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集団的労働事件の予防と対応

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2014年7月9日

現在、中国における労働関係の個別的労働関係から集団的労働関係への移行および労働者の権益意識と行動意識の向上に伴い、中国での集団的労働事件(即ち、従業員がその利益要求の表現として、集団で作業を停止しまたは集団で企業管理へ対抗するなど)の発生が絶えず上昇している傾向にある。

弁護士がこの種の事件を処理した経験によれば、現在、集団的労働事件を引き起こす主な要因は以下の2種類である。

1.労働関係内容の変更にかかわるもの:企業が重大な経営事件(例えば、企業清算、操業停止、部門の整理統合、買収再編、移転など)に起因して、従業員の業務内容、職位などを調整する或いは労働契約の大規模な解除、終了を行う。
2.具体的な労働待遇にかかわるもの:企業と従業員の間に賃金、福利待遇、勤務時間、休暇などの関連労働待遇事項についての集団的紛争が発生する。

集団的労働事件は一般的に、突発的に発生するが、その発生要因は、通常、企業の日常の生産経営過程において既に存在している。集団的労働事件の発生確率を最大限に引き下げ、発生時の影響の程度を抑えるため、企業は「早期予防」、「中間評価」および「後期対応」の総合的な対応措置を講じることが考えられる。

一、集団的労働事件が未だ発生していない時点での「早期予防」措置

1.合理的、有効な労働管理制度を構築、整備する。即ち、関連労働管理制度の内容に適法性、合理性、明確性を持たせ、各種労働管理制度を体系的に形成し、従業員から、自身が企業において享受する権利、および履行しなければならない義務についての理解、賛同を最大限に得る。企業は弁護士などの外部機構の協力を得て前述の労働管理制度の整理、統合作業を行うことも考えられる。

2.労働組合などの従業員組織と効果的な意思疎通を維持する。即ち、企業は労働組合、従業員代表大会などの従業員組織と密接な意思疎通の保持に留意し、遅滞なく従業員組織の意見、提案および要求を聴取した上、その中の合理的な部分を企業が今後行っていく労働規則の制定および企業管理における参考根拠の一つとする。不合理な部分については、積極的な姿勢で返答し、適切に処理することで、矛盾の累積を回避する。

3.従業員との意思疎通、交流を行い、早期に対応する。即ち、企業は従業員の各種形式での集団的活動を実施し(例えば、忘年会、懇談会、弁護士との面談説明会など)、従業員と対面して交流することで、初期の時点で従業員の考え方および要求を把握した上、具体的な状況に応じて問題解決、矛盾解決の措置を講じ、今後集団的労働事件に発展するおそれのある要素を早期の段階で適時に解決、処理することが考えられる。

二、集団的労働事件発生のおそれがある時点での「中間評価」措置

1.企業の行為の適法性を確認する。即ち、集団的労働事件を引き起こす可能性のある経営管理行為(特に企業清算、操業停止、部門整理統合、買収再編、移転などの重大な経営行為を講じる際)について、企業は事前にその適法性を確認しなければならず、これにより、集団的労働事件が発生した場合に、企業が自社は適法な経営管理行為を行っているとの立場を堅持し、従業員が提起した関連要求に対応できるようにする。

2.対応計画を策定する。即ち、企業は集団的労働事件を引き起こすおそれのある経営管理行為について決定を下す際、特に集団的労働事件の発生の可能性について十分な事前判断を行った上、これに基づき、法に従って相応する集団的労働事件の対応計画を策定し、事前に信頼のおける人員を指定して分業連携を進め、従業員に対し企業経営管理行為の合法性について説明し、出現するであろう予定外の状況に対応しなければならない。

3.関連政府部門に理解および支持を求める。即ち、企業が集団的労働事件の発生を予見した時点で、事前に関連政府部門(例えば、企業所在地の労働行政部門、公安部門、上級労働組合部門など)に企業の従業員に関する状況および発生するであろう集団的労働事件に対する企業の評価状況を連絡することで、関連政府部門を早期に介入させ、その理解と支持を得られるよう努めることが考えられる。

4.法律専門家を招聘して評価に参加させる。即ち、弁護士などの法律専門家を招聘して関連協議、決定に参加させ、企業への関連法的分析、リスク評価の提供を求め、具体的な実施方案などの制定に協力させることで、集団的労働事件発生の可能性を引き下げ、万一にも集団的労働事件が発生した場合には法に従って対応できるようにする。

三、集団的労働事件が現在発生している場合の「後期対応」措置

1.関連政府部門の介入と協力を求める。即ち、集団的労働事件が発生した時点で、企業は調整を通じて、関連政府部門がその権威と社会的信頼性を利用して、従業員との話し合い、調整に介入し企業に協力するよう努めることが考えられる。

2.メディアとの効果的な意思疎通を維持する。即ち、関連メディアが企業に発生した集団的労働事件に注目した際に、企業は関連メディアと効果的な意思疎通を行い、企業の関連経営管理行為の適法性を説明し、企業に不利なメディア誘導が行われることを最大限に回避することが考えられる。

3.法律専門家を招聘して対応に参与させる。即ち、弁護士などの法律専門家を招聘して集団的労働事件の処理に当たらせ、企業に協力して従業員、関連政府部門との交渉、話し合いを行わせ、企業に協力して具体的な対応措置、方案などを確定させることで、企業が従業員と正面から衝突するリスクを低減し、集団的労働事件が始終適法、遅滞なく解決することを保証する。

以上をまとめると、集団的労働事件は広い範囲にかかわり、社会への影響が大きいため、一度発生すれば、企業に深刻な損失を生じさせるものと思われる。このため、企業および労働組合組織は日常の労務管理において従業員からの問題のフィードバックに対し積極的な解決および処理を行い、弁護士などの法律専門家との意思疎通を保つことで、集団的労働事件を有効に回避し、解決することが望ましい。

(里兆法律事務所が2014年5月12日付で作成)

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