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来るか「上海―大玄海灘―東京」時代?

中国ビジネスレポート 投資環境
田中 則明

田中 則明

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2004年1月27日

<マクロ経済>

来るか「上海―大玄海灘―東京」時代?

田中則明

お正月にNHKテレビで、大変ショッキングな番組を見ました。気象学、地質学、動物学、植物学、遺伝学、考古学、宇宙工学等の専門家が英知を結集して500万年後、1000万年後、1億年後の地球の有様を想像し、グラフィックで描き出したものでした。NHK教育でした。ご覧になった方も多いのではないでしょうか?多少SFチックの嫌いはありましたが、大変リアルな映像の迫力のお陰で放映時間があっと言う間に過ぎてしまいました。

ここに描かれているのは随分先のことですが、人間の悲しさ、自分を中心に時間軸を設定していて500万年、1億年という時間をも自分の時間軸に引き寄せてしまうためか、明日にもこういう事態が起きるのかと危機感を覚えずにはいられませんでした。

一面の雪原の場面で、「ここはかつてヨーロッパ大陸の中心都市パリがありました」とナレーションが入ります。更に、「地球の気温の急激な変化により、哺乳類は既に絶滅しており・・・・・・」と続くのです。更に、「地中海は閉じられて干上がり、一面『塩の原っぱ』になり、オーストラリア大陸は、北上して日本列島にぶつかり・・・・・・」と続くのです。

どうですか?ショッキングでしょう?

センチメンタリストの名に恥じない私は、これを見て、「最後の哺乳類、最後の人類は、どこでどのように滅んで行ったのだろうか?最後は、何人残ったのかな?ひもじい思いをしたんだろうな?」などと考えてしまうのでした。このような感慨を懐いてしまうのも、これまた昔テレビで見た、洞窟で滅んで行ったネアンデルタール人の最後の姿が脳裏に焼き付いているからに違いありません。

しかし、考えて見れば、これは、まさに人類を中心とした発想であって、この番組の製作者のように地球中心なものの見方をすれば、案外と平気でこの事実を受け入れられるのかも知れません。或いは、「インド人の宇宙観は、実に無限に開かれている」(「唯識の探求」竹村牧男、春秋社、p.86)と著名なインド哲学者に形容された古代インド人の宇宙観に立って見れば、当たり前のこととして受け入れられるに違いありません。仏教の「輪廻転生」も、もしかしたら哺乳類の絶滅までを視野に入れた生命への洞察をベースに構想されたものかも知れません。

少し長くなりましたが、以上が前置きです。なぜこのような前置きを必要としたかと言えば、これから述べることは、恐らく、少なからぬ読者に、「500万年とは言わないが、100年は先のことだな」という感慨を覚えさせると思うからです。その予防線とも言えます。しかし、ものごとは視点を変えて見ると、随分それまで気付ことさえなかった様相を呈することがあるものなのです。具体的に言えば、日本中心の見方から、中国を中心とした見方をすれば、東京中心の見方から、上海中心の見方をすれば、もしかしたら、案外と近い将来に以下に述べるような事態が起きて来るかも知れないと思うのです。

○それは、何か?

「大玄海灘市が出現する」であろうということです。

○どこに?

「日本は、九州北部に。現在の福岡市と北九州市を核とし、周辺の市町村を囲んだあたりに」

○その根拠は?

(不遜の極めつけのような表現をお許しいただけるなら)、「一葉落ちて天下の秋を知る」、最近「一葉」が落ちるのを目撃したからです。

2003年11月、博多港と上海港を結んだ海の「上海特急」が開通しました。住友商事、日本通運、商船三井、上組の4社共同出資で設立されたSHANGHAISUPER EXPRESS(SSE)がRORO船(Roll on Roll off船)を就航させたのです。上海―博多間を27時間で結ぶことが出来、従来の海上輸送時間を大幅に短縮したのです。更に、博多港に上げられた貨物を、スムーズにJR貨物の鉄道輸送や長距離トラック輸送へと振り返る充実した港湾設備により、大阪、名古屋、東京等への貨物輸送時間も大幅に短縮されたのです。

