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CEPA実施細則の概要と意義

中国ビジネスレポート 投資環境
水野 真澄

水野 真澄

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2003年10月7日

<投資環境>

CEPA実施細則の概要と意義

1.実施細則の種類

CEPA(Closer Economic Partnership Arrangement)の実施細則が2003年9月29日に調印されました。この実施細則(附件)は、以下の6種類となっています。

附件1:当初ゼロ関税を提供する273品目と、今後の対象品目拡大の手続
附件2:香港産品の定義と判定基準
附件3:原産地証明の発行手続
附件4:18種類のサービス産業の開放に関わる具体的な内容
附件5:香港企業の定義
附件6:貿易・投資の効率化の推進

これらの細則の概要を、以下の通り解説してみます。

2.ゼロ関税の適用と原産地の判定について(附件1・2・3)

1)ゼロ関税が適用される品目

2004年1月1日よりゼロ関税が適用されるのは273品目に限定されますが、それ以降、適用品目を拡大し、2006年1月迄に原則として全ての品目に対してゼロ関税を適用することが合意されています。

新規にゼロ関税を適用する品目は、以下の通り香港の企業が自発的に工業貿易署に申請し、工業貿易署は年に1回(6月1日迄に)商務部にこのデータを提出することとしています。その後、商務部に提出されたデータを基に、内地の所管部門と香港の工業貿易署が協議を行い、新規にゼロ関税が適用される品目を確定(毎年10月1日迄)、新しいリストが毎年12月1日迄に公布され、翌年1月1日より新しいリストに基づく課税(ゼロ関税の適用)が行われます。

2)原産地の判定

原産地の判定基準については、香港と内地における意見が一致せず、特に付加価値基準に関して綱引きが繰り広げられていましたが、最終的に以下の通り、品目に応じて3種類の基準の何れかが適用されることとなりました。具体的にどの品目に対して、どの基準が適用されるかは、附件2に具体的に明記されています。

a) 製造・加工工程基準
 重要な製造、若しくは加工工程が香港で行われたことを以って、香港産品と認定する基準です。全体273品目のうち、187品目(衣類・宝飾品・化粧品・医薬・プラスティック・紙製品等)に対して、この生産・加工工程基準が採用されます。
 また、各品目に関して、どの様な行程が「重要な行程に該当するか」については、やはり附件2に明記されています。

b) 関税番号変更基準
 世界税関機関の定める税目番号(関税率表項目)が変更することを以って、香港産品と認定する基準です。全体273品目のうち、46品目(電子製品・部品の一部、化学製品・金属製品等)に対して、この基準が採用されます。

c)  付加価値基準
 これは、香港における付加価値が30%以上であることを以って、香港産品を認定する方法です。全体273品目のうち、400品目(時計・電子光学部品等)に対して当該基準が適用されます。なお、付加価値算定の公式は、以下の通りです。

<公式>
(原材料価格+組立部品価格+工員賃金+製品開発支出)÷輸出FOB価格 ≧30%
注)原材料・組立部品・工員賃金・開発支出等は、全て香港で提供されたもの。

3)原産地証明

 内地においてゼロ関税の適用を受けるためには、輸入通関時に輸入者が申告地の税関に、関連貨物がゼロ関税適用可能なものであることを報告し、有効な原産地証書を提出する必要があります。
 この原産地証明は、香港特別行政区政府工業貿易署及び香港法条例第324章が規定する「認可機構」が発行することとなります。

 原産地証明に関しては、以下の様な点が規定されています。

  • 原産地証明は、一回の輸入における使用に限定される。
  • 一式の原産地証明書は5項目以内の貨物(8桁の税目コード)を記載することができる。
  • 原産地証明書には、一箇所の荷揚げ港が指定されていなくてはならない。
  • 産品コード(証書上の産品内地協制編号)は、中華人民共和国税関輸出入税側に規定する8桁のコードを使用する。
  • 原産地証明に記載する数量は、実際の取引に適用される単位を使用する。
  • 原産地証書の有効期限は署名発行の日から120日とする。
  • 原産地証書は中文で記入し印刷する(この文字要求は2004年7月1日以前に改定)。

3.18種類のサービスの開放と香港企業の基準(附件4・5)

1)18種類のサービス業

 CEPAにおいては、17種類のサービス分野を、香港企業に対して前倒しで開放することを規定していました。今回、これに通信サービスが加わり、全体18種類のサービス業が開放の対象となっています。

18業種の内容
経営コンサルティング、会議・展覧、広告、会計、建設・不動産、医療・歯科治療、販売・小売、物流、貨運代理、倉庫、運輸、旅行、音楽・映像、法律、銀行、証券、保険、通信

