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日中比較文化論(5)社会風土のこんな違い、あんな違い

中国ビジネスレポート 投資環境
旧ビジネス解説記事

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2007年11月15日

記事概要

 今までは中国人の考え方をなしている三つの大きな要素である、面子、関係、人情についてお話ししてきました。これらの3つの事柄は大きな要素ではありますが、これだけでは完璧ではありません。これは中国も日本も同じだろうと思うようなことが、実は違っていたりすることがまだまだたくさんあるのです。

 今までは中国人の考え方をなしている三つの大きな要素である、面子、関係、人情についてお話ししてきました。これらの3つの事柄は大きな要素ではありますが、これだけでは完璧ではありません。これは中国も日本も同じだろうと思うようなことが、実は違っていたりすることがまだまだたくさんあるのです。

 

過去は「水に流す」日本人、「いつまでも忘れない」中国人

 人から受けた恩に対しては感謝と礼を表すのは日本人も中国人も共通ですが、人から受けた仇に対しては日本人と中国人の考え方は正反対と言っていいほど違っています。

 中国には人をののしる言葉として「忘八」(wang ba)と言う言葉があります。(王八と書くこともあります。)これは八つのモラル(考、悌、忠、信、礼、儀、廉、恥)を忘れた奴、つまり恥知らずであるという意味です。この言葉にタマゴを意味する「蛋」をつけて「忘八蛋」とすれば、人をののしる言葉としては最高の言葉になります。このことを見ても、中国人がいかに忘れることを軽蔑しているかが分かります。

 司馬遷の史記に出てくる晋の文公にまつわる話を読んでも、恩怨には必ず報いるのが人の道であり、それを忘れることは悪徳であるとされる中国人の気質がわかります。

 祖国を捨て全国を放浪していた時代に恩を受けた人には、天下を取った後に手厚くもてなし、自分をあざけったり、ひどい仕打ちをした者に対しては、その恨みを決して忘れることなく刑罰に処したり、領地を没収するなどの処罰を下しています。

 日本人であればどうでしょうか?以前ひどい仕打ちを受けた者であっても、時がたてばもうそれは過去のこととして水に流してしまいます。特に自分が以前より豊かになって幸せな生活ができていればなおさらです。それは日本人の心の中に過去のいやなことは早く忘れて一から新しくやり直そうとする考え方があるからです。

 第二次世界大戦時、日本は広島と長崎に原子爆弾を落とされ、何十万人と言う人が犠牲になりました。世界で唯一の被爆国となった日本ですが、原爆を恨みこそすれ、その原爆を投下したアメリカやアメリカ人を憎み、嫌っているということはありません。

反対に現在の日本は政治面、経済面でもアメリカに依存している傾向があります。最近は日本と中国との関係が大きくなって来たので以前ほどのことはありませんが、一時は「アメリカがくしゃみをすれば日本経済は風邪を引き、アメリカが風邪を引けば日本は重病になる」と言われていたくらいでした。

 過去のことは水に流し、いやなことは早く忘れてしまおうと考える日本人と、忘れることは人の道を外す悪いことであると考える中国人の考え方の違いを理解しておかなければなりません。

そうでなければ、日中戦争の謝罪を何度も要求してくる中国政府に対し、中国人は何と執念深い民族だという悪い印象しか残りません。反対に中国人からしてみれば、日本人は戦争時に中国に多大の損害と迷惑を掛けたにもかかわらず、もうそのことを忘れてしまっている。なんと人の道に外れた民族なのかと、お互い非難しあうだけです。

 お互いに相手の国の文化の違い、考え方の違いをよく理解した上で、これらの問題を解決することが大切だと思います。これからは貴方たちの世代ですのでよろしくお願いします。

 

日本人と中国人、名前の付け方はどう違う?

親が子に名前を付ける時はどこの親でも健康に育つようにとか、利口に育つように、という願いを込めて一生懸命子供のために良い名前を考えます。

日本では名前に親兄弟で同じ一字を使うことがよくあります。たとえば毛利家は「元」、島津家は「久」と言う字が親子で代々受け継がれています。このような名家の武家だけに限らず、一般家庭でもお父さんの一字を子供につけることはよく見られます。

中国も共通の一字を付けることが多いのですが、日本と中国では同じ一字を付ける時でもそのルールが違っているのです。

 

詐欺師がばれた偽中国人

 香港やシンガポールに行ったことのある人は、市内観光で必ず訪れる「タイガーバームガーデン」のオーナーで、万能薬「タイガーバーム」で巨万の富を築いた「胡文虎」、「胡文豹」兄弟の話をきいたことがあると思います。

