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新法令「欠陥消費財リコール管理弁法」を読み解く

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2016年5月12日

欠陥消費財リコール管理弁法」が公布されるまでは、中国では主に薬品、子供向け玩具及び欠陥自動車などの製品を対象としてリコール管理が実施されていたが、他の消費財に対しては主に「消費者権益保護法」、「製品品質法」などの規定に基づき対処され、リコール管理に関する個別規定はなかった。欠陥製品のリコール件数が大幅に増えている現状に対処すべく、薬品、子供向け玩具及び欠陥自動車などのリコール経験を参考にして、中国において一般消費財欠陥リコール管理規定が制定され、一般消費財の品質管理を強化し、リコール手続きを規範化した。

2016年1月1日から、「欠陥消費財リコール管理弁法」(以下「弁法」という)の実施が開始されたが、筆者は法律規定及び実務経験を踏まえて、以下の通り、簡潔に分析する。

項目  

主な内容

筆者コメント

適用法律 現在、「弁法」のほか、公布・実施済みのリコール規定には、以下の法規及び関連規定(以下「リコール法規」と総称する)もある。
1) 「薬品リコール管理弁法」
2) 「子供向け玩具リコール管理規定」
3) 「食品リコール管理規定」
4) 「医療器械リコール管理弁法(試行)」
5) 「欠陥自動車製品リコール管理条例」及び実施弁法など
現在、「欠陥自動車製品リコール管理条例」が行政法規に該当することを除いては、他のリコール規定はいずれも部門規則である。「弁法」と「リコール法規」には適用の優先順序はなく、製品の種類に応じて適用される。
製品の範囲
  • 消費財:消費者が生活において消費するために購入し、使用する必要のある製品。
  • 適用される製品の範囲:現在、「弁法」では、適用される製品の範囲については、目録管理を実施しており、主に目録内の電子電器及び子供用品に適用される(主に家庭用電器、オーディオ・ビジュアル設備などの9品郡の電子電器、及び子供向け文房具、子供向け衣料品などの11品群の子供用品が含まれ、輸入消費財も同様に対象になっている)。
  • 適用されない製品の範囲:たばこ及びたばこ製品、原動機付き車両製品、民間航空機、民間船舶、食品、薬品、化粧品、医療器械製品、農薬製品など。
  • 前述の「リコール法規」で個別に規定されている製品、例えば、子供向け玩具などは依然として前述の規定に従い、実施しなければならない。子供用品は「弁法」に従い、実施しなければならない。
  • 目録に組み入れられていない他の消費財をリコールする必要がある場合、弁法を参照して実施することができる。
リコール主体 リコール主体は製造者であり、主に以下の3種類である。
1) 消費財を製造し、且つ自社名義で製品合格証明を発行する企業
2) 中国国外から消費財を輸入し、中国国内で販売する企業
3) 国外の製造企業によって、中国国内に設立され、権利を付与された機構
  • 従来の他のリコール規定と異なり、「弁法」では製造者がリコール義務を負う主体であることを明確にするとともに、部品の供給業者、製造受託企業を「事業者」に組み入れることを明確にし、国外の製造企業によって、中国国内に設立され権利を付与された機構も「製造者」として新たに追加している。
  • 「製造受託企業」が「事業者」に組み入れられた場合、実践で通常行われているOEMでは、加工委託企業がここでいう「製造者」に該当することになる。
  • 販売者、賃貸者、修理者、部品供給業者、製造受託企業などの事業者は、欠陥報告、調査協力及びリコール実施義務のみを負うことになる。
  • 製造者を特定できず又は製造者が登記抹消済みなどの原因により、「弁法」に従いリコールを実施できない場合、省クラス以上の品質検査部門が社会に向けて消費者注意喚起情報を公表する。
リコール事由 欠陥が存在し、同時に以下の条件を満たす。
1) 設計、製造、警告表示などの原因で発生したもの。
2) 同一のロット、型番又は類別の消費財において普遍的に存在するもの。
3) 国家基準、業界基準における身体、財産の安全保障要求に合致しない場合又は身体、財産の安全を脅かすその他の不合理な危険性
  • 左表における第3)号は、「製品品質法」における「欠陥」の定義である。「弁法」では、発生原因及び普遍的に存在することという2つの要件を追加しており、「欠陥自動車製品リコール管理条例」などの規定における定義と類似しているが、認定基準がさらに明確にされている。