これが、「一葉」です。

このことをどう評価するかですが、私は、この既存の海上輸送よりも価格的に早く、航空より価格的に安いSSE就航は、従来の物の流れを大きく変える可能性があると見ます。特に上海側から日本を眺めてみると、博多港は、近い将来日本国内向けの貨物、日本国内より輸入される貨物を貪欲に吸い込むブラック・ホールのような活況を呈すと見ます。日本側、特に、大阪、名古屋、東京にあって、はるか西の方を望んでも、なかなかこのような予測は立てにくいに違いありません。島国、日本の代表選手は、依然として東京、名古屋、大阪であり、福岡や北九州はその次に位置するものだからです。特に日本国を首都中心に見渡している限りにおいては、高速船が1隻や2隻走ったところで、それが日本全体にどれ程の影響をもたらすと言えるのか、との感慨を禁じ得ないでしょう。

しかし、私は、この新航路を、単に日中間の物流体系、日本国内の物流網を変えるにとどまらず、「英仏トンネル」に匹敵するものと見ています。ご存知の如く、英仏海峡は現在トンネルで結ばれました。このトンネルの開通により、英仏間は人の往来が国内並になりました。それに伴い、経済的にも、文化的にも、政治的にも一体感が増しています。英国の大陸諸国に対する姿勢にも変化を与えています。上海―九州間はこうは行きません。トンネルで結ぶにはまだまだ離れすぎています。けれども、貨物に関しては、日本国内輸送並みの一貫サービス体制が確立したのです。その意義と波及効果は極めて大きいと考えます。

但し、けちをつける訳ではありませんが、「英仏トンネル」との違いは、「上海―大玄海灘エクスプレス」となっていないことです。「上海エクスプレス」は、「英国トンネル」「フランストンネル」と片寄った名前になってしまっていることです。その辺に、どちらかと言えば、依然として大陸側に立った発想の域を出ていない嫌いはあります。貿易、物流は二つの地点を結び相互関係を築くものです。このルートが充実するにつれ、早晩、改名を迫られるに違いありません。

 それは、ともかく、中国の経済発展は否応なしに日本に様々な影響をもたらします。その中でも、中国と九州の経済的、文化的結びつきは、特筆すべきものと考えます。物の流れは、情報の流れや人の流れを惹き起こさずにはいない筈です。日本―中国間の情報の流れに変化が現れるでしょう。また、九州は、今や中国に日帰り出張できる地域なのです。人の往来も加速されるでしょう。

かくして、九州、特に九州北部は、中国の経済発展と同じような速度で経済発展を遂げるに違いありません。いや、朝鮮半島の経済発展も拍車をかけるでしょう。・・・・・・そして、そこに、「グレーター福岡」「グレーター北九州」、更にそのよう地域が合体し、周辺の市町村を巻き込み、人口800万人の一大都市、「大玄海灘市」が出現するのです。

○なぜ、大玄海灘市なのか?

 それは、そうなったとしても、恐らく、「福岡」「北九州」が、新都市名をめぐって相譲らないと予想されるからです。たまたま福岡市出身の愚妻(いや、賢妻)によれば、「合併など絶対にあり得ない!」のだそうです。これは、十分予想されることです。日本全国に普遍的な問題と言えます。ですが、やがては、この問題も、中国経済の圧倒的な影響度が凌ぐことになり、落ち着くところに落ち着くでしょう。

いかがでしょう?
新春の初夢として、醒めてみたら、全ては夢物語に終ってしまうのでしょうか?

私は、未来の「大玄海灘市」の住民が、現代をチャンスと捕らえ、努力すれば、決してこれが夢・幻には終らないと確信します。

『日本の大手企業の3分の一が本社を大玄海灘市に有し、中国語と韓国語は小学校から教えているため住民の半分位が日常生活に困らないレベルに達しており、中国、韓国の大学の分校がいくつもあり、日中合弁のハイテク企業が林立し、東アジアの歴史研究を行う日・中・韓ジョイントの研究機関があり、常に新製品の展示会が行なわれ、東アジアの新しいファッションが生まれ、新しい食文化が生まれ、相撲も太極拳もテコンドーも一流選手が育ち、・・・・・・。』

いかがでしょう?まだ次の言葉が信じられないでしょうか?

「日中ビジネスで一旗上げようとする者は、九州に行け!」

(2004年1月記・3,391字)
心弦社代表 田中則明

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