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新広告法施行後の違法広告に対する処罰実例の分析(1/3)

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2017年1月10日

新たに改正された「中華人民共和国広告法」(以下「広告法」という)が正式に施行されて以来、工商部門は各種広告違法行為に対する法令執行力を日増しに強化した。これを背景に、企業が広告違法行為をより明確に把握し、広告行為の適法性を重要視できるよう、係る典型的な事例を考察する。

広告違法行為の類型及び解釈

関係する法律規定及びこれまでの実務経験と合わせて、よく見られる広告違法行為を下記の3タイプに分け、逐一分析する。

一、虚偽広告

【典型事例その1】
某e ビジネス企業(以下「A社」という)は、2014年からある家庭用の浄水器(以下「浄水器」という)を中国国外から輸入し販売を開始した。A社は当該浄水器のカタログ中の「製品データ」に、「濾過総量15,000L」(15㎡に換算可能)と表示した。ところが、中国衛生部門による最終確認の結果、当該浄水器の定額総浄水量は実際には3㎡しかなかった。上海の工商部門は当該行為を人に誤解させ得る虚偽宣伝と認定し、「上海市不正競争禁止条例」に基づきA社を処罰すると同時に、A社が前回の虚偽宣伝行為の処罰を受けてから1年が経過していないことから、「情状が深刻である」とされ、最終的にA社は15万元の過料に処された。

【法的根拠】

法令名称 関連条項
「上海市不正競争禁止条例」 第十四条 事業者は、広告その他の方法を利用して、商品の価格、品質、性能、製造成分、用途、生産者、有効期間、生産地、アフターサービス又は商品の販売促進若しくはサービスの提供に附帯する贈答礼品の品目若しくは数量について、人をして誤解させる虚偽の宣伝をしてはならない。……
第二十七条 事業者が本条例の規定に違反した場合には、監督検査部門が次の各号の規定により処罰を科する。……(七)本条例第14条第1項の規定に違反した場合には、違法行為の停止を命じ、影響を排除するものとし、1万元以上10万元未満の過料に処することができる。情状が著しい場合には、10万元以上20万元以下の罰金を科する。……
第二十八条 本条例において情状が著しいとは、次の各号に掲げる事由の一をいう。……(二)不正競争行為により行政処罰を受け1年以内に再度不正競争行為に従事したとき。……
「中華人民共和国広告法」 第五十五条 本法の定めに違反し、虚偽の広告をした場合、工商行政管理部門は広告の掲出停止を命じ、広告主がしかるべき範囲内で影響を取り除き、広告費用の3倍以上5倍以下の過料に処する。広告費用が計算できない或いは明らかに低すぎる場合、20万元以上100万元以下の過料に処する。2年以内に3回以上の違法行為があり、或いはその他著しい情状がある場合、広告費用の5倍以上10倍以下の過料に処し、広告費用が計算できない或いは明らかに低すぎる場合、100万元以上200万元以下の過料に処し、営業許可証を取り消すことができ、且つ広告審査機関が広告審査許可文書を撤回し、1年以内にその広告審査申請を受理しない。……

【筆者解釈】
虚偽広告とは、広告の表現が実際の状況と一致しせず、適応しないことを指す。「広告法」では、虚偽広告として幾つかの状況が挙げられている。具体的には、(1)商品又はサービスが存在しない、(2)商品又はサービスの機能、産地、品質、規格、成分、製造者などの情報が実際状況と一致せず、購買行為に実質的な影響を与えること、(3)架空、偽造又は検証できない科学技術の成果、統計資料、調査結果などの情報を証明材料とすること、(4)商品を使用し又はサービスを受けたときの効果を捏造するなど。

本件においては、工商部門が「広告法」ではなく、「上海市不正競争禁止条例」に基づき処罰を行ったことに注意したい。虚偽広告に対しては、「広告法」のほか、「不正競争禁止法」及び各地の不正競争禁止条例でも係る行政責任を定めており、法執行部門が法令を執行するうえでの根拠とすることができる。また、虚偽広告の行政責任に関する広告法と、不正競争禁止関連法令の規定には差異が存在する(例えば、「上海市不正競争禁止条例」においては、通常の処罰金額は1万元から10万元であるのに対し、「広告法」においては、広告費用が計算できないか又は明らかに低すぎる場合、処罰金額は20万元から100万元とされている)。法執行機関には一定の法執行上の選択権があり、異なる法的根拠が選択されれば、法的責任も異なってくる可能性があるため、違法行為発生後は、速やかに弁護士に入ってもらい対応してもらうのがよく、行政処罰をどうしても避けられない場合には、法執行機関には、相対的に軽い方の法律規定を選んで処罰がなされるよう説得し働きかけるのがよい。

なお、「広告法」では、企業が2年以内に3回以上の違法行為があった場合、処罰を重くされるとされている。ただし、上海地区の企業の場合、1年以内に2回処罰を受ければ、情状は深刻とされ、重い罰金が科されることになる。そのため、企業は広告違法行為により行政処罰を受けた後は、教訓をしっかりと汲み取り、広告行為に対するコンプライアンス審査を強化し、重い処罰が科されるといった状況が生じないようにしなければならない。

(続く)

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