兄が胡文虎、弟が胡文豹で、共通の「文」と言う文字の下に、兄は虎、弟は豹という勇猛な動物の名を付けています。

昭和の始めに、ある日本人が中国人になりすまし、「私は中国の財閥、胡文虎の子で胡文彪と言う者だが、父が生前収集していた骨董品があるので、これを担保に金を貸してもらいたい」と贋物の骨董品を持って相談に訪れました。相手の貿易商は中国の風俗、

習慣に詳しかったので、名前を聞いた途端、すぐこの男は中国人ではない、当然、胡文虎の子供でもないと見破られ、警察に引き渡されてしまいました。

なぜ彼が偽者であると分かったのでしょうか?それは彼の名前が親と同じ文字を使っていたからです。日本では親の一字をもらって子供につけることは良くあることなのですが、中国では同じ一字を兄弟間で使うことはあっても、親子の間で使うことはありません。例えば私が北京駐在中に北京市旅游局の局長をしていた「薄熙成」のお父さんは中国共産党の重鎮「薄一波」で、父親とは同じ字を使っていませんが、兄弟間ではその当時の大連市長で現在は商務部長(日本の経済産業省大臣に相当)の「薄熙来」とは「熙」という字を共通で使っています。

このような慣習を知らなかった日本人のペテン師は、より本物らしく見せようと親の名前の一字を受け継いでいるかのような、いかにもそれらしい名前を考えたのが逆に命取りになってしまいました。

この詐欺師も私の日中比較文化論の授業を受けていれば、捕まることは無かったでしょうね。

 

日本の縦型社会と中国の横型社会

 日本の会社組織は社長を頂点にして、その下に専務、常務などの取締役、さらに部長、課長、係長、主任、一般社員、と言うようなピラミッド形をしており、指示、命令系統は上下だけではなく営業部と企画部、財務部などの横の関係においても連携が取れることは当然のことになっています。

 ところが中国は会社の中でも各部署が独立した組織として横一線に位置付けられており、他の部門に及ぶ業務は非常に連携が悪いのが特徴です。

 旅行社での例をあげれば、外国の旅行社から手配依頼を受け、料金の見積りや手配の状況、結果を連絡する「対外連絡部」(通称外連部)と、外連部と連動してホテルや                

バス、レストランの予約、及びガイドのアサインなどを担当する「接待部」、旅行費用の清算や請求を担当する「財務部」がありますが、これが同じ会社の中で仕事をしているとは思えないほど横の連絡が悪いのです。

 たとえば30名の団体で出発間際に1名キャンセルが出て29名になった場合でも、

外連部から接待部にちゃんとその連絡ができていなかったりすることがあり、その場合ほぼ間違いなく財務部から30名分の請求書が送られてきます。

「うまく行けば1名分多く儲けられる」と考えてわざとこのような請求書を作るわけではなく、単純に1名取り消しが出たことを知らないだけで、横との連係業務がスムーズにできていないためなのです。

連絡の悪さにまつわる誤請求は日本側への過請求のものだけでなく、過少請求があることから見ても良く分かります。食事の追加手配でスタンダードメニューから名物料理に急に変更を依頼した場合、追加料金が請求されていないことがあるのです。

心優しい私は、このような場合でも「ここの費用がもれていますよ。何月何日付けで追加手配を依頼していますから、外連部に確認してください。」と教えています。

「K旅行社は過請求の時はうるさく言ってくるけど、過少請求の時は一切何の連絡も無い。貴方は本当に優しい人だ。」と言ってくれましたが、これって誉めてくれているのか、くみやすし、と見られているのか疑問の余地があります。ビジネスですので本当はもっとシビアにしないといけないのかも知れませんね。

ただこのようなことも、親方日の丸ならぬ「親方赤旗」の国有企業なら現在でも見られる現象ですが、一般企業、特に私が関係している民営企業に移行した旅行社との間ではほとんど無くなっていることを中国の旅行社の名誉のために申し添えておきます。

 

会社に忠誠を誓う日本人、会社は一つの職場に過ぎない中国人

 北京に駐在している頃、ある日系ホテルの日本人総支配人と話をしていて、サービスの話からスタッフの教育についての話になりました。私は妻と友諠商店で買物をしようとした時の不愉快な出来事(後で日本式サービスと中国式服務というテーマの時に詳しくお話しします。)を溜め息まじりに話しますと、K総支配人は「私共はホテルですからサービス業の何たるかを一から中国人社員に教えています。しかしやっと日本式のサービスができるようになり、その中の優秀な社員をマネージャーに抜擢しようと考えていたら、突然その子が辞めてしまうのです。新しくオープンする隣の外資系ホテルから給料をアップするからうちに来ないかと勧誘があったらしいのです。仕方なくまた社員を採用して教育をし、一人前にしてから、やっとこれから使いものになると思ったとたんにまた辞められる。まるでうちは無料の、いや給料付きの職業訓練所ですよ。」と嘆いておられたことがありました。

