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ログイン2016年8月12日
2016年1月29日、中国科学技術部、財政部、国家税務総局は、改正後の「ハイテク企業認定管理弁法」を共同で公布した。新弁法は旧「ハイテク企業認定管理弁法」(以下、「旧弁法」という)と比べて、企業の認定条件、認定手順、監督管理の面でいずれも若干の調整がなされている。本稿では改正に至った経緯、改正ポイント及び企業への影響などの方面から新弁法について考察する。
一、改正に至った経緯
2008年に実施されて以来、経済情勢が変化するにつれ、旧弁法では技術分野の範囲に関する規定が追いつかず、一部新興産業、とりわけ現代サービス業の技術分野の内容が十分には体現されておらず、中小企業に対する支援が足りず、認定手順と事後の監督管理の規定を更に整備すべきであるなどといった問題が顕在化していた。このため、産業構造の調整を促し、経済成長の持続的な原動力を増強することを目的として、今年の1月13日に国務院常務会議において今般の改正が決定された。
二、改正ポイント
旧弁法と比べ、新弁法におけるハイテク企業資格(以下、「資格」という)の認定条件、申請書類及び監督管理などの方面で以下の変化がある。
1. 認定条件の変化
番号 | 変化 | 内容 |
(1) | 知的財産権の取得期間の制限が削除された | 新弁法では、旧弁法における「直近3年以内」に得た知的財産権であること、という取得期間の制限が削除された。 |
(2) | 専用実施権による取得方式が廃止された | 新弁法では、「5年以上の専用実施権」による知的財産権の取得方式が廃止された。 |
(3) | 科学技術職者の割合に関する基準が引き下げられた | 新弁法では、科学技術職者の割合が10%以上でなければならないとしたうえで、企業研究開発のアウトソーシング、一般向けのクラウドソーシングなどの研究開発方式に適応するために、学歴制限を撤廃している。 |
(4) | 中小企業における研究開発費用の比率が引き下げられた | 大企業・中規模企業における研究開発費用の比率は従来通りそれぞれ3%と4%に据え置くが、売上が5000万元未満の企業の研究開発費用の比率を従来の6%から現在の5%に引き下げている。 |
(5) | イノベーション分野の定義が調整された | 新弁法では、イノベーション分野の定義が旧弁法の「製品(役務)」から、「主要製品(役務)に対して、基幹的な支援効果をもたらす技術」に調整され、コア技術(製品そのものではない)を認定の重点対象としている。また同時に、付属文書「国が重点的に支援するハイテク分野」も、これに伴い調整がなされている。 |
(6) | コンプライアンス要求が新たに追加された | 企業に対し、直近1年における安全上、品質上の問題及び環境方面での法令順守の要求が新たに要求されている。 |
2. 申請書類の変化
番号 | 変化 | 内容 |
(1) | 「三証合一(3つの証書の登記一本化制度)」に合わせた変更 | 新弁法では、旧弁法における「営業許可証の副本、税務登記証」の要求が取り消された。 |
(2) | 従業員及び技術職者に関する情況説明が簡素化された | 新弁法の「状況説明」は、旧弁法の「企業従業員数、学歴構成及び企業従業員に占める研究開発者の割合に関する説明」を代替するものである。学歴構成についての説明が必要であるかどうかについては、今後、制定される「ハイテク企業認定管理作業の手引き」において更に明確にされる必要があるが、「ハイテク企業認定管理作業の手引き」(意見募集案)の内容を見る限りでは、状況説明では企業における科学技術職者の割合を説明する必要はあるものの、学歴構成に関する説明は要求されていない。 |
(3) | 公示期間が短縮された | 新弁法における審査認定後の公示期間は、従来の15営業日から10営業日に短縮された。 |
(4) | 技術革新証明資料が新たに追加された | 新弁法では「企業ハイテク製品(役務)のコア技術及び技術指標」の関係資料が新たに追加された。 |
(5) | 監査/鑑定報告書が新たに追加された | 新弁法改正後、直近1会計年度のハイテク製品(役務)収益に関する監査又は鑑定報告書の提出が求められる。 |
(6) | 年度納税申告表が新たに追加された | 新弁法改正後、直近3会計年度の企業所得税年度納税申告表の提出が求められる。 |
3. 監督管理手順の変化
番号 | 変化 | 内容 |
(1) | 再審査が廃止された | 新弁法では、旧弁法で規定されていた資格の有効期間満了後の「再審査」手順が廃止された。つまり、新弁法実施後、資格の有効期間が満了した後、企業は改めて申請を行わなければならない。 |
