全国を先導する商業ファクタリング業務試験地点の一つとして、上海市浦東新区人民政府は2012年12月中旬に「上海市浦東新区商業ファクタリング企業設立試行弁法」（以下、「試行弁法」という）を公布した。続いて8社を初回の試験運営に参加する商業ファクタリング企業として正式に認可し、浦東新区の商業ファクタリング試験運営が正式に始動した。

実際には、2009年に上海市浦東新区は個別案件として認める形で上海市における一番目の外資ファクタリング企業を試験的に認可している。当該企業の試験運営を基礎として、商務部が2012年6月に「商業ファクタリング試験地点の関連作業に関する通知」を公布し、上海市浦東新区および天津市浜海新区にて先駆けとなる商業ファクタリング試験の実施に回答同意したことにより、商業ファクタリング企業の「従うべきルールがない」状態が終結した。

「試行弁法」では商業ファクタリング企業の試験運営作業のメカニズムを確立し、内外資商業ファクタリング企業の参入条件を統一して、上海市浦東新区にて設立する商業ファクタリング企業が法に従って商業ファクタリング業務を展開するための制度的保障を与えることとなった。「試行弁法」などの規定によれば以下のとおりである。
1.   「商業ファクタリング業務」とは売り方が買い方と締結した物品売買あるいは役務契約において発生した売掛債権を商業ファクタリング企業へ譲渡し、商業ファクタリング企業が買い方に取引融資、販売元帳管理、顧客の与信調査と評価、売掛金の管理と督促、信用リスク保証などのトータルの商業取引サービスを提供することを指す。
2.   商業ファクタリング企業は預金の受け入れ、貸付あるいは貸付の受託、投資の受託を行ってはならず、商業ファクタリングと無関係の督促業務、取立業務に従事するあるいはこれらを請け負ってはならない。
3.   商業ファクタリング企業は全国各地の企業に対し商業ファクタリング業務を実施することができる。
商業ファクタリング業務は企業の信用販売に関する重要な手段および取引融資の重要な方法として、企業の資金繰り、豊富な資金調達に有効な助けとなり、企業の効果的な信用リスクの抑制および国際、国内取引の促進に有利となる。これまで、商業ファクタリング業務は主として商業銀行が行っていたが、往々にして商業銀行の企業に対する与信および業務実施条件は高く、多くの企業（特に中小企業）は関連条件を満たすことができずに門前払いとなり、大量の売掛金を保有しているが融資を受けられないという行き詰った状況にあった。商業ファクタリング企業は専ら商業ファクタリング業務に従事するため、受け入れ姿勢も低く、企業の需要受け入れに励んでいると思われるため、企業各社へ商業ファクタリング業務を速やかに推進するに多くの可能性を秘めていると考えられる。

把握する限りでは、既に許可済みであり初回の試験運営に参加する商業ファクタリング企業8社以外にも、更に10社が浦東新区の関連主管部門と投資意向書を締結している。また、初回の試験運営に参加する商業ファクタリング企業の業務モデルをみると、主にメーカーへのリース・ファクタリング（既存の設備のファイナンスリースの基礎の上、サプライチェーンまで拡大して、ファクタリングサービスを提供することを指す）、供給小売業者へのファクタリング（供給業者、小売業者および零細企業に対し、商品供給販売過程におけるファクタリングサービスを提供することを指す）、貿易ファクタリング（既存の貿易産業チェーンにファクタリング融資業務を追加することを指す）、商業サービスファクタリング（電子商取引などのプラットフォームを通じて商業ファクタリングサービスを提供することを指す）などの4つの分野に集中している。政府の大いなる支援の下、商業ファクタリング企業は絶え間なく成長し、商業ファクタリング業務を通じて企業へより多くの選択肢を提供するものと思われる。

（里兆法律事務所が2013年1月11日付で作成）