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【中国深読みコラム】第39回~2018年急回復する日中関係

中国ビジネスレポート コラム
松本 健三

松本 健三

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2018年1月5日

 1978年10月23日、筆者は天津郊外の天津化繊廠で年産8万トンのポリエステル繊維原料建設現場におりました。赤幕に白文字で「祝日中平和友好条約発効」を掲げ、東京で批准書が交換されたことをプラント建設現場の日中職員で祝ったことを昨日の如く思い出します。

 日中平和友好条約発効から40周年を迎える今年は、この5年間冷え込んでいた日中関係が大きく改善しそうな兆候が昨年後半より出てきております。今回はその辺の背景を取り上げてみたいと思います。

 第11回のコラム(2014年9月19日)で「日中間の四つの政治文書」を解説しましたが、唯一「日中平和友好条約」だけが両国政府間で批准された正式の条約で、他の三文書は共同声明と共同宣言で法的な重みが異なります。この条約には、「日中間のすべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は威嚇に訴えないことを確認する。」と明記されていますが、民主党政権時代の尖閣問題(きっかけは石原都知事)を契機とする抗日デモなどにより、平和条約35周年(国交回復40周年)のすべての行事が中止となり、更に安倍首相の靖国参拝問題及び対中包囲網外交により日中関係は冷却期が長く続きました。この間双方国民の嫌悪感は80%まで高まる危機的状況となり、中国崩壊論の本が書店に平積みとなった事も記憶に新しい出来事です。

 そんな状況を大きく変えた原動力は年間750万人に上る中国人訪日観光客と「崩壊しない」中国の順調な経済発展です。特にアジアインフラ投資銀行(AIIB)と「一帯一路」がセットになったアジアから欧州、アフリカ向けの巨額な投資案件に取り残される日本企業の焦りは昨年頂点に達しました。経団連、日本商工会議所などで構成する250人の訪中団は2017年11月21日北京で李克強首相と会談し、アジア太平洋地域での経済連携推進で意見が一致。中国側は「一帯一路」に協力し、中国企業と共同事業を手掛ける日本の民間企業を支援する」と表明。日本側は「基幹道路整備など日本が実施している複数のアフリカ開発事業で中国に参入を呼びかける」と応えています。
    
 その後、公明党の山口那津男代表は12月1日北京で習近平国家主席と面会し、安倍首相から預かった習主席宛ての親書を手渡し、2018年の安倍首相の訪中と習主席の来日を目指して関係改善を推進したい考えを表明しました(1998年の日中共同宣言<日本側:小渕恵三首相、中国側:江沢民国家主席>では毎年、日中一方の国家指導者が相手国を訪問することを確認していますが、実行されていません)。

 2017年12月31日、日本経済新聞は「一帯一路、中国に協力」、読売新聞は「アフリカ支援、日中協力」を社説に挙げ、日本は日中平和友好条約締結40周年を迎えて中国との関係改善を2018年の主要課題に掲げています。また日本経済新聞との年末インタビューで菅義偉官房長官は、「日中関係改善に対する意志は本気」と述べています。

 中国包囲戦略を立ててきた日本政府が、財界の後押しもあり「一帯一路」の協力に転換した背景には、「世界2位の経済大国であり、最大の安保脅威である北朝鮮に影響力を持つ中国との意思疎通が日本に利益になる」というごく現実的な認識ですが、もちろん大勢の中国人訪日観光客が日本を体験し、日本への印象が急激に改善された背景があることは言うまでもありません。

以上

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