近年、労災関連制度の運用拡大及びそれに対する社会的理解の広がりに伴って、労災をめぐる紛争も増える傾向にある。労災に関する紛争では、労災認定において、行政や司法の判断基準が統一されていない点が多いことから、社会保険行政部門を巻き込んだ行政訴訟にまで発展することが多く見受けられる。

労災保険に関する行政紛争を適切に処理し、判断基準の統一化、規範化を図るために、最高人民法院（最高裁判所）は2014年6月18日に、「労災保険行政事件の審理に係る若干の問題に関する規定」（法釈[2014]9号、同年9月1日施行。以下、「若干規定」という）を公布した。「若干規定」は10条からなっており、主に（1）特殊なケースにおける労災保険責任を負担する事業者の確定、（2）労災発生の原因、時間、場所に関する認定要件の明確化、（3）第三者責任による労災における処理方法の明確化、といった3つの部分に分かれる。その詳細を以下のように紹介したい。

（1）特殊なケースにおける労災保険責任を負担する事業者の確定