 外国のサービスとはどういうものかを教えてもらい、自分に知識がつくとその知識を自分をより高く売りつけるための手段として使い、お世話になったホテルをさっさと辞めてすぐ隣のホテルに行ってしまう中国人に対し、日本人は何と恩知らずな中国人だと思ってしまいます。でも中国人は日本人のように、会社に対して忠誠を誓うとか、義理に縛られるとか、一生この会社で働きたいと考える人はほとんどいません。今働いている会社は条件が良ければ続けて働くし、良くなければ他の条件の良いところに変わる。このような割り切った考え方が中国人社会では一般的であり、会社を変わることは別にたいした問題ではないのです。

 日本人社会ではどうでしょうか?最近は日本の若い人の中にもこのような考えの人たちが増えて来たように思いますが、日本人の中には一生一つの会社に勤めるといった人達がまだまだ大勢います。私達の世代はまだ終身雇用制度というものがあり、どんな人でもいったん会社の人間になると、よほどの失敗をしない限り一生会社が面倒をみてくれる制度になっていました。その制度が崩壊してからは日本も会社を頼ってばかりいられなくなり、昔ほど会社に対する思い入れが少なくなってしました。

 私も会社を替わった転職経験者なのですが、私の場合は30年間勤めたN旅行社から        

業界最大手のJ旅行社に転職しました。仕事の内容も同じ中国旅行に関する業務でしたので、まったく新しい業種に転職することを思えば何も心配することは無いのですが、N社への愛着とか、社会人として育てていただいた義理とかを考えると、本当に悩みました。N社では中国旅行の責任者として、J社に追い着き追い越せ(チョッと無理ですが…)をスローガンに頑張っていた私が、いくら乞われたからと言っても今までの競争相手の会社に行っていいものか、と思いました。義理人情に厚い私ならではの話でしょ。        

でも、結局J社に行ってしまうんだけどね。

 

日本人は自己批判、中国人は自画自賛

 今まで日本の旅行社は中国の旅行社にとって日本人のお客様を中国にお送りする「お客様」の立場でした。今ももちろん日本人の中国観光客は増え続けていますので、引き続き「お客様」ではあるのですが、中国人の海外旅行が開放されて以来、毎年増え続ける日本への中国人観光客により、この立場が微妙に変わりつつあります。

 外国人の受け入れを担当している部門は「国際旅行部」と呼ばれ、お客様は観光客を送っていただける外国の旅行社になります。当然、中国の旅行社もその一つです。

ある時、私の会社の国際旅行部のF部長が広州に営業に来ました。広州の旅行社を回り、自分の所にお客様をお送りいただくようお願いに来たのです。相手はお客様ですので、F部長は「弊社の手配で何かご不満の点がございましたら、どうぞご遠慮なくおっしゃってください。」と言うと、中国の旅行社のT部長は「いえいえ、とんでもありません。こちらがご指導いただいてばかりです。」と言って、それまで私に「見積もりの回答が遅い。」とか、「他社と比べて料金が高い。」とか文句を言っていたことなど、一言も言いません。

F部長は日本人ですから、相手が言うことを鵜呑みにすることは無く、自分に恥をかかさないようお世辞を言ってくれているのだろうくらいに考えています。私が見積もりの回答が遅いことや料金のことを言うようT部長に促し、それを聞いたF部長は一言も聞きもらすまいと言った様子で、メモを取っていました。そして自分達の至らなかったことを反省し、必ず改善させますと約束して、お詫びしたのです。日本の社会ではよく見られるようなケースですね。

 一方、現地旅行社の方はだんだん自社の自慢話になってきました。なるほど、中国人は商売人だな、自分の畑で取れた胡瓜が一番うまい。うまい胡瓜は高く売れる。と思っていると感じさせられるような話でした。「うちの会社は政府機関と深い関係(guan xi)があり、政府の視察旅行や研修旅行は、ほとんどうちが手配しています。また教育旅行関係では教育庁の△△処長とはいい友達なので、彼の方から学校の方に指導してもらい修学旅行もたくさん取り扱っています。」(それにしてはJTBに来る手配依頼が少ないなぁ…。) 延々と自慢話が続き、最後は「御社にはたくさんお客様をお送りしますから、他社より安くしてくださいよ。」とダメをおされました。

