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中国国内機関の対外担保に関する法律問題の簡潔な分析

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2012年9月4日

記事概要

緩和の兆しは見え始めたものの、中国では依然として厳しい外貨規制を実施している。国内機関の対外担保においては、そのほうで定められた前提条件、事後管理などがこの点を裏付けている。筆者は関係する新法律と併せ、参考まで国内機関の対外担保の基本的な意味、前提条件、事後管理などの内容に重点を置いて紹介する。【4,647字】

 国内機関の対外担保は、国際経済金融合作に参与するためのある種の重要な手段として、経済のグローバル化の風潮と中国の企業の「海外進出」の奨励、国際資源を積極的に利用した発展戦略に順応し、中国経済の発展と対外開放の合作において、益々顕著な役目を発揮している。ここで、筆者は、「国内機関の対外担保管理に関する国家外貨管理局による通知」(匯発[2010]39号。2010年7月30日から施行)および「国内銀行の2011年度融資性対外担保残高指数を査定することについての通知」(匯発[2011]30号。2011年7月27日から施行)に基づき、「国内機関対外担保管理弁法」(1996年10月1日から施行)、「国内機関対外担保管理弁法実施細則」(1998年1月1日から施行)などの関係法律の規定および筆者の実務経験と併せ、国内機関の対外担保に関する法的問題について、以下の通り簡潔に紹介し、分析する。

国内機関の対外担保の基本的な意味

 国内機関の対外担保とは、担保提供者が法に依拠して、保証、抵当権設定または質権設定などの形式をもって、受益者に対して、債務者が受益者との基本取引契約に基づく義務を履行しなかった場合に、担保提供者が受益者に法に依拠して弁済義務を履行し、または受益者が法に依拠して担保財産を金銭に換算して競売し、売却し且つこの金銭換算価格について優先して弁済を受けられる旨承諾することをいう。

 国内機関の対外担保は、融資性対外担保と非融資性対外担保に分けられる。その内、具体的には以下の通りである。

● 融資性対外担保とは、担保に基づく基本取引契約が融資性質をもつ対外担保をいい、借入、債券発行、ファイナンスリースなどのために提供する対外担保、および国家外貨管理局が認定するその他形式での対外担保を含むがこれらに限定されない。
● 非融資性対外担保とは、融資性対外担保以外のその他形式の対外担保をいい、品質担保、プロジェクト竣工責任担保、入札募集・入札担保、前払金担保、延払い担保、貨物売買契約に基づく約束履行責任担保および国家外貨管理局が認定するその他形式での対外担保を含むがこれらに限定されない。


国内機関の対外担保の前提条件

 中国の法律の規定によると、国内機関の対外担保が担保提供者の偶発債務を構成し、外債管理に組み入れる必要がある。現在、中国の外債に対する管理は全体的にみても厳しく、国内機関の対外担保も相応に厳しい前提条件が設定されている。これらの前提条件を満たさない場合、国内機関の対外担保は、本件行政主管部門の外貨管理部門の認可を得ることは難しく、ひいては無効と認定されることになる。

 前述の前提条件について、筆者の理解では、主に「主体資格の要求」および「限度枠の管理」という2つの方面で体現されている。

A.   主体資格の要求(主体のパターンと資格の要求)

 中国の関係法律の規定によると、関係している法的主体の分類に基づき、国内機関の対外担保は主に以下の3通りの取扱パターンがある。

担保提供者 債務者 受益者
パターン一 国内機関 国内機関 国外機関
パターン二 国内機関 国外機関 国外機関
パターン三 国内機関 国外機関 国内機関

 注意すべき点として、上記の3通りのパターンはあっても、法的主体の法的性質などが異なれば、それぞれのパターンに基づく関係する法的主体の資格条件もやはり多かれ少なかれ制限があり、簡潔に下表に整理する。

担保提供者 債務者 国内銀行 国内非銀行
金融機関
非金融機関
法人
● 融資性対外担保を提供する場合、債務者は国内機関でも、国外機関でもよく、債務者は、担保提供者との持分関係、純資産比率および利益獲得状況などの制限を受けないが、中国の担保などに関する法律および業種監督管理  部門の関係する管理規定に適合していなければならい。
● 非融資性対外担保を提供する場合、債務者または受益者の少なくとも一方は国内で法に依拠して登録成立した法人であるか、または少なくとも一方は担保提供者が法律の規定に基づき国外で設立し、持分を保有し若しくは間接的に持分を保有する機関でなければならない。
●  債務者は、中国国内で法に依拠して登録成立した法人または担保提供者が法律の規定に基づき中国国外に設立し、持分を保有し若しくは間接的に持分を保有する機関でなければならない。
● 債務者の純資産額がプラスでなければならない。
● 通常、債務者が直近三年間において少なくとも一年は利益を獲得していなければならない。
●  債務者は、担保提供者が法律の規定に基づき中国国内または国外に設立し、持分を保有しまたは間接的に持分を保有する企業でなければならない。
● 債務者の純資産額がプラスでなければならない。
● 通常、債務者が直近三年間において少なくとも一年は利益を獲得していなければならない。

   また、「国内機関対外担保管理弁法」などの従来の法律の規定とは異なり、「国内機関の対外担保管理に関する国家外貨管理局による通知」では、国内機関が対外担保を提供する場合、債務者が国内または国外に設立した合弁企業であるとき、同社の提供する対外担保は国内、海外機関の持分投資比率の制限を受けないと特別に規定している。

