権が無いため、(規定はさておき)増値税の輸出還付は実施されていらず、仕入れに際して支払った(国内部材を保税区に引き取った段階で支払った)増値税は、製造原価になると聞いた事がある。

⇒ 上記は、主に、貿易会社に対して適用される事だと思うが、生産型企業の場合はどうか。例えば、国内部材100%使用・製品は全部輸出という極端な場合を考える。

☆ 国内部材購入1000、 製品輸出2000、 輸出還付率13%の場合

☆ この場合、不還付税額は、2000(輸出FOB)x(17%-13%)=80

● 一方、国内部材を購入するとき、1000x17%=170を支払っている事になるが、差額の90は還付されるのか。

●若しくは、170(支払い済み税額)+80(不還付額)の250が増値税額になるのか。

 

新発展回答:

以上の件については、差額の90が原則的に還付される。

ただし、保税区内の生産型企業は、輸入部材の使用が原則となる為、以下のようになるのが一般的である。

材料1000、進料加工(保税状態)、課税額:[2000(輸出FOB)—1000]*(17%-13%)=40

 

 

水野解説:

質問11で、保税区経由で貨物を輸出したら、輸出還付が適用されないという事を解説しています。では、保税区の生産型企業が、国内部材を使用したら、この部分の輸出還付は可能なのかというご質問です。

これに対して、「免税・控除・還付」方式を採用する生産型企業の場合は、輸出還付が可能というのが保税区関係者からの回答です。

 


 質問14

保税区外生産型企業が保税区内企業(貿易会社も含む)宛てに販売した場合、課税されるのか?      (地方の一部では販売金額の13%課税されるという話があった)

 

外高橋保税区関係者よりの回答:

人民元で貿易販売すれば、徴税することになる。(増値税の17%で徴税される)。

ただ、以下の方法を取れば回避できる。

手冊二次加工決算移動で、たとえば蘇州⇒(輸出)⇒保税物流園区⇒外高橋保税区内

 

 

水野よりの解説:

物流園区・輸出加工区と違い、保税区は、区内に国内貨物(中国内保税区外)を搬入しても増値税の輸出還付は適用されません。

よって、国内取引に準じて、17%の増値税が課税される事になります。

これを避ける為に、一旦、保税区ではなく物流園区に入れ、これを保税区に移送する方法があるというのが、保税区関係者の提案です。

 

 

 

質問15

保税区企業が他の保税区に保税在庫をもてますか?

 

外高橋保税区関係者よりの回答:

可能。

条件としては税関備案帳に、第三者の物流企業の名義で出る、自社の会社名が出していけない。

 

 


 
質問16

保税区域で一般貨物の管理は自由にできますか?

貨物の種類に対して制限はありますか?

 

新発展回答:

保税区内の非保税貨物は「保税区税関規定の非保税貨物管理弁法」を参照執行。

 

水野よりの回答;

保税区内に、非保税貨物を保有する事は可能です。

但し、関連規定(保税区税関規定の非保税貨物管理弁法)により、個別に対応が行われるという事ですので、これに従ってください。

以上 (2007年7月記 10,718字)

 

 

 

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