リコール手続 通常、リコール方式には、自主的リコールと命令によるリコールの2つがあり、自主的リコールでは、主に以下の6つの手続きを踏むことになる。
1) 製造者又は品質検査部門による独自発見、第三者による通報、抽出検査などを通じて、消費財に欠陥が存在する可能性があることを発見する。
2) 製造者が自主的に又は品質検査部門からの通知により調査・分析を行う。
3) 製造者がリコール計画を制定する。
4) 製造者がリコールを実施する。
5) 製造者がリコール対象消費財を処理する。
6) 製造者がリコール報告書を提出する。
命令によるリコールは自主的リコールと比べて、通常、やや多くの手続きを踏むことになり、命令によるリコールでは、製造者による調査分析では製品に欠陥が存在しないと判断されたとしても、欠陥がないことを証明できないときは通常、前述の手続き3)の前に以下の3つの手続きを踏む必要がある。それらを除いては、他の手続きは自主的リコールと同じである。
1) 省クラス品質検査部門又は品質検査総局が欠陥調査を行う。
2) 製造者が欠陥調査の結果に対して、異議を申し立てる。
3) 製造者が所定の期限内に異議を申し立てなかった又は品質検査部門が異議申し立て事由は成り立たないと判断した場合、リコールの実施を製造者に命じる。
  • 「弁法」規定のリコール手続きは主に「欠陥自動車製品リコール管理条例」における欠陥自動車のリコール手続きを参考にしたものであるが、主な政府所轄部門は製造者所在地の省クラスの品質監督部門であり、消費財に深刻な影響をもたらす欠陥が存在する可能性がある場合又は広範囲にわたって影響をもたらす可能性がある場合、品質検査総局が直接調査できることが明確にされている。
リコール措置
  • 製造者は定期刊行物、ウエブサイト、ラジオ、テレビなど周知がされやすい方法で情報を公表し、消費財に存在する欠陥、損害発生防止のための緊急措置、製造者による欠陥除去措置などについて、消費者に告知しなければならない。
  • 製造者はホットライン、インターネットの場などで一般大衆からの相談に対応しなければならない。
  • 「弁法」では、情報開示のための手段が明示されており、また、ホットライン、インターネットの場などで一般大衆からの相談に対応するよう要求しており、他のリコール規定よりも、製造者のリコール主体としての情報開示における重要な役割が強調されている。
法に依拠しリコールを実施しなかった場合の処罰
  • 「弁法」では具体的処罰内容は直接規定されておらず、製造者が「弁法」規定に違反した場合、製品品質監督部門が「製品品質法」、「消費者権益保護法」、「輸出入商品検査法」、「食品などの製品安全監督管理強化に関する国務院による特別規定」などの法律法規により処理する旨が定められているだけである。
  • 前述の法規によれば、製造者は以下の処罰(単科又は併科)を受ける可能性がある。
    1) 警告
    2) 過料
    3) 違法所得の没収
    4) 営業停止・整頓命令、営業許可証の取り上げ
    5) ライセンスの取り上げなど
  • 他のリコール規定とは異なり、「弁法」では、製造者が法に依拠しリコールをしなかった場合の処罰、法的責任を個別には定めておらず、他の法規を引用する形で定めている。
リコール費用及びその他責任
  • 「弁法」では、製造者が欠陥除去費用(表示の修正・補充、修理、交換、返品などの措置により生じる費用を含む)を負う旨が明確にされている。
  • 製造者はリコールを実施した後、法に依拠し負わなければならないその他責任、例えば、「消費者権益保護法」、「製品品質法」などの規定により負わなければならない民事責任、行政責任などは免除されない。
  • 製造者は欠陥除去費用を負担した後、販売者、賃貸者、修理者、部品供給業者、製造受託企業などの事業者との間で締結した契約約定に基づき、過失者の責任を追及することができる。

「弁法」は目録管理により、消費者が広く関心を寄せている家庭用電器、子供向け衣料品などをリコール管理制度内に組み入れ、消費財リコールの一般制度を構築しており、消費財製造企業がこれまでに以上に明確な且つ厳格なリコール義務を負うことを意味するため、事件が発生した時に素早く、充分な対応できるよう、欠陥情報収集分析処理制度を構築し、製品リコール対応策を制定しておくことが望ましい。同時に「弁法」の実施に伴い、実施意見又は弁法が出され、目録管理対象製品の範囲が更に広げられる可能性があるため、引き続き動向に着目する必要がある。

(里兆法律事務所が2016年2月16日付けで作成)

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