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「不動産登記暫定条例実施細則」を読み解く

中国ビジネスレポート 法務
郭 蔚

郭 蔚

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2016年9月6日

2016年1月1日、国土資源部が、「不動産登記暫定条例実施細則」(以下「細則」という)を公布した。「細則」では不動産登記簿、登記手続き、各種不動産権利登記、資料の照会、保護及び利用、法的責任などの運用面でのさらなる改善を図るために、不動産統一登記制度を細分化している。

主な内容及び解説

項目 主な内容 弁護士見解
どのように登記するか。 ●「細則」第二条の規定に基づき、不動産登記は、当事者の申請により行わなければならない。但し、法律、行政法規及び本実施細則に別途規定がある場合を除く。
●「細則」第九条の規定に基づき、不動産登記を申請する場合、申請者は登記申請書を記入し、本人証明書及び申請資料を提出しなければならない。
現時点では、不動産登記は、「申請により登記を行う」ことになっており、当事者が申請しなければ、登記機関が自発的に登記したり、又は登記を強制的にさせたりすることはない。
既存の所有権証書(例えば、不動産権利証、土地使用権証)を不動産登記証書に切り替える必要があるか。 「細則」第百五条の規定に基づき、本実施細則の施行前に法に依拠し発行された各種不動産所有権証書は有効に存続する。不動産上の権利の変動、移転が生じていない場合、不動産登記機関は、不動産所有権証書の切り替えを不動産権利者に強制してはならない 所有権の変動又は移転がなければ、証書を切り替えなくてよく、既存の所有権証書は、有効に存続する

不動産登記証に全国で通用する唯一の「本人証明書上の番号」に相当する「不動産番号」が追加されたことで、不動産コードの一意性を確保することができるようになった。

誰が不動産登記資料を照会することができるか。 「細則」第九十七条の規定に基づき、以下の3つのタイプの主体は不動産登記資料を照会することができる。
権利者:
権利者は、自己の不動産登記資料を照会、複製することができる。
利害関係人:
不動産の取引、相続、訴訟などに関係する利害関係人は不動産の属性に関する情報、権利者及び不動産の差押え、抵当権設定、仮登記、登記への異議申立てなどの状況を照会、複製することができる。
国家機関:
裁判所、検察庁、国家安全機関、監察機関などは、調査及び処理事項と関係のある不動産登記資料を法に依拠し照会、複製することができる。その他国家機関が公務を執行する過程で法に依拠し、不動産登記資料を照会、複製する場合、本条の規定に従い執り行う。
「細則」では、照会主体を権利者、利害関係人、国家機関などの3つの主体に限定しており、これまでの照会政策と比べて、照会することのできる主体の範囲が若干狭まっている。
どのように照会するか。 「細則」第九十八条、第百一条の規定に基づき、権利者、利害関係人は具体的に不動産登記を取り扱う不動産登記機関に行き、照会を申請しなければならない。照会申請者によって、提出する申請資料は異なる。

権利者が照会を申請する場合
:照会申請書、申請者の本人証明書類

権利者が複製を申請する場合
:照会申請書、照会目的に関する説明書、申請者の本人証明書類

利害関係人が照会又は複製を申請する場合
:照会申請書、照会目的の説明書、申請者の本人証明書類、利害関係の存在を証明する資料
備考:権利者、利害関係人が他の者に代理で照会させる場合には、代理人の本人証明書類、委任状も提出しなければならない。

国家機関が照会又は複製を申請する場合:当該機関から発行された照会協力資料、職員の職員カード

各照会申請者ごとに提出する必要のある資料を細分化し、照会・複製申請手続きを整備している。

利害関係を「証明する」資料について、「細則」では明確に定められていないが、利害関係の存在を証明できる資料としては、抵当権設定契約、抵当権設定登記証明、又は売買契約、訴状などの資料が考えられる。

登記情報の安全性は確保されるか。 ●「細則」第九十四条の規定に基づき、不動産登記機関は、不動産登記資料管理制度及び情報セキュリティ・秘密保持制度を構築し、不動産登記資料の安全保護基準を満たす不動産登記資料の保管場所を設置しなければならない。

●「細則」第九十五条の規定に基づき、各級の不動産登記機関は不動産登記情報の安全性を確保するための措置を講じなければならない。いかなる組織及び個人も不動産登記情報を漏洩してはならない。

●「細則」第百三条、第百四条の規定に基づき、不動産登記機関の職員又は当事者が「細則」の規定に違反した場合、法に依拠し処分又は処罰するほか、犯罪を構成した場合には、法に依拠し刑事責任も追及する。

登記情報の管理と秘密保持手続きが強化されたことは、情報と取引の安全性確保に有益となる。
住宅地内の道路、緑地は登記可能か。 「細則」第三十六条の規定に基づき、建物の所有権登記手続きを初めて行う場合、申請者は法に依拠し建物の区画内にある不動産所有者の共有部分に該当する道路、緑地、その他公共の場、共用施設、不動産管理室及び同管理室が占用する建設用地の使用権も合わせて不動産所有者の共有部分として登記を申請しなければならない。不動産所有者が建物の所有権を譲渡する場合、共有部分に対して有する権利も法に依拠し譲渡することになる。 住宅地内の道路、緑地及び公共の場、共用施設、不動産管理室なども合わせて不動産所有者の共有部分として、登記申請することができる。

「細則」公布後の影響
1. 不動産権利及び取引安全の保護に有益である

「細則」では不動産登記資料の照会、保護、利用及び法的責任について定めており、権利者だけでなく、賃借人又は抵当権者などの利害関係人も不動産登記情報を照会する権利があるとしている。一方で、「細則」は情報の照会と利用に厳格な要件と手続きを設け、各申請者ごとに情報を照会・複製するための申請要件、提出資料を定めており、現代の所有権制度の健全化、取引の安全性の確保、不動産権利者の適法な権益の保護につながることが期待される。

2. 不動産市場へ大きな影響を及ぼすことはないと考えられる

不動産市場は、需供関係、マクロ調整政策、金融規制政策などの影響を受けて、変動する。一方、不動産統一登記制度は不動産市場の市況に多少影響する可能性はあるが、同制度は行政管理を行うために制定されたものであり、短期的に見れば、市場へそれほど大きな影響を及ぼすことはないと考えられる。

3. 不動産税を徴収するうえでの基盤となる

「細則」は不動産税を徴収するために公布されたわけではないが、不動産登記制度の実施は、客観的に言えば、不動産所有権の帰属関係を明確にすることに有用となるため、将来的には、不動産税を徴収するうえでの不可欠な要素・条件になることが見込まれる。

(里兆法律事務所が2016年5月20日付で作成)

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