(2) | 全体移転の場合、資格は有効に存続することが明確にされた | 新弁法ではハイテク企業資格の有効期間内に、企業が認定機関の管理区域外へ全体移転した場合、その資格は有効に存続することが明確にされている。但し、認定機関の管理区域外へ部分的に移転する場合には改めて認定を受けなければならない。 |
(3) | 重大な変化が生じた場合の報告期限が延長された | 新弁法では、重大な変化が生じた場合の報告期限が従来の15日から3ヶ月に延長された。 |
(4) | 日常の監督管理が新たに追加された | 監督管理部門は、日常の管理過程において、認定条件が満たされていないことを発見した場合、認定機関に再審査を要請しなければならない。 |
(5) | 資格取消事由が調整された | 新弁法は、資格取消事由について深刻さの度合いの要求を新たに追加した。「脱税、税金還付の詐取などの行為」は資格取消事由から外された。「認定条件に係る重大な変更事項を期日通りに報告せず、又は連続して2年間、年度発展情況表を提出しないケース」は、資格取消事由に新たに追加された。 |
(6) | 罰則の変更 | 資格が取り消された企業に対する処罰は、従来の「当該企業の認定申請を5年間受理しない」から「税務機関が税制優遇措置の適用を受けた部分の税金を追徴する」へと変更された。 |
三、今般の改正による企業への影響
今般の改正によりハイテク企業資格の認定条件、申請書類、監督管理の方面で変更が生じたため、以下の点に注意しておくことが望ましい。
1. 資格認定を申請していない企業:
(1)今般の改正により「国が重点的に支援するハイテク分野」が更新されたことで、サービス業のコア技術の範囲が拡大され、「検査検測認証技術」、「現代スポーツサービスのコア技術」、「スマートシティサービスのコア技術」が新たに追加され、立ち遅れた技術がいくつか廃止されている。従って、企業は更新後の「国が重点的に支援するハイテク分野」と照らし合わせながら、自社製品(役務)のコア技術は改正後の分野に該当するかどうかを確認しておくことが望ましい。
(2)新弁法では企業に対するコンプラインス要求が引き上げられ、資格認定の申請を計画している場合、社内のコンプライアンス制度を整備し、企業の環境、製品品質、税務などの方面におけるコンプライアンスを強化しておくことが望ましい。
2. 資格認定申請の準備をしている企業:
(1)認定条件に変更が生じているため(前述の「二、改正ポイント」、「1、認定条件の変化」を参照のこと)、新弁法下の認定条件と合わせて、自己評価を行っておくことが望ましい。
(2)新弁法では様々な申請書類が新たに追加されているため(前述の「二、改正ポイント」、「2、申請書類の変化」を参照のこと)、今後正式に公布される「ハイテク企業認定管理作業の手引き」の関係文書における要求及び関係政府部門の要求と合わせて、準備しておくこと望ましい。
(3)社内のコンプライアンスを強化しておくために、今後正式に公布される「ハイテク企業認定管理作業の手引き」の係る要求及び関係政府部門の要求と合わせて、準備しておくことが望ましい。
3. 資格認定獲得済みの企業:
(1)新弁法では「再審査」手順が廃止されているため、資格の有効期間満了後、企業は新弁法に従い、資格認定を改めて申請しなければならず、改正後の新弁法における変化にも注意を払う必要がある。
(2)新弁法では他地域へ全体移転する場合、有効期間内であれば資格は有効に存続するが、認定機関の管理区域外へ部分的に移転する場合には、新たに認定を受けなければならないことが明確にされているため、移転方式を選択するにあたっては、資格認定も念頭に置いて、再認定とならないよう、できる限り全体移転で進めて行くようにすることが望ましい。部分的移転をする必要がどうしてもある場合には、移転する部分が資格認定条件に合致した状況になければならない。
(3)新弁法では罰則が変更されており、資格が取り消された後、企業はこれまで税制優遇措置の適用により減免されていた税金を税務機関から追徴されることになる。従って、企業は新弁法下の資格取消事由に注目し、重大な変更事項、年度の発展状況を適時報告するようにし、資格を取り消されるおそれがあることを発見した場合には直ちに措置を講じ、認定機関から資格を取り消されないようにしておく必要がある。
なお、科学技術部、財政部、国家税務総局は、「ハイテク企業認定管理作業の手引き」を間もなく公布する予定であるが、これにより新弁法の関係政策の更なる明確化、具体化が期待される。従って、企業は本手引きについても注意を払うことが望ましい。
(里兆法律事務所が2016年6月24日付で作成)
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