B.    限度枠の管理

担保提供者ごとの異なる担保提供能力および担保のニーズから、中国法律では、異なる担保提供者による対外担保について異なる管理パターンを実施している。現在、中国法律では、国内機関による対外担保に対しては、主に「残高管理」と「逐一認可」という2通りの管理パターンを実施しており、具体的には以下の通りである。

残高管理 逐一認可 国内銀行が融資性対外担保を提供する 国内非銀行金融機関が対外担保を提供する 非金融機関法人が対外担保を提供する
○ 
  ○
  ○

しかしながら、特例として、外貨管理部門は以下の国内機関の対外担保に対して特別な管理方式を実施している。

1   国内銀行が非融資性対外担保を提供する場合、「残高管理」と「逐一認可」は実施せず、国内銀行は任意の金額範囲内で対外担保を提供することができるが、業種監督管理部門の斯かるリスク管理規定に適合しなければならない。
2   対外担保業務の発生数が多く、内部管理が規範化された非銀行金融機関および非金融機関法人(外商独資企業を含む)は、「逐一認可」手続を行わずに、外貨管理部門に残高指数を申請し、「残高管理」を実施することもできる。
3   担保提供者が自己の適法な対外債務またはその他対外支払い義務のために対外的に抵当権設定、質権設定などする場合、対外担保に関する資格条件の制限を受けず、「残高管理」および「逐一認可」を実施しない。
4   国外機関が国外で債券を発行し、国内銀行、非銀行金融機関または非金融機関法人に対外担保提供させる場合、担保提供者は、所在地の外貨管理部門を通じて国家外貨管理局の逐一認可を受けなければならない。

国内機関の対外担保の事後管理

 外債管理および外債統計などの目的から、中国法律は、国内機関の対外担保が一定の前提条件を満たすよう求めているほか、国内機関の対外担保の全過程での管理ができるよう、担保提供者に対しても対外担保を設定した後、一定の政府登記、届出などの手続を履行するよう求めている。

 前述の政府登記、届出などの手続きは、主に「対外担保調印登記」と「対外担保約束履行認可」の2つの手続きである。

A.    対外担保調印登記

「対外担保調印登記」も外貨管理部門による国内機関の対外担保の重要な管理措置の一つである。「外債管理暫定弁法」(2003年3月1日から施行)第22条の規定によると、「国内機関が対外的に借入契約または担保契約を締結した後、関係規定に依拠して外貨管理部門にて登記手続きを行わなければならない。国際商業貸付借入契約または担保契約は必ず登記を行った後で効力を有する。」とされている。

 中国の関係法律の規定によると、「対外担保調印登記」の手続きを行う基本原則は以下の通りである。

担保提供者 基本原則 国内銀行 国内非銀行
金融機関
国内非金融
機関法人
●  本店または指標について集中管理を実施する主報告銀行が本店の全部の対外担保状況を遅滞なく集計し、毎月初の5業務日内に所在地外貨管理部門にて定期的に届出手続を行う。
● 銀行国内分支機関の名義で提供する対外担保は、当該分支機関も上記の要求に基づき、所在地の外貨管理部門に斯かるデータを提出しなければならない。
●   担保契約の締結後15日以内に、所在地の外貨管理部門にて対外担保逐一登記手続きを行う。
● 残高管理を実施する対外担保について、所在地の外貨管理部門は、関係法律規定に基づき、担保提供者自身以外のその他資格条件について審査を行い、且つ対外担保登記証明書類を発行する。
● 国内の保険会社が対外担保を提供する場合、「対外担保調印登記」手続きは、以上の国内銀行と同等の手続に準じて行う。
●  担保契約の締結後15日以内に、所在地の外貨管理部門にて対外担保逐一登記手続きを行う。
● 残高管理を実施する対外担保について、所在地の外貨管理部門は、関係法律規定に基づき、担保提供者自身以外のその他資格条件について審査を行い、且つ対外担保登記証明書類を発行する。

 B.    対外担保約束履行認可

 対外担保に約束履行が生じた場合、担保提供者の実際の外債を構成する。この点について、通常、外貨管理部門は、法に依拠して「対外担保約束履行認可」手続を行うよう求める。基本原則は以下の通りである。

担保提供者 基本原則 国内銀行 国内非銀行
金融機関
国内非金融
機関法人
●   定期的に届出手続を行わなければならず、届出主体、手続時間などについては、「対外担保調印登記」手続きを参照する。
● 対外担保約束履行における対外支払いを自ら行い、「対外担保約束履行認可」手続を行う必要はない。
● 対外担保約束履行資金の由来は、自分が提供した外貨での立替金、裏保証の提供者が外貨または人民元で差入れた保証金、または債務違約が発生した後、裏保証の提供者が支払った金銭である。
●   所在地の外貨管理部門にて逐一約束履行認可を申請する。
● 対外担保約束履行認可手続を行った場合、外貨を購入することができる。
● 国内の保険会社が対外担保約束履行を行う場合、その約束履行手続は、国内銀行と同等の手続に準じて行う。
●   所在地の外貨管理部門にて逐一約束履行認可を申請する。
● 対外担保約束履行認可手続を行った場合、外貨を購入することができる。

  上述の簡潔な分析を踏まえ、中国が「海外進出」戦略を実践しつつあるに伴い、中国の国内機関対外担保に対する管理要求がある程度緩和されたが、現在の関連法律の要求は依然として厳格である。国内機関対外担保業務には一定の専業性があり、しかも外貨管理政策は、国のマクロ政策の影響を受けやすいことから、企業が斯かる必要がある場合、正常な業務推進に支障をきたさないよう、事前に外貨管理部門または法律専門家と連絡し、相談を行い、関連する法律を具体的に理解し、事前に準備を行ったほうがよいと思われる。

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