 このサービス業の開放については、「香港企業が直接、内地で卸売や金融等の行為に入ることができるのではないか、という誤解」を持っている方が少なからず見受けられます。正しい理解は、「規定された18種類のサービス業に関して、香港企業が、内地に独資・合弁等の方法で拠点を構築して進出する場合、その設立条件・活動範囲等に関して、WTO加盟に基づく開放スケジュール(香港企業以外が適用を受ける)以上の規制緩和・優遇を認める」というものです。

 附件4では、会社設立に際しての条件(出資者の資格・最低資本金等)、活動範囲に関して詳細を規定していますが、ここではこれらは割愛し、どの様な業種が、どの様な形態で内地に進出することが認められているかについて記載します。

● 法律サービス
大陸に代表機構を設立した香港の弁護士事務所が、大陸の弁護士事務所と共同経営を行うことを認める(共同経営組織はパートナーの形式をとってはならない)。

● 会計サービス
既に大陸内で営業資格を持って活動している香港の会計士については、大陸内での年間就業期間を大陸内に登録する会計士と同様の扱いとする。

● 建築サービス
香港企業が独資形態で、建築設計・エンジニアリングサービス・都市設計サービス等を提供することができる。

● 医療.歯科
大陸と香港の合資.合作病院および診療所が雇用する医療関係者は、大多数を香港永久居民とすることができる。

● 不動産サービス
香港企業が独資により、自社所有または資産を賃借して行う高規格不動産事業を行うことを認める。また、香港企業が大陸内で、独資により、料金徴収、または契約に基づく不動産サービスを行うことを認める。

● 広告
香港企業が内地において、独資の広告会社を設立することを認める。

● 経営コンサルティング
法律、会計、監査、認証などを除く、その他の経営コンサルティング業務について、香港企業が内地において、独資企業を設立することを認める。

● 展覧会.会議サービス
香港企業が内地において、独資により、展覧会.会議サービスを提供することを認める。

● 通信サービス
香港企業が合資形態(出資比率は50%以内)により、インターネット関係(データセンター・アクセスサービス)、コールセンター、コンテンツ等の通信サービスを行うことを認める。なお、本件については、2003年10月1日(それ以外は2004年1月1日)より開放が行われる。

● 音響.映像サービス
☆ 音響.映像製品の代理販売サービス
香港企業が大陸内で、合弁形態(出資比率は70%以内)により音響・映像・ソフト(ビデオ製品を含む)の販売を行うことを認める。
☆ 映画
香港企業は合資・合作形態(出資比率は75%以内)で映画館を経営できる。
また、映画撮影などに関する優遇各種あり。

● 建設・関連エンジニアリングサービス
香港企業が大陸の建設会社を全額出資で買収することを認める。

● 委託販売と卸売サービス(塩とたばこを含まず)
香港企業が大陸内で、独資により、委託販売と卸売業に従事すること、さらには、独資対外貿易会社を設立することを認める。

● フランチャイズ経営
香港企業が大陸内で、独資により、フランチャイズ経営を行うことを許可する。

● 小売サービス(たばこを含まず)
香港企業が大陸内で、独資により小売企業を設立することを認める。

● 保険サービス
香港の保険会社による大陸の保険会社への出資比率制限を、24.9%以内とする。

● 銀行サービス
香港の銀行が、内地において支店開設、または独資の銀行・財務会社を設立する場合の設立要件を緩和する

● 証券サービス
香港で取引・決済を行う全ての証券会社は、北京で事務所を開設することを認める。

● 観光・旅行業
香港企業が大陸に、独資でホテル・マンション・レストランを建設・改装・経営することを認める。

● 道路輸送サービス
☆ 香港企業が大陸内で、独資により、道路輸送会社を設立することを認める。
☆ 香港企業が香港・大陸各省の間の貨物輸送直行便業務を行うことを認める。
☆ 香港企業が中西部で独資の旅客輸送会社を設立し、道路旅客輸送業務を行うことを認める。

● 海運サービス
☆ 香港企業が大陸内で、独資により会社を設立し、国際船舶管理、国際海運貨物倉庫、国際海運コンテナターミナル、及び船舶を保有しない輸送請負業務を行うことを認める。
☆ 香港海運会社が大陸内に、独資で船務会社を設立することを許可し、その所有または経営する船舶に関わる貨物請負、書類発行、運送費決済、サービス契約などの日常業務を行うことを認める。
☆ 香港の海運会社が幹線運行の定期貨物船を利用し、大陸の港湾で自由に自社所有または賃借している空コンテナを配送することを認める。