 この二人のやり取りを見ても、そんなにへりくだらなくてもいいのに!と言いたくなるほど謙虚な態度を取る日本人に対し、中国人は自分達のよいところを一生懸命売り込もうとします。職人気質の日本人は自分の技術の未熟な点があれば反省をして改良しようとし、商人気質の中国人はいいところを宣伝して高く売ろうとする。お互いのDNAがそうなってしまっているのでしょうね。

 

職人気質の日本人、商人気質の中国人

 先ほど日本人は職人で、中国人は商人だと説明しましたが、この点についてもう少し深く掘り下げて考えて見たいと思います。

 日本では商品を作る時、生産性を上げたり、コストを下げる努力をする以外に、優れた品質のものを提供するために不良品の発生を防いだり、消費者の利便性を考えた商品造りを考えます。どのようなものを開発すればお客様に喜んでいただけるか。つまりどのような商品を作れば買っていただけるか、と言うことを絶えず研究しています。

同じ京都に本社があると言うことで親しくお付き合いをさせていただいていた、女性下着メーカーW社の例をあげますと、ブラの製作にあたっては何百人という女性モニターの体形を計ってそのデーターを分析し、女性にとって一番付け心地のいい形のものを作るのだそうです。またお客様のニーズに応える商品として「寄せて上げるブラ」が作られました。この商品については、あまり詳しく話すとブーイングが来そうなので詳しくは話しませんが、「胸を美しく、そして大きく」見せたいと願っているお客様の要望にお応えする商品として開発され、一躍人気商品のトップに躍り出ました。どのような商品を開発すればいいのかを常に考えていたからだと言えます。

 

えっ?これが不合格ですか?

W社は品質管理についても徹底したチェックが行われており、私が工場を見学させてもらった時に「不合格」と書かれた段ボール箱に入っている廃棄処分品は、ちょっと見ただけではどこが不合格なのかわかりません。案内していただいていたA部長に「これ、どこがダメなんですか?」と聞いてみますと、「そのままでは見分けがつきませんが、こう引っ張って内側から見てみると、ほら、一本横糸が抜けているでしょう。」と言われました。なるほど、かすかに横に線が入ったように見えます。「うちの基準では横糸一本欠けていてもダメなものはダメなんです。」と説明してくれましたが、「さすが世界のW社、すごい!」と感心しました。

「捨てるのだったらもらってもいいですか。」と思わず言いそうになりましたが、さすがにそれは言いませんでした。(エ~ッ!と言う女子学生の非難の声に、マズイ!)

 最初は日本企業の品質管理の厳しさを合弁相手の中国側に理解してもらうのに、ものすごく苦労をしたそうです。合弁先の中国人幹部は「どうしてこれが不良品なんですか?横糸が一本、それも裏側で引っ張ってみないと分からないくらいだから、売っても大丈夫ですよ。中国では横糸3本も5本も抜けているもの売っています。1本抜けているだけなら全然問題ない!」と言って、なかなか廃棄処分にさせなかったのだそうです。W社の商品が他社よりも高い値段であるにもかかわらず、お客様に買っていただけるのは我社の商品を信頼していただいているからであり、その信頼を裏切らないことが大切だと言うことを説明し、理解をしてもらった(と思っていた)そうです。

 

廃棄したはずの商品が売られていた!

 ある日A部長が市内の自由市場に行った時のことです。何とW社マークが入ったブラが売られているではありませんか。W社の製品は中国でも高級商品であり、価格も中国製の4-5倍の価格になっているにもかかわらず、ここでは中国製よりちょっと高いだけです。また販売先も王府井のデパートや友諠商店などの限られたお店にしか卸していないはずなのに、どうしてこんな自由市場で売られているのか不思議でなりませんでした。コピー商品かと思い、手に取って調べてみると間違いなくW社のものでした。

あとで調べてみてわかったことですが、中国人幹部が「ちゃんと売れるのに、処分してしまうのはもったいない」として、日本側には内緒で取引先以外の業者に売っていたというのです。中国人らしい発想ですね。このあとA部長は検査制度を見直し、検査後、不合格と判断された場合はすぐその場で裁断するように変更しました。それ以降、不合格品が商品として出回ることはなくなったそうです。

 日本人が職人気質であるというのは、このようにたえずお客様のニーズを取り入れ、技術を磨がき、すばらしい品質の商品を作ろうとすることからもわかりますし、中国人が商人気質であるということは、品質は二の次で、売れるものはどんどん売ろうとしたことをみてもわかります。これは中国人が品質管理を重要なポイントとして考えず、一級品でなくてもそれに近い商品でうんと安いコストで生産することの方が儲かるし、大切であると考えるからです。私も中国生活が長いせいか、横糸一本くらいいいじゃないの、と考えてしまいますが、やはり考え方も中国ナイズされてきているのでしょうか?(2,007年11月記 7,691字)

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