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税関一体化と通関手続

中国ビジネスレポート 投資環境
水野 真澄

水野 真澄

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2018年4月24日

2017年7月1日から、「全国税関一体化改革の推進に関する公告(税関総署公告2017年第25号)」により、全国の税関一体化が実現しています。これに伴い、課税強化(関税評価額査定に関する所管機関の変更に伴う)の動きが生じているのは確かですが、本来、税関一体化は、企業の利便性向上につながるものであり、その一つに「通関・申告地の選択」が有ります。
通関・申告地の選択とは、輸出入取引に関しての申告場所を、「輸出入を行う企業の所在地、若しくは、実際の入出国地の何れかの税関で行うか」を、企業が選択できることをいいます。
では、具体的に、どの様なオペレーションとなるかを、蘇州企業が、上海港で輸入する場合の状況を例にとって解説します。

1.上海港に貨物が到着するが、蘇州税関での申告を希望する場合
この場合の、申告手続のフローは、以下の通りとなります。

(1)貨物が上海港に到着する前に、船会社が「積荷明細書(中国語:舱单)」を税関に提出する。
(2)輸入企業(若しくは、起用する通関代理企業)は、税関システムの通関単申告システムにこれを登録し、売買契約書、インボイス、パッキングリストのPDFをアップロードする。
申告に際しては、「申告税関」として蘇州税関。「実際通関税関」として上海税関を選択する。
(3)輸入企業(若しくは、通関代理企業)は、通関単申告システムで、審査状況を確認。
「ペーパーレス通関審査完了(中国語:通关无纸化审结)」の表示を確認した後に、全国税関税金電子納税システムで、納税を行う。
(4)輸入企業(若しくは、通関代理企業)は、通関単申告システム上で、通関単審査状況を確認する。
1)現場検査が必要ではない場合は、「ペーパーレス通関貨物開放(中国語:通关无纸化放行)」という表示となり、上海港で貨物がリリースされる。
2)現場検査は必要な場合は、その旨の指示が表示されるため、上海港で貨物検査を受ける必要がある。この場合、企業(若しくは、通関代理企業)は、上海港の税関窓口で、上海港の税関担当者と現場検査時間を予約する(税関によっては、インターネット予約を受け付ける場合もある)。予約した時間に検査を行い、問題なければ、貨物がリリースされる。

2.上海港に到着する貨物に関して、蘇州企業が上海税関での申告を希望する場合
この場合は、上記1-(2)の税関選択を、「申告税関」・「実際通関税関」の双方を上海税関としてインプットする事になります。
それ以外のフローは、上記1と同様となります。

<電子口岸システムのメニュー画面>


(大きな画像)https://www.mizuno-ch.com/pdf/electronicsystem_1.png

<電子納税システムの画面>


(大きな画像)https://www.mizuno-ch.com/pdf/electronicsystem_2.png

3.税関一体化と保税転送
税関一体化によって、上記の例の場合、蘇州企業は、上海で輸入する貨物に付き、上海での申告・蘇州での申告の双方を選択できるようになりました。
また、何れの場合でも、貨物が上海にある段階で、申告、現場検査が実施され、貨物がリリースされるため、上海から蘇州への輸送は一般車で行う事ができます。

一体化が実現していない状況下でも、蘇州企業が上海で通関申告したい場合は、「異地通関」が認めていましたが、蘇州で通関申告したい場合は、保税転送形式による必要がありました。これは、上海税関に保税転送申請をして、監管車で蘇州まで運ぶ手続ですので、コストが相対的に高くなります。
また、上海・蘇州という近距離ならまだ良いのですが、遠距離で、積み替えが行われる場合、積み替えの度に、所管税関に申請を行う必要が有り、多大な手間を要しますが、この点が改善されました。
この様に、保税転送形式での移送は、限定的になりますが、それでも、企業が敢えて、(コスト・手間を要する)保税転送手続を行いたい場合は、到着地までのThrough B/Lを用意している等の条件を満たせば、複合保税転送モデル(中国語:联程转关模式)による保税転送が認められます(税関総署公告2017年第48号公告)。
この、複合保税転送モデルとは、積み替えの度に所管税関に保税転送申告をする、従来通りの手続をいいます。
尚、48号公告では、保税転送手続が認められる場合として、以下を規定しています。

(1)複合一貫輸送貨物
Through B/L等があり、中国内で、複数の輸送機への積み替えが行われる場合(聯程転関模式により移送する場合)。
尚、以前は、積み替えの度に、所管税関に保税転送申告をする必要があったが、新制度に基づけば、積み替え時の税関手続は不要となる。

(2)固形廃棄物を輸入し、下記条件を全て満たす場合。
・水運による一貫輸送形式(水運⇒水運)で輸入した古紙、廃金属である。
・貨物入国地が、指定された固形廃棄物輸入港である。
・税関転送目的地に、大型コンテナ検査設備が取り付けられている。
・廃金属を輸入する一貫運送目的地に国家環境保護部門に設立が承認・検収され、既に税関常駐監督管理が行われている輸入固形廃棄物集中管理園区がある。
・輸入固形廃棄物集中管理園区まで一貫運送する輸入廃金属であり、園区内企業により加工が行われる。

(3)温度、静電気、粉塵など自然要素からの影響を受けやすい、若しくは、その他特別な原因で、港の税関監督管理区域で検査検証を実施する事が適切ではない輸出入貨物であり、下記条件を全て満たす場合。
・荷送人・荷受人が高級認証企業である。
・税関転送輸送企業が、直近1年間密輸入違法行為で税関に処罰されていない。
・税関移転出発地、若しくは目的地が、貨物の実際の出入国地と同一直属税関エリアではない。
・貨物の実際の出入国地に既に非侵入型検査検証設備が取り付けられている。

(4)郵送、クーリエ、暫定輸出入貨物(ATA Carnetにおける貨物を含む)、トランジット貨物、中国・ 欧州列車の運送貨物、市場調達貿易方式で輸出する貨物、越境Eコマース輸出入商品、免税品及び外交、常駐機関と人員の社用及び個人用物品。

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