● 物流
香港企業が内地で、独資により、貨物輸送または物流サービスを提供することを認める。

● 貨運代理サービス
香港企業が内地で、独資により、貨物運輸代理サービスを提供することを認める。

● 倉庫サービス
香港企業が大陸内で、独資により、倉庫サービスを提供することを認める。

2)香港企業(香港のサービス提供者)の定義と申請手続き

 内地において子会社等を設立し、上述のサービスを提供する場合は、香港企業(香港のサービス提供者)該当することが、恩恵の享受にあたっての前提となります。当該実施細則では、香港企業の定義は以下の通り規定されています。

a. 業務範囲
香港のサービス提供者が香港で提供しているサービスの種類と範囲が、内地で行うことを予定しているサービスの種類と範囲を含んでいること。

b. 年数
香港で登録し、かつ実質的な商業経営に従事して、3年以上が経過していること。

例外
☆ 建築および関係プロジェクトサービス:5年(5年を含む)
☆ 不動産サービス:実質的な商業経営に関しての年数制限は設けない。
☆ 銀行、及び、その他の金融サービス(保険・証券を含まない)、即ち香港の銀行、またはファイナンシャルカンパニー:香港金融管理専員が「銀行業条例」に基づき発給するライセンスを取得した後、5年(5年を含む)
☆ 保険及び関連するサービス、即ち香港の保険会社:5年(5年を含む)

なお、CEPA調印後に、外国企業が、買収・合併の方法により香港企業の株式の50%以上(50%を含む)を取得した場合には、当該買収・合併より1年以上経過した時点で、当該企業(被買収・被合併企業)は香港のサービス提供者として認定されます。

c. 所得税
適正に所得税を納税していること(欠損の場合は除く)。

d. 営業場所
香港において実質的な商業経営を営む場所を所有、若しくは賃借していること。
また、その営業場所が、業務範囲と規模に一致していること。
なお、海運サービスを提供する者は、その所有する船舶の総トン数の50%(50%を含む)以上が、香港で登録されていなくてはならない。

e. 従業員数
香港のサービス提供者が香港において雇用する雇員の総数の50%以上が、香港における居住に制限を受けない居民、及び単程証により香港に居住する内地の人間であること。

なお、企業形態は、適切に設立されたあらゆる法律実体を指すと記載されていますが、香港に登記された外国企業(支店)、事務所、連絡所、ペーパーカンパニー、及び親会社に対して特殊なサービスを提供するために設立された会社は、当該附件における香港のサービス提供者の要件を満たさないと規定されています。

3)会社設立にあたっての手続

香港企業が内地において18種類のサービス産業に進出するにあたり、CEPAの恩典を享受することを希望する場合には、所定の書類に法定の声明書類を添付して、香港特別行政区工業貿易署(若しくは、委託を受けた機関)の審査を受け、証明書を取得します。

この上で、香港企業は内地の所管当局に、これらの証明書類と開設申請書類を提出し、会社設立認可を申請します。内地の審査機関が香港のサービス提供者の資格に異議を唱える場合には、その旨を、香港企業及び商務部に対して通知します(その上で、商務部より香港工業貿易署に対して原因を説明)。

この決定を不服とする場合、香港のサービス提供者は、工業貿易署を通じて商務部に書面により、再度の検討を要請することができます。

香港企業の認定にあたって提出する書類
a. 香港特別行政区の会社登記所(Company Registry)により発行された、会社設立登記所の副本
b. 香港特別行政区の商業登記証(Business Registration Certificate)、及び商業登記(Register of Business)の抄本の副本。
c. 過去3年(若しくは5年間)のアニュアルレポート及び財務諸表
d. 香港において所有する、若しくは賃借する営業場所の証書の正本、若しくは副本
e, 過去3年間(若しくは5年間)の事業所得税の申告書、賦課通知書、及び納税通知書の副本。過去に欠損となっている場合は、香港の所管部門に対して欠損状況を証明する文献を提出。
f. 香港雇員の報酬・退職金に関する税務報告書(Employer’s Return of Remuneration and Pensions)の副本。
g. 香港のサービス提供の、香港における業務範囲を証明するその他の書類、若しくはその副本。
 香港における海運サービスの提供者が内地において同サービスを提供する場合には、これ以外に、所有船舶の総屯数の50%以上が香港で登録されていることを証明する文書を提出。

4.貿易・投資の効率化の推進(附件6)

ここでは、「貿易投資の促進」、「通関の効率化」、「商品検疫・食品安全・質量基準」、「E-コマース」、「法律規定の透明性」、「中小企業対策」、「中医産業における協力」という七分野に関して記載が行われていますが、内容自体は、双方の交流促進、人員育成、法規の整備、本件を検討する組織の設置などを規定しているに過ぎず、具体性のある内容は定められていません。

(03年10月2日記・5,861字)
丸紅香港華南会社コンサルティング課長・広州会社管理部
水野真澄 訳

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